マンガ家の奇妙でワンだふるな日々

山奥に自作の家を建て、犬や猫たちと暮らすマンガ家の作品紹介と日記

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20代の頃に書いたものなので、今の僕の考え方とは違う箇所も多々あります。
従って、この単行本に書いたことをこのブログにアップする必要も、もうあまりないのですが、今回、残酷描写について、少し考えるところがあり、そこだけ部分的にアップして、このコーナーの最後とします。

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第三章 「美しさと残酷さ」

  ー前略ー
 
先ほど、「バッコス」の一場面をみたように、いくつかの白土作品から、さまざまな残酷シーンをとりあげてみましょう。そこから、劇画における残酷描写の果たす役割と可能性について探ってみたいと思います。
 まずは、「忍者武芸調・影丸伝」(十二)の中での明美の死の場面です。

 信長にとって、一揆軍を率いる怪忍者影丸の存在は、どうしても消さねばならない存在でした。
そこで、剣士結城重太郎に影丸を討たせるべく信長は策を練ります。
 それは、重太郎の子を身ごもっている明美を殺し、それが影丸のしわざとみせかけ、重太郎に影丸への仇討ちをさせるというもの。

 明美を殺害するべく忍者達が、林の中に身を隠しています。その忍者の中には、重太郎に想いをよせる蛍火もいます。やがて、明美を乗せた輿が近づくやいなや、輿の中に打ち込まれる槍。襲いかかる忍者達。明美は、重太郎の名を叫びながら輿の中からとっさに逃げます。
 意外なほどの体術を持つ明美のすばやい動きに、忍者達は一瞬明美の姿を見失います。が、身ごもっていた明美は流産症状をきたし、そのために発見され、再び攻撃の中へ。
 必死で逃げる明美。片腕を切り落とされ、胸を刀で差し抜かれ、無数の手裏剣で体を切り刻まれ、それでも前へと走りながら明美は逃げます。
 やがて、走る明美に蛍火達の刀がいっせいに振り下ろされ、明美の体はバラバラに飛び散るのです。

 確かに残酷な描写が続きます。でも、切られても切られても逃げようとする明美の姿には、重太郎への強い愛ゆえの生への執着が表現されています。そこに、無数の肉片と化して飛び散る瞬間まで生きていた明美の愛の美しさがあるのです。
 蛍火は、明美のバラバラになった死体を前に殺害者でありながら涙します。それは、重太郎の悲しみを想ってか、あるいは、ここまで重太郎を愛した明美の姿にうたれたのか、あるいは、自分のこのような役目に涙したのか。どちらにせよ、蛍火は明美に完敗したのです。
 私は、死の瞬間まで生きようとする明美の姿に、個人の命を簡単に殺害しようとする権力者信長の敗北さえも見た想いがします。

「カムイ伝」(第69回)では、逆に個人の死が空回りする悲劇が展開されています。
一揆の後、死を覚悟して正助たち一揆の首謀者
          
                   ー以下略ー

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残酷描写とグロとは違います。 
そのことを分かりつつ、それでもやはり僕には、残光描写が描けません。
なぜ描けないのかというと、いろんな意味で力量不足だからです。

そのことをやはり僕は今後の課題としていく必要もあるのですが、しかし、残酷描写抜きで表せる世界のあることも同時に探っていきたいと想っています。
そのことの大切さをみつめていくのが、僕にあった表現方法かもしれません。

「ダライ・ラマ14世」を描き上げて、今そんなことを見つめ直しています。

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山崎豊子さんの「沈まぬ太陽」の3巻目「御巣鷹山篇」を読んでいると、その墜落事故の惨状が遺体の無惨な描写によって生々しく伝わってくる。改めて、大変な事故だったのだと思わされる。
阿鼻叫喚という言葉のリアリティとは何かと、絵で表現するマンガ家としていつも文章の世界に便利(?)に使われるこの言葉にこだわっていたのだが、なるほど、この言葉を引き出すだけの描写があってのことなのだと、この小説を読み終えて思い知った。
この小説が映画化されるという。
はたして、映像は、どれほどこの小説の描写に迫れるだろうか?
事故の悲惨さ塗炭の苦しみは、変な話だが、とうていこの小説を超えられないと僕は想っている。
マンガにおける残酷描写においてもそれは同じなのではないだろうか…
映像や絵によるたしかな表現力とはなにかを絶えず自分に問いかけていく中からやっと、それなりの残酷描写もなり立つのだと思う。
何をどう描くかということに尽きるのだろう。

2009/4/22(水) 午後 4:14 [ saiwaimiyuki ]

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つまり、マンガ家である前にひとりの作家としての眼が必要になる。
でも、マンガ家が、絵を付けるだけの人として扱われていくことの多い今のマンガ界。マンガ家がよほど意識的に自分の中の作家性と向き合わなければいけないだろう。
でないと、マンガの表現は小説の表現を超えられない。
独自な表現として深まっていかない。

2009/4/23(木) 午前 10:01 [ saiwaimiyuki ]

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若い頃、この本を買い求めました。
当時も今も白土三平さんについては、あまり書かれないようです。時たま、優れた評論が執筆されています。

この著作を読んだとき、圧倒された思いがありました。
<影丸伝>や<カムイ伝>を読了後と同じように。。。

2009/9/23(水) 午前 8:47 mos_mos_yoshi

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もすもす様、ご訪問ありがとうございます。
まだマンガ雑誌でのデビューも出来ずにいた悶々とした頃に書いた文章です。
今、読み返せば顔から火が出る文章ばかりですが、本人はこれからマンガ家として何をどう描いていくべきかと自問自答しながら書いておりました。
ある意味、僕の出発点となった著書のひとつだと今も思っております。
当時この本を読んでくださって本当にありがとうございます。

2009/9/23(水) 午前 10:08 [ saiwaimiyuki ]

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映画「カムイ外伝」がまだ上映中なので、あまり詳しい感想は書けないし書きたくないのだが、気になるところがいくつもある。
ま、細かいところは置いといて、やはりラストが残念でならない。
原作では、漁民は皆殺しではなかったハズ。
荒波の中を去っていくカムイと対照的に大漁で湧く漁民の姿で原作は締めくくられている。
カムイの孤独は、カムイやカムイの周りで生じる凄惨な死闘のみを見つめ続けても描ききれない。
大漁に湧くたくさんの漁民の生き生きとした生活や表情が描かれてこそ、カムイのその孤独は際立つのではないだろうか。
上映期間が終わったら、またあらためて詳しく感想を日記に書こうと思う。

2009/10/16(金) 午後 11:12 [ saiwaimiyuki ]

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映画「沈まぬ太陽」を観てきました。
まだ映画を観る前に、このコーナーのコメントにも先に書きましたが、やはり予想通り、原作による墜落事故の描写を映画は超えられませんでした。それは、いろんな配慮からも仕方のないことです。
ただ、百聞は一見にしかず…の逆もあるということです。
先のコメントにも書きましたが、すぐれた文章による描写は映像化出来ないのです。
この映画、原作を読まずに観たら、信念を曲げずに生きる男の生き様を描いた、とてもよく出来た見応えのあるいい映画でした。
でも、原作を読んでいる者にとっては、あらゆるものがすべて骨抜きにされてしまった映画でもあります。
上映期間が終わったら、また、改めて詳しく感想を書こうかなあ…。

2009/11/6(金) 午後 5:59 [ saiwaimiyuki ]

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本当にそうですね。
実は、『沈まぬ太陽』の映画を観た直後、最初は原作と比較して「受け手の想像力を刺激することのできなかった映画」と書こうと思っていました。しかし、原作と比較し始めるとキリがないことに気がついたし、原作を読み直す前に書きたかったので、映画の技量に絞って感想を書いた次第です。
「送り手の表現力」と「受け手の想像力」のバランスは、モノを創る人にとっては常に重要なテーマとなりますね。
改めて実感させられました。

2009/11/9(月) 午後 0:01 [ sinkou ]

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山崎豊子氏の、試写会での感想を読んで、原作者が此処まで言うのならと、思ったのですが、まぁ舞台挨拶のされる中でのコメントなら、仕方の無い事だと思いました。
満足されているのか、されている訳は無いが、小説と映画は、まるっきりの別物・そう割り切らねば容認は出来ないだろうし、映画には限界があるでしょう。
国際俳優にまで上り詰めても、すんなりと好きになれない{渡辺謙}が、何処までこの小説に挑むのか(監督もですが)見たくて、観に行こうと思い、思いし乍ら、まだ実現せずにいます。

2009/11/9(月) 午後 9:43 sdrjb7352000

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sinkouさんのブログでのこの映画の感想を読ませていただき、まったく同じ思いでした。
ただ、テレビとタイアップした映画のめだつこの時期に、そうでない映画を世に出した心意気だけは拍手ものです!
それにしても、みごたえのある重量感のある映画がすくなくなりましたねえ。
もちろん、心のどこかに暖かいものが残るいい日本映画は増えてきています。
それだけに期待した映画でした。

2009/11/10(火) 午後 10:12 [ saiwaimiyuki ]

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なりさん、原作を読まずに観にいく人達には、それなりに楽しめる映画だと思います。
ただ、いつも思うのです、やはり映画でしか表現できないオリジナルな物語を観たいなあと!
小説やマンガなんかを映画化するなら、それなりの切り口にうなされたいものです。

2009/11/10(火) 午後 10:17 [ saiwaimiyuki ]

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