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希少種の保存

地球の周りを周回している宇宙船があった。

かれこれ1000年近くこの星の生態系を監視しているX星人の調査船だ。


調査開始からこの星の人間という生物をはじめとするあらゆる生き物のサンプリングと生態系観察が主な仕事だ。

すでに船の研究倉庫には各種のサンプルや資料が1000年分ほどたまっている。


「最近草食系男子という新種が発生しているようだが・・」調査主任が宇宙ビイルを飲みながら調査員に訊ねた。

「はい、どうやら草を主食にしている新種と思われます。
外見ではなかなか判別がつきにくいのですが、戦闘能力に劣り、繁殖への興味は極めて低いとの報告があります。」

「ここ10年ほどの統計によると地域差があり、特にアジアのこの小さな島国で・・肉食女子といわれているこれまた新種に、ほぼ奴隷的な扱いを受けているようです。実際に草食男子を捕食するかどうかは現在調査中ですが、この種が持っている原始的電波通信機の受送信サンプルからは、「ちょーびみょう」などの文字列が抽出されていることから、草食男子の腸組織なども食っている可能性があります・・。」



調査主任はカマを持った緑色のカマキリといわれる生き物や、網を張って捕食するクモなどの調査資料で支配側である女種が男種を食う記録を見ながら

「この星にはおなごに食われるという生態系の特色があるのかもしれないな・・しかしこのままでは折角発生した草食男子という貴重な種がいきなり絶滅するかもしれん。全体の数も減ってくるとの予測もあるし、なんとかサンプルとして存続させねば、母星からなんといわれるかわからんし・・」


一通りの対策を練っておかねばなるまい。


「とりあえずちょっとだけ増やしとけばいいんだろ・・・・」


調査主任は資料を出して部下に命じた。


「人間の繁殖に必要な「これ」を大至急準備しろ!」
資料には「これ」がおなごという一般種と一緒になると人間というものは繁殖をするとの記録がある。

実際に生態系に使用するのは初めてだ。

「テストケースなので、この島国の生物密集地帯からすこし離れたところに「これ」を散布しろ!草食系男子を増やす目的だから、おなごも肉食女子以外がいいな。草を主食にしているおなごをリサーチしてピンポイントで「これ」を散布するんだ!」

部下の調査員は、調査主任の差し出した「これ」の写真を持って倉庫に出かけた。

なにせサンプルが多いので探し出すのにかなり手間取ったが、ようやく見つけ出した。

ちょっと写真と違うようだが、ぬめぬめしている事や動き回る姿など、資料の記録とは合致している。

資料より色が黒いようだが、これは個体差だろう・・・・・調査員は早速複製を作成して、調査小型船に積み、言われたとおりに複製した「これ」を数十匹単位で複数の個所に散布した。


2009年○月○日 夕日新聞 三面記事・・・
空からおたまじゃくし!夏の怪奇現象か!
昨日、畑で野菜の手入れをしていた土田トメさん(90歳)が突然 空からオタマジャクシが降ってきたと話した。トメさんは「畑で胡瓜をかじっておったら突然降ってきただ!長年畑仕事しとるがこんなのは初めてじゃ!」と日に焼けた真っ黒な顔で驚いている。他にも各地で畑仕事をしている農婦からオタマジャクシが降ってくるという目撃情報があり、いずれも原因は分かっていない。



おしまい・・(^o^)//



あれはナンだったんだろ??ね〜(笑)

まったく近頃の若いもんはなにを考えているのかわからない。
私は55歳。事務部門一筋で30年。あと数年で定年退職だ。子供たちが独り立ちするまでもう少し頑張れば何とかなりそうだ。家のローンはまだ残っているが、妻と働けば返せる見込みだ。

私の会社は小さいが、それなりに有名でバブル崩壊を乗り越え、比較的順調に歩んできた。これも地道にベテランが頑張ってきたせいだと私は思っている。
しかし、近頃の若い社員はどうだ?
コピー機の用紙が切れていてもお構いなし、つまり放置だ。自分の仕事が終わればさっさと帰るし、今日の飲み会の話しかしない。
「これどうなってんだ?」
「そんな仕事言われてないっすけど」

向かいの席で係長の斎藤と入社5年の青木の会話が聞こえる。
「同じ仕事なんだからあたりまえじゃないか!」斎藤は既に頭にきている。
「斎藤さん、俺の業務分担にはそんなこと乗ってませんよ、だから知りません!やんなくてもいいって事でしょ」

まもなく斎藤はぶちきれてタバコ部屋に直行するはずだ。俺もあとで付き合うことにするが、この青木の小僧だけは許せない。有名大学出ているらしいが、仕事なんぞなにもできやしない。まあせいぜい人を馬鹿にする能力には長けている。
私もこのまえ青木に資料の作成をお願いしたのだが
「おれってそんな暇な仕事するつもり無いですよ」
などとくそ生意気に言ったもんだ。いつかこいつが泣く顔を見てみたいと思う。まったく腹が立つ事ばかりだ。

日曜日・・・私は新聞を読み、のんびりと時間を過ごしている。庭の盆栽は私の趣味だ。なんせ手入れすればしっかりと答えてくれる。
突然電話が鳴った。今日、妻は買い物で居ない。子供達も友人と遊びに出かけているので私ひとりだ。
「もしもし・・」
「ああ! 望月さんですか! 私エコーという会社の佐藤と言います!こんにちわあ!・・」
やけに元気な電話だ。

「年金の有効利用のご案内なんですがねえ!」
折角の休みでのんびり過ごしているのに、なんだ! 年金? そんなことわかっている。私達の世代はどうせあまりもらえない事くらい。
しかもなんでこいつは私の電話番号を知っているのだ! そうか、このまえ高校の名簿作成で書いた憶えがある。誰かが名簿を売ったんだ。だれだ!

「望月さん! 聞いてるんですか!」
なにっ! 勝手にぺらぺら一方的に話しやがって!いいかげんにしろ!
私は電話を切った。すぐさま電話が鳴った。
「望月さん! 切るなんて失礼ですよ! こっちも仕事なんですから!」
なにっ! いいかげんにしろ! 仕事だと! そんなことは私には関係ない!
私は電話を切ったが、また電話がかかる。頭にきた!もう出ないぞ!


その日は何度電話が鳴っても出なかった。私の怒りは1時間も収まらず、盆栽の一枝がその犠牲になった。
夜 妻が帰宅するなり「おとうさん!なんで電話に出ないのよ!」と言う。足元には沢山の買い物袋。
「駅から大変だったのよ。運んでもらおうと思って何度も電話したのに!もう役に立たないんだから。どうせ酒でも飲んでたんでしょ!」
なに! こいつも一方的に決め付けやがって! 私がどんな思いで電話に出なかったかわかんのか! 俺は荷物運び屋じゃないぞ! 

頭にきた私はタバコでも買いに行って少し頭を冷やそうと玄関に向かった。玄関にはやけに馬鹿でかい息子の汚い靴が乱暴に脱ぎ捨ててある。しかも私の靴の上に!
いいかげんにしろ! 私の働きで食ってるんじゃないか! 少しはありがたいと思え!
「痛ってえ!」
下駄箱の角で足の小指を打った。なんでここをぶつけるんだ!なんで小指なんだ!なんでいつもここなんだ! くそう!

痛む足をいたわりながらようやくタバコの自動販売機についた。いつものハイライトだ。これは私の若い頃からの銘柄だ。ほっとする。千円札を放り込んだ。赤いランプを押す。
「出てこない」
もう一回押すが出てこない。なぜだ、売り切れてはいない。よく見る…
赤い小さな文字で「つり銭がありません」 
なに! 老眼じゃ見えないところに表示するな! 折角歩いてきたんだぞ! つり銭くらいしっかりと入れとけ! 頭にくる!


翌日、同僚の斎藤と久しぶりに飲みにいった。
斎藤は昔から話があう。私達は少しのつまみとビールをしこたま飲んだ。小遣いは少ないがたまにはいいだろう。
帰りの電車も朝と同様大変だ。ホームにも大勢の人がいる。
突然、私の前横のだらしない若者がホームにガムをはき捨てた。
なに! ここはホームだろう!靴の裏についたガムは取れんのだぞ! 
私は酔っているせいか若者に注意しなければと思った。

「君!ここはごみ箱じゃないんだぞ!」
「なんだよおっさん!うぜえなあ!」

何!おっさんだと! うぜえ?! うちの馬鹿息子の言葉とおなじじゃねえか!
「なんだと! こっちこい! 突き出してやる!」

私は若者の腕を乱暴に掴み、駅員室に連れてゆこうと思った。もう許せない!
その瞬間、顔面に痛みが走った。私のめがねが割れて飛んだ。さらに若者は膝で私の腹をけった。流石に周りの何人かが私達に割って入ってくれた。

こんな暴挙を許す事など出来ない。世間は正義を支持してくれるはずだ。私はそこにいたスーツ姿の若者に「私は何もしていないですよね」と同意を求めた。

若者は「いや、先に手を出したのはおっさんですよ」
なにぃ! おまえもか!見てただろう!おかしいと思わんのか!
私の周りで冷ややかな視線を送っている一人がタバコをつけた。
こらあ!ここはホームだぞ!禁煙のはずだ・・・・・・禁煙の・・・・禁・・・・・ 

翌日も痛い顔をさすりながら出勤した。会社員として時刻通り出社は当然だ。
最近花粉でマスクしている人が目立つ。私の周りにも何人かいる。
「ごほっつ!ごほ!」隣の会社員が咳き込む。
これは花粉じゃなく風邪じゃないのか! おい 休めよ! 人にうつるじゃないか!
まったく人への迷惑考えてないぞ。まったく迷惑だ。

こら!後ろのばか。漫画が私の頭に当たっているぞ。だいたいな、漫画読むんだったら経済新聞か英語でも勉強しろ! まったく!


〜お疲れ様でした。 このシリーズはこれでおしまい☆
BY SAIUN

電車〜その4・不祥事

その4 不祥事
「部長、ちょっと・・・」
事務部長が不機嫌な顔でやってきた。
企画部長の俺は、この仕事に就いてから2年。以前は営業マンとして世界中を飛び回っていた。突然の内勤職で少々戸惑ったが、なんとか慣れてきた。

なにせ会社の中の仕事はややこしい。営業では客との付き合いだが、社内の面々の方が話がややこしい。
「西日本支店の件なんだが・・・」
先月、若い営業マンがパワーハラスメントを受けたと社内ホットラインに連絡があって以来、状況確認が行われている。

この仕組みは本人には全く気付かせる事なくシークレットで調査が進められている。
一般的には公開していないが、この調査部隊は表面に出ることなく水面下で進められている。
これはどこの会社でも同じようにやっていることだ。

損害保険会社のIIG社などではこの調査組織運営について高額のコンサルティング代金を取ってサポートしている。

「結局、どんな結果だったのですか?」
「ひどいもんだよ、最初はパワハラだったと思ったんだが、セクハラも一緒だよ、しかも複数が絡んでいる・・頭痛いね」
「複数ですか」
「課長は確定犯だが、ブロック長も一枚かんでいる」

そういえばこの二人は昔からあまり評判はよくない。
事務部長もあまり評判はよくないが、人には厳しい、いわゆる日本型管理職の典型だ。

「山田課長がな、新人の子を飲みに誘うまではよかったんだが、その後自宅に電話の攻撃だよ。当然しつこいので断ったら出張型のエリアに配置したんだってよ」
「まあ、誰かが回んなきゃいけないんでそれは仕方ないでしょう」
「違うんだよ、やつを出張させておいて、課長はこっそりそこへ出かけて、またまたしつこく誘ってんだって。周りの目を気にしなくて堂々と誘えるからなあ」
「ブロック長はどうしたんですか」
「加藤は山田の腰ぎんちゃくだから、自分も似たような事初めて、こいつは内勤のおばさんにつきまとっとるらしい」

加藤らしい行動だ。奴は山田より一歩前には絶対に行かない。常に私は課長よりワンランク下で・・との態度が課長には心地よいらしい。これも一種の生き方だが、俺は関心しない。むしろ嫌悪感を抱いてしまう。

「まったくどういつもこいつも!どうしようもないやつ等だ。加藤の意地汚い生き方もおれは好かん!。誰かにすがって生きていこうなんて最低だな!」
事務部長はだんだんと高揚して、周り中に聞こえるくらいの声で話を続け始めた。

このフロアには小さいながら社長室がある。社長はみんなの顔が見えるように扉も開けっ放しにしている。
事務部長のでかい声が聞こえたのか、
「何かあったのですか」といつもどおりに紳士的にお越しだ。
「いやいや、つまらん事で社長のお手を煩わす事ではありません。まあ私が何とかする問題ですから」
いつもの都合のよい返事だ。
「それより今日お暇でしたら一杯いきませんか? 私も日ごろの事でいろいろご相談したい事もありますし」
社長は普段あまり誘われないタイプなんで満面の笑顔で答えている。

午後6時、若い社員はデートの約束とか、仲間内での飲み会に出かけるのか一人一人と先に帰ってゆく。俺もそろそろ帰ってうまいビールでも飲んでゆっくりしよう。

玄関でタバコを一服していると、事務部長が社長の少しだけ後ろでもみ手をしながらへこへこと社長にすがりついてゆくのが見えた。こいつも山田と一緒だな。
でも少し哀れに思った。

電車を降りて駅前のコンビニでビールを買って帰る。俺の家は駅から3分だ。俺の前にはまじめそうな中年のオヤジがぶつぶつ独り言言いながら歩いている。少し危ない。 

次回は最終章・・・
BY SAIUN


「幸子 最近勉とはうまくいってんの?」
細いタバコをぷかぷかさせて沙織が問い掛けてくる。
沙織は白薔薇学園大学出身で32歳、いわゆるお局様だ。うちの会社にはこの大学出身の女性が多いのでなんとなく固まっている。もう一つの派閥は自習院大学。ここは皇族などで有名な大学でいわゆる旧家出身って娘が多い。お互い意識しているみたいで、そこそこ難しい。
私は地方の私立出身だからどちらにも属さす、適当に付き合っている。
実際の派閥争いはあまり表面化していないのだが、裏では悪口が飛び交っている。

「勉は今月ブラジル出張だからお暇なの」
「じゃあ、どっかでいい男探しに行こうかあ、あいつも向こうできっとエッチしてっからさ」
「・・・」
多分、そう思うけど、それはあまり追求しても仕方ないと思う。私も何度か遊んでいるし、お互いばれなかったらいいんじゃないかって。
でももう28歳だし、親からそろそろ結婚も勧められているので、なんとなく追い詰められている感じもする。
「いいよ!」
「じゃあ、今日6時に玄関で。七本木のクラブでもいこ」
沙織は年より10歳くらい若く見えるので、まだこんなところに出入りしている。お目当ては外人中心。日本人じゃなかったらなんでもいいみたい。

確かに日本人は不恰好に見える。
いつもの通勤電車でもあまりかっこいい人は見かけない。
着ているものはおんなじに見えるし、大体が威張っている。
座席に座っているおやじたちの半分はなぜか腕組みしているし、またをどんと広げて乗っている。あとの半分は居眠りしている。映画に出てくるようなかっこいい中年なんかいやしない。

私が乗る駅は大抵混んでいるので座ったためしが無いが、つり革は何とかもてる。
でも大股開きのおやじの前で立つのは苦手にしている。
あまり近づくとなにやら怪しげな距離だし、なんせ胸とおやじの目が近づくのは少し抵抗がある。でも少し後ろに立つと今度は後ろのおやじに密着してしまう。
私は比較的小柄なので周りの男の懐に納まってしまうから何とか自分の周りに空間があるほうが安心感がある。
このまえ、帰りの電車でつり革つかまりながら寝てるおやじがいた。なんで立ちながら眠れるのだろ?
きっと近い先祖に馬とかがいたに違いない。馬は立ちながら寝るらしいから。

来月から女性専用車両が導入されるらしいのであと少しの辛抱だけど、そうなると普通の車両に乗り込むのも抵抗がある。
若いのも一緒。ちゃらちゃらしているし、大体つんつくつんの髪の毛のどこがいいのかわからない。股引みたいなびったりスーツも嫌いだ。
勉は普通の格好している。一応坊ちゃんだし、結構かっこいいし、英語もばりばり。エリート社員って感じだ。帰国子女だから考え方も結構自由。お互いにいい距離をおいて付き合っていると私は思っている。

「幸子はタバコやめたの?」
沙織は三本目のタバコに火をつけながらいつものねちっこい目つきで訊いてくる。
「たまに吸うよ。もらいタバコだけどね。特にお酒のんだ時はね」
これはうそ。家では結構吸っている。東京に出てきてから一人住まいなので誰にも文句言われないし、ただ部屋が臭くなるのでベランダで町の明かり見ながら吸うのが私の好み。
「今日さあ、なんかいいことあったらあとは宜しくね!」
沙織は乱暴にタバコを消してデスクに戻っていった。

結局今日は軽く飲んで普通に帰るんだろうなと思いながらデスクに戻る。
課長の木本が鼻毛を抜いていた。

午後の仕事を終えた私は佐織にメールした。でも返事はない!結局一人でいったんじゃないの。私は今日もすっぽかされちゃったらしい。
いつものように電車に揺られて帰る。つり革につかまって寝ている酔っ払いがいた。隣には確か山晴商事だと思うけど、コマーシャルでよく見かけるバッチつけたおやじもいるけど、道でこけたのかなあ? めがねが割れてるみたい。
勉に逢いたいなあ・・・

その4 不祥事・・に続く
BY SAIUN

電車〜その2・会社


このまえ会社で「クールビス推奨」がされて以来、みんな自由な格好で来るようになった。
俺は駆け出しの27歳、仕事は内勤職だ。
入社してから伝票や社内の伝達など雑用を任されている。
俺の仕事は営業ではないので、結構好き放題の格好をしていたのだが、課長の山下から
「学生じゃないんだぞ、いいかげんにしろ」
等と叱られたものだ。それからブレザーくらいは着るようになったが、ネクタイはしていない。
営業部のおやじ共からはたまに「おまえはいいよなあ」と言われてきた。

しかし、今年はどうだ。
みんなネクタイなしだし、俺のいつもの格好を真似てやがる。
ところが、おやじ共はネクタイはずしただけで、いつものまんまだ。
これじゃ飲み明けの酔っ払いおやじと一緒だ。
「いやー クールビスはいいねえ」
山下課長は今日もご機嫌だ。でっかい扇子をばたばたしながらふんぞり返っている。
半そでのシャツに不格好なランニングシャツが透けて見えている。
もちろん腹も十分に出ている。しかも声はでかい。

「小林君、君はいつもセンスのいいシャツをきているねえ、どこで買ったの?」
ばかばかしい質問だ。
「マイエーのビスコーナーで売ってますよ、安いですよ」
と適当に答えておく。
去年、別室に呼ばれて一時間ほど服装のことで俺に小言言った事なんか忘れているらしい。

「おまえは学生か! 社会人としては失格だな。きちんとした格好は良い仕事の前提条件だ。」
「まだ若いからわからんと思うが、社会はそんなもんじゃないんだ」
この後はあまり覚えていない。
たしか前日喧嘩した洋子のことを考えていた。
洋子は営業部の庶務をしている子で、入社が同期。たまに飲みに行く仲だったがいつのまにか付き合っていた。
女性としては結婚したがっているが、俺はまだそんな気もなく、つまらないことで喧嘩した。その後洋子は社外の男と結婚して会社を辞めた。
「わかったか!」
考え事している俺に山下課長が最後に放った言葉で現実に戻った。とりあえず
「はい」
一方的に話しておきながらわかったもくそも無い。

それから一年、こんなにもみんなの格好が変わるとは思っていなかった、大泉総理大臣の最大の成果だと思う。
経済効果も数千億円あったらしいが、俺には関係のない話だ。


ジュースでも買いに行こうとエレベータホールまで行った瞬間、「はあはあ・・」と営業部の太田が降りてきた。
「・・・また遅刻かよ」
太田は40歳半ば位、どうしようもない先輩社員だ。
この男もクールビスと称してネクタイはずしただけの男。みんなと変わりやしない。
一度お酒を一緒した事があったが、面白くて話題も豊富で結構楽しかったが、仕事は全く評価されていない。でも漫画の話なんか結構食いついてくるし良く知っている。鼻くそ拳法「ばーばばーばあ」まで知っているとは思わなかった。あれは小学生のヒーローだぜ。俺は甥っ子の影響で知っているんだが、太田は単行本まで買っているらしい。

最近うちの会社でもアメリカのMBAなどに留学する奴が増えてきている・
どこの学校でもいいらしいのだが、とにかくアメリカの学校に行けばいいらしい。遠い昔日本がバブルに浮かれていた時に米国の経営者たちが日本潰しの得策として、若い日本のエリートたちを米国のMBAコースに留学させれば日本は必ず落日の様を呈する・・などと自虐的なジョークを言った事があるらしい。
でもなんとなく留学って格好はいいと思う。
しかし俺は英語が話せない。学生時代から勉強しておけばなどと思うが、全く勉強などしていない。もちろん一流大学卒業でもない。

このまえ買った「ポリ-パッター」の英語版は通勤時間に読もうと持ち歩いている。
眺めてみるけどさっぱりわからない。
でも電車で眺めていると周りのおやじや女性からなんとなく英語ができる人みたいに見えるって処は優越感に浸れる。
たまにページを捲っていないとばれるのでこのあたりも工夫が必要だが、5分もすれば眠くなってくるし、そもそも何のために持っているのかわからなくなる。

「小林!飯くいにいくか」
山下課長は11時半には毎日この言葉を発するから、もうお昼だと感じる。まるで飯食い時刻表示マシーンだ。
奴が毎日食うのはラーメンかうどんプラスご飯。炭水化物ばっかりだ。あの出っ張った腹はその食生活にあるに違いない。商社では海外との付き合いも多いので太った人間は少ないものだがなぜかうちの課には脂っこいのが多い。
「どうなんだ!いくんか!」
「はい」
今日も適当に答えていくとする。今日の夜はどこにいくかなあ?そんなことを考えながら。

翌日も朝から満員電車だ。
俺はたまたま座ることができた。
さっきの駅で乗り込んできた子・・・めがねかけてるけどかわいい感じ。俺はめがねの女の子が結構好きだ。今日はいいことあるかもしれない。

その3(午後の休憩室)に続く・・・
BY SAIUN

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