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趣味人・我乱堂の放談三昧

フリマ戦記

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新・フリマ戦記

 仕事もなく金もなく――
 しかし、ネット代金すら払えないというのは情けない。

 よって月曜日の払い込みに間に合わせるために、金曜日に日曜市に行く。
 今年初めての参加、だったと思う。
 いつもと違い、土曜日のうちに用意を済ませる。
 そして、あれこれと予定を知り合いの古本屋さんに電話で知らせる。


「明日、雨って聞いたぜ?」

「………またまたー」














?H1>雨でしたorz












 売れた本。
 私度僧空海 1000円。

 ショバ代も出なかったのって初めて……。
 ……それはいまだ語られてない、十二月二十五日の日曜市のこと。


「なあ――もう一度、店をやってみるつもりはねえか?」
「それは――」
「やる気があるんなら、オイラがひと肌脱ごうかって話だよ」
「……………!?」

 相手は、私の店のかつての常連さん。
 この人が実は結構お金を持っているというのは知っていた。
 知っていたが――

「今名、俺の持ち店で、二件開いてるんだ」
「……それを私がやるということですか?」
「アンタもわかってるんだろう? こんなので月に四回やそこらだけ売ってたって、な」
「しかし」
「ああ、家賃は格安にしとくさ」
「―――――――」
「本だって、足りなればオイラのを提供したっていいさ――」
「―――――――」
「なあ、アンタもこのままでおわりたくはないだろ?」


 ……なんていう、 夢枕獏の小説みたいな会話ではなかったんですが、とにかく店をもう一度してみないかというお誘いを受けたのでした。
 でまあ、どうにもどこまで本気なのかわかんないんですが、その人がどういう人なのかちょっとは知っているので、やはり考えてしまう。
 今度店をしたのならばどれだけの経費がかかるのか。
 どういう店にしたいのか。
 昔考えて、しかし最近増えつつあるブックカフェみたいなのにしてみたいだとか。
 色々と。

 でまあ、経費だけど、ざっと考えてみた。
 まず最初に浮かんだのがガス代。今一番使っているのだから仕方がない。
 だいたい1000円で百キロ前後走る。厳密には96キロだとか、まあそんなだけど面倒なのでそんくらいにしとく。わたしはそれで一回につき2000円入れる。二百キロ。で、今はセドリのためにあれこれと動いているのだが、店を始めるとなると……一日五十キロ程度だろうか。で、2000円だと四日分で、三十日を四で割って――
 まあ、ガス代に一万六千円程度と仮定しよう。
 次に浮かんだのが電気代。
 これは前に店をした時が、冷房をきかせてて一万円だった。月一万円だった。規模は前より大きいとしたら、最低でもこれくらいはかかる。どれほどの規模にするのかは不明だが、前の倍の規模だと仮定して――いや、冷房とかは別にあがらんかな。
 まあ、一万五千円くらいか。
 電話代についてはネットとかADSLっぽいのを繋ぐとしてIP電話とかなんとか……。
 月七千円弱というところか。
 水代は、そんなにかわらんだろう。
 五千円くらい(多分)。
 
 ……以上が「必ず毎月必要になる金額」である。
 この時点で48000円!
 この上に家賃とか本の購入費とかを足すと、軽く100000円くらいになるのではないか。つか、越える。多分ではなくて確実に超える。
 さらに店を始めるとなると初期投資がいる。
 具体的には机とかテーブルとか本棚とか。
 中古で買うにしてもただではない。
 本棚は自作できるとしても、材料費がえーと……。

 五十万――せめて三十万の貯金があればなあ。


 とりあえずこの話は流れるとは思うのですが、なんとなく夢に見てしまった光景は忘れがたしというか、なんというか。

 もしかしたら来年は流星書房は復活しているかもしれないー。
 戦い済んで日は沈み――

 というのは正確ではない。
 わたしが日曜市を去ることに決めたのは、日が昇りきった頃だったからだ。
 
 とりあえず売り上げを全て列挙してみよう。

 百円単行本 七冊 700円
 英和医学大辞典 2000円
 新書       400円
 本五冊     1600円
 本一冊      500円
 本二冊     1000円

 ………うーん。ノートが手元にないのだが、もちっと売れていたと思う。
 多分かきもらしがあるのだが、まあ、1000円くらいだし。
 とりあえずはショバ代さっぴいても反日の仕事としてはそれなりだ。

(来週は――来週こそは)

 雨の日であってなおこれくらいの売り上げを獲得できたということは、一つの自信に繋がった。
 この調子で週一のペースで参加していけば、あるいはまあまあの収入になるのではないか?
 夢のようなものだが、夢ではないと思えた。
 というか、一度に五千円から二万円の利益があけられれば、もっとフリーマーケットに参加し甲斐もある。調べてみると地元では賞希望なフリーマーケットがあちこちで行われているようだ。その全てに参加するのは無理だが、きっちりとスケジュールをたてれば、そのいくつかには参加できる。
 とりあえず。

(継続は力なり、だ)
 
 そして私は決意も新たに繊維団地を後にした――。

 でまあ、近所のブックオフで三冊ほどかったのだけれど、それは別の話。


 追伸。

 その次の週は、用事ができて不参加になりました……orz
 

フリマ戦記(5)

「五百円にならんかね?」

 ……古本屋をしていた私は、今まで多くの値引きにあった。
 フリマにでても何度も値引きにあった。
 そりゃあもう、値引きされてばっかりだった。
 にしても、「徳川将軍列伝」に二千円をつけて、それを五百円にしろというのはちょっと想定してなかった。
 いやま、値段なんかみなくて安くしろという人はいたのだけど――
「初版じゃないだろう。二千円は高すぎる」
「ああ、そうですか」
 ちゃんと見ているし。
 つまりはこの人は、二千円と名づけた私の価値観を真っ向から否定しようっていうんだ。
 闘志がわいた、というのは嘘で、なんかもー、色々と嫌になっていた。
 だって雨降ってたし。
 本濡れてダメになってたし。
 なんとかこの時点で元はとれていてたけど、予定していたよりも売れてないし。
 あと寒いし疲れたし腰痛いし。
 とにかくイヤな気分になっていた。
「……ならんの?」
 ならねえよ。
「……ならないと買わんよ?」
「そうですか」
 つか、するか。
 その客というか、爺さんは、すぐさま踵を返してさっさと離れていく。それはそれでいいかと思った。二千円を五百円なんてのはいくらなんでも値引きしすぎだ。店をやっていた時期は「まからんか?」といつも値引きしていった爺様がいたが、せいぜいが二割三割削るくらいのことで、ものの言い方にももちっと品があった。いやま、しつこかったけど。
 ――この爺さんもしつこかった。
 すぐに戻ってきた爺さんは「人と人の繋がりを大切にした方がいい」とわけがわからんことを言い出した。
「はあ」
 なんというか、いきなり訳のわからんことをいわれてわたしはどう対処していいか解らんかった。
 爺さんはさらに続けて言う。
 なんか色々という。
 詳細は覚えていないのだが、とにかく自分は顔が広いので安く売ると得……といいたいのではないか、と判断できるような内容だった、と思う(曖昧)。いや、とにかく何をいいたいのか、本当に判断がつかなかったのだ。真剣な話。マジで。
 とりあえずこの爺さんは、隣りの骨董屋さんところの常連だった。
「あんたはとなりのお世話になっているんだろ?」
「…………」
 実は――というほどでもないが、来週の場所が確保できなかった私は、ふた場所とっていた骨董屋さんから場所を借りることができるという話をまとめていたのだ。これは実は規定違反だったのだが、特に調べて回っているわけではない。まあできるだろうと。軽く考えていたのだけど――
(……この爺さん)
 とにかく必死で値引きしようとしている。
 二千円の本を五百円にしようとしている。
 そのためには手段なんか選んでいるようにはみえなかった。
(人と人の繋がりって、なんども強調しているけど、ここで断ったら、悪い噂広げるつもりか?)
 それは、実にありそうなことだった。
 こういう爺さんは、とにかく自分を正当化する論理の構築が得意だ。
 論理的ではないが、その論理は当人の中では絶対的なものなのだ。
 結局――私は折れた。
(まあ、一冊くらいいいか)
 少しでも売れるのに越したことはないし。
 まあ、五百円で売って、さっさとこの爺さんから縁を切りたかったということなのだが。
 誤算は、爺さんが去らずに本をさらに細かく見始めたことだ。
 探しながらなんかいう。
 曰く
「自分はなかなかない貴重な資料を持っていて、自分のいうていることに文句をつける博士(?)にそれをみせたらおみそれしましたと謝った」
 とか。
「中国人のなんたらさんという人に気に入られて、世界にいくつも残ってない貴重な陶磁器を譲ってもらった」
 とか。
 でまあ、そういうのは人と人の繋がりによって得ることが出来のたとかどうたらこうたら。なにがなんだか。人と人の繋がりが。いい加減にしなよ。
 で。
「中国史人物辞典」
 を掘り出して
「これを買う」
「あ、どうも」
 五百円。
 渡した。
 わたしは何もいわなかった――わけではない。
 言おうとした。
「人と人の繋がりがね」
 黙れ。
「次からはこんなにしないから」
 だったら今から値引きするな。
 とにかく。
 なんだかんだとあって。

 結局、それも五百円で売ったのでした……orz


 つづく

フリマ戦記(4)

 五冊で千五百円。

 五冊で千五百円。

 ……それは一冊につき、三百円ということだ。
 なんともばかばかしい。
 というか、タイトルだけで選んでいた。巻末に書いた値段は見てなかった。それはつまり、どんな値段だろうと、これだけの値段で五冊買うつもりだということのだった。

「帰れ」

 即座に一言。
 客にいうていい言葉かって? 
 よくない。
 しかしこんなこという人間を客扱いしたら、今までに本をちゃんと買っていった人たちに対してなんといっていいのか。
 実は、こういう客がくることは予期していた。以前にもだしていた頃に、似たようなのをいってくる人間がいたのだ。氏十冊くらい重ねて「二千円くらいにならんか」というような。そういう本はそういうところで買ってくれというものだ。
 あれこれと押し問答をしながら、出された本を見る。

 文字の書き方崩し方
 江戸かな古文書入門
 日本人の歴史(4)
 民俗探訪辞典
 歴史散歩辞典

 いったらアレだが、そんなに売れる本だというわけではなかった。
 まあ、古文書入門はちょっとは売れるかなあというくらいで、あとはそんなに。しかも民俗探訪辞典には書き込みがあって、それもあってAmazonにだすのを控えていたのだった。
 それまでに何冊売れているのかを確認する。
(ギリギリか……)
 なんとかショバ代確保できた――という程度だった。
 もう時間は昼を回っていた。
 あと二時間……が限度だ。
 売れない本。
 売れるかもしれない本。
 そんなに手元においておきたいかというとそうでもなくて――

「1600円ね」
「えー、1500円でいいやない」
 
 まだいうか。

「1700円」
「……1600円やね」

 という感じで、とりあえずちょっとは余裕ができる。
 雨はやんだ。
 しかし風が強くなった。
 シートをとって、畳んだ。
(あと二時間……くらいか。どうしたものかな。もう客はこないのかな)
 Tさんと馬鹿な話をしながら、溜息を吐く。
 こんななら家でいた方がよかった――とまで思う。せめて雨がふらなかったらよかったのに。
 そんなこんなで「豊臣秀吉の合戦」が売れた。これは新人物往来社の本で、それなりにいい本なのだが、古いので箱入りで1500円が定価という代物である。千円をつけると嫌がられたので、七百円にした。まあ、これくらいならいい。
 そこそこか、と思ったら、骨董屋のおばちゃんが「千代女 季の句」を欲しいというてたきた。定価が書いてないので1500円をつけていたが、五百円でうってくれとのこと。
「少しでもうれるようにした方がいいよ」
「……仕方ないなあ」
 まあ、シートを貸していただいたし……ということで五百円にした。
 一応、いっておくが、1600円の五冊も、この一冊も、仕入れ値からしたらもとはとれている。しかしそういう考え方で本はあまり売りたくないのだ。
「そろそろかな――」
 雲の切れ目から、青い空が覗く。

 そして最後の敵がやってきたのだ。


 つづく。

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