ポケットにミステリを

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ドゥルシネーアの休日

 詠坂雄二氏の書き下ろし長編ミステリ。読み始めてからわかったのだが『遠海事件』に引き続く作品だった。読んでいなくて困る作品でもないしネタばらしがあるわけでもないのだけれど、どうせなら登場人物の人柄を知った上で読みたいからこういうときはがっかりする。

 警視庁捜査一課の刑事・雪見は、死体の周辺にタンポポの綿毛を遺して行く連続斬殺魔の捜査に携わっている。刑事生活を振り返ってみても例のない、理解に苦しむ事件だと思う。自分たちの通常の方法で捜査したのでは犯人にたどり着けないのではないかと危惧している。そんな時、相棒の後輩刑事・野間が「ひとつ気になることがある」と相談してきた。10年前にも類似の事件が起きているというが、解決済みのその事件には多くの謎があった。

 「事件関係者に会いたいから殺人を犯す」という設定はどっかで見たような・・・と思いつつ思い出せないのが悔しいが、そう言えば『八百屋お七』のバリエーションみたいなものだと思い当るとなかなか斬新なアイディアというものは残っていないものだと溜息をつきたくなる。結末で明らかになる犯人像は「意外」というよりは定石通り、プロファイル通りでつまりは著者が常識人なのだろうと推測させる。クライマックスにきての展開がアクション映画的になるのは世間一般的(=商業的)には正解なのだろうけれど、“新本格的”に描いてくれたほうが個人的には好きかも。

 それにしても、どうして“ドゥルシネア”なのだろう。この女性を指すのだろうに、立ち位置にも行動にもちっともドゥルシネアを思わせるところなどないが・・・?

オー!ファーザー!

 即買いはせずともほどほどに追っかけている伊坂幸太郎氏。安定したものを読ませてくれることは間違いないから、この時とばかり積読棚から手に取った。と言うのも思ったより昨日の『サゴケヒ〜』が効いてしまったようで、こんな気分をリセットしたいときのために置いておくと便利(常備薬ですか?)。

 うちには父親が4人いる。外見も職業も性格も嗜好もまるで異なる4人。本当に遺伝子が繋がっているのは一人で、だから彼らはいつも由紀夫と自分の類似点を探し出しては安心する。DNA鑑定をしちゃえばいいじゃないか? 「そんな鑑定なんかして、もし俺が父親じゃなかったらどうするんだよ」

 「第1期の総決算」とは良く言ったもので、これはまさに自分の思い描く伊坂調そのものだと思う。雰囲気は『陽気なギャング〜』と同じだし、ノワールな部分は『グラスホッパー』や『ラッシュライフ』だろうし。伊坂作品のウリ、即ち「軽快な会話」も「ちょっとした噂話に潜む伏線」も「サプライズな展開」も満載で巧いこと書いていらっしゃるのでひとに薦めれば無難だろうけれど、結果コレをイチ押しにする人間だと思われるとすればなんだか不本意。たぶん感激させようと狙っているポイントが自分のツボから逸れていて、『ゴールデン・スランバー』のときのようにむやみと胸を締め付けられる感覚には襲われなかった。父親が「わが子」に確証を持てないのは当然のことで、だからこそ父親になるには覚悟も努力も要る。母系社会においては、並行してつきあう求婚者のなかから母親が「父親」を指名する制度も珍しくない。由紀夫の母をある意味天晴とは思うけれども、宙ぶらりんに置かれた父子の関係がこんなに牧歌的に書かれていてもいまひとつ釈然としない。
 
 いつも「キライ」と公言している講談社BOXだが、田中哲弥氏の新作だから買わないわけにはいかなかった。「うつくしくおぞましい愛がいざなう、全8篇の妖美な悪夢の迷宮・・・・」

 うわー。『猿駅』路線だったー。「異形コレクション」に入っていた作品含め、かなり食欲失くし系の作品ばかり。この作家さんを好きな最大の理由である「文章の呼吸が自分に合う」という点も霞むほどの腐臭が脳内いっぱいに漂ってくる。一応全部読んだのだけど、再読は勘弁かも。

なぎなた

 先日アップした倉知淳氏の短編集(『こめぐら』)の片割れがこれ。結局両者を読んでもタイトルには意味を見出すことはできず、言われている通りに意味のないものらしい。

 あくまでも印象というだけだが、『こめぐら』よりこの『なぎなた』のほうが倉知氏らしい本格テイストを感じられた。『見られていたもの』『闇ニ笑フ』あたりがお気に入り。それにしてもこの作家さん、ほんっと猫好きね。

隻眼の少女

 『貴族探偵』のあとはずいぶんすぐ出たなぁ。麻耶雄嵩氏の書き下ろし最新作。ハードカバーだって買っちゃうさ、まややだもの。

 とある事情で自殺企図を抱き秘湯“琴乃湯”にやってきた静馬は、水干姿の少女・みかげと出逢う。高名な探偵だった母の跡を継ぐべく修行中だというみかげは、危うく殺人事件の重要参考人にされかけた静馬の濡れ衣を晴らし、助手役に指名する。みかげは村の因習に関わる連続殺人を解決することができるのか。

 人物設定がヘンだとか、素人探偵がアッサリ警察に受け入れられるのがヘンだとか、常識で測ったら噴飯ものの作品であることは事実。それでもそのヘンな部分が真相に絡んでくるのが“新本格”の醍醐味である。「ほのぼの系日常の謎」は去れ! すり減った刑事の靴底を見たいものは去れ! キレた若者の理屈抜きの暴走に痺れるものは去れ! 龍伝説の岩場に流れた大量の血、集まった“英雄の末裔”を名乗る一族、遠巻きに見守る村人、きりりとした横顔の中世的な美少女。新聞や週刊誌にはない事件を書かなくてなにがミステリでいっ。

 と本来ならテンション高く付き合わなければいけないのだろうけれども、このごろ我ながら妙に現実的な主婦目線でものごとを見ているものだからどっちかというと「噴飯」に近いリアクションを取りながら読んでしまった。冷静になったらダメよね。

 蛇足ながら、麻耶さんが例によってそんな重大事態を一行で片付けるのが落ち着かなかった。『痾』でも思ったことだけど、そんな都合良く行くなら少子化問題も起きなくないか?

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