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看護師や医師ほど人の死に近い職業は無いだろう。
葬儀屋だって近いじゃないかと言われそうだが、看取ることは無い。
友人に看護師も葬儀屋もいるが、不思議な体験の数は看護師のほうが断然多いと言うから、抜けた魂か、エネルギーか、思念か、とにかくそうゆうモノは亡くなったその場に残ることが多いのだろう。
これは、看護師をしている友人ミッキーから聞いた話である。
ミッキーは看護師8年目になるせいで、幽霊や不思議な現象をイヤと言うほど体験している。中でも1番印象に残っているのは?と聞くと、やっぱり新人の時、初めて見た幽霊かなあ・・・と言うのである。
それも初めての夜勤の日に出会ってしまったようだ。
その夜は先輩看護師と2人で院内の見回りをしていた。大きな総合病院の夜だ。
昼間と違って静まりかえった廊下を慣れた先輩はさっさと歩いて行く。初めてのミッキーも遅れないように怖がる自分に渇を入れて歩いたのだそうだ。
途中、トイレに行く途中の自力で歩ける患者に何人か出会ったが、更にその奥の角を曲がれば末期の癌病棟に行くことになる。
痛みで夜も眠れない人の声が、微かに院内に響いている。
そうして恐々角を曲がった時、その奥から、1人のお婆さんらしき人が歩いてくるのが見えた。
アレ?と思ったそうだ。この病棟にはあんなに元気に歩けるような人はいないはずなのに・・・。
それでも、もしかしたら、もう危ないとゆう人の家族が病室に来ているのかもしれない。
そうこう考えているうちに、どんどんお婆さんとの距離が縮まり、服装や表情まで見えるようになった。
ニコニコと微笑みながらやってくるお婆さんは、白いパジャマ姿だった。
・・・とゆうことは、患者さんだ・・・
すれ違いざまに、そのお婆さんは深くお辞儀をし顔を上げると又微笑んだのだと言う。
あまりに自然で感じの良いその態度に、ミッキーも頭を下げ微笑み返した。が、先輩はスタスタと歩き続ける。
「あの、待ってください・・・」
「振り向いちゃダメよ」
「え・・・・?」
先輩は表情も変えずにこう言った。
「あの人、夕方に亡くなった人だから」
「!!!!」
声も出なかったらしい。今まで霊感の欠片も無く、全く見たことが無かったミッキーは自分の目が信じられなかった。それも、生きている人と変わらずあんなにハッキリと見てしまうなんて。
それに、今も後ろを歩いているのだろうか?振り返ればいるんだろうか?幽霊なら、消えているのかもしれない。確かめたかったが、先輩に振り向くなと言われるのだから見ないほうがいいものなんだろう。
それからの巡回は、怖くて怖くて仕方なかったらしい。廊下を歩く人の全てが、本当はもう亡くなっている人なのではないかと考えずにはいられなかったと言う。
今では、もう8年になるミッキーは、患者さんの顔も、カルテも把握していて、夜に出会う人がどちらの人間なのか迷うことは無いと言う。
それに慣れてくると、雰囲気で分かるし、と言って笑う。かなりの数の幽霊に出くわすようだ。
初めは怖かった夜勤も、慣れてくるものらしい。
その時の先輩は、初めての夜勤であんなものに出会って、怖がって辞めてしまうのではないかと心配していたようだが、逆にそれがミッキーの原動力になったようだ。
ミッキーは語る。
「あのお婆さんは微笑んでくれた。今までありがとうってお辞儀してくれたんだと思う。患者さんには助からない人もいるけど、幽霊になっても感謝してもらえるような看護がしたい。あの出会いは看護師としての私の原点」と。
END
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