ポケットにミステリを

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や行の小説

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 皆さまお久しぶりです。

 図書室がいよいよ酷いことになってきて、なるべく本を買わないように、いまさらながらクリスティの再々再・・・読などしていました。昔はピンとこなかった『スタイルズ〜』とか『パディントン〜』とか、ポワロやマープルが若いひとの恋愛沙汰に向ける温かくも悲しげな視線に共感できる年になったんだなぁと苦笑してしまいます。筋立てはしっかり覚えているのに犯人だけ都合よく記憶から抜け落ちている作品が結構あったりして、これならまだ楽しめるなぁ。

 閑話休題。

 自分に甘いものですからノベルスならまぁ買っていいってことにしていまして、『名被害者一条(仮名)の事件簿』などはくすぐりが世代的にツボって面白いとか、『立花美樹の反逆』は錯誤を見破ったつもりがもうひとネタに足下救われたぜ悔しいぃとか、感想を書くのは面倒がりながらも楽しんでおりました。それでもハードカバーは自分に禁じていたため、本書は久々の「重い本」となります。

 いやぁ。やっぱり良いなぁ、この重さ。

 『厭魅〜』以来の、ひたひたと迫る怖さ。『首無〜』以来のカタルシス。その後の作品は自分的にちょっとばかりアレがソレだったのですが、これは良かった!! 謎を理詰めに解きながらも「これより先はあえて解かない」といったスタンスには良い具合のゆとりが感じられ、読後の余韻が抜群。応援していた作家さんのユーモアミステリが売れるのは嬉しいし、流行のイヤミスも決して嫌いではないのだけれども、久々に☆をつけたい満足度でした。『このミス』も『本ミス』も間違いなくいいとこ行くんじゃないでしょうか。期待。

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誘拐犯の不思議

 私を知る人には、二階堂黎人氏が私にとってあまり好きではない作家さんだという事実もまた旧知のことであろう。ただ「どれも合わない」というレベルの話ではないし、本格にこだわり続ける二階堂氏の作品を避けて通るわけにもいかなくて、年末のランキングを睨んだ時期になると急かされている気分になる。刊行は今年の夏で、今の時期の読了は言ってみれば「年末調整」みたいなもの。

 “百のサークルに所属する男”水乃サトルは、東都六大学のサークルで構成される「大学連合心霊探究会」に所属している縁で立川音楽大学の学園祭の催し物に協力することになった。『心霊写真の真実』と題した討論会にオカルト雑誌編集長・栗原、心霊写真家・上祐とともにパネラーとして招かれたのだ。終演後に上祐はサトルを呼びとめ、3枚の「心霊写真」を手渡した。無残な死体の写った写真を見てサトルの恋人・彩子は色を失う。死体のひとりが彼女を以前営利目的に誘拐した犯人だと言うのだ。秘密裏に処理された事件の謎を解くべくサトルが捜査に乗り出した。

 なぜ二階堂氏を好きになれないかと言うと、ミステリ的な仕掛けに凝れば名作になると言わんばかりの作風からである。某カリスマミステリ作家の代表作に噛みついたときの評論に端的に表れているが、二階堂氏の作品のなかの人物の思考・行動・発言には説得力が伴っていないと思うのだ。現実に即しているかを問題にしているのではない。たとえ人物像そのものが奇矯だとしても、物語のなかで「この人ならこう思いそう」「こう行動しそう」とか、「こういう言葉遣いをしそう」と直感的に納得させられるかどうかがリアリティなのだと思うのだ。二階堂氏にはそれが哀しいかな欠落していると思えてならない。だからこそ氏の作品のなかで良かったと思うものは『人狼城』にしても『カー』にしても初めから舞台が外国だったり時代が隔たっていたりするものばかりなのだ。なんだか2時間サスペンスめいた庶民性のあるこのシリーズであれば、もっと話し手の生活歴がしのばれ表情が浮かぶ台詞回しなり情景描写なりを求めたい。サトル自身は魅力があるだけに惜しまれてならない。

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指に傷のある女

 和モノだなんて予告しておいたのにまたルース・レンデル氏の作品=ウェクスフォード警部もの7作目を読んでしまったわたくし。実は読みかけの和モノもあるにはあるのに、そっちが連作短編集でしかもソフトカバー単行本だったものでつい文庫のコレを先に読み進める格好になってしまったのだ。そっちの本も面白そうなので、近々載せることになる見込み。

 主婦が自宅で絞殺されているとの通報で駆け付けたウェクスフォードたち。平日は実家に身を寄せてロンドンで働き週末に自宅に帰る生活をしている会計士ハットホールは「頑固な母と妻の反目に悩んでおり、この週末は母親を自宅に招いて両者の交流を図る予定だったのに、母とともに戻ってきたら妻が死んでいた」と語った。アリバイは完璧。しかしハットホールの態度に不審をおぼえたウェクスフォードは彼が誰かに妻を殺させたとにらむ。

 ミステリ的には序盤に感じた違和感が結局全ての謎を解き明かすカギになるつくりなのだが、随所に「注目ー!」とでも言うような描写をちりばめつつ事情を複雑化させ、ラストには刻一刻と息詰まる駆け引きをおいて、あたかも2時間サスペンスっぽい女性向きミステリになっている。

 しかし私の注目ポイントはそういうことではなかった。 バーデン警部、お払い箱ではないけれども影薄っ!  

 今回ウェクスフォードは容疑者と目した男からの厳重抗議で署長に捜査の行きすぎを咎められ、捜査から事実上外されてしまう。その間、有給を使って勝手に男が移り住んだロンドンに出張っていったり、お馴染の情報屋モンキー・マシューズの弟ジンジを自腹でスパイに雇ったり、なんだか良識ある上級警察官とは思えないような振る舞いに及んでいるのだが、結果的に単独行動にならざるを得ず、バーデンとの協力関係が描かれないのだ。その分活躍するのが首都警察犯罪捜査部で警視にまで出世している甥ハワード。やることがスマートで知的で、それでいて伯父の難題に嫌な顔をしない礼儀と熱さがあって、ちょっと素敵な男じゃないか。ただ困ったことに、ふたりが協力してあたった事件というのが既に書かれていたように言及されているのだが、著作リストを見ても『偽りと死のバラッド』と本書の間には本シリーズの作品は無いようなのだ。一体どの作品がソレなのか?? 誰か教えて下さい。

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夜の冒険

 エドワード・D・ホック氏は“シリーズキャラクターがお得意なひと”ととられがちながら、ノンシリーズの短編も数多く書かれているのだそうだ。この短編集はそういう中でも皮肉の利いたオチのあるサスペンスといったところだろうか。サム医師の密室ものパズラーのイメージからはかなり離れていて意外だった。中にはわりとありがちな、先の読める作品も多いのだけれども、クールな雰囲気が好きだった。

 お気に入りは『フレミング警部最後の事件』『出口』『二度目のチャンス』あたり。

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扼殺のロンド

 クリスティ女史の短編集を積み上げて読んだりはしていたが、ちょっとやっていることがあってまとまった読書時間を取れずにいる。そんななか久々に読んだのが こともあろうに 小島正樹氏だったのは自分でも不思議だ。『武家屋敷の殺人』で苛々の極致に至って もう読むことはない と思ったものだったが、iizuka師匠の記事でつい買ってしまった(結構あるのだこのパターン)。

 結果的に『武家屋敷』よりはずっと好印象。

 言葉遣いのレトロさが気にならないとは言えないが、年代設定が昭和60年とわざわざ書いてあるから「それは狙いです」と言われればそれまで。仕掛けるため思わせぶりに書かれたプロローグはともかくとして、第1章の冒頭の台詞でもう「うわっ」と思うところを、名探偵の友人である刑事の登場シーン(=“本題”の開始)にあたって現代の話ではないのだと断り書きをするのだから、敵もさる者である。

 問題の人物造形も『武家屋敷』に比べれば(←こだわる)ずっとそれらしい。死体発見の糸口となる アヴェック の様子はこの際置くくらいの優しさは私にもある。この“名探偵”の奇矯さは“木更津悠也”を許す程度の読者なら腹は立たないくらいのものだろう。御手洗潔を目指しつつそこまでの人間的魅力は醸し出せていないにしても、てめえ今すぐいなくなれと罵倒したくなったあの弁護士野郎を思えば(←しつこい)問題ないに等しい。ただ中心人物の刑事は、プジョーへの不自然なこだわりまではともかく、捜査本部と違う方針で捜査をするために休暇を取ってしまうという暴挙に出るのが受け入れ難い。だったらそもそも“探偵”要らなくないか。公務員ができないことをやらせなきゃいけないからの“名探偵”だろうに。この男をわざわざ出しているのは、両親を犯罪被害で喪った過去を持っていて「いつか親の仇をあぶりだすために探偵をやっている」なんていう浪花節だったら笑うぞ。

(以下、ネタばれ気味です。未読の方はお避けくださるのが無難)





















 いちばんリアリティがない登場人物は彰伸医師だろうか。作者にとって都合のいい仕事ばかりさせられている気がしてならない。医者はそんなにオールマイティカードではないと思うのだが。「医療過疎地の老あかひげ」でもあるまいに標榜科がやたら多いし、院長の独断で特別室の改装から管理までさせてみたり、一方で家族構成だって辻褄合わせだ。大体、彼を通して提示される会実に関する情報は明らかにおかしい。意識不明で点滴に繋がれた患者がいるとして、彰伸医師だけが部屋に入れるのであれば清拭が行き届かない患者が綺麗に保たれているはずがない。点滴の部位だって中心静脈でないのは不自然だ。どうみてもまともな患者ではないとなれば、もうちょっと捜査のメスがしっかり入るはずだろう。ついでに言ってしまえば、湯たんぽの栓をしたまま火にかける愚にも等しい無茶な仕掛けを、最低限の物理知識を持つ人間にさせないで欲しい。





 「(あくまで相対評価ながら)好印象」と言ったそばから結局ガンガン文句を言ってしまったけれども、とりあえずこの水準だったら読める。次回作も心なしか楽しみだったりして。

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