冴波樹の雨天決行〜だって雨に打たれたい日もあるじゃない?〜

あっと言う間に、もう九月・・・早い!早すぎるっ!!!笑

怪談部屋!!

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 前のページ | 次のページ ]

お婆さんの微笑み

看護師や医師ほど人の死に近い職業は無いだろう。
葬儀屋だって近いじゃないかと言われそうだが、看取ることは無い。
友人に看護師も葬儀屋もいるが、不思議な体験の数は看護師のほうが断然多いと言うから、抜けた魂か、エネルギーか、思念か、とにかくそうゆうモノは亡くなったその場に残ることが多いのだろう。
これは、看護師をしている友人ミッキーから聞いた話である。

ミッキーは看護師8年目になるせいで、幽霊や不思議な現象をイヤと言うほど体験している。中でも1番印象に残っているのは?と聞くと、やっぱり新人の時、初めて見た幽霊かなあ・・・と言うのである。
それも初めての夜勤の日に出会ってしまったようだ。
その夜は先輩看護師と2人で院内の見回りをしていた。大きな総合病院の夜だ。
昼間と違って静まりかえった廊下を慣れた先輩はさっさと歩いて行く。初めてのミッキーも遅れないように怖がる自分に渇を入れて歩いたのだそうだ。
途中、トイレに行く途中の自力で歩ける患者に何人か出会ったが、更にその奥の角を曲がれば末期の癌病棟に行くことになる。
痛みで夜も眠れない人の声が、微かに院内に響いている。
そうして恐々角を曲がった時、その奥から、1人のお婆さんらしき人が歩いてくるのが見えた。
アレ?と思ったそうだ。この病棟にはあんなに元気に歩けるような人はいないはずなのに・・・。
それでも、もしかしたら、もう危ないとゆう人の家族が病室に来ているのかもしれない。
そうこう考えているうちに、どんどんお婆さんとの距離が縮まり、服装や表情まで見えるようになった。
ニコニコと微笑みながらやってくるお婆さんは、白いパジャマ姿だった。
・・・とゆうことは、患者さんだ・・・
すれ違いざまに、そのお婆さんは深くお辞儀をし顔を上げると又微笑んだのだと言う。
あまりに自然で感じの良いその態度に、ミッキーも頭を下げ微笑み返した。が、先輩はスタスタと歩き続ける。
「あの、待ってください・・・」
「振り向いちゃダメよ」
「え・・・・?」
先輩は表情も変えずにこう言った。
「あの人、夕方に亡くなった人だから」
「!!!!」
声も出なかったらしい。今まで霊感の欠片も無く、全く見たことが無かったミッキーは自分の目が信じられなかった。それも、生きている人と変わらずあんなにハッキリと見てしまうなんて。
それに、今も後ろを歩いているのだろうか?振り返ればいるんだろうか?幽霊なら、消えているのかもしれない。確かめたかったが、先輩に振り向くなと言われるのだから見ないほうがいいものなんだろう。
それからの巡回は、怖くて怖くて仕方なかったらしい。廊下を歩く人の全てが、本当はもう亡くなっている人なのではないかと考えずにはいられなかったと言う。

今では、もう8年になるミッキーは、患者さんの顔も、カルテも把握していて、夜に出会う人がどちらの人間なのか迷うことは無いと言う。
それに慣れてくると、雰囲気で分かるし、と言って笑う。かなりの数の幽霊に出くわすようだ。
初めは怖かった夜勤も、慣れてくるものらしい。
その時の先輩は、初めての夜勤であんなものに出会って、怖がって辞めてしまうのではないかと心配していたようだが、逆にそれがミッキーの原動力になったようだ。
ミッキーは語る。
「あのお婆さんは微笑んでくれた。今までありがとうってお辞儀してくれたんだと思う。患者さんには助からない人もいるけど、幽霊になっても感謝してもらえるような看護がしたい。あの出会いは看護師としての私の原点」と。

                        END

鏡の部屋

今回は幽霊ではないが、不思議な話があるのでそれを紹介しよう。
たまには自分の体験談も書かなくては・・・と、今回は僕自身が泊まったホテルでの話だ。
 
何年か前、東京へ行った時に利用したホテルは、外から見れば、どこにでもある何のヘンテツもないビジネスホテルだった。
ドアを開けるとワンルーム形式の部屋があり、ベッド、前に鏡のついたドレッサー兼テーブルがある、ビジネスホテルの定番だった。
いつもは旅行にしても仕事にしても、ホテルと言うのは「ただ寝るだけに使う」と言えるほど、僕は深夜になってからしか部屋へ帰らない。飲んで帰れば後は寝るだけ・・・お酒好きの人は大抵そうだろう。
しかし、その日は会っていた友人のスケジュールのせいもあり、意外と早くから僕はホテルでヒマを持て余していた。
ベッドに座りテレビをつけて最初に気が付いたのは、ベッドの枕元の上に姿見のような大きな鏡があるのは珍しいな・・・とゆうことだった。
そんな物無くたってテレビが置いてあるテーブルの上にはちゃんと大きな鏡があるって言うのに。
それでも、その時は大して気にもせず、僕はテレビを見始めた。
それなりに面白い番組が流れていて、リラックスした僕は家でするように、横になって画面を見る。
しかし、そのリラックスはそうは続かなかった。落ち着かないのだ。
僕は決して短気ではないし、普段はイライラすることもほとんどないとゆうのに、その時だけは信じられないほど気がたっていた。
CMになるとリモコンを投げたいくらいに苛立ち、チャンネルをどんどん変えた。
据え付けのポットで湯を沸かしていたのだが、その遅さに腹が立つ。
最後にはテレビから聞こえる人の声までもが刺々しい雑音に聞こえ始め、僕はどうしようもない不快感の中、リモコンを殴るようにして電源を切った。
これはいかん・・・ストレスでも溜まっているのか?
自然の多い土地から東京の真ん中に来ると、こうも殺伐としてしまうものなのか?いやいや・・・まさかな、たった1日で・・・だいたい僕は東京も好きなんだ。
僕は、気分転換がてら、夜食を買いにコンビニへ向かった。
外は真冬の寒さだったが、暖房を効かせた室内から出てすぐはそう苦にはならない。さっきとは全く逆の清々しい気分に戻った僕は、上機嫌で買い物を済ませ、再びホテルへ戻る・・・と、やっぱり、すぐに又イライラは始まったのだ。
コンビニ弁当の表のラップを外すのに更に苛立ち、箸を落として1人でブチ切れる。風呂にお湯を溜めるジャボジャボとゆう音がたまらなくうるさい!おまけにおかしな耳鳴りまでが始まった。
一体どうなっているのか。
その時だった。僕は相変わらずベッドに、テレビの方を向いて座っていたのだが、後ろと右側がやけに気になったのだ。しかし、幽霊がらみじゃない。そんな障りがあるほどの部屋には、僕は初めから入れないタイプなのだ。
幽霊ではないが、何かある。と思った。
右にあるのはカーテンがかかった窓だが、このビリビリするような自分を揺さぶられるような変なエネルギーの源があると、直感(?)で気が付いたのだ。
そうして、勢いよく開けたカーテンの後ろにあったのはやっぱり「鏡」。
・・・うげ・・・。正直な反応は、これだった。
外から見れば普通の窓ガラスなのだ。それをわざわざ内側だけ鏡にするとは、どう考えても不自然だ。
これが分かれば、後ろの違和感も当然・・・と、恐る恐る掛かっていた絵画を外してみると・・・出た!又鏡だ!!
勘が当たったのもあるが、その光景にゾクリとした。
その部屋は4面が鏡なのである。
前も横も、見れば鏡の中に無限に続く自分と部屋の景色。
こんな部屋があるとは信じ難い。何を思ってこんなことをしたのか、明らかに普通じゃない。
一瞬、ホテルの部屋を使っての実験か?とまで思った。鏡を向かい合わせにすると良くないだの、何時何分かに悪魔が出るだの、そんな話は聞いたことがあるが、4面鏡の部屋にいる人間の行動の変化を観察する実験でもやっているのか?!隠しカメラがあるんじゃないだろうな・・・?
そこまで思ったくらいだ。
僕は、バスタオルやら、服やらで、全部の鏡を覆った。絵画の上からもコートを掛け、窓もカーテンの上に又タオルを掛けた。
すると、すぐに苛立ちは治まり、いつもの自分に戻ったのだ。
2泊する予定だったが、翌日はちゃんとホテルを変えた。
結局、その部屋にあった鏡は、壁の4面、バスルームの1枚、玄関を入ってすぐに掛けてある手鏡、そして出発の朝発見した引き出しの中にあった手鏡の計7つ。
6畳ほどのワンルームにこれは異常だと思わないか?
今でも、あの感覚は忘れられない。
たかが鏡と思っていたが、きっとそうゆう力を集める何かがあるのだろう。自分が明らかに変化した以上そう信じざるをえない・・・
僕以外にあの部屋に泊まった人達は大丈夫だったのだろうか・・・?

                       END

埋もれた車

「最近、怖い話集めてるんだって?協力するよ?」
久しぶりにばったり会った「ゆうじ」が面白そうに言った。
会っていきなりの言葉に僕は驚いたが、友人から僕がこのブログを書いていることを聞き、話したくてたまらなかったようだ。
そう言えば、前に一緒に飲んだ時、彼は「よく不思議な体験をするんだ」と言っていたっけ・・・。
これは格好の人材だと、その日も僕らは居酒屋に場所を移し語ることにした。
それが、怖かった!今まで笑っていたゆうじが真顔になり、「オレ、死ぬかと思ったよ・・・」と話し始めたのだった。
 
僕らの町から北へ車で2、30分ほど走ると有名な幽霊トンネルがある。
トンネルと言っても小さな山の手前と向こうを繋ぐためだけの、農道の続きのような「穴」だ。
2車線の道を山へと進んで行くと、薄暗い池があり、車線が1本になったかと思うといきなりそれがぽっかり現れる。
車1台ぶんの幅しか無く僕の軽四でも気を抜くと擦ってしまいそうな狭さの、そのトンネルにゆうじは、イプサムで入ったらしい。
乗っているのはゆうじ1人。
職場で話題になったそのトンネルに行って見ようと友人を誘ったが、みんなは「そんな場所には行かないほうがいい」と断り、結局、それでも気になったゆうじ1人の探検となった。
夕暮れ時の終わり、辺りはもう薄暗く、トンネルの中にあるのは天井にある心許ない電気だけだ。
さすがに不気味だったが、明日、「1人で抜けて来たぞ」と職場のみんなに言ってやるのだ。ここで帰るわけにはいかない。
ゆうじは、車をゆっくりと発車させた。
入り口を過ぎ、ライトをハイにするとそう遠くない距離にある出口の先まで照らされる。
なんだ、確かに見た目は怖いがただのトンネルじゃないか。おまけにすぐに抜けてしまう。気になるのは車幅だけだな・・・。中ほどに行くまでは、そう思っていたのだと言う。
僅かなハンドル操作ミスも許されない狭さの内部は、入っただけで息が詰まる。この外にいつもの風景が広がっていることが信じ難くなるほどの、「隔絶された世界」に思える。
そうして、ちょうど半分来たか・・・と言う所で、異変は起こった。
ライトが突然消えたのだと言う。そして、後を追って、エンジンが止まった。
車内の速度計も全て消え、怖さを紛らわすためにかけていた音楽も途切れる。
冷静に、冷静に。と、彼は自分を必死で落ち着かせようとした。こんなテレビの心霊番組で起こるような現象に逃げ出してたまるか。
咄嗟にそう思ったと言うが、実際、逃げる場所は何処にも無い。
壁と車の間にはドアを開けるスペースすら無いのだ。震える手でエンジンをかけようとするが、かからない以上、ここから何処へも行くことは出来ない。
怖い。どうしようもなく怖い。
がむしゃらにキーを回しながら助手席に置いているはずの懐中電灯に手を伸ばす・・・と、ひやりとした硬いものに触れた。
「壁」だったのだと言う。
天井の電気でうっすらとだけ見える視界の、自分の真横にあったものは、トンネルの壁。
車もろともシートの半分を飲み込み、助手席は無い。トンネルの湿った壁が自分の20センチほど真横にあるのだ。
あまりのことに彼は悲鳴を上げ、無我夢中で唱えた。
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・・・・!!!」
唱えながら目を開けることも出来ずにキーを回し続け、どれだけ時間がたったのか、ようやくエンジンがかかった。
ライトが点き、照らされたトンネル内部はいつの間にか元に戻っていたのだと言う。
それからはどう走ったのか覚えていない。市街地まで来て信号にかかり、ようやく自我を取り戻したようだ。車体の両脇には、なりふり構わず発車させた時に擦ったのであろう長いキズがついていた。
壁に埋まった助手席のシートはべったりと濡れ、車内にはあのトンネル内部のカビ臭い匂いが残っていたと言う。

しかし、恐怖はそれだけでは終わらなかった。数日後、トラックで配送の仕事をしていた彼は、突然正面から侵入してきた対向車を避け崖に激突。
命は助かったものの、左足に重傷を負い入院となった。
車の左半分は岩に削られ粉砕。その時彼が見た光景は、すぐそこまで迫るトンネルの壁に酷似していたと言う・・・

それ以来、見えるはずのないものが見えたり、聞こえるはずのない声が聞こえるようになったのだと、ゆうじは語る。

「今でも、信じたくはないが、アレは幻なんかじゃない。
ああゆう場所に、遊び半分で行っちゃいけないんだ。呪いとか、祟りとか、オレは信じるよ・・・」

                       END

開く トラックバック(1)

ばあちゃんの昔話

こんにちは、樹です。先週土曜日、このブログにも何度か登場した僕の祖母が亡くなりました。
1人暮らしをしていた祖母の家が全焼、遺体は炭化して発見されたとゆう、決して穏やかではない最後となりました。
僕自身、12年間暮らした思い出がいっぱい詰まった家も、原型が分からないほどに焼け落ちてしまいました。
一応、土、日、月曜のどこかで書いていたこのブログも書くどころではなく、喪主である僕は数日、悲しみに暮れる暇も無く、現場検証や警察の調査、近所の家へのお詫びと挨拶回りに奔走していました。
今回は、その僕のばあちゃんが昔、話してくれた「不思議な話」を綴ります。
  
これは、僕が生まれるずっと前の話。
呉の町が空襲にあい、大勢の人が亡くなり、更に大勢の人が焼け出された時の事。
教科書に載っていたと思うが、海軍(現在は海上自衛隊)や「戦艦大和」で知られる呉市は、戦争当時、当然ながら格好の標的となり、数え切れない爆弾が落とされた。地元では有名な「呉大空襲」である。
当時、20歳前後だったばあちゃんも命は助かったものの家を焼け出され、家族とも離れ離れになったのだと言っていた。
呉にある山「焼山」「灰が峰」「休山」辺りに人々は散り々になって逃げ、ばあちゃんもその波に混じって必死に走ったらしい。
何日かは昼も夜も爆撃が続いたが、それがようやく収まった日のある夜のことだ。
ばあちゃんがどの山にいたのか、僕は覚えていないのだが、「焼山」を眺めていたと言うことは、「休山」か「灰が峰」に避難していたのだろう。
そこでばあちゃんは、不思議な灯りを見つけた。
暗くても山と空の境目は分かる。その山すそから頂上にかけて1列に並んだかがり火が揺れながら登っていくのだと言う。
人が松明を持って、行方不明者の捜索でもしているのかと始めは思ったが、その速度がやけに速い。
それに道無き山の斜面をあんなにキレイに1列に並んで歩けるはずがない。
焼夷弾でもない。あれこれ考えたがあんなふうに並んで登る灯りは、1つしか思いつかなかった。
「狐火」だ。
今ではほとんど聞かないが、昔はちょくちょくそれを見たと言う人がいたようで、ばあちゃんも話に聞いていたのだろう。
昼夜関係なく、山すそから上に、1列の炎がぽつぽつと登って行く現象だ。
怖いとは思わず、暗闇を規則正しく登る灯りは美しいと思えるほどだったと言う。
その灯りはきりが無く、いつ途切れるとも知らずぽつぽつと続いた。
そうして見ていると突然、後ろから聞き慣れた声が飛び込んできて、びっくりして振り返ると戦火で離れ離れになった弟が立っていたらしい。
弟も、チラリと灯りが見えたため気になり、何なのかもっとよく見ようとして、丁度全体が見えるこの場所にやってきたと言うのである。
2人は抱き合って泣き、お互いが生きていたことに手を取り合って喜んだ。
散り々になった家族がこんな形で偶然再会するのは真に奇跡だと、あの炎が導いたのだと2人は言い合った。
やがて炎はぷっつりと消え、山と空の境目はいつものように黒々としているだけだったと言う。

ばあちゃんは、幼い僕によく戦争の話をしてくれた。
海軍工廠にいて「大和」の部品発注をしていたことも、家の前の防空壕で起きた悲しい死の話も、その後隣町の「広」に移り住み戦後貧しい中で僕の母を生んだことも。
けれど、1番印象に残っているのがこの話だ。
「あの炎は、きっと、空襲で死んだ人の魂じゃったんよ。ようけ死んだけん・・・みんなあの山から空へ登って行ったんじゃ。その人達が、ばあちゃんと弟を会わせてくれたんよ・・・」
話の終わりに、ばあちゃんはいつもそう言っていた。
何の因果か現在は、その焼山にはキレイな火葬場があり、呉で亡くなった人達はみんなそこで煙になる。
生涯を呉市で過ごしたばあちゃんも、一昨日、同じように焼山から空に登った。
焼山とは、そうゆう場所なのかもしれない。
遺体の損傷が激しく、棺を開けて花や思い出の品を入れることは出来なかったが、大好きだった家ごと持って、愛した土地で人生を終えたばあちゃんだから、きっと、幸せだったのだろうと思うことにした。
こんな不思議な話も含め、ばあちゃんが話してくれた全てのこと、与えてくれた全てのものを、僕は忘れない・・・。
            
                       END

守護霊さん

今回は僕の昔の友達の話をしよう。
今はもう音信不通になってしまったが、数年前まではとても仲が良かった中島さんとゆう人の奇妙な習慣の話だ。
なかなかみんなになじめないでいた彼女に声をかけたのは僕のほうからだった。僕より2つ上のおっとりとした性格の彼女は、一言で言うと「変わり者」だった。
マンガ貸してあげるよと、持って来るのは「後ろの百太郎」、「恐怖新聞」などで、自称マンガ好きなのだが最近のごく普通の本は読んでいない様子。
遊びに行こうと提案すれば、神社、仏閣の名前が挙がる。僕も古いものは好きなので、よく京都を回り、何かにつけ独創的な彼女の話を聞いた。
そうして仲良くなってからのことである。ある夜、中島さんのほうから珍しく電話をかけてきた。
夜と言っても、もう深夜2時ちかく。丑三つ時だ。
何ごとかと携帯をとると、彼女の第一声はこうだった。
「どうしよう!声が聞こえなくなったの!!」
「・・・・・何?」
それしか言えない。僕には何のことだかさっぱりだ。
途中、泣きながら話す内容は「いつも寝る前に聞いていた大事な声が、突然聞こえなくなった。変だと思われるだろうから今まで言わなかったけれど、私は毎晩、その声を聞いているのに・・・」と言うものだった。
僕は普段の彼女の会話から、これはたぶん生きている人の声じゃないな・・・と気が付いたのだが、彼女の母親が電話越しに怒る声が聞こえ、その後「母が深夜に電話するなってうるさいから・・・」と、話は中断されてしまったのである。
気にはなるけれど、ちょうど翌日は演劇のレッスンのある日で、同期である中島さんも来るだろう。帰りに話を聞けばいい・・・。

レッスンの帰り、僕は彼女と2人だけで個室のある居酒屋に入り、昨日の尋常でない様子は何だったのかと尋ねた。肝心なところを聞いていないもんだから、何の声なのか気になるじゃないか!?笑ったりしないから話して欲しい、と。
その時、渡されたのが「後ろの百太郎」だったのだ。
彼女は言った。
「これ、読んだら分かると思うけど、布団に入って、守護霊と会話するって言う話があるの。私、そうゆうの信じるから、自分も出来ないかと思ってやってみた。なんか、心霊オタクみたいだけど、地道に毎日やってたらね・・・ホントに聞こえるようになったの・・・」
「・・・マジ?って言うか、マンガ読んで、やってみたの?毎日?」
「・・・うん。おかしいよね・・・やっぱ。」
確かに、すぐには信じられない話だったし、あまりに真剣な彼女を見ていると、それ系の話好きが高じて自分の世界を創り上げてしまっているのかと心配になるくらいだ。
「私、よく、行くなって言われたからやめとく、とか、みんなと約束してたのに断ることがあるでしょ?あれ、実は親じゃなくて守護霊さんが言ってくれるの・・・。」
「・・・・へえ〜・・・」
真剣だが、やっぱり信じ難い。幽霊話は好きだし、大抵の事は夢を持って信じる僕だが、これは厳しい。
「阪神大震災の時も、友達と神戸のおばさんの家に泊まりに行く予定だった。でも、何日か前に守護霊さんに話したら『行くと災いがある』って言われて、仮病つかって行かなかった。そしたらアレでしょ。友達は怪我ですんだけど、1階にいたおばさんは亡くなった・・・私もそれまでは相談相手くらいにしか思ってなかったけど、この時から予言って言うか・・・そんな感じに聞くようになったの」
「・・・マジで?」
「うん。信じられないだろうけど・・」
彼女の話は続き、いつどんな事で助けられたかをいくつも並べた。声の主は明治時代に生きた彼女の先祖で、40代で亡くなった女性であること。「ふみ」と名乗るその人物を家系図でみると父方に本当に存在していたことまで・・・。
今では、母親まで彼女を気味悪がり、もともとそう仲の良くなかった家族は更に険悪な雰囲気になっているのだと言う。
「人に話してはいけないって言う、守護霊さんの言いつけを破ったからこうなった」と言うのも当然なのだろう。よほど理解のある・・・と言うよりそうゆう話に寛容な信心深い親でなければ「娘がおかしくなった」ととられても仕方ない。
実際にそうゆう人が先祖にいたことを知った親は、信じるしかなかったようだが、その予言を中心に回る彼女の生活を未だ受け入れられずにいると言うのだ。
だが何日か前から、突然その声が聞こえなくなった。
どんなに交信してみても何も返事が無いらしい。
全てが守護霊の助言で回っていた彼女にしてみれば、「保護者」を失ったようなものだろう。
どうしていいか分からず、たまらなくなって1番話しやすい僕に電話をしたのだと言う。
その声に従って送る生活とゆうのは、僕には分からない。何が起こるか分からないのが当たり前の未来だから、悪いほうに行かないために何とかしようとするものだ。
僕は「聞こえないのが、僕らみんなの普通の生活だよ」と答えたように思う。
でも、まあ、単に休憩してるだけかもしれないし、お前の波長(とかに左右されるものかは分からないが)が今はズレてるのかもしれないし・・・などと付け加えたようにも思う。
彼女は大きく頷き、最後は「聞いてくれてありがとう」と言って又泣いた。
 
それから半年、彼女は引越し、電話番号も変わってしまったのだが、ぽつりとメールが来た。
「久しぶり〜。ちゃんと又聞こえるようになったよ。今は男の人が守護霊さんになった。でも、あれこれ聞くのは自分のためにならないって言う教訓だったんだと思って、たまにしか会話しないようにしてる。自分で色々やってるよ」
文の最後には笑顔マークが付けられていた。

                      END

全7ページ

[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7]

[ 前のページ | 次のページ ]


.
イッキー
イッキー
非公開 / O型
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について

過去の記事一覧

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

Yahoo!からのお知らせ

友だち(8)
  • Nansa
  • さくらこ
  • あんず
  • nagheuer_Evolution
  • ちぃ
  • 淘汰
友だち一覧

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!
話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事