流星通信Blog

趣味人・我乱堂の放談三昧

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 先日、「秘伝」を立ち読みしてたら、「名探偵の秘術バリツの研究act,2」なんてのが載っていた。
「秘伝」を購読していたのは2001年までで、暇があれば立ち読みしていたが……こんな記事が載っていたのなら、買えばよかった。が、その日も買わなかった。
 内容としてはフランスの棒術「ラ・カン」についての紹介に終始していたように思う。ざっと読んだ感じではそれなりに興味深かったが、買おうという気もおきなかった。これが二年――いや、ほんの半年前のならば、財布の中身と相談しながらも結局は買っていただろう。

 私は高校時代から「バリツ」に興味を持っていた。
 その頃から武術に対して興味を抱き始めたというのもあるが、初めて「バリツ」について言及していた本には、「バートンという人物がはじめた柔術の梃子の原理を使った投げ技とボクシングの打撃を合わせた“まったく新しい護身術”である」とのようなことが書いてあった。いや、これは正確には "bartitsu"であり、ホームズが使っていた"baritsu"のことではない。まあ、この誤記なのではないかと書かれていたけれども。
 本のタイトルも覚えていないが、このときに読んだそれはシャーロキアンの本であり、バートン氏が学んだ流派については言及されてなかった。ただ、その時にのっていた本の中で、バートン氏が黒い胴着を着ていて、棒を手にしていたように私のおぼろげな記憶には残っていた。

 それでこの時から、私の"bartitsu"に対する執着が始まった。

 執着とはいっても、研究のために原書を読み漁ったとかそういうことをした訳ではない。
 時折に目にするホームズ関連の書籍を片っ端から読んでいた程度のことではある。さすがに経済的な事情もあって全てを買うわけにはいかなかったし、そもそもどの本を読んでも流派にまで言及されているようなことはまずない。というか、どの本を読んでも最初の本程度のことを書いてあることすら稀れだった。ここ十年で新しく得た知識は、「すでに本場では死語となっており、本場のシャーロキアンですら知らないことも多い」というくらいのことである。あと天神真楊流の谷師範の名前が贋作ホームズなどででてきていたので、もしかしたら……とは考えたこともあるけれど、天神真楊流は当身の技で知られた流派であり、そりゃ投げ技もかなりありますが、ソレを学んでなおかつボクシングを加えると言うのも不自然な気がして――私はほとんど諦めかけていた。
 そしてネット時代の到来……で、私がこのことを調べなかったわけもない。
 で、あれこれと検索した結果、わかったことは「やはりはっきりしない」ということだった。
 ……いや、マジで。
 ひでい話では「向こうの人間が憧れて、勝手にでっちあげたのではないか」とすらいう人もいたのですよ。いや、まじでありそうな話ですからな。祖父のもっていた探検の本などでは、インディオの村ではったりかました日本人の話がでていた。その人は柔道のじの字しか知らないのに、使えるといって危難を避けて、やがて村の若者達に請われて見ただけの知識で教えるという……そんなでも、どうにか誤魔化せたあたりが恐ろしい。バートン氏が学んだのが「そういうの」であったとしてもなんら不思議ではない。むしろそういう可能性も高いなんて思った時期も。まあ、多くの日本人が幕末から英国に渡っていたのは確かなので、「まったく知らないででっちあげた」ということもあるまいし、そんなこんなのうちに何年か前に某スレッドでバートン・ライト氏の素性も知ることができました。略歴だけですが。


E. W. Barton-Wright (1860-1951)は土木技師でして、仕事柄各国を廻る。
一方で護身術に興味がありボクシング、サバット等を研究。
日本にも3年ほど滞在し、流名不詳の流派および講道館でも修行。
1899年、帰国後、護身術(バリツでいいらしい)教室を開くにあたり、
日本から柔術家を招聘。中の一人18歳のタニ・ユキオ(天神真楊流)は
賭け試合を受けるなどして評判。
かくて柔術はロンドンで一大ブームとなった。

 とのこと。
 時期がわるかったせいなのか、私が最初に検索かけた時期と違い、その頃に調べたらそれだけのことが解ったそうで。
 まめに調べるものだなあとは思いましたね。
 とはいえ、忙しい日々の中で「そうかー」以上の感想を抱けるわけもなく。結局は柔道だったのかとか流名不詳ってのが怪しいけど調べようがないよなーとか思ってました。
 その後も時折に思い出したように"bartitsu"を探していた私なのだけれど――

 そしてその駐在していた某スレッドで、こんなレスがつきました。

>神戸で1900年頃、寺島某が指導していたという
>しんでん ふどうりゅう(柔術系)のことを調べています。

 しんでんふどう流?
 聞いたような聞かないような名前です。
 それでまあ、しばらくたってから調べてレスをつけてみたのだけど(とはいっても、武芸流派大事典をひっぱっただけ)
 こんな感じで。

神伝不動流(拳、棒、薙刀、居合、腰廻、柔、鉄鎖)
矢田の判官が流祖。明治の初め頃、九世の矢田穏棲斎徳章(通称は帯刀)に
至り諸流を学んで、一流を創め、流名を神伝慈眼流と称したが、その後、
矢田徳幸が神伝不動流と改めた。維新ごろには京都で草莽矢田隊を、子の
隆男と共に組織し、大和十津川等に武芸指南した。維新後は久留米・岡山・
十津川等の保守派・不平党と結んで旧公卿をかつぎ、薩長藩閥政府の転覆を
計画したが、明治四年三月発覚。捕われて終身禁獄になった。時に五十歳。
その当時の変名は国野一郎といっていた。
伝系は、…矢田徳章―矢田徳幸……(十七世)摩文仁賢和―摩文仁賢栄―上野貢。

 まあ、普通の古流ですな。
 それがナニ?
 っな感じだったんだけど、どうやらこれがバートン氏の学んだ流派らしいという話がでてきたらしい。

>久しぶりにバリツフォーラム覗いたら、2月だけで400もメッセージがあって(笑
 
 バリツフォーラムってななんですか?

その中にオランダでの柔術史を調べてるという人のがあって、オランダ人として
最初に柔術に関して書いたHerman ten Kateの文章(1905年)の中に、
「神戸で寺島くにいちろう氏に神伝不動流を習った。稽古仲間にバートン・ライトが
いた。寺島は不動流を京都のしまがわら(島原?)で矢田おんせいさい に習った」
とあるのだそうです。またHerman ten Kateはバートン・ライトの興したBartitsuの記事の
ことも知ってたそうで、あれは不動流のまんまだ、とのメモもあるとのことです。

 ……おおおおおおおお。
 これはつまりアレですよ?
 バーティツの正体がほぼ解明できたということですよ?
 最初に探し出してから十五年! ついに私は辿り着いたのですよ! やったぜ親父ィ!

 と、興奮できたのも最初の何日か。
 結局、自分の力で発掘できたというわけでもなかったせいなのか、それとも知らないうちに自分の中の情熱が下がっていたのか、今となってはその不動流について調べようという気力もわかず――

 こうして書いている中、前日みた「秘伝」は本屋に残っているのか、その前の月の「名探偵の秘術バリツの研究act,1」にはなんと書いてあるのか……やはり気になってしまう自分を見つけてしまって、なんとなく苦笑してしまうのでした。

 結局のところ、バーティツには永遠に謎の武術であってほしかったのかも知れないと、今はそんな風に思っている。
 

閉じる コメント(18)

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こんにちは。
違ってたらごめんなさいですが、もしかして
世界史板の格闘技スレにいらしたT・Sさんですか?
私NX-01のレスが引用されているのでもしやと思いまして。

2010/1/27(水) 午後 3:52 [ ちていのき ]

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違ってなくてT・Sですw
こんにちは。
NX-01さんは覚えています。
懐かしいです。
いつの間にか格闘技の歴史関係スレも沈んでしまいましたな。
このブログも放置してましたけど。
新たしくライトノベル系ブログを建てようかとか思ってたところでしたが。

2010/1/27(水) 午後 8:28 [ 佐上典明 ]

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やっぱりww
古書の事も書いてあるから間違いないだろと思ってました。
懐かしいですねー。
お元気そうでなによりです。
格闘技スレの頃は情報がネットにどっと出始めた時期で
調べてても楽しかったです。
その後バーティツは、ライト氏の埋葬場所はどこかという
最後の謎が解明され、今は再現プロジェクトとかで
講習会とかやってるみたいですw
放置状態ということですが時々覗きますね。
新しいブログも立てたら行きますからw

2010/1/28(木) 午前 1:50 [ ちていのき ]

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いやあ、懐かしいですね。
格闘技スレがたった頃は…武術とかの知識自体がみんな未熟で、私程度のいうてることでもそれなりの説得力がありましたが、今はレベル上がっていて、とてもついていけません。
バーティスについては、再現プロジェクトとは、なかなか面白そうな。
そういえばあの時に途中まで書いた神伝不動流についての秘伝の記事どうしましょうかね。
ここで書くのもあれだし。はてさて。
近頃は武蔵とかの関係で面白そうな話が出てきて、記事を書くとしたらそっちですかね。
新しいブログは、ライトノベル批評の批判が中心なりそうなので、果たしてお気に召されるかどうかw
そちらも何処かでブログなり記事を発表なさってるのならお知らせください。
それではー。

2010/1/28(木) 午前 2:31 [ 佐上典明 ]

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そういえば神伝不動流、途中だったんですよね。
でも、基本的なことは教えていただいたし、もういいかなw
むしろ、その武蔵話とか新しネタを頑張ってください。
独自の視点のある武道話って少ないですから貴重です。
私もブログはやってはいるんだけど、お小遣い稼ぎのブログライター
専用で、読む価値ありませんww
でもあと2つばかり作ろうと思ってて、そちらは広告ではなく
読める物にしようかと。
形になるのは数カ月かかると思うけど、その時はお知らせします。
で、ラノベとかも興味ありますから、期待してますよw
では。

2010/1/29(金) 午前 2:32 [ ちていのき ]

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うん。あの頃はテキストのベタうちが面倒なので途中でやめてしまったのでした。
どうもすみませんでした。
武蔵話については、新作の小説にも関係するからおおっぴらにはかけませんけどねー。
独自の視点があるのかどうかはちょっとわかりませんけども、武道話も最近はあっちこっちで出回っていて、ちょっとニッチを探すのも苦労します。
私はMSNメッセンジャーに登録してて、sagaminoriaki@hotmail.comに連絡いただいたら、すぐにでも会話できます。
最近は資料を買うお金もないので、色々と話はしたいものです。
まあ気が向いたらでいいんですけど。
それではー。

2010/1/29(金) 午前 3:45 [ 佐上典明 ]

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MSNメッセンジャー使った事ないけど、良いチャンスだから
ちょっと試してみますね。

それと私のブログ、考えたら「映画」のカテだけは少ないけど
真面目に書いているんで、よろしかったらお暇な時にでも。
http://fulmar.blog121.fc2.com/blog-category-1.html

私も最近は本も買ってないんですけど、各大学がようやく
論文公開に本腰入れ始めてて武道関連でもまれに面白いのが見つかります

http://www.ritsumei.ac.jp/acd/cg/ss/sansharonshu/434j.htm
ここのプロ柔道のとかなかなか面白い。

また論文検索ポータルも機能し始めて、色々見つかります。
ココ
http://ge.nii.ac.jp/genii/jsp/index.jsp

試してみてくださいねー。

じゃ、そのうちメッセで話しかけますからw

2010/1/30(土) 午前 2:07 [ ちていのき ]

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あ、どうもでーす。
ブログ拝見させていただきました。
映画の話とか面白そうです。じっくり読ませていただきます。

プロ柔道については…なんでかこのパソコン、PDFファイルが落とせないw

うーんむ。また改めてどうにかしないと。

では、メッセをあげて待機してたりしますねー。

2010/1/31(日) 午前 0:29 [ 佐上典明 ]

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はじめまして、ちょっと調べ物をしていてこちらを見つけました。
その神伝不動流の伝系に戸田という苗字の人はいますでしょうか?
最後の上野貢という人は昭和の人ですよね?
この人の次の継承者はわかりますか?
質問ばかりですみません。

2010/11/25(木) 午後 1:38 [ 武蔵野 ]

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はじめまして。神伝不動流で戸田姓…というと、戸田真竜軒先生に関する話でしょうな…上の記事の伝系は武芸流派大事典の写しですので、それ以上の詳細はありません。
上野先生の後を継いだのは神長成佳師範です。
神伝不動流に関しての詳細は、BABジャパンの秘伝1999年の四月から六月号まで三回の記事があったことが確認できます。2000年からしばらく買ってないので、以降は不明ですが。とりあえずこの三冊を何処かで確認されるといいと思います。

2010/11/26(金) 午前 7:37 [ 佐上典明 ]

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あと、思い出したので追記。
ややこしい話なのですが、この上野先生は戸田先生系の高松先生の系統の神伝不動流も継承していたりして、そっちはそっちで別に継承されていますが、何やらバーティスの技の復元している人たちがそちらの系統の神伝不動流の技を受けてみると似たような業があったりとか…だけど両方受け継いでいる神長師範は技が違うとかいってたりでもう何がなんだか。

2010/11/26(金) 午後 4:28 [ 佐上典明 ]

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お返事ありがとうございます。
そうなんです戸田真竜軒先生に関することです。
武芸流派大事典のその記述だと年代的に真竜軒先生が入る余地がなさそうなので、やはりこの人は実在人物ではないのかなと思い聞いてみました。
秘伝のバックナンバーですね、探してみます。

2010/11/28(日) 午前 9:27 [ 武蔵野 ]

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こんにちは。
武芸流派大事典では戸田真竜軒先生の伝とは別に神伝不動流があることになっています。そして両方とも上野先生は伝承していることになっているというややこしさがあります。たまたま名前が同じ別の流派という扱いですね。
そちらの伝系も書いてよかったのですが、長い上に全然史実に沿っているは思えませんのでかきませんでした。高松・初見先生の伝承流派に関しては武芸流派大事典にも別の項目で「この伝系は非常に疑わしい」とあるくらいです。
だからまあ…きにしないでいいと思います。

2010/11/28(日) 午前 11:27 [ 佐上典明 ]

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神伝不動流を学んでいるわけではないですが、流派の近縁の者です。
神長氏は上野氏の弟子ですから、きっと同流は学んだのでしょうが、継承者と言える立場ではありませんし、武芸流派大事典自体が版によっては神長氏が情報源となっている場合もありますので、あまり信用なさらないで下さい。
摩文仁氏は上野氏と交流は深く、両者は相互教授の関係にはありますが、摩文仁氏は空手家ですので、同流を上野氏から教わることはあってもその逆はないでしょう。
また、初見氏は上野氏の弟弟子であり、当初は上野氏の弟子だった時期もありますが、高松氏から神伝不動流を学んでいます。
ちなみに、高松氏の流れとは全く別の流れで、同名称の流派を継承されている川上氏もいますが、たまたま名称は同じだが、技は別物らしいです。
但し、同流の初期の継承者には被る部分もあるようです。
複雑ですので、同流の伝系についてはあまり気にされない方が良いでしょう。

2010/12/2(木) 午後 8:38 [ ]

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こんにちわ。コメントありがとうございます。
神長氏についてはあまり評判はよろしくないですね。私の神長氏云々は秘伝での記事によっているので、氏の表現が正しくないといなり問題なのですが、まあ…そこらは武道関係ではありがちな話ですね。
摩文仁氏が古流柔術を研究、習得されていたことについては、秘伝誌上で不遷流、不動流なども習得されていたと小西師範の著書にあると紹介され、昭和17年の「糸東流拳法空手道 目録之巻」の「拳法の大事」は神長氏が伝授された「神伝不動流拳法 極意之巻」と注意書きまで全く同じ…となっています。

2010/12/3(金) 午前 11:33 [ 佐上典明 ]

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上野氏と摩文仁氏の付き合いも昭和17年頃からなのがまたややこしいのですが、とりあえず摩文仁氏は古流の研究もしていたので、上野氏へと教えたことも可能性としてはありだと思います。不動流に関係する記載が糸東流からより古いのが出ればいいんですが、そのあたりは期待しにくいですね。一応、神長氏が上野氏から移した伝では上野氏が摩文仁氏から学んだというのが大事典での伝系の根拠となっているようです。
まあとりあえず、私もそれほど気にしてはいないんですが、たまに聞かれると「うーん」と悩んでしまうのでした(苦笑)
書き込みありがとうございました。

2010/12/3(金) 午前 11:33 [ 佐上典明 ]

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神伝不動流関係はあれからまた知らない事実が出てきたので、近々記事を新しく書きます。

2010/12/5(日) 午前 11:11 [ 佐上典明 ]

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ブログファンです!よろしくです





はじめまして!

佐上典明さんのブログファンです!

ブログだけじゃなくて、佐上典明さんのファンですからね。



ずっと落ち込んでる日が続いてたりしたときに

ふとブログをみてたら、佐上典明さんのブログに辿り着きました。

色々佐上典明さんのブログに救われました。



こうして書き込みを初めてしたのは、

是非、素敵なブログの管理者の佐上典明さんと直接お話ししたいし

素敵な言葉を私にくれるんじゃないかって思ったからです。

勝手ながら…連絡を載せてみました



ayundamon@i.softbank.jp



まずは直接佐上典明さんにありがとうって言いたくて…

では待っていますね

2015/1/5(月) 午後 7:55 [ wg9*xe6**sd ]


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