- 素敵な女性たち2
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最寄り駅の違う二人を順番に送る。 計算したとおり本命の彼女が残る。 一声かけてバーにでもいこうかと誘う。 「何故私を残したの?」 「その質問はやぼだし、答えるのは先に帰った彼女に悪いな。」 「そう。それにしてもまた同じホテルのバーに戻るなんて、それこそやぼじゃない?」 「これには意味がある。この場所を印象付けたいと思っただけさ。」 「貴方は結婚しているわ。随分遅かったのね。32歳のときね。」 「それはあまり重要じゃない。いつでもやり直すことはできる。」 「あと一年まって33歳になっていたら、私とめぐり合っていたのに。」 「もう一年まてなかったの?」 「タイミングの問題さ。それにあの時の君は今の君じゃない。」 スーツを着た彼女のラインは素敵だった。 30を少し超えたところで微妙な年頃だ。 美しさは熟成しつつあった。 「素敵なバーね。こんな場所知っているなんて罪だわ。」 「このホテルのいいところはレストランじゃない。」 「君をここに連れてきたかった。」 「それってくどいているのかしら。」 「来年の今頃はこのホテルのレストランでもバーでもない場所で 君と過ごしているかもしれない。」 「乾杯しよう。来年の今に。」 「そうね変わらぬ友情に。」 「今年はもう会わないな。」 「・・・・・・・そうね。」 「今年はもう会えないな」ではなくて、「会わないな」とあえて言葉を変えた。 でも彼女は少し躊躇って「そうね。」と返した。 空白の何秒かが「もう一度会いたい」と物語っていた。 「友情は年内にもう少し暖めておいた方がいいだろう。」 「素晴らしい来年を迎えるために。」 「それに僕はもう若くない。始めるなら今がいい。」 よりそう二人は聖夜に向かって歩くことにした。 夜の帳は静寂と考える時間を与えていた。 Premium Story Makers Copyright © PSM All Rights Reserved. |
メルボルンはロンドンのような風情の街。歩道は車道と境目がないくらい低い。 今でこそ高層ビルが建ち並ぶが、街の中心街にも昔ながらの欧風の建物が残っている。 10年前はチャイナタウンも店が少なくて、ひっそりとしていた。 今は日本食の店もピンからキリまであって、現地人でにぎあっている。 ヤナ川沿いは、流行のウォーターフロント開発で、カジノのあるホテルまで シーフードを中心にしたレストランモールが建ち並ぶ。 ナイト照明に照らし出された遊歩道はシック。 カジノは24時間でレートもさまざまなのでそれなりに遊べる。 いまどきは、レストランでは靴を脱いで歩いている御婦人がいる。 そういえば、日本からの便でも靴をぬいでいる豪州人が多い。 ワーキングホリディとかいって、働きながら日本と豪州で若者が交流するプログラムができてから、 日本の文化が急速に広がったようだ。 ただちょっと解釈が豪州流ということか? 酒を出さない店にはBYO(Bring your own)といって、酒を外で買ってきて持ち込みオッケイというシステムがまだ残っている。 有名なブッチャーの店は親父がやめて客足がおちたので、老体に鞭打ってまた、 昔の親父が復帰していた。懐かしい出会いだ。 ストリートカーにのってウォーターフロントのシーフードにいった。初夏のメルボルンは服装がさまざまだ。 クールチェンジといって日に三回は気温が上下する。 彼女はノースリーブにカーディガン。 こちらはジーンズにTシャツという具合。 「蛎食べるの久しぶりやわ。」 「オーストラリアは一年中食べられるのに?」 「だってこんな店はいるの久しぶりやし。」 「でもカラオケで働いてるんだろ。」 「あーあれ。お金なくなるとお店に行くんや。」 「ふーん。すると普段は何してるの?」 「安宿てんてんとして、絵描いてるんや。」 「絵描き?」 「とんでもないっす。もとは白衣の天使やわ。」 「ワーホリって何もしてなくてもいいの?」 「ううん。本当は牧場とかで働いたりしないといけないんやけど。」 「何でナースやめたの?」 「仕事きついし。病人ってわがままやし。」 「この前なんかな、片手に尿瓶もってもう一方でパン食べてんねん。」 「そういうの平気になる自分がかなわんわ。」 「じいちゃん夜中に何回もよぶんや。」 「膀胱ガンでお腹がはるんやわ。」 「だから浣腸とかするやけど。」 「でも寝れへんて。いくとオッパイ触るし。」 「でも死ぬ前にありがとありがとってギョウサンいいはって、涙ためてはった。」 「おばはん。あんたがおじいちゃんにやさしくしないからやて。」 「もうちょっと通って頂かないとっていったら、根に持っているんやわ。」 「そうか。」 「あの羊一匹3000円やて。」 「やせてるやつ安いんやて。」 「羊いつも描いているし可愛いわ。自由やしな。」 空虚な瞳に一瞬の煌きが宿る。 思わず抱きしめたいと思ったが、思い直した。 この大きな自然と大いなる大地が今の彼女にとって一番の薬なのだから。 *看護婦さんでワーホリ年齢ぎりぎりの人がナースを停職して、なぜか豪州に旅することが多いようです。メルボルンでも何人かの女性と出会いました。 ご意見・ご感想をお寄せ下さい。 ゲストブックにコメントを書く。Premium Story Makers Copyright © PSM All Rights Reserved. |




