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私の友人にM君がいます。
彼の職場には、多くのアルバイト君がいるのですが、彼はこれらのバイト君の中の幾人かを「馬鹿」と呼びます。
普通に考えれば失礼な話なのですが、彼の話を聞くとなるほどと思ってしまいます。
彼に「馬鹿」と呼ばれている若者は、全員が怒りもしないとの事ですが、複数の「馬鹿」が揃った時、彼らは周りを見渡してから一人だけが返事をするといいます。
彼らの中には、暗黙のうちに「馬鹿」の順位付けが出来ているのだそうです。
実に奇妙な話ですが、各自がそれぞれに馬鹿と自覚した上で、「コイツよりは上」「コイツより下」と自覚し合っているというのです。しかも、複数の若者たちは、一人も間違えずに返事をするというのですから驚きです。
私は、友人の会社で働くこのアルバイト君たちに会った事がありますが、誰一人私の友人を嫌うものがいません。逆に彼らのほうから私の友人に近寄ってくるぐらいです。
私には真似はできませんが、私の友人は、他の人には非常識に見えるやり方で、バイト君たちを見事にコントロールしています。
私の友人M君が言うには、馬鹿にもいろいろあるが、可愛げの有る馬鹿は仕事もまじめで欠勤も少ないが、可愛げの無い馬鹿は仕事もヌルク長続きしないし欠勤が多いと言います。
また、これらのバイト君は揃って「漢字の読み書きが出来ない」「算数は、小学校3,4年レベルで止まっている」「本を読まない」「反省しない」が共通点だとも言います。
バイト君のほとんどが高校を卒業し、中には大学卒業者もいるそうですが、分数の足し算も出来ないそうです。
M君は、日本の現在の教育レベルの低さを嘆いてはいますが、彼らに失望はしていないと言います。
実生活において必要なのは、加減乗除とひらがな程度で十分なのだから、社会で必要とされる事は社会に出てから学んでも仕事に支障が無い とゆう事らしいのですが、困るのは、彼らに向上心が欠けていることだそうです。
可愛げの有る馬鹿は、時間をかければ向上心を持たせる事ができるが、可愛げの無い馬鹿は、人のせいにばかりしているので時間をかけても無駄だと言います。
人のせいにばかりして反省しない者には、向上心は芽生えないが、反省する事を覚える者は、向上しているのが見ているだけで分かるほどに進歩が早い。可愛げの有る馬鹿は、素直な人間が多いので、扱い易く矯正し易い。ただし、個人的な能力差があるので其の差が、彼らの中での馬鹿の順位になっているし、彼らが「馬鹿」と呼ばれても反抗しないのは、彼らが自分たちの足りないところを自覚している事によると話します。
M君はこうも言います。少しばかりましな会社入っても、向上心も持たず車の中で寝てばかりいるような人間より、うちのバイト君達の方がよっぽどましな人間だ。彼らはいずれバイトを辞め、どこかに就職するかもしれないが、必要とされるところでは戦力になりやすいだろう。地味でも生活していく能力は十分にある。彼らは、一般的には「馬鹿」と呼ばれる部類に入る事を自覚しているからこそ強い。
M君の部下として配属されているこれらのバイト君たちは、3ヶ月もすると本を読むようになるとの事です。最初のうちは、本を読み出した事を得意げに言うそうですが、先輩のバイト君にたしなめられるそうです。
「其の程度だから、馬鹿と言われる!」
これって、本当に「馬鹿」なんでしょうか。
今の日本人に必要な事が、この話しの中にあるような気がするのですが、気のせいでしょうか。
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