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さて、今日は僕が体験した結構怖い話でも書こうかな。
これは、僕が以前、田舎のバーで働いていた時のことである。
スナック街でもなんでもない、「こんな所にバーがあったのか!?」というような場所に、ぽつんと、そこはあった。
ドアを開けると表は駐車場と国道。その向かいは山である。店内はオーナーのこだわりでそれなりに豪華なのだが、一歩外に出ると瞬く間に雰囲気が消え去る感じだ(笑)
その日も僕はいつものように出勤し、忙しくなる前ののんびりした時間を仲間との会話で潰していた。
客がいなければ、いつもこんなふうに店員同士でうだうだ話しながらタバコを吸っているのだが、こんな時は有線のジャズが特によく聞こえる。
その音楽の間に突然耳をつんざくような高音が入ったのである。
!!
車の急ブレーキ音か!女の悲鳴か!?
もしかしたら外で何かあったのかもしれない。カウンターの1番端にいた僕は反射的に立ち上がりドアへと走った。事故を起こした車を見るのは面白い。他人事だから珍しい光景が楽しいのである。女の声ならば田舎道で何かあったのかもしれない。ドアを開ける前の、一瞬の間に僕はこんな事を考えた。
しかし、予想に反して外には何も無い。台数こそ少ないが車は順調に走っていて、人影も無かった。
・・・・?
何だったのかと不思議に思いながら店内に戻ると、みんなのほうが不思議そうな顔をして僕を見ているではないか。
「どうしたの?急に飛び出して」
「びっくりしたあ・・・何だよ?」
なあにいい〜!?びっくりしたのはこっちだ。
「って、今の音聞こえなかった!?すっごい音か・・・声みたいなの」
みんな「ううん」と首を横に振る。あれほどの音量で飛び上がるほど驚いたというのに、聞こえたのは僕だけなのか?
「気持悪いこと言うなよ」「何、何?どんな音?」とはやし立てられ、僕は返答に困った。仲間の1人が滅茶苦茶怖がりなのだ。今ですら「又そうゆう話なのかい?・・・」と言いたげに顔を歪ませているというのに、これ以上言うと彼は厨房に隠れて出てこなくなるかもしれない(笑)
仕方なく僕が
「いやあ・・・気のせいかも・・・」
と言った。その時。
来た!来た!!来た!!!
毎度恒例の嫌な感じ。本能的に体が逃げようとする、虫が這うような恐怖。
僕は又飛び上がるように席を立った。みんなには、おかしな光景だったと思う。挙動不審な僕である。
すると、突然、右足首に痛みが走った。締め付けられるような・・・誰かがもの凄い力でつかんでいるような・・・
立ち上がったはいいが、僕は右足を踏み出すことが出来ない。
ヤバイ!どうしよう!そう思った時、ふ・・・とその痛みが去った。「逃げなければ」という緊張感も消えた。
「おいおい、何なんだよ!?どうした?」
声をかけてくる仲間の視線が、手でおさえている足首に移る。
「足痛いのか?」
僕はあまりの出来事に、隠すことを忘れた。みんな怖がるだろうが、こっちだって怖い。
「・・・何かに、つかまれたみたい」
僕と横にいた奴が、恐る恐るズボンの裾を上げた・・・・
「ぎゃあ〜!!マジかよ!」
「う、うっそ!ヤバイよ!こんなの映画じゃんかっ!」
「嫌、いや、イヤダっ!!やめてくれ!うわあああ〜」
「ああ、やっぱり・・・」
3番めは怖がりな後輩の悲鳴、最後は僕のつぶやきである。
足首には、僕の想像通り、手形があった。
全部べったりとではなく、力がこもったであろう指先部分が1番赤くなっていて、それ以外は薄い。先端には食い込んだ爪の跡まであるのだ。リアルな「つかまれた跡」である。
本気で、何かに魅入られたのかと思ったが、それ以降は何も起こらなかった。ただ、爪の跡がその日風呂に入った時に沁みたくらいだ。
何日かは早く出勤して来る人が「1人で店内にいるのが怖い」と言っていたが、何も異常はなく、あれは何だったんだ?と僕を含めてみんなが不思議がった。
通りすがりの幽霊がちょっと立ち寄ってアピールしてっただけなんだろうか?
僕が聞いた音は、その人の声だったのだろうか?
何年か前、こんなことがあったのだ・・・・・。
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