桜田少年追憶記

学生時代までの自伝です。いよいよラストスパートです。

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お店が繁盛する秘訣

大学生の頃、家の前にちょっとオシャレな弁当屋ができた。
オーガニック系のおかずを扱う弁当屋で、店内は男が入りづらい感じの。

ところが客のほとんどがサラリーマン。
他の弁当屋のほうが、はるかに量が多いし値段も安いのに、
サラリーマンで溢れ返っていたのは、なかなか美人の店長がいたからだ。

歳の頃は30代で、サバサバした性格で、喋るのが上手い。しかも美人で色気ムンムン。
水商売のほうがピッタリなのに、その人がエプロンをしていて、
笑顔で惣菜のチョイスを一緒に考えてくれるアンバランスさがウケて、店は大繁盛だった。

今だったら、デレデレしながらこの店に出入りしていただろうけど、
大学生のボクは、水商売風の持ち上げられ方を楽しむという概念がなく、
だけど未知の危険な甘い世界に今、ちょこっとだけ足を踏み入れている感覚はあり、
弁当屋に弁当を買いに行ってるだけなのに、ガチガチに緊張して、逃げるように店を後にした。

これ以降、ボクは一度もこの店に入っていないが、
お袋がここの弁当が好きで、何度か夕飯としてここの弁当が家にあった。


この店がどのくらいの期間、存在したのかは詳細には覚えていない。
多分、1年も経たなかったと思う。
ただ、この店長がいなくなってからは、あっという間に閉店してしまったことだけは覚えている。

後になってから聞いた話だが、この店長はお客の男性と婚約したらしい。
だけどその男性客には妻子があった。
「奥さんと別れる」と約束したのに、結局その男性は家族を捨てられなかった。
近所の人たちに婚約宣言をしてしまった手前、居ずらくなって辞めてしまったという。

その後、この女性店長よりはるかに若いけど、愛想のない女性が店長になった。
すると男性客は寄りつかなくなり、店はあっという間に閉店してしまったという次第。

ボクらの町に、一瞬だけ巻き起こったオーガニック弁当ムーブメントは、
ちょっと猥雑な女性店長とともに過ぎ去っていった。

お店が繁盛するには、味もさることながら、接客によるところが大きい。
そんな基本的な事実を、この店の盛衰から学んだ気がします。

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