ポケットにミステリを

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ピカデリーの殺人

 「もうひとつ」と言って予告したのはこのアントニイ・バークリー氏で、『毒入りチョコレート事件』で活躍(?)したチタウィック氏が主人公の作品である。

 ピカデリーホテルのラウンジで“人間観察”にいそしんでいたチタウィック氏は、たまたま注目した年配の女性の連れの男に憎悪の眼差しを向けられて興味を引きつけられてしまった。しばらく席を外したチタウィック氏が戻って来た時には男の姿は無く、女性がひとり眠っているばかり。起こしてあげようと近づいて、彼は女性が死んでいることに気づく。

 これも外さなかった〜!

 「こうなんじゃないかな?」と推理させては「と思ったでしょ。それはひっかけだもんね〜」とすり抜けられる展開の繰り返しでだんだん自分のボルテージが上がるのがわかる。全然カッコ良くない、むしろ鈍重な人間のように描写されているチタウィック氏が時折キラリと鋭いところをのぞかせることにギャップ萌え。「もっさりしているけど賢い」キャラの探偵役って大好きさ。

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放課後探偵団

 青春ミステリが続く。「若い読者に本格ミステリを」の掛け声で東京創元社が自社デビューの若手作家に依頼した書き下ろし短編集。

 卒業以来15年ぶりの同窓会が行われた。タイムカプセルに託された無署名の“未来への手紙”のなかに、卒業式でのある悪戯の犯行声明が含まれていた。鳩村たち元放送部員は当日の様子を思い返し“犯人”を推理する。(梓崎優氏『スプリング・ハズ・カム』)

 なかでいちばん「上手い」印象を受けたのがこれ。若干くどいと言うか、もうちょっとさらっと短くすることもできるかなとは思ったが、「謎」の設定とその「解明」が本書の狙いである「若い世代のミステリ」ならではのものだし、読後の余韻も心地良い。

 好みだったのは市井豊氏『横槍ワイン』、タックシリーズからドロドロした家族のシガラミを抜いてライトにした感じと言ったら失礼か。それと相沢沙呼氏の『恋のおまじないのチンク・ア・チンク』は『午前零時のサンドリヨン』続編の“先行シングルカット”だそう。不覚にも『午前〜』は未読なのだが、この痛いキャラといい甘々な展開といい、なかなか買いである(←褒めている)。

 逆に個人的に苦手感が出たのが似鳥鶏氏『お届け先には不思議を添えて』。ミステリ小説はそもそも意図的に謎を設定するものに違いないが、とりわけ苦し紛れに見えて「それ謎か?」とテンションが下がってしまった。デビュー作を読んだときの印象とも通ずるものがあるから、自分としては当分はスルーでも良いのかも。

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 『謎解きはディナーのあとで』のヒットで俄然注目された東川篤哉氏の最新連作短編集。これは“鯉ヶ窪高校探偵部シリーズ”なので、この体裁(なんつーの、B6ソフトカバー?)で出たのにはブーイングを送りたい。版元は実業之日本社なので、ジョイノベルスになってから買うという選択もアリかも。

 鯉ヶ窪学園2年、探偵部副部長の霧ヶ峰涼は焦っていた。長年指導教官不在でやってきた探偵部だが、このままでは発展は望めず、従って部室すら望めないというわけで、顧問就任を依頼すべく生物教師・石崎を訪ねる予定だったのにすっかりグラウンドで道草をくってしまったのだ。生物教室のある棟に入った涼は、近くの視聴覚室の怪しい灯に気づく。(『霧ヶ峰涼の屈辱』)

 アレ?  石崎先生ってとっくに顧問じゃなかったっけ?
 してみると、本書と先行作品は時系列的に直近の関係ではないのかも。だからと言って体裁違いへの苛立ちが消えるわけではないのだけれども。

 苦しいオヤジギャグを封じ、より普通のユーモラスな文体で綴られる若い子向けのライトミステリになっている。売れ始めると編集者もその辺り釘を刺すのだろうか。それはともかく、ミステリ的には「日常の謎」系のエピソード群を念の入ったロジックで処理し、いくつかでは意外な多層構造まで用意して唸らせてくれる。なんだか一皮も二皮もむけてしまったみたい。これ、年末のランキングにも入ってくるはずと断言するよ。

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 『〜見習い』シーズンにはどうも馴染めなかったのだけれど、挿話集のほうはいろんな人目線で興味深く、躊躇わずに買ってきた。しかも数ある積読本を差し置いてさくっと読んだりして。

 一応今回自分的にメインに捉えたのは、遠子がいかにして「異性としての心葉」に惹かれていったかの部分を明かす挿話たちである。心葉の作品を評価し、そのまま筆を折らせまいと奮闘する様を中心に描けばどうしても出版社側の打算に似たものを遠子のなかにも見てしまう。より生身の十代の女の子らしい恋心を読めればと思った。

 しかしどちらかと言うとそのあたりは食い足りなさが目立ったと思う。妖精然とした遠子の持ち味ではあるけれども、キレイゴトばっかりだと鼻白むものがあった。本編・挿話通じて心葉の葛藤のほうがリアルに伝わった感じがする。

 で、なにがいちばん印象的だったかと言うと、今回唐突に登場した感のある某登場人物の台詞だ。『“文学少女”と騒がしい恋人たち』で謎の指輪の持ち主として曰くを語るそのひとの心情に共感した。その見方は読者の主流層には意外なものなのではないかと思い、こう言わせたセンスに拍手する。

 あとは心葉の妹・舞花ちゃんの後日談もなかなか良い。本編結びの唐突感を埋めてくれる短編で○。

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バツリスト

 年末調整に入るつもりが、ランキング本を眺めてもそんなに焦る感じにならなかったもので対象外の新刊にも目を向けている。実は対象本ももっと買ったのだがつい気分でこれを先に読んでしまった。 もう読まない かもと思っていた蒼井上鷹氏の出たてほやほや最新刊。まだ誰の評判も聞いたわけでもないのに、たまたま店頭で見たら表紙の雰囲気が綺麗だったからつい衝動買いした。装丁というのも馬鹿にならない。とりわけ今回は帯の赤黒のバランスが絶妙なのにも拍手(外してみたらややサッパリし過ぎ・・・失礼!)。これから惹句は変わるだろうが、なるべくこのテイストを存続希望。

 息子・和宏が自殺に際して残したノートには、苛めた同級生や止められなかった教師、自己啓発セミナーに引きこんだ仲間、パワハラの末退職に追い込んだ上司、不実な恋人らの名前が並び、ひとつひとつバツ印がつけられていた。ついてはやつらを成敗したい・・・・旧友・嶋津の憤りを下貫はいさめ、一度は彼も落ち着いたはずだった。しかしそれから10年後、定年退職もした嶋津はいまこそ息子の復讐に専念すると宣言。嶋津に同情を寄せる丸井らは「協力」を申し出る。

 さて、何気なくこぼれた一言に注目するかたもおられると思うので補足しておくと、蒼井氏の作品を読むのは3作目である。読んだのは最初期の『九杯目には早すぎる』『出られない五人』で、いずれもその時の感想文にあたっていただくとわかる通り不満たらたらであった。その後結構何作も出版されていたようで、いつのまにやらこんな凝ったものを書かれるようになっていたとは全く「おみそれしました」と頭を下げるほかはない。「老体に鞭打って復讐を企てる男に協力する仕置き人集団」とくくってしまうと二番煎じ・三番煎じと軽く見られがちだが、「復讐に至るまでの過去」や「本人と協力者たちそれぞれの抱える事情」の明かし方にしても、単純に時系列を追うにとどめない展開の仕方(記述に三人称の描写と書簡を使い分けることで情報をフェアに隠す)にしても、一言で言って「巧い」のだ。帯に「ミステリー界随一のひねくれ者(?)」とあるが、確かにあちこちに仕掛けを施して「嘘っぽい」という批判がぶつけにくくなる予防線も張っている。蒼井氏の評価を見直す必要性も感じたので、最近発表した作品から遡ってみようかと思っている。

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