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アルツハイマー型認知症治療薬一覧
①ドネペジル(アリセプト) 最も世界的にも広く使用されている実績のある、 コリンエステラーゼ阻害剤がこのアリセプトです。 アメリカではすぐにリバスチグミンが競合薬として市販されましたが、 日本においては昨年まで、 アリセプトのみが唯一のコリンエステラーゼ阻害剤でした。 この薬は現時点においても、 他の2種のコリンエステラーゼ阻害剤に比して、 その効果に遜色はなく、 かつ最も副作用のような有害事象の少ない薬剤として、 その評価はほぼ確立しています。 剤型は錠剤に加えて、 水の要らないOD錠と、 嚥下の難しい高齢者のための、 ゼリータイプのものの3種類があります。 その使用は1日3mgから開始されて5mgが維持量となり、 重症の事例には10㎎まで増量が認められています。 この用量設定は基本的に海外と同一です。 この薬の副作用は、 投与初期の吐き気などの消化器症状と、 これも初期に多い焦燥感や興奮などの精神症状、 そして、継続した場合の心臓に対する影響が、 その主なものです。 投与初期の症状は、 脳内のアセチルコリンが急上昇するためと思われ、 消化器症状には胃腸に対する副交感神経の緊張も、 一部は影響していると思われます。 これはSSRIによって、 脳内のセロトニンが上昇することによる症状と、 非常に似通った部分があります。 心臓への影響は矢張り副交感神経の刺激によるもので、 除脈性の不整脈などの影響で、 眩暈や動悸などが生じます。 従って、この薬の使用時には、 事前の心電図のチェックが必要ですし、 脈の遅めな方は、 より注意が必要です。 ②リバスチグミン(リバスタッチパッチ) この薬はアリセプトに次いでアメリカでは発売された、
コリンエステラーゼ阻害剤ですが、 日本での発売は大きく遅れ、 「貼り薬」という剤型のみで、 今年の8月に発売の予定です。 海外では飲み薬も発売されていますが、 日本では他剤との競合を避けた、 ということのようです。 基本的な効果はアリセプトと違いはなく、 その副作用もほぼ同等と考えられます。 この薬の一番のポイントは、 アセチルコリンエステラーゼの阻害作用と共に、 ブチリルコリンエステラーゼの阻害作用を共に持っている、 ということです。 ブチリルコリンエステラーゼとは、 一体何のことでしょうか? コリンエステラーゼはコリンエステルの分解酵素です。 コリンエステルの中の代表は、 アセチルコリンですが、 人間の体内にはそれ以外にも、 コリンエステルが存在します。 アセチルコリンエステラーゼは、 アセチルコリンのみを分解する酵素ですが、 人間の体内にはアセチルコリン以外のコリンエステルも、 同時に分解出来る酵素が存在し、 それがブチリルコリンエステラーゼです。 ブチリルコリンというのは合成化合物で、 生体には存在しないのですが、 そのブチリルコリンをアセチルコリンと同じように分解出来る能力のある酵素に、 ブチリルコリンエステラーゼ、 という名前が付いているのです。 ブチリルコリンエステラーゼには、 アセチルコリンエステラーゼのバックアップ的役割があります。 アセチルコリンエステラーゼが欠乏すると、 アセチルコリンの分解は、 今度はブチリルコリンエステラーゼが受け持つことになるのです。 アルツハイマー型認知症では、 アセチルコリンエステラーゼの活性は低下し、 一方でブチリルコリンエステラーゼの活性は上昇している、 というデータがあります。 これを一種の代償機転と考えれば、 ブチリルコリンエステラーゼを阻害する薬の方が、 より脳内アセチルコリンを高める効果があるのでは、 という考え方が出来る訳です。 早期のアルツハイマー型認知症では、 認知機能の低下を遅らせる、 というデータがあり、 早期の認知症に限っては、 アリセプトより有用性が高いのでは、 という意見もあります。 ただ、アリセプトからの変更の試験では、 あまり効果に違いはないという結果も出ています。 貼り薬には患者さんによっては、 薬を持続し易い、というメリットはあり、 貼り薬でコンプライアンスの改善が期待出来るケースでは、 その変更は考慮する必要があると思います。 ③ガランタミン(レミニール) この薬もコリンエステラーゼ阻害剤で、
その意味ではアリセプトと大きな差はありません。 ただ、ニコチン性アセチルコリン受容体の、 刺激作用を併せ持つ、という特徴があります。 つまり、脳内アセチルコリンを、 その分解酵素を阻害することにより増やすと共に、 その働きも増強する、 ということになります。 ただ、実際にアリセプトからの変更のデータなどを見ると、 さしたる差は見られてはいません。 神経細胞死を抑制する効果は、 アリセプトより高いのではないか、 という意見もありますが、 少なくとも臨床試験のレベルでは、 それを立証するようなデータはないようです。 ④メマンチン(メマリー) この薬は現在唯一の、 コリンエステラーゼ阻害作用とは、 別箇の作用を持つアルツハイマー型認知症治療薬です。 アルツハイマー型認知症では、 アセチルコリンの低下と共に、 もう1つの神経伝達物質である、 グルタミン酸の濃度上昇があり、 グルタミン酸によるその受容体の過剰な刺激が、 神経細胞障害や認知機能障害の1つの要因なのではないか、 という仮説があります。 このメマンチンはグルタミン酸の受容体に拮抗することにより、 その受容体の過剰な刺激を改善しよう、 という働きがあります。 この薬は単独使用より、 コリンエステラーゼ阻害剤との、 併用が想定された薬剤です。 そのコリンエステラーゼ阻害剤への上乗せ効果は、 「やや効果あり」という程度のようです。 一方でそれほど頻度が多いものではありませんが、 痙攣や眩暈、意識消失や過度の興奮、 などの副作用が報告されていて、 日本での臨床試験でも、 錯乱状態となり入院したケースなどが報告されています。 眩暈も錯乱もそうですが、 投与を中止してもすぐには改善しない、 という特徴があり、 その意味で安易に投与すると危険な場合もある、 という認識は持つ必要があるのではないか、 と僕は思います。 従って、 コリンエステラーゼ阻害剤にあまり反応しない事例に対して、 慎重に使用するのが現状では望ましい、 と考えられます。 以上現時点で日本で使用可能、 もしくは近日中に発売予定の薬剤につき、 簡単なレビューをお届けしました。 総じて、アリセプトと比較して、 明らかに有用性と安全性が高い、 と評価出来る薬は現状ではない、 というのが実際だと思います。 昨年のNew England…の総説でも、 それぞれの薬剤にあまり差はない、 という結論です。 従って、第一選択は、 データの蓄積が多いという点から矢張りアリセプトで、 貼り薬の方が使用し易い事例ではリバスチグミンを使用し、 効果不充分例ではガランタミンへの変更も1つの選択肢です。 また、重症の事例ではアリセプトか他のコリンエステラーゼ阻害剤を、 ある程度使用した上で、 副作用に気を配りながら、 メマンチンを慎重に上乗せするのが、 適当ではないかと思います。 まだあまり症状が出現していない、 早期の治療にどの薬剤が望ましいか、 それとも何も使用しない方が良いのか、 という点については、 現時点で確証の持てるようなデータはないと思います。 六号通り診療所所長のブログより転載させていただきました。 |
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