桜田少年追憶記

学生時代までの自伝です。いよいよラストスパートです。

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書庫を持つ友人

学部は違ったのに、仲が良かったのがS君だ。
いつも黒いスーツを着て、オールバックで、ノータイで、難しい本を小脇に抱えている。
そんなS君と知り合ったのは、J高時代の同級生で、20年以上部屋を掃除していないKの紹介。

KとS君の付き合いは長くなかったけど、ボクとS君は今でも仲が良い。
インテリで大学院まで行ったS君とボクは、趣味も性格も全然違うのだから、
相性っていうのはホントに面白い。

S君もほとんど学校には行かず、古本屋巡りをしていた。
毎日、何十軒の古本屋巡りを続けていたら、いつの間にか値付けをバイトでするようになった。
自分の欲しい本は50円くらいに設定して、自分で買う。
そうして本を増やしていったS君の家には、書庫が出来た。

今でもS君の家に行くと、必ずこの書庫に入れてもらう。何度来ても飽きないから。
全然知らない現役の学生が、「書庫の本を貸してほしい」と、連絡してくるという。

大学院に進んだS君は、途中で大学院を辞めることとなった。
教授の論文が、あまりに稚拙だったため、酷評して大げんかに発展したため。

「耳の痛い話を真摯に聞けない人間の論文なんか、ただのマスターベーション。
そんな奴に師事するようでは、オレは奴隷以下」

という捨て台詞を教授に吐いて、S君は大学を去っていった。


S君は、どんなに難しい哲学書や法学の話でも、
初心者のボクにも分かりやすく端的に説明してくれた。

自分に興味のある話を詳しく説明することは誰でも出来るが、
端的に説明することができないと、人は退屈してしまう。
これは彼から学んだテクニックだった。


S君はフランクな性格で、いろんな人とすぐに友だちになれる。
新聞配達の兄ちゃん、路上でアクセサリを売るイラン人、70歳の俳句の先生、
ファミレスで働く女子大生、中国人留学生、舞台作家・・・いろんなジャンルの友人が、
S君の家に遊びに来ては、みんなで酒盛りしている日も少なくない。


S君は今、環境音楽を作り、美術館や老人ホーム、映画のBGMなどを制作している。
ボクが大学時代の友人で唯一、コンスタントに連絡をとっている友人だ。



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