冴波樹の雨天決行〜だって雨に打たれたい日もあるじゃない?〜

あっと言う間に、もう九月・・・早い!早すぎるっ!!!笑

怪談部屋!!

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虫の知らせ

「虫の知らせ」と言うのがある。誰でも1度はそんな経験があるらしいが、僕は前回書いたように多少、霊感?めいたものがあるにも関わらず、「虫の知らせ」は1度も無い。
過去、特にあってほしかったのは、やはり、ばあちゃんが亡くなった時だ。
オヤジは病院で死期が近いと分かってから亡くなったからまだいいものの、ばあちゃんは突然だったからもしも「そうゆうもの」を感じたら、もっと早くに駆けつけられたんじゃないか?などと、どうにもならない事を時々思うのである。
そんな、家族の死を察知したおばさんが、近くにいる。
彼女は僕がよく行くスナックのママで、去年旦那さんを亡くしたのだが、その時はっきりと感じたのだと言う。
旦那さんはしばらく前からガンで入院しており、ママは仕事と家事と見舞いで大忙しの日々だった。
ただ、数日前から容態は安定しており、その日は病院に行かなくても大丈夫だろうと、溜まっていた洗濯物を片付けていたそうだ。
ママは、ビーズアクセサリーを作るのが趣味で、右手にはいつものように自作のブレスレットを付けていた。それは、旦那が元気な頃、出張に行った先で買って来てくれた、七宝焼きのビーズを使ったもので、ママのお気に入りだった。
洗濯が終わり、掃除機をかけ、子供たちの夕ご飯の支度をする。と、途中でなんとも言えない焦りに似た感覚がやって来たのだ。いてもたってもいられない。
胸がドキドキして、不安で、切なかった。
ママもそれまで「虫の知らせ」を体験したことが無く、初めは何かと思ったそうだが、すぐに旦那に何かあったのではないか?と感じたそうだ。
思い過ごしならばいい・・・それでも病院に向かおうと服を着替えに2階へ上がる途中、ただ歩いている時にパラっと大きな音をたててビーズが床に散らばった。
中の紐が切れ、ビーズは散り々々に階段の段差を転がり落ちて行く。
自分で作ると、よく紐が切れるものだから、今回は特別頑丈に作っていたものだったのに・・・
紐も結び目も2重にしたおかげで、これまでずっと付けたまま家事をしても平気だったはずのブレスレットが突然切れた・・・
その時、ママは旦那が自分の右手首をすうっと撫でたように感じたのだと言う。
「これは!」と確信した。
もしかしたら、今、亡くなったのかもしれない。今にも、病院から電話がかかってくるかもしれない。
しかし、もちろんそんなものは待っていられず、大急ぎで病院に向かった。
その頃、病院では容態が急変した旦那に医師達は大慌てで救命処置に入り、ママに「もう、もたないでしょう」と電話があったのは、ママが病院の近くまで来た時の事だった。
やっぱり、そうなのか。でも、まだ生きていてくれた。
ママは泣きながら病室に入り、もう意識の無い旦那の傍に駆けつけた。
そうして、旦那はママの見ている前で息を引き取った。
病院側は、「電話をとってから家を出たのでは間に合わなかったでしょう。よく、偶然こちらに向かっておられましたね」と言ったそうだが、それを痛感したのはママ本人である。
話を聞くと、旦那の意識が無くなった時刻は、ちょうど「虫の知らせ」を感じた時間だった。
あの時、きっと本当にあの人は私の手を撫でたんだわ・・・別れの挨拶に来たのよ・・・
ママは涙目で僕に話してくれた。

これは凄い、と思った。こうして大切な人の死に目にあえるなんて。
不幸な出来事ではあるが、その中の大きな救いではないか。ママは「私、第6感みたいなものは何も無いのに、その時だけははっきり分かった。不思議ねえ」と言う。
お互いの相性の良さなのか、絆のなせる技なのか、とにかくこうゆう知らせならば、僕にもあってほしいものだ。
おかしいなあ・・・ばあちゃんと僕の絆は甘かったか・・・???

「はっきりと何かが見えるわけではないが、なんだか気持悪くて入れない、もしくは、通れない」
そんな経験はないだろうか?
霊感が有る、無しに関わらず、たぶん、ほとんどの人が1度は感じる「違和感」だろうと僕は思うのだがそれが、自分の家だったらどうします?
僕は10代の頃、バンド活動で知り合った香川県の友人宅によく泊まりで遊びに行っていたのだが、その友人の家のキッチンが、そんな場所だったのだ。
 
友人のニックネームは「紅(べに)くん」と言った。ビジュアルバンドだったからなあ・・・ま、そんなことはいい。とにかくある日彼から電話があり、「連休があるなら泊まりに来いよ」と、誘われたのである。ちょうど、彼らとの合同ライブを控えていて打ち合わせにはちょうどいいな、と僕は結局香川でのライブが終わるまで泊まらせてもらうことにした。
てっきり1人暮らしだと思っていた彼の家は、なんとも立派な一戸建てで、両親と祖母が一緒に暮らしていたのだが、「紅」は僕の話をみんなにしてくれていたようで、すぐに家族と仲良くなった。
そうして僕は居座ったわけだが、初めて家に足を踏み入れた時、なんとも嫌な感じを覚えたのである。
彼の家は玄関を入って、すぐに階段があり、その右がリビング、左が彼の「音楽室」(笑)階段の裏、つまり中央にキッチンがあった。
僕はたまにおかしなものを見るが、毎回というわけではない。その時も「うわ・・・ヤバイ」という感覚だけがあった。
特に、キッチンの空気の重さと背筋が寒くなる奇妙さは、心霊スポット並みに酷かった。
幸い、彼の家はほとんどが外食で、キッチンを使うことは稀。ばあちゃんまでがうきうきと「パスタ食べに行こう!」なんて言うのだから、ずいぶんと贅沢な家だなと思ったが、キッチンに入らなくても済むのは僕にとって救いだった(笑)
しかし、風呂に入る時だけは例外である。風呂はキッチンの横にくっついていて、どうしてもそこを横切らないと入れない。
毎日、僕は息を止め、壁に張り付くようにして風呂までの最短距離を走りぬけたもんだ。
ヘドロみたいな塊がそこに居座っているような感じの空間だった。
夜は2階で寝るのだが、下で何かが走り回る音がする。ねずみなんかじゃないもっと大きなものの足音だ。僕の家もたまに何かがいる日があるし、害が無ければ構わないと別に怖がりもしなかったのだが、何日目かの夜、ドンドンと下から床を叩くような音と振動に起こされた。
キイイイーと金属音のようなものまで聞こえてきて、僕はそれから一睡もできず、とうとう翌日「紅」に
「おまえんちの台所おかしい!」と言ってしまったのだ。
すいません、お宅に泊まらせてもらっておきながら、文句を言うようですが、よく平気でここに住んでますね・・・
そんなことを言った気がする。
すると彼とおばさんは「やっぱり!?」と言うではないか。
話を聞くと、それまでに何人もの人にそう言われたようだった。盆や正月にやって来る親戚達の中にも「キッチンにだけは入れない」と料理を運ぶのすら手伝わない人がいるとか、おばさんの友人を招いた時も「キッチンにいると頭痛がするのよ」と言われたとか。
中には「そこに何人も人がいる。ちゃんと拝んでもらいなさい」と言った人までいるらしかった。
僕が初めから感じていた感覚と、寝ている時に聞こえる騒々しい音についても話すと、2人共まさかそこまでだったとは・・・!!と目を丸くした。
こうも何人もに言われているというのに、住んでいる自分達は誰一人何も感じない。と言うのだ。
気配も分からなければ音も聞こえない。
なるほど・・・平気なはずだ。
昨夜だって、僕以外はすやすや眠っていたのだろう。
「おまえんち、家族以外にも結構住んでるんだな。大所帯?」
僕が言うと「紅」もおばさんもケラケラと笑って
「そうかもねえ、賑やかでいいじゃないの」
「やっぱ、マジだったのか。ま、いいや分からないし」
なんて言っている。
こうゆう家にいる幽霊達はさぞやりがいが無いんだろうな、と思ってしまうくらいだった。
こんな家もあるのだ。結局僕はその後もライブ終了までそこにお世話になったし、それ以降も何度か泊まりに行ったが、相変わらずキッチンの空気は変わらず、たまに騒々しい夜があった。
「そんなもの、いてもいなくても一緒よ!怖いのは生きた人間のほうよ」
と言った、女性警察官をしているおばさんの言葉が今でも忘れられない。

祭り魂

こんにちは。僕の住んでいる町は、昨日でほとんどの地区の祭りが終わった。
連日、笛や太鼓を練習する音が聞こえていたのだが、それも昨日で終わり。そう。秋は祭りのシーズンである。
この前、ちょうど、知り合いのおじさん相手に「この辺りの祭りは熱いね〜」などと言っていたら、その人からおもしろい話を聞いた。
僕の住んでいる地区の祭りは子供会が中心の大人しい祭りだが、市内には、毎年死人が出るほどの過激な祭りもある。その彰男さんと言うおじさんはその地区に若い頃に引っ越して来て以来、ずっとそこで暮らしている人だった。
「今は、ああ、今年もか・・・と、ケガ人や亡くなる人を見ても昔ほどは驚かなくなったよ。でもなあ、最初の年は、オレはなんて場所に越してきたのかと、背筋が寒くなった。同時に祭りに懸ける情熱と言うか、執念というか・・・それは凄い。死んでも祭りやってんだから」
そう言った彰男さんに、僕は、頷いた。「死んでも祭りをやっている」と言うのは、上手い例えだと、そのくらいにしか受け取っていなかったからだ。
それが、突然、彰男さんが真剣な顔になり、僕にずい、と顔を寄せて
「おい、信じてないだろ?本当に、死んでも祭りに出てる奴がいたんだよ!昔」
と言うではないか。
彼が、その地区に越してきて初めての祭りの日に、不運にも1人、同じ地区の人が亡くなった。その人を翌年の祭りで見た。と言うのである。
皆、酒を煽り、ふんどしを絞めて戦にでも行くように神輿に走る。実際、そこはすぐに、命の保障の無い戦場と化すのだが・・・
もともと祭り好きで、二つ返事で参加したものの(しかし、その地区で祭りに出なければ村八分になるという・・・)いざ始まると、初めての彼は、ただただ圧倒されるばかり。
一応外見は皆と同じ衣装に身を包んではいるが、いくら酔いにまかせても、勢い良く神輿を担ぐというわけにはいかなかったのだそうだ。
そうして、彼の目の前で、仲間が1人押しつぶされた。
自分がもう少し前にいたら、そうなっていたのは自分自身だった。
ショックを抱えたまま、祭りは終わり、あっと言う間に一年が過ぎた。再び祭りの季節である。
翌年は1番危険なポジションを担当する地区が変わり、彼はほっと胸を撫で下ろしたと言う。今年は担当の神輿の種類が違う。危険は無い。
そうして、皆と一緒に大騒ぎをしていると、その年の「戦士」達が出陣するのが見えた。去年の自分達のように鬼気迫る気迫で神輿を担ぐ。
その中の1人に、彼の目は釘付けになった。
「彼」だ。去年、自分の目の前で亡くなった大柄なオヤジさんが、いる!!
見間違いかと目をこらしたが、間違いなく、あの人である。
彰男さんは隣にいた近所の友人の肩をバンバン叩き、「あの人が見えるか!?」と聞いたそうだ。
友人はしばらく怪訝そうに探していたが、彼も凍りついた。
「間違いない・・・オヤッさんだ・・・」
2人は慌てて数人に聞いたが、見える人と見えない人がいたようだ。
共に担いでいる人達には見えていないのか、気づいていないのか、気づいていても「よく来た!同士よ!」といったふうなのか、非日常の半トランス状態である彼らならば、3つ目も考えられる。
そのオヤッさんは、去年と同じ衣装にふんどし姿で、意気揚々と神輿を担いでいる。
祭りで死者が出るなど、バカなことだと考えていた彰男さんも、その時は不思議な感覚になったと言う。
不運ではあったが、幽霊になってもこうして心底楽しげに祭りに出てくるオヤッさんを見ていると、この土地に流れる伝統と、代々伝えられる精神も垣間見た気がしたのだ、と。
結局、その年は死者は出なかったが、重傷が数名。半身不随になった人が1人・・・という事だ。

「今思えば、不思議なんだよなあ・・・あれだけの人の間に、あのオヤッさんが入る隙間なんか無いはずだ。そりゃもうぎゅうぎゅう詰めで担ぐんだから。なのに、あの場にいた何人かはハッキリ見たんだ。本当はオヤッさんはあの場所にはいなくて、残った思念みたいなものが、アレを見せたのかもしれないなあ・・・」
自分の親を思うような眼差しで、彰男さんは言った。
オヤッさんの姿を見たのは、その年だけだったと言うから、最後までやり終えた彼は成仏したのかもしれない。昨年、祭り半ばで亡くなった無念を晴らしに出てきたのではないだろうか?
この話を聞いた何日か後、今年もその祭りは行われたが、彰男さんは健在である。
今年の結末はどうなったのか、又会う機会があれば聞いてみたい。

ネコが呼ぶ声

これは、僕の母親が少し前に体験した話である。
ある日、僕が実家に戻りくつろいでいると、母親がふと神妙な顔をして
「ネコがいたのよ。子猫が」
と言う。そりゃいるだろ。家にはイヌとネコがいるし、外にも当然野ネコがいるじゃないか。
しかし、母親はたまに家の中で見えない何かを感じることがあり、もう、そんな話には慣れている。僕はすぐにこれも「そうゆうネコ」なんだな・・・と察した。
「何?又1人か1匹増えたの?」
と聞くと、どうやら室内ではないようだった。
「イヌの散歩コースにいたの。姿は見えないけど鳴き声だけがしたのよ」
今度は、それこそ本当に草むらに隠れていたりする生身のネコだったんじゃないか?と思ったのだが(笑)詳しく聞くと、確かに変な話だったのである。

時期は今年の6月の終わりの頃だったか・・・確かにネコの出産シーズンの後で、野ネコ達も何匹もの子供を抱えて奮闘している時である。いつ鳴き声が聞こえてもおかしくない。
母親は、イヌの散歩の途中、いつも通る田んぼのあぜ道を歩いていたそうだ。
すると、1回だけ細く、長く「みゃあ〜」と聞こえた。
母はもの凄い動物好きで、野ネコに出会っても手をだして「おいでおいで」と言ってみたり、しばらく観察しているような人だから、その日も声にはすぐに反応したらしい。
声からするとまだほんの小さなネコのようだった。どこにいるのかと声のしたほうを探したが、田んぼにはもう水が入っているので、いるとしたらあぜ道しかない。
草が茂り始めていたがかき分ければすぐに見つけられそうなのだ。けれど、その日は発見出来なかったと言う。
翌日、そんな些細なことはすっかり忘れ、又同じ道を通った。すると、又「みゃああ〜」と聞こえる。
気がついて立ち止まったのは、昨日と全く同じ場所であった。心なしか昨日よりも声が近くなっているような気がする。
まだいるのか?子ネコは親がいない間、たいてい兄弟姉妹達と固まって過ごす。1匹の声しかしないのははぐれてしまったのだろうか?親はどうしているのか?はぐれてしまったならいずれ死んでしまう。弱々しい声に放っておけなくなった母は、なんとか見つけて連れて帰ろうと、又探し回ったと言う。イヌもネコの気配を感じているのか声のした方にくんくんと鼻をつけながら進むが、いない。
そして次の日も、又、次の日も、その声が聞こえたのである。大雨が降った翌日も必ず聞こえる。
毎日1回だけ、か細く鳴くのだ。初めは「ああ、よかった。まだ生きているな」と聞くたびに安心していた母だったが、やがて「おかしい」と気づくようになった。
声が日々近くなっているのである。初めは「あの辺り」といった距離だったが、だんだんと「この辺り」になり、ついに「足元の辺り」になった。
これは、もう死んでいる子ネコなのではないか?母はそう思った。
イヌを田んぼの近くの電柱につなぎ、母は今度こそ!とあぜ道を丹念に探した。今まではあまり騒がしくすると逃げてしまうだろうと、控えめに探っていたのだが、母には「もう死んでいるのだから逃げはしない」という確信のようなものがあったと言う。
足元だからその周辺を草という草をかき分けて、今まで見なかった短い草の下の地面まで探した。
すると、いたのである。
もう、骨になった子ネコが。
その小ささは生まれてそう経っていない子ネコのようだった。むし暑い時期に地面の上であれば、腐敗も分解も早いことだろう。声が聞こえはじめて約2週間。その少し前にここで死んだのだろう。
見つけてほしかったのか。その時、動物好きな母が通りかかり、子ネコは母を呼んだのだろうか?
「淋しかったね・・・怖かったねえ・・・」
そう言って、母は手をあわせた。思わず涙がこぼれて、たまらない気持ちになったと言う。
南無阿弥陀仏と唱えながら、上に丁寧に土と草をかけ、母は子ネコを隠してやった。成仏しなさいよ・・・と。
 
こんなことがあったのよ。と母は言った。
思えば、人知れず終わっていく命がどれほどあるか。人間やそのペット達はきちんと弔われるが、その以外の膨大な命は誰にも知られず終わっているのだなあ。そんな事を考えずにはいられない事件だった。

私、修行してきます

最近は確実に「見た」話をお届けしているが、考えれば、世の中の不思議な現象を書くのがこのブログである。なにも、くっきり見ちゃった話ばかりでなくても良いじゃないか!と僕自身が思い出したので(笑)今回は不思議な友人の話をしよう。あ、正確には友人だった、のだ。
携帯も番号を変えたのか、繋がらなくなり住所も知らないので今は音信不通である。
出会ったのは数年前、僕が働いていたバイト先に、新しく入ってきた高知出身の子だった。
初め、僕は妙な違和感を感じた。
「・・・だよな!」と話を振っても「・・・うん」としか言わないし、笑うこともあるのだが笑った後にはすぐに真顔に戻る。
周りと距離をとっているのか、それが彼女にとっての自然なのか分からなかったが、今まで僕の周りにはいないタイプの子だった。
初めは、そう仲良くなかったが、1年ほど一緒に働くうちにやがて、僕らはよく喋るようになった。彼女から色んな相談を受けるようになったし、趣味の話などもするようになった。
そんな時、「仕事を辞めて、実家に帰らなければいけないみたい」と打ち明けられたのである。
そんなのは良くあること。「親の調子でも悪いの?」と、僕が聞くと、彼女は思いつめた表情で、重大な何かを切り出すように、しばらくの沈黙のあと言ったのだ。
「信じてもらえないかもしれないけど、私の家は特別で、私はそれが嫌で出てきたの。でも、自分にもその兆候が出てきたから、帰って修行しないと・・・」と。
何だ?修行?特別って神社か寺の娘なのか?まだ肝心な所を濁している彼女の言葉に、僕は今の言葉で考えられる限りの想像をしてみた。が、「兆候」とは何だろう?
「何?それって悪い兆候?修行しないとダメなヤツ?」
すると、彼女は、ぽつりと
「どこか遠くにおばあちゃんか、おじいちゃんがいるでしょ?1人だけ」
と、僕の目を見て言った。確かにいる。今は亡くなっているが、当時は、広島に子供の頃僕を育ててくれたおばあちゃんがいたのである。
「うん。いる。なんで分かるの?」
彼女は、そんなことを言う自分が嫌で仕方ないような顔をして下を向いた。
「不思議なのよ。誰かに強く関心を持ったら、その人の後ろの声が聞こえたり、漠然とした風景が見えたりする。いっきーの場合は、感覚だけなんだけど、すごく大事で、可愛くて、心配してる人の気持ちが後ろにあるの。若い人じゃないなあ・・・って思ったから、おばあちゃんかおじいちゃんかな、って」
彼女の家が「特別」なのはこのせいだった。
聞こえたり見えたりするのは、向かい合った相手の気持ちではなく、その人を取り囲む者の意思である。僕のように、まだ生きている人の想いだったり、時には亡くなった人のだったりするらしい。
「感じるだけならまだいい。最近はそれがすごく強くなって、気がついたら感じたままに口に出してしまうの。この前も掛け持ちしてるもう1つの職場のおじさんに突然『雷が口から入るよ!』って言ってしまった・・・おじさんはびっくりして、私をガクガク揺すって『それは死んだオヤジが子供の頃にオレによく言ってた言葉だ!なんで分かるんだ!』って・・・最後に泣いてた。周りの人は白い目で私を見るし・・・。もう抑えられなくなってる。帰っておばさんの所に行かないと・・・」
そう言って、彼女のほうが泣きそうな顔をした。そのおじさんは、子供の頃ポカンと口を開ける癖があり、父親はよく、そう言って注意したと言うことだった。
そんな言葉まで聞こえるのか・・・と僕は驚いた。そんなことを突然言うなんて、確かに変人扱いされるのは当然だ・・・
どうやら血筋らしく、なぜか女だけに代々この力が現れるのだと言う。彼女の母親、祖母、その又母親も、皆この力を受け継いで来たらしい。婿は代々養子にもらい、その血を引く女性が家を継ぐ。
この力は「人助けに使いなさい」と言うのが祖の教えらしく、彼女の身内の女性達は皆、お金を取らずに訪れる人を視ているのだと言う。地元では有名な家系なのだとか。
女の子はたいていは小さい頃から、その兆候が出る。そうすると現在1番強い力を持つ彼女のおばさんの家に通い、そのコントロールの仕方を学ぶのだそうだ。
彼女の場合、その家では「はみ出し者」で、高校生になってもその力は発露しなかった。みんなこの子には受け継がれなかったんだろうと、何も教えてこなかったらしい。
それが、家を出て、20歳になった頃突然やってきたと言うのだ。初めは気のせいかとも思ったが、感じる声や感覚は次第に明確なものになっていった。
けれど、誰彼構わずと言うわけでもないようだった。彼女自身が相手に関心を持たなければ、その「感じ」はやってこない。
僕は彼女のどこかよそよそしい態度の原因が分かった。
僕自身、何度か他人の感覚(僕の場合は生きている人ではなかったが)が無理やり自分に入って来たことがある。自分は悲しくもないのにどうしようもなく涙が出て、僕の意思ではない言葉を話す。半分は自分の意識で半分が他人のものという奇妙な感覚は、自分の意識をしっかり持っていないと100%占領されてしまうそうで怖かった。それはそれは酷く疲れて、その後は爆睡したのだが、そんなのがしょっちゅうではたまらないだろう。
「最近は精神的に疲れてご飯も喉を通らない」と言う彼女の言葉に、なんとなく僕は納得した。
「バカみたいな話だと思う?」
やはりとんでもないことを言ったかと、心配そうな彼女に僕は「信じるよ」と言った。
誰にも言わずに自分1人で抱えていることが耐えられなかった。と彼女も言った。

それから1ヵ月ほどして、彼女はおばさんに「制御法」を習うため高知に帰っていった。
マニメかドラマのようだが、本当にそんな家系があるのだと驚いた。
僕だったらそうゆう特殊な血筋もいいなあと(対処法教えてもらえるなら、の話ね)思うのだが、本人達は苦にしかならないようだ。
しかし、女だけに発露するということは、その家に入った「ますおさん」は摩訶不思議な世界に飛び込むことになるわけだ。
食卓での女性達の「今日は若い女の人を視たけど、亡くなったお母さんが立派に見守っていたよ」「ああ、それなら私も、昨日看護婦さんらしき人に会った。頼るみたいにして大勢ついてたから、たぶん看護婦か介護師か・・・そんな仕事の人よ」なんて会話の中で(本当にこんな会話らしい。それが嫌で出てきたくらいだから)入り婿の旦那さんや男の子達はもくもくとご飯を食べているんだろうか?
想像すると、なんだか面白い・・・

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