絶対絶命のチャーンス!

いたってフツーな日記調のブログです。ただ、「変わっているやつ」が書いているので、「フツー」じゃないかも・・・

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『所縁』第十話

部室に戻ると、どよめきが起こった。「直哉、どうした?」友則が近寄ってきた。


「上から醤油をかけられた。氷見、悪い。おまえから借りたやつ、汚れてしまった。」

憲法の問題はなんとか字は読めるが、醤油のしみが太い1本の線として紙の真ん中を通っていた。

「ああ、いいよ。気にしなくて。字は読めるから。それよりも、服…。」

言われてみて気づいた。服には醤油のしみができていた。


「こら、ひどいな。輪島、水につけてきた方がいいで?」千葉が言った。

「直哉、ジャージ持ってきてるから貸すよ。」そういうと、友則は直哉の手を引いて水道に向かった。

醤油をかけた犯人は、氷見じゃないか。直哉は氷見の顔を見ながら、疑った。





 
8月1日。新宿駅東南口のエスカレーターの下には昼11時集合だった。きょうはバケーションの夏季旅行である。バケーションは総勢50人のサークルだが、新宿から信濃大町まで全行程、鈍行で移動する。

全く「ひとの迷惑」というものに疎いサークルだ。

 予め青春18キップを購入しておくように言われていたので、それを購入するために直哉と友則は10時に新宿駅に着いていた。

青春18キップは全国のJR線で使える5枚つづりの切符だ。JRの1日乗り放題の切符が5枚つづりになっているようなものだ、と代表の舟橋が言っていた。ただし鈍行しか使えない。



先輩たちの話を聞いて回ったところによると、今回の旅行で使うのは5枚の内、2枚。残り3枚は今回の旅行のあとにプライベートな旅行のときに使うらしい。先輩たちはそれを「配慮」と呼んでいた。

要は「サークル活動のあとにあまったキップを使って、プライベートなことに使っていいぞ」ということらしい。ただ、キップを買う際は自腹なのだが。去年も青春18キップを使ったらしく、岩瀬と水橋は2人で伊豆に行ったらしい。野田の話によると、どうやら傷心旅行だったそうだ。


「今日の予定はどうだったっけ?」


「新宿を12時12分に出る中央線に乗る。それで高尾、塩山で乗り換えて松本に着くのが17時半くらい。松本からは大糸線で、信濃大町に着くのは18時38分だ。」直哉の頭の中には今日の予定がしっかり暗記されていた。

「信濃大町駅からは舟橋さんのおじさんの運転するマイクロバスに乗るんだけど、25人しか乗れないから1便と2便に別れるんだ。」

「たしか1年生と2年の先輩の半分は1便に乗って、ペンションで先輩たちが来るまでの間に夕食の準備をするんだよな。」友則があごに指をあてて言った。

「そう、飯を食べたらきょうはゆっくり休憩で、あしたの山登りに備える。」



11時になった。しかし50人中、25人しかいなかった。どうして電車が出る1時間も前に集合するのか、意味がわかった。そういえば舟橋もいない。舟橋は11時20分に現れた。



「全員いるかぁ?」


「おまえを待ってたんだよ!」どこからか野次が飛んだ。


直哉はあたりを見渡した。氷見もいた。鹿島と話しているところだった。氷見と鹿島は仲がいい。

「氷見君、もう18きっぷ、もう2回分使っちゃったの?」

「いろいろあってね。」

「はい。静かに!」舟橋のひと言で静かになった。




「ではいまから予定通り、約40分後に出る12時12分発の中央線快速高尾行きに乗る。一箇所に固まって電車に乗ると迷惑だから、好きなように乗ってくれ。とりあえず高尾に着いたら、降りたホームで待機。全員いるかどうか、確認する。質問があるやつ、いるか?」

ないようだ。


「解散!」







集合早々、解散とはなかなか粋だ。直哉は友則、千葉、鴨川、泊、内灘と新宿駅構内で食料を調達することにした。なにせ6時間半も電車にゆられっぱなしなのだ。

「ねぇ、だれか遊ぶもの持ってきた?」キヨスクで鴨川がポテトチップスの袋をながめながら聞いた。

「わたしトランプ持って来たよ。」と、泊の声。どこにいるんだ?

「おれはマージャンや。」この関西弁、千葉だ。

「そんなもんどうすんだ!?」内灘のツッコミが入った。

「あほ。遊ぶに決まっとるやないけ?」


「わたしたち、遊び方しりませーん。」鴨川だ。

「おい、輪島。おまえら知っとるか、マージャン?」

「一応、は。」バスケ部の部室で隠れてやったことがある。

「よっしゃ、ほな夜やろか?」

「加賀はどうや?あれ、加賀?」そういえば友則がいない。

とりあえず5人はレジを済ませてから、キヨスクを出た。



「どこ行ったんだろう?」内灘が心配そうな声をあげた。

「あ、いた。」その方向に目をやると友則が歩いてきた。

「どこ行ってたんや?」

「ちょっとね。」友則の冷たい目が、一瞬直哉のほうに向けられた気がした。

「ちょっと早いけど、そろそろホームに行かない?」鴨川が腕時計を見ながら言った。



全員異存はないようだ。


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