ポケットにミステリを

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こめぐら

 倉知淳氏の著作刊行は久々なのではなかろうか。デビュー以来の16年分の短編を集めて刊行された最新作は「全2作」のつもりでとらえて欲しいのだというただし書き付き(のわりにはタイトルが・・・)。一緒にまややと田哲の新作を買って、どれから読もうかと胃に穴が開きそうなほど悩み、結局コレからにした。『なぎなた』よりはそのどっちかを先にするつもり。

 講談社ミステリーランドでは倉知氏の『ほうかご探偵隊』がベストに近い作品だと思っているものだから、正直本書の『どうぶつの森殺人(獣?)事件』がそのまま上梓されていなくて良かったと思う(苦笑)。メタ形式をとっていることにしても、登場人物の会話の端々にうかがえる若干黒めな本音にしても、これはどう見てもオトナ向けの作品。探偵のキャラがあまり立っていないのは枚数の都合なのだろう(かと言ってそれを安易に“先輩”の動物版にしたりしない矜持は好きだ本当に)。そこがもうちょっと目立っていたらもっと笑えるのだろうと思う。

 あとがきでいちばん驚かされたのは「『偏在』はギャグじゃない」の主張。『さむらい血風録』と『どうぶつのもり〜』に挟まれた位取りから、すっかりギャグと思って読んだのに。

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 東川篤哉氏の最新作。いかにもシリーズになりますと言いたげな「お嬢様と執事」もの。

 刑事・宝生麗子は、中堅自動車メーカー“風祭モータース”の御曹司である独身貴族の上司・風祭に悩まされていた。この程度の肩書やルックスでは麗子は何の魅力も感じない。彼女自身が大財閥・宝生グループ総帥の一人娘なのだから。身分を隠し地道に仕事に励む麗子が内心疎ましく、それでいて頼りにしてしまう存在が執事兼運転手・影山だ。彼は麗子が話す事件の概要を聞いて、たちどころに真相を看破する。「率直に思うところを述べさせていただきます。失礼ながらお嬢様、この程度の真相がおわかりにならないとは、お嬢様はアホでいらっしゃいますか」

 ざっくり言うとテレ朝の金曜深夜枠ドラマっぽい感じ。その心は「二枚目路線の役者さんが新境地開拓とばかりにややくどいギャグを連発しつつ、終わってみればちゃんとミステリ」。お嬢様は柴崎コウさんをイメージしてみたのだけれど、執事は誰かなぁ。30代、痩せ型長身イケメンでちょっとイヤミな雰囲気が出て欲しい。玉○宏さんでは良い人過ぎるような気がするし、オ○ギ○ジョ○さんでは上品さに欠ける気がするし、松山○○イチさんではあか抜けない気がする。そうだな、さいきんの若干ヤサグレた雰囲気の出てきた小○旬くんだといいかも。みなさまどう思います?

太陽黒点

 角川文庫で山田風太郎ベストコレクションの刊行が続いている。2001年には光文社で“山田風太郎ミステリー傑作選”が編まれているし(本作は5巻『戦艦陸奥』に収録されていたらしい)、個人全集が何パターンもある作家さんをどう集めるかって悩むねえ。でもって今月の新刊棚にあったこの作品、解題は日下三蔵氏なのに帯の惹句が道尾氏なのはこれ如何に。帯でつい買ったけど(おい)光文社版のほうが収録作が多くて読みでがあったはずと反省。

 昭和30年代後半の東京。苦学生・鏑木明はアルバイト先で偶然に社長令嬢・多賀恵美子と知り合う。彼女を籠絡することで特権階級への復讐に代えようと夢想する明は献身的な恋人・容子さえも踏みにじり恵美子たちへ近づいて行くが、それが悲劇の連鎖を生む。

 戦中にも戦後にもわりをくってばかりの人生だった、という世代の慟哭が聞こえてくるような作品。著者のインタビューには「大戦で戦死した友人たち、同世代への鎮魂歌として書いた」とあり、発表された1963年当時には戦後育ちで繁栄を享受する若者がいかにも恨めしく、また羨ましくあったのだろうとしのばれる(ここからタイトルの意味を解するには「太陽族」という言葉を踏まえる必要があるだろう)。何人かの登場人物がそれぞれスポットを浴びながら役どころをこなす中で、やがて最も中心に立つ人物が明らかになったときにふたたびそこまでの物語展開を振り返ると、薄々つかめていた以上に根深い怨みつらみが理解でき、改めてゾッとする。途中までは「清張・・・?」と思ったけれど、終盤のケレン味はおそらくだいぶ違うはず。なるほど、鮮やかだった。

指に傷のある女

 和モノだなんて予告しておいたのにまたルース・レンデル氏の作品=ウェクスフォード警部もの7作目を読んでしまったわたくし。実は読みかけの和モノもあるにはあるのに、そっちが連作短編集でしかもソフトカバー単行本だったものでつい文庫のコレを先に読み進める格好になってしまったのだ。そっちの本も面白そうなので、近々載せることになる見込み。

 主婦が自宅で絞殺されているとの通報で駆け付けたウェクスフォードたち。平日は実家に身を寄せてロンドンで働き週末に自宅に帰る生活をしている会計士ハットホールは「頑固な母と妻の反目に悩んでおり、この週末は母親を自宅に招いて両者の交流を図る予定だったのに、母とともに戻ってきたら妻が死んでいた」と語った。アリバイは完璧。しかしハットホールの態度に不審をおぼえたウェクスフォードは彼が誰かに妻を殺させたとにらむ。

 ミステリ的には序盤に感じた違和感が結局全ての謎を解き明かすカギになるつくりなのだが、随所に「注目ー!」とでも言うような描写をちりばめつつ事情を複雑化させ、ラストには刻一刻と息詰まる駆け引きをおいて、あたかも2時間サスペンスっぽい女性向きミステリになっている。

 しかし私の注目ポイントはそういうことではなかった。 バーデン警部、お払い箱ではないけれども影薄っ!  

 今回ウェクスフォードは容疑者と目した男からの厳重抗議で署長に捜査の行きすぎを咎められ、捜査から事実上外されてしまう。その間、有給を使って勝手に男が移り住んだロンドンに出張っていったり、お馴染の情報屋モンキー・マシューズの弟ジンジを自腹でスパイに雇ったり、なんだか良識ある上級警察官とは思えないような振る舞いに及んでいるのだが、結果的に単独行動にならざるを得ず、バーデンとの協力関係が描かれないのだ。その分活躍するのが首都警察犯罪捜査部で警視にまで出世している甥ハワード。やることがスマートで知的で、それでいて伯父の難題に嫌な顔をしない礼儀と熱さがあって、ちょっと素敵な男じゃないか。ただ困ったことに、ふたりが協力してあたった事件というのが既に書かれていたように言及されているのだが、著作リストを見ても『偽りと死のバラッド』と本書の間には本シリーズの作品は無いようなのだ。一体どの作品がソレなのか?? 誰か教えて下さい。

偽りと死のバラッド

 ルース・レンデル氏のウェクスフォード警部もの6作目。角川文庫作品をまとめて入手し、
しばらく安泰。

 キングズマーカムの街で野外コンサートイベントが開催された。クラシック音楽を愛する堅ブツのバーデンは音楽のやかましさにも集まる若者たちのいでたちにも批判一方だが、ウェクスフォードは意外にも若者のエネルギーの発露に寛大だ。無事に日程を終了するかと思われた矢先、会場を見まわっていたふたりは参加した観客から女性の死体発見の通報を受ける。どうやらコンサートの始まる以前に殺害され遺棄されていたらしい。やがて彼女とフェスのスターの意外な関係が明らかに・・・

 前作ですっかりバーデン警部嫌いになっている私には、今回の作品で彼が家族思いの人間になっていることもまるでプラスの条件にはならない。一方でウェクスフォード警部の丁度良い枯れっぷりが素敵。若者(子ども)との付き合い方の、迎合するでもなく切り捨てるでもない加減もそうだし、当世風の女性のライフスタイルに関する寛容さにしてもそう。

 そんなレギュラーメンバーへの感想はともかく、ミステリ的にはストレートな“犯人当て”小説ではなく犯罪の成り立ちを哀しむ趣を重視した作品で、がちがちの本格だと疲れる最近の気分に合っていて良かった。若干の説教臭さを除けばこういう余韻も悪くない。ただ、訳文に一部現代語を狙ったような言葉遣いがあって(「オジン」とか言われても、ねえ?)萎えるのは残念。こういうところから古びるよね。

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