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昼休み。友則に指定されてやってきた食堂は混みあっていた。友則は窓側の席をふたつ、確保して待っていた。
席に荷物を置いて食券機に並びながらメニュー表を見ると、ここのおすすめは「名物チヨガクランチ」であることがわかった。前に並んでいるひとの6割くらいも、これを買っていた。
「試してみるか。」異存はなかった。
チヨガクランチはごはんと味噌汁、それに鶏のから揚げがついて350円という値段だった。ただどうやら日替わりらしく、きょうはたまたま鶏のから揚げであるらしい。学食が安いと言うのはどうやら本当のようだ。
「まずい。」それも異存はなかった。友則の言うとおり、たしかにうまいと言えたものではない。ただのごはんを、どうしたらここまでまずく炊くことができるのだろうか。
「それで、氷見の件だけど。」友則が話し出した。「いとこの話だと、あいつは幼稚園のとき県外から越してきたらしい。」
「富山県外?」直哉はから揚げを口に運んだ。しょっぱい。
「ああ、よくわかんないんだけど、地主の子らしい。父親は会社も経営していて富山市では結構な資産家だそうだ。」
「え、県外から来たんだろう。それで地主っておかしくないか?」
「だからよくわからないって言ってるだろう。」友則は味噌汁をすすった。味噌汁は出てきたときから冷え切っている。
「それでどうやら小中学校のときはいじめられていたらしい。」
「あの性格だもんな。」塩をごはんにかけた。これで少しはましになるだろう。友則もそれに倣った。
「それ以上のことはいとこも知らないってよ。」
「県外ねぇ…。」ふっとよぎった。まさかな。いや、関係ないだろう。
「父親は会社やってんだよなぁ?なにしてんの?」
「タクシー会社らしい。」
「うちのおやじは不動産屋だ。関係ないな。」
「いや、氷見は地主の子だ。おやじさんの勤めている不動産屋がなにかしたんじゃないか?」気づいたら友則はもう食べ終わっている。
「一介の営業マンがなにを恨まれるんだよ。それにおやじの会社の営業エリアは首都圏だ。」
そうは答えたものの、直哉はなにか引っかかった。家に帰って、その日は優一が帰って来るまで居間にいた。
「父さん。」とは言うものの、優一は直哉の実の父親ではない。
「なんだ。」
「富山って行ったことある?」
「富山?北陸のか?いやないけど、どうした?」
「いや、富山から出てきたやつがいてさ、話をされたんだけどいまいちよくわかんなくって。」
「まぁ、それはおれにとっても同じだ。どこにあるのかもよくわからない。」
そう言うと、台所に向かって叫んだ。母さん、風呂沸いてるか?食事の準備をしていた美里は、ああ、できてる!できてる!と面倒くさそうに叫んだ。
「じゃ、風呂入ってくるか。大学はどうだ?」
「楽しいよ。」それを聞くと優一は満足げに風呂場へ向かった。
どうやらおれは氷見から、おれ自身の問題で恨まれているようだ。でも、なんで?
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