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鳥の夢を見た。
鳥の夢を見ると良いことがあることが私の場合多い。
とてもきれいな鳥だった。控え目なピンク色で鳩よりも少し大きな尾の長い鳥だった。
飛んでいると全身が控えめに赤く変わった。向こうから飛んできたので、手を出していると止まってきた。
私は隣にいる兄に「ほらね。」と言った。
少しかわいがったが手名づけてはかえっていけないので、木に向かって飛ばしたが、どうも心もとなかった。
ずっと見ていると、野生ではそんなに長く生きていけなそうな気がしたので、もう一度呼び寄せて、私が飼うことにしたところで夢が覚めた。
全然質が違うが、あるカラスになつかれたことがある。
アフリカの大使館に居たときだ。
一時期、出入り口の自動ドアが壊れていて、居る間は自由に皆が入れるように開け放しにしていたので、よく近所の猫が入ってきた。
二人しか秘書がいなかったので、私は秘書の仕事をしながらいつも受け付けに座っていると、半分遊びたいような猫が入ってきて、上に上がっていかないように遊び感覚でいる猫をつかまえるのに、ときどき苦労をしたが、私自身楽しんでもいた。
ある日、下を向いて仕事をしていると、「カアー!」という鳴き声が館内にこだました。
とても嫌な予感がして、頭を上げると、予想通り、カラスが館内を歩いていた。
頭の良い鳥なはずなのだが、やはり限界があるのだな、と思った。
というのは、半分空いた出入り口のドアがガラスなのだが、そのドアと外との区別が付かずに、あせって外に出ようとして、何度も勢いよく頭をぶつけていたからだ。
猫のようには行くまいと思った。近づけば人間になれていないこの鳥はますます焦ってこの行動を繰り返すに違いなかったからだ。
それで、私は一か八か、受付のガラスの中に留まりながら、こんなことをしてみた。
心の中でやり方をこの鳥に何度も告げながら、手の形で、どのようにここから抜け出せるのかを何度も示したのである。
すると、カラスはとぼけた様子をしながら、トントントン、と跳ねながら、上手に外に出て行ったのだ。
私はほっとしたのだが、それからが大変だった。
この鳥は、「君と僕(か私か分からないが)は心が通じる。」とどうも思い込んだらしいのだ。
私の後ろのガラスの大きな一面の窓に留まり、普通に留まっているだけでなく、とても興奮した様子で窓枠のところを、ずっと行ったり来たりしていたのだ。
私は上に上がっていったときに、上司の女性にこぼすと、彼女はまた、大げさな、みたいな感じで受け流していたのだが、下に下りてくるなり、「あ、ホントだ!」と言って笑い転げて去って行った。
他の上司たちも次々に見に来て、手を叩いて笑いながら帰って行った。
他の上司たちの部屋に行っても、必ず私が居る場所に来て、同じように騒いでいた。
こうした経験がある方はきっと少ないのではないか、と思う。
自分の半径5m以内に、常に興奮したカラスが居るという経験は。
そのうち、そこのナンバー2の上司に部屋に呼ばれて、こう言われた。
「なんなんだ、あの馬鹿な生き物は?」と。
つまり、事情聴取である。私はあったままを話した。
すると、彼はこう言った。
「君は絶対に、絶対に、絶対に、カラスを大使館で飼ってはいけない。
だから、断固として、断固として、断固とした態度で、やつを追い出せ!」、と。
「分かりました。」と答えて下に下りた。
こういうときに、心理関係の仕事をして来たことが多少役に立つ。
私は完全なネグレクト作戦に出た。
どんなに騒いでいようと、完全に無視し続けたのだ。
最初はかわいそうにも少し思った。カラスに生まれてこなければ、これがインコだったら、私も上司も態度が違うだろうに、と思った。
だが、やはり母に話しても、「そうだよね、カラスを連れた70歳の老婆というのも危機迫るものがあるからねえ。」などと言われ、そのとおりだよな、と思わざるを得なかった。
そうこうしているうちに、だんだん来なくなってきた。
ある日、お昼休みに外を歩いていると、「カアー!」という鳴き声がしてとっさに身を避けると、脇に鳥の糞が落ちた。
あいつか?と思った。ちょっとかわいさあまって、くそーというところがあったのかもしれない。
そのうち、全然来なくなった。
完全にそんなことがあったことを忘れていたときに、カラスの逸話を読んで急にあいつのことを思い出した。
かわいそうなことをしたなあ、と思った。
その5分後である。
帰って来ていたのだ。私の後ろの窓に。
恐るべしカラス!!!
だが、また無視していたので、また飛んでいって、帰って来なくなった。
こうした経験が将来、小さくても良いから、なんらかの形で生かせることがあれば良いな、と思っている。
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