美は私を変える。人を変える。

被災された皆様にお見舞い申し上げます。どうぞお力を落とさずに。2011年7月。

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新しい先生に実力判定のために聴いてもらう曲を練習している。慣れたベートーヴェンがいいと思うので、ソナタ集から復習ということになった。

私にとって一番弾きやすいのがベートーヴェンだ。10歳の時の初恋(コンチェルト5番『皇帝』)から今に至るまで、彼の音楽は私の心から消えた日がないと言っていい。まるで私の音楽の根っこのような存在である。

ベートーヴェンをやり直してみてつくづく思ったのだが、ラヴェルの音楽とベートーヴェンの音楽とではベクトルが丸きり逆だということ。ベートーヴェンのエネルギーは的(音楽的解決)に向かって収束するのに対し、ラヴェルはエネルギーが放射線状に拡散するように感じられる。演奏していてベートーヴェンが弾きやすいと感じるのは、この収束の感覚が私の感性に合うからだ。ターゲットを的確に絞り、そこへエネルギーを効果的に集中させ、きっぱりと解決すること。それこそがベートーヴェンの音楽の柱だと思う。

ラヴェル『水の戯れ』の楽譜の一部に監修者ペルルミュテールの指示があった。ちなみにペルルミュテールはラヴェルに強く傾倒し、直接レッスンを受けた経験のある貴重なピアニスト。その言葉はラヴェル本人からのメッセージと私は信じている。7連符が続く68小節目のところに「軽く、もっと空気のように」とある。ほらね空気だ。それはこの曲を理解する上で大切なポイントであり、やはり拡散がキーワード。

またペダルの使用について、リカルド・ヴィニエスの言葉が書かれてあった。
「ラヴェルは高い領域においてのペダルは響きをはっきりさせることよりも、大気の振動のような、ぼかされた印象を与えるために用いることを望んでいた」

このような一種つかみ所のない拡散の感覚はラヴェルだけでなく、ドビュッシー、フォーレなど、フランス音楽全般に言えることではないかと思う。もっと視野を広げて言えば、絵画もこの時代は印象派が台頭し、ルノアールなどのふんわりとした輪郭と色調が好まれたのだった。

ベートーヴェンに比べラヴェルが遠くに感じられるのは、私が未だにこの「空気の拡散」の感覚に馴染んでいないためだ。

それで拡散したあとどうなるの? 結論は? と考えてしまう野暮ったさが無くなったとき、初めてラヴェルが綺麗に弾けることになるだろう。まだまだ先のことになりそうな気がする。芸術の歴史の浅い東洋の小国で、時計ばかり見て暮らしている私なんかに分かる日が来るのだろうかという気さえする!

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閉じる コメント(10)

確かに、フランスものは、掴みどころが無い感じがしますね。私の師は安川先生の門下だったこともあり、フランスものがお得意ですが、私はまだ、というかきっとこの先も、掴めないまま終わりそうです。生徒が来年のピティナの自由曲で参加できるG級で花火を弾くことになりそうですが、どうやって教えようか今から頭を悩ませています。。

2007/11/30(金) 午前 9:03 sam**mil*s_d*vis

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まだわたしは未経験同様のフランスもの、、、。はやく弾いてみたいですけど、大変そうですよね 笑。ドビュッシーの弾きやすいのから先生に頼んでみようかしらね☆いつか教えていただいたフランソワのラヴェルは繊細できれいでした。

2007/11/30(金) 午後 0:54 [ blu*her*min* ]

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答えを出さない美もあるんやないかな。フランス人といったらプライド高くて気難しいイメージですけど、音楽となるとサイコーに気難しいことになるんでしょね。ラヴェルのボレロは好きです。なぜか興奮してしまうんですよね(爆)。

2007/11/30(金) 午後 4:28 [ swe*ts*eetp**ato ]

サミーさん、安川加寿子さんはドビュッシーで有名ですね。フランスものが得意な人はトコトンお上手ですので、うらやましいです。花火のご指導、頑張ってくださいね。

2007/11/30(金) 午後 9:43 サン・ジュスト

ミントさん、フランソワは実に繊細ですよね♪ ドビュッシーは『アラベスク』あたりからいかがですか? がんばってね。

2007/11/30(金) 午後 9:53 サン・ジュスト

sweetsweetpatatoさん、それ正しいですね多分。答えを出さないことが答えみたいな。『ボレロ』はすごい曲ですよ。単純な音楽と思って軽く考えるリスナーが多いのですが、大間違いです。興奮されるなら本物ですね(笑)。

2007/11/30(金) 午後 10:04 サン・ジュスト

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ベートーヴェンとラヴェルの比較は、まさにサンジュストさんが常日頃、広く尚且つ深く音楽と向き合ってお勉強された見解、とても興味深く読ませて頂きました。

ベートーヴェンですらまだ駆け出しで、フランス物ときたら未踏の状態ですが、とても分か易く、参考になりました。

サンジュストさんの心の中の恋人は、ベートーヴェンさま、、、ですね?

2007/12/1(土) 午前 0:17 *:..。*みゆっぴ♪*:..。*

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ベートーヴェンは自分自身でも、音楽とは、すべてが最終小節へのアウフタクトだと言ってますね。。。

2007/12/2(日) 午前 10:26 [ さとこ♪ ]

みゆっぴさん、毎日お話ししているのでブログでコメントすると不思議な感じです。あっその質問にはお答えしましたね(笑)。今夜はブログのほかにも用があって、連絡できなくてごめんね。

2008/1/19(土) 午後 11:45 サン・ジュスト

さとこさん、いつもコメントありがとう。それって究極の言葉ですね。含蓄に富んだ、素晴らしい言葉です(うるうる)。

2008/1/19(土) 午後 11:47 サン・ジュスト


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