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ボクは貿易のゼミに入り、ゼミ長となった。
というか、ジャンケンで負けまくり、止むを得ずゼミ長になってしまった。
ボクらのゼミは、そこそこみんなで活動した。
飲み会だけじゃなく、バーベキュー、ソフトボール大会への参加、春と夏のゼミ合宿、
週1回、学生たちだけで行うサブゼミなど。
ゼミ長だから、音頭は全部ボクが取る。
5、6人だけのゼミならまだしも、18人もいたら統制が大変だ。
何かイベントがある度にボクはイライラしていたけど、爆発しなかったのはナリジのおかげだ。
ナリジは副ゼミ長でもないのに、ホントによくボクをサポートしてくれた。
合宿先の下見や買い出し、一人当たりの予算の選定・・・
そういったものは、ほとんどナリジが主導で動いてくれた。
大手商社に入社したナリジは、バリバリのビジネスマンになって今も活躍している。
仕事大好き人間のナリジは、成功談も失敗談も目を輝かせながら話をする。
ボクが転職する際に営業を選ぼうと思ったのは、ナリジの話のおかげである。
地方から東京に出て来て下宿している学生は、少しは実家から仕送りをもらい、
後はバイトしてなんとか生活している。
しかし親の援助ゼロで、学費から生活費まで稼ぐ学生となると、一握りしかいない。 そんな勤労学生がゴトーだった。
夜、現場監督のバイトでお金を稼ぎ、朝、バイトの合間に食べる弁当を作ってから大学に来る。
休日はサッカーと合気道をやっていたゴトーは、過酷な家庭環境にいたにも関わらず、
穏やかなイケメンの青年だった。
実務面でボクをサポートしてくれたのがナリジなら、
精神面でサポートしてくれたのがゴトーだった。
ムードメーカーってわけじゃないのに、ゴトーがいると場が和む。
ゴトーが怒ることはまず無い。誰かと言い合いになる時も、穏やかな口調で諭すように喋る。
ゴトーがいてくれたおかげで、ボクはなんとかゼミ長をやってられた。
真面目で良い奴なんだけど、ボクと相性が悪かったのがヨシダだった。
ボクはツッコミや毒舌を、心を許している相手にしか使わない。
しかし、それさえも「悪」と思っていたのがヨシダだった。
「傷つけ合わないように、和気あいあいと楽しく」
それがヨシダのモットーだけど、ボクからすると「ヌルい」関係でしかない。
それでもゼミ運営という大義の前には、ボクらの感情なんか二の次だ。
ボクもヨシダも、そこは大人になって衝突を避けていた。
そんなヨシダに救われたことが1度だけある。
3年のゼミ合宿は2泊3日で、初日の夜から教授が一時帰宅しなければならなかった。
教授がいないことをいいことに、ボクらは朝までバカ騒ぎ。
翌2日の午前中はサブゼミをすることになっていたんだけど、
みんな部屋に入って寝始めた。
「おい、教授がいなくてもやろうぜ」
というボクが呼びかけても、みんな寝てしまい、怒ったボクは一人でゼミを開始した。
ナリジですら「中止」を訴えたけど、ボクは聞き入れず。
「教授がいないからサボるなんて、それじゃオレたち、クソじゃんか」
と、普段は授業にも出ていないくせに、偉そうな発言をするボクにナリジも呆れて、
部屋に入って寝てしまった。
一人でゼミを始めるボクを、哀れみのまなざしで見て、参加してくれたのがヨシダだった。
普段は気が合わないけど、この時ばかりは救われた。
副ゼミ長はサダという奴で、コイツもコミュニケーションの下手クソな奴だった。
スポーツ万能のサダはすぐに突っかかってきて、よくゼミの仲間と揉めていた。
ナリジとはとくに相性が悪く、いつも言い合いをしていた。
ほとんどがサダの屁理屈が原因で。
卒業旅行は、ボクを含めたこの5人でグアムに行くことになった。
ナリジとゴトーが金が無いので、彼らも行けるギリギリの海外としてグアムを選んだ。
ホテルに着いてすぐ、サダがナリジと言い合いになる。
その後、ヨシダとも言い合いになり、今度はボクに噛み付いてきやがった。
怒ったボクは翌日、みんなと別行動に。「こんな奴と一緒なんて、真っ平だね」と。
こういうところは、ボクはホントにガキだった。
クラブからホテルに戻ってきても、みんなと遊ばずすぐに就寝。
翌朝、サダが謝ってきても無視して、受付に行って一人部屋がないか交渉。
ゴトーが必死になって止めてくれたので、夕方から渋々みんなと行動することに。
海外旅行に100ドルしか持って来なかったナリジとゴトーに付き合うため、
夕飯は食パンだけで済ますことになったが、
ここでもサダがゴトーに「マーガリンを付け過ぎだ」とイチャモンを付けて、
言い合いになっていた。
ゼミの仲間とは年賀状のやりとりくらいしかない中、
唯一、年に一度くらい会っているのがサダというのも、過去を振り返ると面白い。
Uターン就職したサダは、東京出張があるといつも連絡をくれる。
今では娘二人を溺愛する温厚な男になっている。
ゼミのトラブルメーカーだったサダが、ここまで温厚な奴になるとは想像できないようで、
ゴトーもナリジも、ボクの話を信じてくれない。
「飲み会やろうよ」と、みんな言ってくるが、
「50歳になったらな」とボクは答えるようにしている。
それまで元気でいたら・・・の話だが。
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