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田中内閣が総辞職。
キングメーカー西園寺公望は次期首相として、民政党総裁の浜口雄幸を薦奏。 政友会と民政党に交互で担当させるのが「憲政の常道」であった。 浜口首相は民政党公約である「金解禁」を発表。 円とドルの為替レートの固定。つまりアメリカとの貿易による景気回復を狙ったのであった。 民政党の基本方針は緊縮財政と協調外交。
「金本位制に復帰して、安心して貿易できるようにするのだっ!」
蔵相に任命されたのは井上準之助
高橋是清の側近だった彼を民政党が引き抜いたのであった。
こうして井上蔵相の強い意見によって「金解禁」に踏み切ると、経済界も歓迎を表明。
直後の総選挙では、民政党が圧勝するのだった。
しかし 民意を受けて開始した「金解禁」 は大失敗となる。
交換レート設定の不備を衝かれマネーゲームの餌食にされてしまうのだった。 更に、ニューヨークのウォール街で株価が大暴落してしまい、頼みのアメリカ経済が沈没。 日本の輸出品である「シルク」が、アメリカで全く売れなくなってしまうと マネーゲームによるゴールドの流出とのダブルパンチでデフレに突入してしまうのだった 浜口首相も井上蔵相も失敗を認めることができなかった。 「いまにアメリカは不況から脱する。ここさえ凌げば持ち直すっ」 「企業の倒産?大丈夫だ。強い企業が生き残ることでむしろ国際競争力は増す」 強弁しているうちに、企業倒産、リストラが相次ぎ、株価は大暴落。 物価も賃金も下がり続けて、失業率は急上昇。 日本は恐慌のドン底に叩き込まれてしまったのだった。 昭和5年1月21日。ロンドン海軍軍縮会議が開幕。 経済政策の変更=倒閣となるため、柔軟な政策変更できない政府にとって、 財政を圧迫する軍備を減らしつつ、英米と仲良くするためにどうしても纏めたい会議であった。 しかし「海軍軍令部」はワシントン条約の不満から政府に圧力をかける。 「対米7割。出来なければ倒閣に動くっ!」 日本全権代表となったのは若槻礼次郎。 若槻は「対米7割」を勝ち取るために粘り強い交渉を続け「対米6.975割」を取り付ける。 ここで本国に打診。
「もう限界だ。これでまとめないと交渉が決裂してしまう。条約調印を許可願いたい」
報告を受けた浜口首相は「海軍省」に相談。 山梨勝之進や堀悌吉などの海軍省トップも好感触であった 「6.975はほぼ7割であり問題ない」 しかしそこへ「海軍軍令部」の加藤寛治がやってくると猛反対する。 「6.975での調印など認められませんっ!」 浜口首相も一歩も引きさがらない。 「勝手なことを言うなっ、内閣は調印を決定するっ!」
これに怒った加藤軍令部長は昭和天皇に上奏するため、侍従長に取り次ぎを求める
しかし鈴木貫太郎侍従長は「加藤に上奏させるべきでない」と判断。 「明日来てください」 翌日。加藤より浜口首相が先に来て、昭和天皇に上奏し裁可されるのだった 「こっ、これは統帥権の干犯ではないかっ!」
こうして条約はは調印されたが、ここに目をつけたのが野党「政友会」。 政友会は金解禁直後の選挙で惨敗しており、民政党攻撃する材料を探していたのだった。 政友会総裁の犬養毅は 「加藤軍令部長問題」を取り上げ、 浜口内閣を厳しく追及する。 「軍令部を無視した条約調印は統帥権の干犯である!」 「統帥権の独立」とは 参謀本部及び軍令部は、天皇に対してのみ責任を取ればいいのであり 軍部は政府の言うことは聞かなくてもいい、という考え方であった。 民政党を倒すという党利党略ばかりに夢中になったせいで、 政友会は「政党政治」そのものを崩壊させる道筋をつけてしまったのだった。
条約は帝国議会・枢密院を通過。10月2日に批准。 それから1ヶ月後。浜口首相が東京駅で狙撃される。 取り調べにおいて犯人は犯行理由についてこう答えたという。 「浜口が統帥権を干犯したからだ」 しかし犯人は「統帥権干犯とは何か」という質問には答えられなかったという。
続く
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会社でプリントアウトして持って帰っていま飲みながら読んでます。
おもしろいっすねー(笑)
高橋是清が政友会の他は何回読んでも政治家と政党の名前が一致しません。
さくらさんの文章は分かりやすくて助かります。
張作霖爆殺と田中義一には高度な情報操作を感じます。
河本大作と昭和天皇はどこかからミスリードされている印象です。
ともあれ、いい記事をありがとうございます。。いやー、楽しいなー。(笑)
2019/8/26(月) 午後 8:51 [ 軍艦 ]
はい。良い悪いは別として、天皇というブレーキが失われた意味は大きかったと思います。
分かりやすいと言われるのは上手いと言われるよりも嬉しいです。
現在進行形の話もこのくらい冷静に書けるようになればいいのですが(笑
2019/8/27(火) 午前 0:32 [ さくら ]
天皇クラシーはデモクラシーより堅牢であるのは歴史のとおりです。
英国王室がオランダからの国王輸入で天皇クラチィックな政権になってからフランスのような血まみれの、且つ無意味な内戦は起こっていません。
自由の国アメリカの1860年代の内戦は、20世紀の二度の大戦より、ある意味
多くの犠牲を強いました。
>天皇というブレーキ
(笑)、そういう罰当たりなことは考えたことはありませんが…(笑)
君臨すれども統治せず。
けだし、、、私見ながら
君臨とは国家としての宣言権で
統治権とは徴税・予算権です。
行政機能体とコミュニティの間を往来しなければならない本邦政権を
あるいは、すべての
近代政権を、気の毒だなあーと観ております。
2019/8/27(火) 午前 1:22 [ 軍艦 ]
>私見
おっしゃる意味は分かります。やはり欠陥制度なんですよね。
しかし、対比語は貴族制、寡頭制、独裁制、専制、全体主義。う〜ん。
どれも一長一短なのでしょうが、日本人にとってのベターは?という話ですよね。
2019/8/27(火) 午後 10:32 [ さくら ]
欠陥制度ではありません。
欠陥制度、それはクローズドシステムの概念です。
クローズドだから管理できるのであって、オープンシステムはシステム解釈できるだけで管理できません。
鉄道運行は完全管理できますが、それは台風地震に影響されないという意味ではありません。
欠陥制度ではなく、いかなる制度も抱えている「制度理念と運用の不整合」を今の世界も課題としている…と考えております。
…夫婦や親子、恋人同士も…制度じゃないけど同じじゃないですか。(笑)
2019/8/28(水) 午前 3:05 [ 軍艦 ]
なるほど、、、そうかも知れませんね。
多分、将来的にはAI統治になっていく気がします。
今の無人兵器は、攻撃の判断を人間が行っているようですが
その判断に伴うオペレーターの精神的負担が問題になっていると何かで読みました。
人の負担軽減のために、AIに判断もさせる研究が進んでいるそうです。
無人兵器が主流になれば人民主権という演出は必要ないですもんね。
マグナカルタの巻き戻しで、より純粋な寡頭制への移行でしょうか。
それでも、近代民主制の理念は人類の知恵と努力だという輝きは消えませんが。
2019/8/28(水) 午後 0:51 [ さくら ]
>近代民主制の理念
「民」主制には
古代ギリシアの「demos」と
英国第二次エンクロージャーで発生した「mob」との
意識的な混同があります。
民は語義としてmobですが
それを海賊・古代ギリシアのdemosに読み替えているのですよ。
16世紀英国のドレイクやホーキンスの時代も
海賊は民主制を布いています。
洋上で部下が反乱を起こせば終わりなので
艦長は人望で決まると何かで読みました。
ともあれ
選挙権
リーダーを選ぶのは
命がけで剣を振るう戦士であって
…18歳になれば選挙権を無料でもらえるのは、歴史的には一般ではないと思います。
2019/8/28(水) 午後 6:40 [ 軍艦 ]
徴兵制復活の布石でしょうかっ、やはりっ!
2019/8/28(水) 午後 10:12 [ さくら ]
徴兵するより生活保護で飼い殺す方が手間がかからない気もしますが、、
ところで、さくらさん。
このページ自分の記事にコピー残していいですか?
2019/8/28(水) 午後 10:21 [ 軍艦 ]
徴兵=徴税・増税ですから手間は問題ではないような気もします。
私のページはどのようにでもお使い下さい。
2019/8/29(木) 午前 0:23 [ さくら ]