明日につづく文学

陽の光のように暖かく ( 著作権がございます。転用はご相談ください。)

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私自身の本です

 「あなた自身の本ですか?」というお尋ねがありました。

  私自身の著書です。

 昨年の9月に、初めて出版した自分の小説です。
いくつかの雑誌(文学界・群像・すばる・オール読物)の片隅に紹介されましたが、本屋さんでは姿も形も見えません。
今はもう、春。 私の本は、いったい何処に眠っているのでしょうか?

無名の人の作品を売るのは非常に困難だと、出版社の方はおっしゃいましたが、
世間のみなさまに本の存在すら知られていないのでは、無理からぬことです。

読んでいただきたくて書いたので、ここで紹介させていただきました。

今日は、作品の冒頭部分をご紹介します。

       ******************************

 あっと言う間に四十九日が過ぎていた。狐につままれたみたいに、どこかぼうっとしたままの父を促して、
そろそろ母の遺品を整理しようと思ってやって来た。
ついでに、それを口実にして二〜三日この家に泊まっていくつもりでもあった。
些細なことですれ違ってから気まずい空気が流れ始め、意地の張り合いが始まると更に複雑化して、この頃、夫との間はいつもぎくしゃくしていた。
息苦しくなってきた私は避難場所を捜していたのだ。
 実家は母が生きていた時と何も変わってはいなかった。家具も小物もカーテンも、何もかもそのままで、
ただ、散らかっていることだけが、母の不在を物語っていた。
父が一階の事務所で仕事をしている間に部屋を綺麗に掃除すると、何もかも元どおりになった。
今にもその辺から母がにこにこと顔を出して、「明日香ちゃん、おかえり。」と呼びかけてくれそうな気がした。
母はいつもたいていキッチンにいた。
母がよく座って家計簿をつけていた、造り付けの小さな家事机の前に座ってみた。
窓から外の景色がよく見える。母が毎日のように眺めていた風景。
でも、こうして母のいた場所から見ると、私にはどこか見慣れない風景だった。
同じ家から見たのでも、私が毎日自分の部屋から見ていたのとは違う。
窓を開けてみる。春らしくなった風がふんわりと流れ込んできた。母の匂いがするようだった。
引き出しを開ける。ここも、生前のまま。
 その時、ふと、一冊の古い大学ノートが目に止まった 。
「何だろう?」
綺麗に洗って畳まれたエプロンの下に、隠されるようにしまわれていたノート。
開いてみると、それは母の日記だった。
 何気なく読んでしまった最初の一ページで私の目は釘付けになり、心臓がドキドキして、次々とページを繰らずにはいられなくなってしまった。
そこには、私のまったく知らなかった母がいた。

   五月二十九日

 私は、きょうもベランダに立って、無意識のうちに空を眺めていた。夏の気配が広がる五月の末の空。きのうも、おとといも、同じ場所に立って待っていた。風が吹いてくるのを。
どんな風でもいい。私の五感を揺さぶってくれる風でさえあれば。
 ベランダの下に見える小さな畑と、それに続く果樹園の間から、かすかに青葉の匂いを含んだ風が柔らかく吹いてきた。干したばかりの洗濯物を揺らし、べランダに置いた鉢植えのサフィニアを震わせた。
 でも、それはやっぱり、私の体の底に潜む苛立ちを吹き浚ってくれる風ではなかった。
私は失望し、空を仰いだまま、小さな溜め息をついた。
 遥か上空から吹き降りて来る見知らぬ風に肌を吹きさらし、清涼な空気を体一杯に吸い込んで、鳥のように舞い上がりたい。
やがて、私の体は透き通り、重力から解き放たれて宙を漂う。どこまでも、ずっと・・・・・。
ばかげた空想。そして、狂おしいほどの願望。
 けれど、風はいっこうに吹いては来ない。
もう何日も、何ヶ月も、何年も、私はこうして風を待ち続けている。

   六月十八日

 今年になって夫と・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

        *******************************


 *** 関心を持っていただけた方は、セイラの 「プロフールを見る」 の所をクリックしてください。
    ちょっといいことが、あるかも知れません。  

 

閉じる コメント(10)

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はじめまして 履歴から伺いました
出版をしても本屋に並ばないんですよね
ブログで宣伝するのも良い方法ですよ
本屋に注文が入れば出版社に依頼が入りますからね
がんばってください。

2008/4/7(月) 午後 3:24 [ - ]

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ありがとうございます。この本に関しては、私が頑張れることはもう何もないのですが、気折れしないように頑張りたいとおもいます。

2008/4/7(月) 午後 4:54 [ セイラ ]

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はじめまして☆ご訪問ありがとうございました^^是非本屋さんに並んだら教えて下さい〜♪興味深い題名だと思いました☆

2008/4/9(水) 午後 1:15 [ lisalisa ]

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本屋さんには並ぶかどうか?
ネットショップでご注文いただけるとありがたいのですが。

2008/4/9(水) 午後 4:50 [ セイラ ]

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ご訪問&コメントありがとうございました。
ブログの匿名性をいいことに、いつも勝手な感想を書き散らしてきた私としては、作家さんの目に触れることもあるのか・・・とちょっと緊張。
作品、ぜひ読ませていただきたいと思っております。
家族・夫婦関係、性のあり方には、私も常々興味をもっています。繊細で重要なテーマですよね。
ブログにもまた立ち寄らせていただきますね。

2008/4/20(日) 午前 9:27 [ naho0112 ]

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nahoさん、いらっしゃい。突然、「読んでください」などと失礼しました。でも、読んでいただけるなら嬉しいです。
お金を使っていただかなくても、お近くの図書館で希望すれば購入してもらえるようです。よろしくお願いします。
naoさんは手芸がお上手なんですね。私は針仕事は不器用なので尊敬してしまいます。お子さんの物をいろいろ作ってあげられたらいいですね。私が作ったのは幼稚園のお道具袋だけ!(笑)

2008/4/20(日) 午前 11:17 [ セイラ ]

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セイラさん。やっと読みましたよ。実はちょっと前に読み終わっていたのですが、自分の中で解決せず、アレコレ思ってしまってて、やっと今から記事を書きたいと思います。
感じた事、正直に書きます。
あとで、遊びに来てくれたら嬉しいです。

2008/5/27(火) 午後 4:43 わぐま(*^。^*)

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わぐまさん、読んでいただけてとっても嬉しいです。
「たった一つの抱擁」は私の小説の第2号です。力一杯書きましたが、構成力・描写力ともに未熟さが自覚されます。そして、その前に、小説という物のスタイルに試行錯誤の段階です。
わぐまさんにいただいた貴重なご感想の意味をよ〜く考えて、次の作品に生かしていきたいと思います。
ありがとうございました。ご感想をいただけて、ほんとうに幸せです。

2008/5/28(水) 午前 11:35 [ セイラ ]

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いえいえ。。。「正式な小説のスタイル」の定義は知りませんが、セイラさんの本も楽しめましたよ。
いろいろな本があるなか、珍しいスタイルでしたが。。。アリなんじゃないですか?ただ、「夫の声」も気になったのも事実ですが、セイラさんからのコメで納得。
描写力不足なんですか・・・???私は好きだけどなぁ。。。

私の感想を参考に????いやいや、軽く聞き流して下さい。
もっと気になるのか、2作目なんですか???1作目は????
どこで読めますか??

2008/5/28(水) 午後 3:39 わぐま(*^。^*)

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わぐまさん、1作目は、「たった一つの抱擁」とはまったく別の、言うならば伝統的なスタイルで500枚の長編を書きました。
文学界のこともまったく知らず、たまたまその時の字数制限に合っていたという理由だけで、すばる新人賞に応募し、あっさり振られてしまいました。
つまり、1作目は原稿のまま、私の手元で眠っているわけです。
私の胸の中にあるテーマはどれも目新しいものではありません。むしろ古くからずっとあるもので、「斬新」を求める文学賞向きではないと解ってきました。仕方ないですね。
2作目を本にしたのは、2作目の方が衝撃性があって、出版社に受けそうな気がしたからです。
小説は書きたいように書くだけではだめだということが解ってきました。読者を考えること、読んでもらう(世に出す)工夫が必要だということ・・・いろいろありますね。
めげずに頑張ります。応援してください。

2008/5/28(水) 午後 10:58 [ セイラ ]

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