ポケットにミステリを

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今月のイチ押し

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2010年1月

 遅きに逸した感はあるけれども、まとめておくと年末に便利なので。

 “読書の波”が来る時期というのが時折あって、ちょうどこの月がそうだった。☆がついていないものの中にもかなり楽しめたものがあったのに、乱発するのも気になって削ったりしたほど。

 殊に『毒を食らわば』(ピーター卿もの)と『幸運な死体』(弁護士マローンもの)は、地道に追いかけてきたシリーズがここにきて大ヒットを飛ばしたといった風で、前者にみる「女の強かさ」と後者での「男の優しさ」に芯から痺れてしまった。ということで両者引き分けでイチ押しに決定。

 安定した満足が見込めるからお気に入りシリーズができるのは嬉しい。今月はモース警視(『ウッドストック行最終バス』『オックスフォード運河の殺人』)という新たなご贔屓シリーズも見出だしてしまったから、本棚を片付けても片付けても溢れて止まらないのが悩みである。

 そしてシリーズと言えば忘れてはならないのが浦賀氏の「復活」。『萩原重工業連続殺人事件』と対をなす『女王暗殺』、初期の題材からのステップアップという点でまだ☆をつけるほど感服してはいないのだけれど、グレちゃってた親戚の子が家に戻ったと聞かされたような心境で変にホッとしている。いったいねこは何匹なのか。ダメだったから記事がないのか(註:当ブログではネタばれになるかもと思い「限定記事」扱い)。そこが心配なウラガー仲間である。

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2009年の読書録

 その年読んだ本を総括する記事も今回で5回めです。毎回統一のとれていない書き方ではあるのですが、挙げる作品数などはほぼ形が決まってきたようで、ブログ生活の長さ(と言っては大袈裟ですが)にこれまた感慨を覚えたり致します。作家名の敬称を略しますことを悪しからずご了承下さい。
【ミステリ国内部門】  
<新刊>
秋期限定栗きんとん事件(米澤穂信)
ここに死体を捨てないで下さい!(東川篤哉)
新参者(東野圭吾)
リッターあたりの致死率は(汀こるもの)
捨猫という名前の猫(樋口有介)

鬼の跫音(道尾秀介)

<旧刊>
KAIKETSU!赤頭巾侍(鯨統一郎)
トーキョー・プリズン(柳広司)
漱石と倫敦ミイラ殺人事件(島田荘司)
天帝のはしたなき果実(古野まほろ)
 例年いわゆる「順位付け」はしていませんが、今回の新刊はなおさらその気になりませんでした。 リスト上位3作品がほぼ横並び という印象ですので、昨年から引き続き記事タイトルを“冴木賞2009”にするのはやめました。順位を決め難いのは短編集である『鬼の跫音』以外は総てシリーズものであるという事実に依ります。出版不況のなかで「固定ファンによる売り上げが見込めるものを出版社が押しやすいからそもそも刊行点数が多い」ということも理由でしょうが、自分自身が本を手に取るとき冒険を避ける傾向にあることを反省すべきかもしれません。
 
 旧刊は上から順です。まさか鯨作品をここまで押すことになろうとは、昨年の今頃は夢にも思いませんでした。生きているといろんなことが起こるものです。なお、天帝シリーズは第1弾であるこの作品以後再びランク入りすることはおそらくないと思われます。シリーズものだから有利と決まったわけでもないという良い例でありましょう。


 
【ミステリ海外部門】
ひとりで歩く女(ヘレン・マクロイ)
ジャンピング・ジェニイ(アントニイ・バークリー)
死体は散歩する(クレイグ・ライス)
緑は危険(クリスチアナ・ブランド)
手斧が首を切りにきた(フレドリック・ブラウン)
 以前は翻訳作品を若干苦手としてきた私ですが、今年は例年になく海外作品に多数チャレンジしました。これには絶版のフレドリック・ブラウン作品への道を開いて下さったもねさんのご好意が大きく影響しております。この場でも改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。ちなみにこれらは(本邦初訳とあっても)基本的に古い作品です。ちょっと頑張って原文で読んでみようかしらと変な欲を出しても買えないようで残念な限りです(←助かったとも言う)。来年もドロシー・L・セイヤーズ“ピーター卿シリーズ”をはじめとして 温故知新 の精神を忘れず参ろうと存じます。



 
【ミステリ外部門】
文学少女と恋する挿話集2(野村美月)
プリンセス・トヨトミ(万城目学)
 この分野でも今年はいつになく新規開拓がありませんでした。そのぶんの時間を翻訳ミステリに割いた格好でしょうか。来年はもしかしたら時代小説を重点領域に指定するかもしれません。



【コミック部門】
栞と紙魚子(諸星大二郎)
May探偵プリコロ(魔夜峰夫)

機動戦士ぶよガンダム / おれとねこにゃん(唐沢なをき)
 『栞〜』は☆ふたつ評価に一部読者が動揺したと伝えられる作品。なるほど月野さんがお薦めになるだけのことはある、と腹を抱えて笑わせていただきました。お返しに私が薦めた『プリコロ』は、“脱力系結果オーライ探偵”というカテゴリーで、ジャック・リッチーのターンバックルものに通じる秀作と思います。
 ミステリ的な要素を全く排しますが挙げておきたいのがふたつの唐沢なをき作品。『KAIKETSU!赤頭巾侍』がミステリ旧刊1位になったのだって、もしかすると 唐沢氏の表紙のせい かもしれないですねえ。




 以上のように、2009年も楽しい作品にたくさん出会えました。これもご紹介・ご指導下さる皆さまのおかげと感謝申し上げております。来年もよろしくお付き合いのほど、お願い申し上げます。

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2009年11月

 今月は最初の『ジャンピング・ジェニイ』(アントニイ・バークリー氏)があまりにも面白かったので、結局それを超える興奮には出会えませんでした。あまり新刊本と相性が良くないこのごろ、ついつい古典に手が伸びてしまいます。

 とは言うもののそろそろ年末、ランキングの季節。読みこぼしている今年の目玉作品の入手を図っているところです。実りある最終月にしたいものです。



 そうそう。『のだめカンタービレ』完結致しましたね。個人的には、あれじゃのだめは堂々めぐりだよなぁと同情を禁じ得ません。いいのかよあれで。

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2009年10月

 今月は過去に例を見ない☆の乱発だったような気がします。しかし並べてみればその中でも順位が現れてくるのが不思議。

 『漱石と倫敦ミイラ殺人事件』(島田荘司氏)は言わば安全牌、いまさらこれを「面白かった」と言っても何の意外性もないでしょう。「このひとはこういうのが好きなんだ」と志向の深いところを突くのにはやはり 『ここに死体を捨てないでください!』 (東川篤哉氏)をイチ押しと称するのが適切と判断します。よって『漱石〜』が次点。

 『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』(倉阪鬼一郎氏)はしら菊さんも絶賛の労作。だから何だ、と言われることを恐れない倉阪氏の狂気じみたバカミス愛に感動して下さい。『無貌伝』(望月守宮氏)はもしかしたらビギナーズラックかもという懸念もあるものの、期待値をボーナス点に加算。『死体は散歩する』(クレイグ・ライス氏)は弁護士マローンもののなかでも出色だと思うので、絶版なのが非常に残念です。

 最近ショックだったことは、絶版だった樋口有介氏の『11月、そして12月』をノベルスで入手したのに、「11月になったら読もうっと♪」などと乙に構えていたら文庫が刊行されてしまったこと(涙)。これで読みますけどね。結構このかた、文庫おちの時に手直しされたりするんですよね。「なるなら言ってよ」という作品の文庫化が続くこの頃でした。

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2009年9月

 秋が深まって参りました。いまひとつ胃の調子が良くないもので、専ら“読書の秋”です。出版業界も賞レースを意識したような新刊で攻めてくるわ、念願の絶版本が復刊されるわ、うちの本棚が持つのだろうか?と不安に思うこの頃です。

 そんな9月は仲間うちで“課題図書”的扱いをされる人気シリーズの新刊が刊行されました。私としては、今回は断然 『新参者』 (東野圭吾氏)に軍配を上げたいと思います。加賀さんのほうがタックより付き合いが長いからというわけではなくて、“シリーズ”を意識しなくても構成の妙に素直に感心できるつくり、「偶然」を一刑事の勤勉さの賜物と納得させられるだけの人物の書き込みなど様々な点で上を行っていると言わざるを得ません。結果、本書が今月のイチ押しです。

 次点は海外名作古典の 『ひとりで歩く女」 (クリスチアナ・ブランド氏)。ここしばらくハマっていた海外女流作家作品のなかではこれが最も好みでした。まだしばらくマクロイ、ライス、マゴーン各氏の作品が積んであるのでおいおい読んでいくつもりです。

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