その日は土砂降りの雨だった。
ワイパーはこわれんばかりに雨水をかきだしていた。
助手席の彼女が思わずシートベルトをした。
「どうしためずらしいな?信用してないのか?」
「そうじゃないけど。なんとなくいやな感じがして。」
「おいおいお前の予感はあたるんだよ。やめてくれよ。」
「大丈夫よ。こんでるし、スピードでてないでしょ?」
「いくらどじなあんただって、このスピードで追突することはないわよ。」
「馬鹿いえ、自分がきおつけてたって、追突されることはあるんだよ。」
反対車線にラブホから猛スピードでスポーツカーが飛び出してきた。
タイヤは大きくスリップして、危うく、車の側面にぶち当たりそうになった。
彼女が景気よく叫び声を上げた。
スポーツカーは寸前で体勢を取り戻し、前方に駆け抜けて行った。
「あいつ随分と急いでいたな?ラブホの中でなんかあったのだろうか?」
「あんた、なんでそんな冷静でいられるのよ!」
といって彼女は締めていたシートベルトをひときわ強く握り締めた。
クラクションが鳴り響いた。
「ちぇっ、そんなに鳴らさなくてもいいだろ。危うく命拾いしたところなのに。」
「俺もシートベルトするか。」
「へーっだ。」
舌を出してあかんベーをする。子供っぽいところが妙にかわいい女だ。
「この時間なのに随分こんでるな?もう1時まわったぜ。」
「早く帰りたいわ。」
「あれ、へんだよ。ワイパー遅くなったよ。」
「え!そんなはずは・・・・・あれ、ラジオ音が変だ。」
「あれライト消えかかってる。」
「あれれ、ノッキングしてるぞ。」
「やばい止まる。」
「ねえ寄せたほうが良いじゃない?とまりそうよ。」
「変だな?バッテリーかな?」
「あ〜とまっちゃったよ。」
「なんでよ。道のど真ん中よ!」
「しょうがないだろ。」
「まいったなエンジンかかんないよ。」
「ねえ外で車押して横によせてよ。」
「馬鹿いえ、今でたらずぶぬれだろ。」
「どうすんのよ。」
「ちょっと待てよ、今エンジンかけてるから。」
「あっ!パトカーきた。おまわりさん。すいませんエンコしちゃったんです。」
「ちょっと待って横に寄せるから。のったままハンドルだけ切ってください。」
「はい。」
「その前によせて。」
「大丈夫ですか?」
「はい。バッテリーあがっちゃったみたいです。」
「現場に行く途中なので。自分でJAF呼べますか?」
「ええ会員なので自分で呼びます。ありがとうございました。」
「そうですかじゃ気をつけて。」
それからしばらくしてJAFがきた。
「うーん。これはジェネレーターがだめですね。」
「簡単にはなおりません。」
「ジェネレーターが発電してないので、
バッテリーの電源を走行中に使いきってしまったようですね。」
「どうすれば?」
「バッテリー交換して行ける範囲内でディーラーまで走りましょう。」
「先導しますからついてきてください。ライトとワイパーはしょうがないですが、」
「その他無駄なパワーを使わないようにお願いします。」
「分かりました。」
「ねえエヤコンつけてよ。」
「ばか聞いてないのかよ。無駄なパワー使うなっていわれただろう。」
「今度とまったらどうにもならないんだからな。」
「寒いよ。」
「我慢しろよ。」
「なによやっぱりなんかあると思ったんだ。」
ディーラーについた。5キロ以内なので無料だ。
車を降りて、鍵をかけた。
「すません。規定で私ができるのはここまでです。」
「タクシーでも拾って帰ってもらいますか。」
「え」
「そうですか?ありがとうございました。」
「それじゃ気をつけて。」
「何よあれ、家まで送ってくれないの?」
「当たり前だろ。あの人反対方向からきてんだから。」
「それにまた他の客面倒みなくちゃいけないんだしな。」
「そうね、世の中には貴方みたいな、どじが一杯いるからね。」
「ばーか。それより腹へったな。」
「あそこに吉野家あるから、まず腹ごしらいして、あったまるか?」
「賛成。」
「あーくったな。それにしても女の癖に大盛り食うなよな。」
「いいでしょお腹すいてたんだから。」
「ところでお前いくら持ってる?」
「えーと。500円。ごめん、今日は一緒だったから、お金おろしてないんだ。」
「まいったな。俺も2000円しかないぞ。」
「しょうがない。駅方向にあるいて、途中のコンビニで金おろそう。」
「私、みずほだからローソンかファミリーマートじゃなきゃ駄目。」
「俺もそうさ。」
「そう、やっぱ気が合うわね。」
「こんなことで気があってもしょうがないだろ。」
「タクシーで家まで帰るのもったいないし、駅まで歩いて、ファミレスでも入って始発待とう。」
「ケチ」
「さっき聞いただろう、ジェネレーターの交換で7万もかかるんだからな。」
「ねえ、もう20分は歩いているわよ。この道あってるの。」
「さっきバス停あっただろ。方向はあってるよ。」
「駅にいっても何もなかったりして?」
「馬鹿いえ、コンビニくらいどこでもあるさ。」
「ねえもう40分は歩いてるわよ。寒いし、風強いし。凍え死んじゃう。」
「大げさなやつだな。」
「ねえ私の前を歩いてよ。風よけにするんだから。」
「あったー!ローソン」
「げんきんな奴だ。走るなよ。轢かれるぞ。馬鹿」
「馬鹿馬鹿いうなあほ。」
「あれ、おかしいな?お前のカードかしてみろよ。」
「何よ。自分のでおろしなよ。」
「あーやっぱり。」
「何よ?」
「みずほ銀行って土曜の夜中はおろせないんだよ。」
「えーそんな!他の銀行は全部オッケイなのに」
「ついてないな。なんでお前、同じ銀行なんだよ。」
「しょうがないでしょう。偶然なんだから。」
「こんなサービスだから、具合悪くなるんだよな!」
「こうなったら駅まであるいて、カード使える店で朝までいるしかないな。」
「もう歩けないよ!寒いし。」
「頑張れよ。もう少しだから。」
「やっと駅着いたね。もう一時間以上歩いてる。おそるべし田舎。」
「全く、埼玉っていったって都会のはずだろ?なんでこんなに何もないんだよ!」
「しょうがないよ。この辺あまり人住んでないんだから。」
「おいまじかよ。本当に何もないぜ。」
「ほんとだね。どうしよう。凍え死んじゃうよ。」
「ばか、大げさなんだよ。」
「ばかばか言うな。ねえ、あの明かりなにかな?」
「行ってみよう。」
「P-Pubだ。」
「何それ?」
「フィリピンパブだよ。もう二時だろ、P-Pubくらいしかやってないよな。」
「そうなの?」
「入ってみるか?」
「いやよ。こんなとこ。」
「しょうがないだろ。いやならお前は外にいろよ。」
「何よ。分かったわよ。」
「いらっしゃい。」
「何時までですか?」
「4時。指名ありますか?」
「ありません。」
「どうぞ。はい、おふたりさん。」
「ここ初めて?」
「ああ」
「おくさん?」
「まさか。こんなどじ。」
「歌うか?」
「なにを?」
「きろろ。デュエットしょ。」
「へ〜歌えるんだ。」
「もちろん。アコ、チェリー、イカウは?」
「えっ、イカ?」
「ばーか、アコは自分、イカウは貴方だよ。」
「なんでそんなこと知っているのよ。」
「うーん・・・それは世界の常識さ。」
「ばーか。」
「はいはいった。」
「よーし歌うか。」
「次何歌う?」
「そーね。」
「おいおい調子に乗るなよ。ただじゃないんだからな。」
「へーそうなの。いくら?」
「一曲200円ついてるんだ。」
「それに、ここ4時までいたら1万5千円はとられるからな。」
「へー高いんだ。」
「どうした?お金ないか?」
「それがさ〜話すと長いんだけど・・・・・・・」
「そう大変だったね。アコお金ないけど1000円貸すよ。」
「え、そんないいよ。」
「いいよ。困ったときはお互いさましょ?」
「へーやさしいんだ。ありがとう。」
「4時、あと。どうする?」
「駅でもいくしかないな。」
「ちょっと歩いたら、ジョナサンあるよ。」
「え〜うっそー」
「なんだ早く教えてくれよ。」
「さよなら!ありがとごぜいました。気をつけね!」
「いい子だったね。」
「ああ。あったぞ、ジョナサン。」
「いらっしゃいませ。ご注文はおきまりですか?」
「私、ドリヤ、うーん高い方と安い方どっちにしようかな。」
「どっちでもいいさ。好きにしろよ。」
「じゃ安いほう。」
「じゃ俺も同じ。」
「かしこまりました。」
「それにしてもさんざんな一日だったな。」
「うん。それにあんたの実態もわかったし。」
「なんだそれ?」
「アコ、イカウ好き。なんていっているんでしょう?」
「ばかいえ。たまにいくだけさ。」
「どうだかね。」
「そろそろ始発じゃない。」
「そうだな。」
「お会計は全部で2520円です。」
「じゃ、カードで。」
「すいません。現金だけなんです。」
「うそだろ。!!」
「お前500円もってたな?」
「ごめん。さっきのコンビニでガムかったから、300円。」
「ばか。2300円しかないじゃんかよ。」
「待って、あの子の1000円があるじゃない?」
「あーそうだ。忘れてた。」
「えーっと。いくらだ?」
「・・・・駅まで320円、2人で640円?」
「もち金780円で140円残りか。とほほ。」
「ドリア高いほうだったらアウトだったな。」
「それに、あの子の1000円なかったら帰れなかったね。」
「あの子きっと天使やわ。」
「ばーか。金なかったら銀行あくまでまてばいいだけさ。」
「でもまだ5時半よ。4時間以上またなきゃならなかったじゃない?」
「ふん。」
「でもあいつなんで金貸してくれたんだろう?初対面なのにな?」
「だから天使なのよ。」
「そうかな?」
「あーあよく寝た。」
「やばー、乗り過ごしてるよ。」
「次でもどってくればいいじゃない?」
「ばーか、次の駅だと改札とおらないともどれないんだよ。」
「そうか?140円じゃね。」
「じゃ歩いてもどればいいじゃん。」
「ビーズの歌といっしょだな。」
「It's a bad connection.」
「それBad Communicationでしょ?」
「うるさい!ば〜〜〜か。」
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