ポケットにミステリを

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 個人的にこのクラス(名づけるなら“ノベルス級”?)の作家さんでは図抜けて好みな汀こるもの氏の最新作。THANATOSシリーズとリンクしつつも独立してシリーズ化することにしたようだ。

 前作の顛末で廃部になった“完全犯罪研究部”だったが、そのまま大人しくするタマではない。図書準備室を部室に新顧問・藤田を迎え“ゼロ年代探偵小説研究部”として生まれ変わった彼らは、捨てさせられた過去に追いつかれそうになっている古賀を救うべく元顧問・ゆりっぺのもと立ちあがる。

 前作が照れ隠しのように小ネタを散りばめながら本筋の物語そのものの力で読ませたのに比べると、今回本筋が地味である。古賀の母親に関するトラウマから彼を解き放つために「彼を暇にさせない」という方法を取る、というところまでは良いとしてTHANATOSシリーズからの独立性を強めようとしてそちらの設定にあえて触れない展開をしたことで逆にそっちシリーズのユニークな魅力の欠落が意識されてしまった。たぶん“ネットで話題沸騰のロリ顔女教師・ゆりっぺ”に萌える層であればこのほうが良いんだろう。自分がこの一連の世界観のなかで不幸な刑事さんに萌えているのだと思っていたけれど、無意識にどれほど死神兄弟に魅力を感じていたのかを改めて意識することとなった。作者自身、この第2作は予定外のことだったようなのだけれど、あんまり編集者の言葉にのせられて二匹目のドジョウを狙わないほうが良いのではなかろうか。そこまで頼もしい編集者が最近のKノベルスチームにいるとは私には思えないので。

寝台車の殺人者

 先日、魔界近くの古本屋(既に行きつけ)で買ってみたのがこれ。セバスチアン・ジャプリゾと言えば『シンデレラの罠』が合言葉だと思うけれど、こちらもアレに続いて「一大旋風を巻き起こした」と書いてあるから面白いんじゃないかと思ったのである。

 マルセイユからの寝台急行がパリに到着し、客の降りたあとの室内を点検にまわっていた係員は二等寝台車まで来たところで女性客の死体を発見した。コンパートメントの相部屋客に話をきく必要があると考えた担当刑事・グラジは新聞の協力を得て予約者に呼びかけを図るが、彼らまでが次々と殺されていく。

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 なんか難しい。人名がたくさん出てくるうえに似てるのが多い・・・結果、うっかり混同してわけわからなーい!

 絶対関係があるんだろうと思っていたエピソードがなかなか有機的に繋がらなかったのに、最後まで来て「やっぱり繋がってた!」とキツネにつままれた気分になったりもしたので、どうやら翻訳段階で人物の描写に若干の問題もある様子。たぶん面白いし驚かされる物語なんだろうに、なんだか勿体ないなぁ。かと言ってフランス語じゃ無理だしね。
 歌野晶午氏の期待のシリーズ第2弾。

 街頭で募金活動をしているあの女は詐欺ではないか・・・!?  友人の疑問に付き合わされて尾行を始めたえみりだが、どうやらまかれてしまったらしい。女の変装を見破り尾行に協力してくれたのは、小学校時代の同級生・ひとみだった。数日後女が死体で発見される事態になり、ひとみの観察眼は刑事である叔父・歳三をまたも唸らせる。

 あれから3年が過ぎて少女は中学生になっている。もうちょっとすると珍しくもないギャル探偵になりさがりかねないから、今回がぎりぎり賞味期限なのではないか・・・という懸念を抱きつつ読んだのだが、さすがは“新本格きっての社会派”と認定している歌野氏だけのことはある。前作では、小学生であれば家族とのかかわりが「社会」の大部分を占めるだろうという前提のもと、叔父・としちゃんを視点に据えることで書き手と作品世界を馴染ませる効果も狙いつつ、ひとみの家族に関わるエピソードを中心に取り挙げた。本書ではひとみと同年代の少女を中心人物として登場させ、かつ彼女らとひとみとの間に学校格差〜その基礎にある生活環境の差を設定して、それをも事件の深いところに寝かせつつ、少女たちの成長のきっかけとして見せた。「ひとの秘密を探る」ことと背中合わせに探偵にのしかかる重み。事件を通してひとの姿を正しくみることで傷つく心。前作よりも積極的に事件の真相解明に向かおうとするひとみ自身の心象風景を描かないことで客観的にひとみの変容を読み手に気づかせるスタイルが上手く行っているから、きっと3年後の彼女もまた「記号としての女子高生」とは一味違ったリアルな姿をしていることだろうと期待する。

新・新本格もどき

 “霧舎学園”シリーズを追っかけていないものだから、相当久しぶりに読む気のする霧舎巧氏。の割には「きりしゃ」で一発変換できるのはナゼ(笑)?

 初めて訪れた町でふらりとてんぷら屋に立ち寄った私は、おかしな女性客に声をかけられた。コスプレ調のカツラを被りやけに馴れ馴れしい口調の女性は“アンコ”と名乗り、何処かの山中で行方不明になったらしい人物の日記を私に読ませようとする。そこに書かれた事件について討論する彼女たちを見ながら、私にはもっと美しい解き方が思い浮かんだ。

 前作『新本格もどき』は2007年のことだったようだ。思った以上に前作を受けての内容であることが読みはじめてから判り、これだけ開いたらついでに再読するんだったと若干の後悔。前作の設定はチラチラと書かれるからおそらく読んでなくても事件の意味はわかるのだけれど、本来ならば説明要らずのマニアに読んで貰いたいのだという姿勢はひしひし伝わってくる。なんのための購入派だよ、と反省。

 さて私も芦辺拓氏にはあんまり興味が持てないものだから『殺人喜劇の13人』は読んでいなくて、ここは論評してはいけないかのような気まずさにとらわれる。そこ以外は一通りお馴染だから実際各短編冒頭からソレらしいフレーズが出るたびニヤリの連続だった(手前味噌と言われかねないからか『おかずの扉』はあまり筆が奔放に走れていない印象があったのはちょっと残念)。装飾の部分の面白さが目にとまってしまいがちなのはやむを得ないことで、新本格ネタの部分はもちろん、海外古典→“ノックスの十戒”ネタ(『覆面作家は二人もいらない』。北村薫氏のクイーンへの敬愛をシャレのめすつもりか)も非常に笑えた。かと言ってミステリ部分だってちゃんとしているわけだから、本当に本格の好きな人なんだろうな。次にもどかれるのは誰かにも興味があるし、その時にちゃんと笑ってあげられるように本歌をチェックするのを怠らないようにもしなければ。

わが目の悪魔  ☆

 皆さま、ご無沙汰いたしました(←どっかで聞いたフレーズ・・・)。24日にライカエジソン原宿&東京店にてセクアンさんの新譜イベント(原宿:撮影&サイン会、東京:トーク&サイン&握手会)があったので、その数日前から美容院だ!お手紙だ!マスコット作りだ!と超多忙、さらに終了してからはリーダーの手の感触を忘れられず正気を失っていた(現在進行形)ものですから本どころでなく、結果的に長編1冊読むのに1週間を費やすという私らしからぬ状態に陥っていたのです。やっと終わったから霧舎に行ける(嬉)。でも明日(もう今日)から北海道2daysだからお友達のレポを漁りまくってまた本どころじゃない週末になるよな。たぶんなる。

 閑話休題。

 ルース・レンデル氏を集中的に読んでいるが、ウェクスフォード警部ものはちょっと作風に慣れ過ぎてマンネリ気味なものでノンシリーズを挟むことにした。しろねこさんやもねさんからタイトルが上がっていた“英国推理作家協会最優秀長編賞”受賞の代表作にチャレンジ。

 厳格な伯母・グレーシーに育てられ融通の利かない真面目人間に仕上がったアーサー・ジョンソンは、女性への愛憎を正常に消化できず、通りすがりに女性を絞殺した過去を持つ。自らの異常性を認識する彼は地下室でみつけたマネキンを痛めつけることで衝動を抑えていたが、ある日同じフラットに間借りするアントニー・ジョンソンがそれとしらず彼の安息空間をめちゃめちゃにしてしまう。誤解と妄想の果てにアーサーは再び“絞殺魔”と化した。

 犯罪者を生みだした生い立ちの設定がさりげなくだが丁寧になされていくこと、またアントニーの無意識の言動がアーサーの被害妄想を煽る様を繰り返し叙述することにより、アーサーが悲劇に追い込まれる展開に強い説得力が与えられている。アーサーの事情、アントニーの事情を交互に語ってすれ違いの悲劇をいっそ笑えるほどに盛り上げて行くのに加え、アントニーを異常犯罪者に関する論文で哲学修士を得ようとしている青年に設定し、本来は具体例に結びつかないはずの彼の著述の中身でアーサーの異常性を解説するテクニックも巧い。こういう結末はサスペンス小説には一種「お約束」なのだけれど、終盤の緊迫感がなかなかなので☆。

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