何しろ面白い、わかりやすい。今まで読んだ、美学者、哲学者、美術評論家、歴史家などが著した美術関係の書籍に比べて、格段に読みやすく内容も面白く、購入して2日目で全体で約400ページのうち、200ページを読了。この調子で行くと、もう2,3日で読み終わってしまいそうです。せっかくの楽しみがそんなに早く終わってしまうのが、ちょっと残念な気さえするほどです。
内容は、まさに題名のとおりなのですが、岩村透という人、東京美術学校(いまの東京芸術大学美術学部)の草創期の教授で、美術史と英語を教えた先生。
なぜ、この本を見つけたかというと、先日から調べている量徳小学校の前身に当たる小樽郡教育所の鵙目貫一郎、この人と昌平坂学問所の同級生の久米邦武、この人は、歴史家で東大教授、「神道は祭天の古俗」と主張したことにより、国粋主義者から批判を受け、東大を辞職、のちに早稲田大学教授をつとめた歴史学者ですが、その長男に当たる久米桂一郎は、画家で黒田清輝などとほとんど同時にパリに留学、日本に西洋絵画を導入するうえで先駆者の役割を果たしました。この久米桂一郎が、岩村透と留学先で知り合い、日本に帰国してからも、東京美術学校でも同僚として親しかったということから、久米邦武、桂一郎父子の作品や資料を集めた久米美術館のデータをしらべるうちに、岩村透という人が出てきて関心を持って調べたら、この本の存在が分かった、ということです。
これまで、明治、大正時代の美術史関係の資料で時々名前は出てくるけれども中々詳しいことが分からず、調べようも無かった人が今回この本で、ぐっと身近に感じられるようになりました。
率直でわかりやすい語り口、名物教授といわれた歯に衣着せぬ毒舌やユーモア、さらに学者としての誠実で厳しい学問への姿勢。これらが生き生きと語られており、何よりラスキンからモリスにいたる「芸術は人間の労働の喜びに他ならない」という理想に共鳴した、岩村の美術と社会の係わり合いについての考察は、ほんとうに圧巻です。
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