|
気がつくと、幼稚園時代からの友人だった I とは、
いつも一緒に行動するようになっていった。
遊ぶときはみんな一緒だけど、
ヤクルトファンクラブや学習塾も一緒で、
ガチャポンの怪獣消しゴムも二人で一緒に集めていた。
こういうのは一緒に集めると必ず揉めるもんだし、
お互い引かない性格なんだけど、
なぜか1度も揉めずに一緒に集めていた。
ボクはこの時期、クラスで一番足が速かった。
低学年時代の同級生だったカズがいなければ、
ちょっと頑張れば1位になれる。
だから運動会が楽しみで仕方なかった。
男子にとって「リレーの選手」に選ばれるのは、何よりの喜びであり誇り。
リレーの選手はボクとIのほかは、ワダとナツキ。
3年の時は、ボクは I を抜き去った。
I にとってはこれ以上に悔しいことはなかったようだ。
4年の時も、バトンを渡されたボクは前を走るIを猛追。
「もう絶対に抜かされない!」
背中ぴったりまで迫ったボクに、そんな気迫が伝わってきた。
もうテクニックではなく、気迫と根性で I はボクに抜かれる屈辱を
なんとかかわし切った。
これが I には最も嬉しい思い出だったようで、
「4年生の思い出」という冊子にも卒業文集にも、
ボクに抜かれなかったリレーのことを書いていた。
1位になったこととか、誰かを抜いたとかじゃなく、
ボクに抜かれなかったことが思い出とは。
手前味噌だが、それだけ足が速かったってことです。
このとき、もう一つ忘れられない思い出が。
4年の種目には「棒引きゲーム」っていうのがあった。
校庭の真ん中に棒が置いてあり、紅白に分かれて対峙。
二人一組で引っ張って、自分の陣地に入れたら勝ち。
こういう振り分けは、背の順で決められる。
ボクは大人しいヒロとコンビで、対戦相手はカツミとタッツァン。
二人とも肥満児だから、ボクらが圧倒的に不利。
練習でも勝ったり負けたりで。
そしていよいよ本番。
列になって校庭を行進している際、ボクはタッツァンに声をかける。
「タッツァン、負けてよ」
冗談半分で言ったのに、タッツァンはマジで実行。
「ヨーイドン!」で走っては来るが、棒を持ってるだけで、
全く引っ張ろうとしない。
「!!おい、タッツァン!!何やってんだよ!!」
カツミの罵声にもタッツァンは、
引っ張り合いことなく、そのまま棒を持って自分の陣地へ。
2回戦が始まる前、
カツミがタッツァンに口を尖らせて怒っている光景を見た。
2回戦目はもっとひどく、棒すら握ろうとしないタッツァン。
「おい!タッツァン!!ふざけんなよ!!」
負けたくないカツミは、棒にしがみついてボクらに引きずられ、
途中で力尽き、ビックリするくらい大きな擦り傷を太ももに作っていた。
この頃、ボクらのクラスに小林さんという女の子が転校してきた。
お父さんの仕事の関係で、それまではイランで生活していたという。
だからあだ名はホメイニになった。
このあだ名にフジサワ先生が激怒、あだ名はイランに改名された。
イランは明るい良い子だったから、ボクらはすぐに仲良くなった。
イランは5年に進級する時に再び転校していった。
転校の報告をフジサワ先生がする時のこと。
「みんな静かにしてください!今日は大変悲しいお知らせがあります。
だから静かにしてください!」
全然静かにならないまま、フジサワ先生は報告を発表。
「○○さんが転校することになりました」
そのとき、悪がきのジュンが、
「なーんだ、くだらねえ」
と余計な一言を。
ホントはくだらないなんて思ってはいなかったはず。
ギャーギャーうるさい雰囲気の中で、言ったノリのような一言。
だけど、この一言でフジサワ先生は泣いてしまった。
いつもと違ったのは、無表情のままジュンを見つめていたこと。
何筋もの涙が頬を伝わった。
さすがにボクらも静かになる。
ジュンもすまなそうな顔をして、引き攣っている。
「・・・じゃあ○○さん、みんなに挨拶を・・・」
かすれた声のフジサワ先生に促されたイランは、
その雰囲気を打ち破るように、
「さよーなら!!」
と、下校の際に号令をかける日直のような明るい声で言い放った。
この暗い雰囲気の中での予想外の一言に、
「さよーなら!!」
と、I とモミとマサノブが呼応。
下校するようにふざけて教室から出て行った。
笑いながら戻ってくる彼らを待ち受けていたのは、
フジサワ先生による1m定規でのケツ叩き。
マサノブは断末魔の叫び声をあげながら、10発叩かれた。
Iとモミは泣かなかったので20発ずつ。
ジュンはそのまま教室に残され、しばらく正座させられていた。
転校していく友人を送り出す時は、笑って送り出す。
下校の時には、一人一人が声をかけて「また会おうな!」と。
明るいイランにもそうやって、笑って送り出そうと思っていたんだけど、
そんな挨拶をする前に、イランは女子たちと帰宅してしまった。
4年生の最後の日、いつも集まっているメンバーがボクの家に集合した。
I、モミ、ナツキ、マサノブ、ヒロ、ワダ、ジュン。
それにクボとS井、カツミも入って。
女子からはオブラン、Y子ちゃん、T子ちゃんが来た。
示し合わせたわけじゃないのに、なぜかこんなに集まった。
5年生になっても、みんなが同じクラスであることはない。
誰も口には出さなかったけど、名残惜しさがあったんだと思う。
何をしたのかまでは覚えていないけど、
みんなハイテンションで笑い転げて、
暗くなるまで遊んでいたのだけは覚えている。
クラスが違ったって、エンゼルスでみんなに会えるし、
学校が終わった後、遊ぶ約束をしたっていい。
だけどクラスが違うと、休み時間は自然と別行動になる。
それが大きな変化だということをみんなが知っていたから、
ここまで集まったんだと思う。
|