ポケットにミステリを

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 “年末ベスト連続一位作家”D.M.ディヴァインの「最高傑作」だそう。

 シリーズ探偵を作らなかったというディヴァインだから読む作品ごとに思い入れるべき主人公が変わるわけだが、この作品がいちばんポピュラーな感じ。主人公は「筆は立つが反体制的で出世コースに乗れない35歳の男性新聞記者」で、「学生時代イイ仲だったが決め手に欠けて他の男にかっさらわれ、その後若くして未亡人となった金も知性もある美人」がヒロイン(←若干イラっとする)。

 「本格とはトリック・ロジックのみに非ず」と言わんばかりの作品。そこにあるのは動機至上主義ともいうべき人間観察のススメ。最近の流行りではなかろうが、こういうの好きだ。

麒麟の翼

 最近頭がおかしい私は神経過敏になっていて、どうも行間を深読みし過ぎる傾向がある。これは相当重症だ、と自分でも心配になったところへ嬉しい加賀もの新刊の登場。恋の病は違う男で埋めるのがいちばんだよねっ♪

 日本橋で倒れこむようにして死んだ男はナイフを胸に刺したまま必死でそこまで歩いてきたようだった。彼はなぜそんな無理をしたのか。そもそもなぜ縁のなさそうな日本橋界隈に出向いたのか。容疑者が警官を避けて車にはねられたために事件は謎を含んだまま「解決済み」に処理されかかったが、納得のいかない男がいた。「こんな中途半端な形で事件を終わらせても誰も救われない」

 私が現在進行形で好きな男のひとのなかで最も長いこと大好きな加賀さん。情に流されない冷徹な男、気味の悪いほど粘り強い男、と人は彼を評する。けれど事件解決への執念が誰よりも熱く、捜査過程で関わる相手への細やかな気配りはあとからそれと解る押しつけがましさのない暖かさに満ちている。

 「加賀シリーズ最高傑作」の謳い文句はどうだろう。複数の事件関係者の視点から事件を描き、言葉で語られない事実を拾い上げる一見地味な仕立てで、家族の絆やら経済構造やらといった大袈裟なテーマを論じる。「あっと驚く」一方ですんなり腑に落ちる真相。どれをとっても職人技に違いない。ただ、数多い加賀シリーズの作品のなかで印象に残る代表作になるのか?と言われればちょっと違う気がする。それだけ地味な刑事としての彼が等身大に書かれているとは言えるけれども。あとはご自分でお確かめを。

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琅邪(ろうや)の鬼

 昨夏刊行された第44回メフィスト賞の“痛快中国歴史ミステリー”。著者・丸山天寿氏は1954年生まれというから、このレーベルには珍しく年上の新人さん。でも文体は若い歴史小説マニアが書きそうな雰囲気だからこの年齢は意外。表紙見返しの「小説とはほら話」との言葉に共感を覚え、期待大で取りかかった。

 戦乱の時代を勝ち抜き中国全土を統一した始皇帝が次に求めたものは「不老不死」であった。不老不死の仙薬を入手するよう命じられた徐福は山東半島の喉首にある港町・琅邪に拠点を置き、仙薬の研究や“神仙の島”へ向かう船の建造に着手する。便宜を図るため無税と定められた琅邪には大量の人々が流入し、求盗(警官)の希仁を「犯罪が増えた」と嘆かせた。

 怪しいプロ集団としての“徐福塾”の面々、謎が謎を呼ぶ展開。中国風極彩色のきらびやかな物語はなかなかのリーダビリティ。前述のように言葉遣いが若い雰囲気なのと、“ほら吹きおやじ”(自称)にしては修飾がエロの方面に行かずに留まるのが対象読者の若いメフィスト賞に値した所以だろう。数多い謎に整合性ある回答を用意し、かつそのなかに荒唐無稽なネタを仕込むことで退屈に陥らずにまとめた手並みはたいしたもの。続編もあるそうなので、いずれ是非。

刑事のはらわた

 講談社創業100周年記念出版“書き下ろし100冊”企画のひとつ、首藤瓜於氏の警察小説。『刑事の墓場』の続編かと思ったらノンシリーズ。帯の惹句の盛り上げが凄いのでつい買ってしまった。
他に誰も書けない首藤ワールド全開で亜空間に読者を誘うスタイリッシュでファンタスティックな超絶ミステリー
警察小説の新たな扉を開く衝撃のラスト1行 

 今年で34才になる八神は一年前に警部昇進と同時に所轄の警察署から県警本部に転任になった。刑事課盗犯係から鑑識課への異動は異例のこと。亡父の縁で偉いひとに目をかけられているからでもあるが、八神自身ソツのない仕事で結果を残してきた。しかしある現場での出来事がきっかけで順調な昇進に陰りが見え始めた。死体で発見されたのは死んだはずの男・・・?

 半ばまでの展開はかなり個性的だ。次々と物語に放り込まれる死体の描写を通じて深く謎めいた事件を垣間見せていく。淡々とした文章は死体のグロさを最小限に抑えることに成功しており、悪趣味になる寸前で救っている。

 が、後半になるとそこまでに貯め込んできた伏線を回収しないつもりか?と不安にさせられはじめ、結果的にその予感は当たってしまう。フィニッシングストロークだと宣伝するにはこの収束させかたは美しくなくないか。これで新たな扉が開くとは思えないけどなぁ。
 『〜見習い』シーズンにはどうも馴染めなかったのだけれど、挿話集のほうはいろんな人目線で興味深く、躊躇わずに買ってきた。しかも数ある積読本を差し置いてさくっと読んだりして。

 一応今回自分的にメインに捉えたのは、遠子がいかにして「異性としての心葉」に惹かれていったかの部分を明かす挿話たちである。心葉の作品を評価し、そのまま筆を折らせまいと奮闘する様を中心に描けばどうしても出版社側の打算に似たものを遠子のなかにも見てしまう。より生身の十代の女の子らしい恋心を読めればと思った。

 しかしどちらかと言うとそのあたりは食い足りなさが目立ったと思う。妖精然とした遠子の持ち味ではあるけれども、キレイゴトばっかりだと鼻白むものがあった。本編・挿話通じて心葉の葛藤のほうがリアルに伝わった感じがする。

 で、なにがいちばん印象的だったかと言うと、今回唐突に登場した感のある某登場人物の台詞だ。『“文学少女”と騒がしい恋人たち』で謎の指輪の持ち主として曰くを語るそのひとの心情に共感した。その見方は読者の主流層には意外なものなのではないかと思い、こう言わせたセンスに拍手する。

 あとは心葉の妹・舞花ちゃんの後日談もなかなか良い。本編結びの唐突感を埋めてくれる短編で○。

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