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歌野晶午氏の期待のシリーズ第2弾。 街頭で募金活動をしているあの女は詐欺ではないか・・・!? 友人の疑問に付き合わされて尾行を始めたえみりだが、どうやらまかれてしまったらしい。女の変装を見破り尾行に協力してくれたのは、小学校時代の同級生・ひとみだった。数日後女が死体で発見される事態になり、ひとみの観察眼は刑事である叔父・歳三をまたも唸らせる。 あれから3年が過ぎて少女は中学生になっている。もうちょっとすると珍しくもないギャル探偵になりさがりかねないから、今回がぎりぎり賞味期限なのではないか・・・という懸念を抱きつつ読んだのだが、さすがは“新本格きっての社会派”と認定している歌野氏だけのことはある。前作では、小学生であれば家族とのかかわりが「社会」の大部分を占めるだろうという前提のもと、叔父・としちゃんを視点に据えることで書き手と作品世界を馴染ませる効果も狙いつつ、ひとみの家族に関わるエピソードを中心に取り挙げた。本書ではひとみと同年代の少女を中心人物として登場させ、かつ彼女らとひとみとの間に学校格差〜その基礎にある生活環境の差を設定して、それをも事件の深いところに寝かせつつ、少女たちの成長のきっかけとして見せた。「ひとの秘密を探る」ことと背中合わせに探偵にのしかかる重み。事件を通してひとの姿を正しくみることで傷つく心。前作よりも積極的に事件の真相解明に向かおうとするひとみ自身の心象風景を描かないことで客観的にひとみの変容を読み手に気づかせるスタイルが上手く行っているから、きっと3年後の彼女もまた「記号としての女子高生」とは一味違ったリアルな姿をしていることだろうと期待する。
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ま行の小説
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ルース・レンデルまつりは第何弾だっけ。ウェクスフォード警部シリーズ第6巻。 ちゃんと順を追ったはずが、読みだして間もなく「???」という気持ちにさせられた。登場シーンでえらく不機嫌な様子のバーデン警部、なんと妻に先立たれてひとが変わってしまったというのだ。前作『罪人のおののき』では奥さん元気いっぱいだったじゃん! 伏線あった!? ないよね!? 出版社またぎで混乱したのかと年表(これがついているのは創元の版だけだから、角川版を読んでいるときだといちいち引っ張り出さなきゃいけない)を見ても順番はあっている。とにかくその事実を受け入れて先へ進んだ。 夕刻にキングズマーカム署にかかってきた電話は、幼い息子が外遊びから帰らないことを心配する母親からのものだった。近所のひとびと総出で探しまわったがみつからない。ウェクスフォードとバーデンは8ヵ月前に少女が行方不明になった事件を思い出し、悲劇の予感にとらわれる。 いや〜、驚いた。 何が驚いたって、ミステリ的にどうとかではなく 「バーデンってここまで厭なヤツだったんか!!」 と自分の見る目のなさに驚いた。 40そこそこで最愛の妻に癌で先立たれたことは気の毒だ。しかしそこでの反応が酷過ぎる。葬儀でやってきた義妹・グレースがふたりの子どもとともに残されたバーデンを見かねて滞在してくれるのをいいことに、家事も育児もグレースに任せっぱなし。看護師の職を休職しているグレースには彼女自身の生活もあるのにそんなことは意に介さず、家事は女だけの仕事と決めつけ労わるフリすらもしない。さらには妻の死で最も痛手なのは身体的な欲求不満だと自己分析し、グレースの存在が自分には何の恩恵にもなっていないと不満を持つのだから呆れる。 この作品で殺されるのがこいつであって欲しい と読者に願われるレギュラーキャラってどうよ。 そんな下地から、この物語はバーデンと子どもの母親との関係をメインに進められる。テーマにしたかったことは、登場人物たちそれぞれの人格のなかの「男」と「父親」、「女」と「母親」のバランスの崩れと言って良さようだ。あるいは「幼児性」と「成熟度」のバランスの崩れでもあるかもしれない。最終的に事件を解決に導くウェクスフォード(今回なにしろバーデンは役立たず極まりないから協力関係もなんもあったものじゃないのだ)が完璧に大人でよき父親に描かれているあたりにレンデルのなかにある家庭像、社会像が明らかになっていて、シリーズ世界を理解するうえで重要な作品と見た。
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読んだことのない作家さんにまとめて初挑戦しようと画策中。まずは創元推理文庫の棚から数冊買ってみたうち、“現代英国本格”と銘打たれたジム・ケリー氏の本書から。 氷結した河から車が引き揚げられた。トランクには銃で撃たれた上、首を折られた死体が入っていた。さらに翌日、大聖堂の屋根の上で白骨死体がみつかる。二つの事件には関連が? 独自の取材で真相に迫ろうとする記者・ドライデンにも犯人の魔手が・・・ 最初は中途半端にハードボイルドタッチの素っ気なく気取った文章にノレなかったのだけれど、ふたつの死体をつなぐ古い強盗事件に加えて主人公自身の自動車事故まで大盤振る舞いなプロブレムがどうつながるか見えてくれば、俄然リーダビリティが出てくる。現在進行形の部分と過去にあったことを解説する部分とで活字を変えてくれる心遣いもあるから、読みやすいと言えば読みやすい。しかしとってつけたようなラブシーンがあったりして全体の印象としては映画のノベライズみたいだから、この際思いっきり“超訳”(←古い)にしちゃえば良いのにという感じもする。それにしてもプロローグにあたる部分の存在意義が読了後にもどうしてもピンとこない。まだ何が起こるのか解らないうちに“自然の脅威”みたいな場面を見せられたところで興奮しないから、「11月1日」から始まったって良いんじゃないかと思うのだけれど・・・まぁその辺りは好きずきなので言っても始まるまい。ネタ的には好きで書き方が自分の波長と合わないだけだから、他の作品にもトライしたいところ。
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クレイグ・ライス氏のこのシリーズももう残すところがあんまりない。ラストから数えて3番目らしいけど、本邦未訳のものもあるって言うし。 犯罪撲滅運動の闘士であるエスタプールの継娘が誘拐され、何故かマローンが犯人側との交渉役に指名された。事情がつかめないままマローンが待ち合わせの時刻に事務所に出向くと、そこにはエスタプールの死体が転がっていた。何者かが殺人と誘拐の罪を着せようとしている!? マローン最大の危機! いいなコレ。マローン自身が容疑をかけられるほど事件にがっちり関わっているという事情からか、バタバタした笑いが抑えられていて全体に真面目な感じ。ジャスタス夫妻の関わり方もこんな感じに“ちょっと大事な脇役”というぐらいが程良い(そうでないとヘレンって結構煩わしいもの。事件の真相とその刑事的処理には、ごく一般の道徳を備えた市民の立場だと若干納得行かない気もしたりするけれども、マローンの奥底にくすぶる品の良さみたいなものが表に出てくるのだと好意的に解釈したい。翻訳も新しくなって読み易く、なかなかお薦め。但しここから読んだのでは魅力が伝わらないだろうから、そこが難しいところ。
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2001年に発表された小川勝己氏の長編ミステリで、傑作と聞いたのに長らく絶版で入手不能だったものが角川文庫に新登場(最初の出版は新潮社だった模様)。巻末に「実際の組織・個人と無関係なフィクション」と強調されているところからその手の何らかの抗議でもあったのかなと思ったがどうだろう。 |






