東日本大震災 未来への祈りと伝承〜「みちのく巡礼」

みちのく巡礼は、東日本大震災の祈りの場創設と記憶・教訓の伝承、防災精神の啓発、復興に寄与する活動を行っています。

全体表示

[ リスト ]


 心の中では毎日ブログを更新しようと思っていたのですが、他にも急ぎの執筆があり、
9日には「イランの素顔 〜イスラム社会をしなやかに生きる人びと〜」と題して
講演を行うことになっております。その準備をやらなければなりませんので、やむなくブログはちょっと後回しでした。
早くも3日坊主になりました。

[本日のシルクロード]

3.心ふるえた小説『楼蘭』 〜シルクロード小説との初めての出会い〜
 私が、シルクロード小説に始めて出会ったのは、かれこれ50年ほど前、中学生の頃だった。それは、井上靖作『楼蘭』である。実は読んだのではなく、耳で聴いたのだ。その頃私は、NHKラジオ「朗読の時間」を楽しみにして聴いていた。

 この作品が朗読された初日――『楼蘭』という耳慣れない題目を聞いた一瞬、<なんじゃこりゃ〜>と思った、そして井上靖という著者の名前を聞いて、正直いうと、興味はさらに遠のいて行った。どちらも初耳だった。何せ中学時代のこと、夏目漱石や芥川龍之介といった文豪の名作を期待していたのだ。
 
 ところが、出だしの「往古、西域に楼蘭と呼ぶ小さな国があった」という文が読み上げられたとたん――、失望は期待に変った。「西域」という言葉は私の、あこがれの言葉だからだ。胸がジンジン高鳴った。「楼蘭」ってどんな所だろう――想いは遥か…まだ見ぬ楼蘭に飛んでいた。

「楼蘭が東洋史上にその名を現してくるのは紀元前百二、三十年頃で、その名を史上から消してしまうのは同じく紀元前七十七年であるから、わずか五十年程の短い期間、この楼蘭国は東洋の歴史の上に存在していたことになる。いまから二千年前のことである」…朗読は続いた。ここまで来ると完全に興味が引き込まれてしまった。第1回目の朗読が終わると、次回が楽しみになった。
 
 漢と匈奴という強国に挟まれた弱小国「楼蘭」は、匈奴の掠略から逃れるために住み慣れたロブノール(ロブ湖)湖畔の土地を捨てて鄯善に移り住む。その人々にとってロブノール湖畔の故地「楼蘭」は、いつかは帰るべき場所だった。しかし、その数百年後、楼蘭を取り戻そうとした鄯善の若い武将が湖畔に立つが、楼蘭も湖も…、そこはすでに砂の中に埋もれてしまっていた。得も言わず哀愁に満ちた語り口調と音楽が心に染みた。だが私の想像の目には、青々としたロブノールと、オアシスの中に光り輝やいて建つ楼蘭の都がはっきりと見えた。センチメンタルな気分が夜寝るまで続いていた。
 
 翌日の放課後、さっそく電車に飛び乗って書店へ出かけ、『楼蘭』を買い求めた。当時の本は講談社発行のものだった。世界史地図帳と年表まで買って、傍らに置いて小説に出てくる西域の小国の位置を確認しながら夢中で読んだ。

イメージ 4
 
世界史年表・地図(吉川弘文館)

イメージ 1  
 
イメージ 2 西域が中国にとっても北方民族にとっても重要な地域であったこと、西域諸国はこれら二大勢力に挟まれて常に翻弄され続けて哀しい運命を辿ったこと、それでも尚且つ西域諸国の人々は自国に誇りを持ち続けたことが、いきいきと伝わってきた。自分も完全にその中に入り込んでいた。小国の悲哀とそれにも関わらず抱き続ける自尊心には深い感銘を受けた。この小説は60ページの小品ではあるが、中学生のわたしでも、何か非常に深い人生や歴史が刻み込まれているような気がした。これから歳を重ね、人生経験を積んで読むとまた新たな発見があるのではないか……そんな期待を抱かせてくれた。成人になってから2冊目(新潮文庫)を買って、その後さらに二度読んだ。
 
 この小説『楼蘭』は、ロブ湖畔で若い女のミイラ――後に私はこの美しい女性イメージ 3のミイラとウルムチの博物館で待ち焦がれた対面を果たしたのだが――を掘り出したスウェーデンの探検家、ヘディンの『彷徨える湖』を題材にしている。ヘディンは、ロブ湖は1500年周期で彷徨っていると推定している。
 この短篇は五部からなる。一部では漢と匈奴に挟まれて両国からの圧力を受ける楼蘭の状況を、二部では匈奴の攻撃を避けるために楼蘭を後にする楼蘭人の姿を、三部では主人を失った楼蘭の荒れ果てた姿を、四部では四世紀後半に楼蘭を奪回しようとする若き楼蘭人の指導者の姿と楼蘭の消滅を、五部では20世紀初めのスウェーデンの探検家スウェン・ヘディンによる楼蘭発見を描いている。

 『楼蘭』は不思議な小説である。西域に実在した楼蘭を描いた歴史小説なのだが、主人公が登場しないし、台詞もほとんどない。敢えて主人公を挙げれば、それは人物ではなく、楼蘭であり、楼蘭の象徴とも言うべきロブノールであり、その守り神である河竜なのである。だが主人公が登場しないことで、特に違和感を感じさせない。かえって、短篇でありながら大河小説のような雄大さを感じさせる。優れた構成力を感じさせる。

 楼蘭とロプノールに関する文献は少なくない。最古のものは、漢代の『史記』(匈奴列伝など)であり、その後の『漢書』にも記載されている。三十代に、これらは日本語版で読んだ。これらに興味深かったが、やはり私にとっては、19世紀末から20世紀初頭にかけての、外国隊の中央アジア探検記の方が馴染みがあって面白かった。中でもヘディンの『彷徨える湖』が、砂漠への憧憬をより強くした。

 『楼蘭』にはまり込んだ中学時代の私は、井上靖のシルクロード関係の本を、次から次へとむさぼるようにして読んだ。皮切りは『敦煌』だった。

「0シルクロードへの熱い想い」書庫の記事一覧

閉じる コメント(20)

顔アイコン

moriizumi arao さん,ブログ開設おめでとうございます。
シルクロード、いいですね。
悠久の歴史を感じます。
これからも頑張ってください。cookies3358

2009/1/11(日) 午後 10:59 [ cookies3358 ]

顔アイコン

じっくり書き進めますので、毎日の発信というわけには行かないとおもいますが、これからも覗いてください。

2009/1/12(月) 午前 6:21 [ moriizumi srao ]

顔アイコン

ブログ開設おめでとうございます。
今後どんな展開になっていくのか楽しみです。
今年は西安から西を旅してみたいです。
(むこう三軒)

2009/1/12(月) 午前 9:52 [ tru**ail60 ]

顔アイコン

ブログ開設おめでとうございます。便りのたびに新しいことにチャレンジされててびっくりです。シルクロード美人の写真も楽しみにしています。

2009/1/12(月) 午前 10:11 [ as123 ]

顔アイコン

シルクロードには美人がいっぱいです。その写真もお楽しみに!

2009/1/12(月) 午前 11:09 [ moriizumi ]

顔アイコン

ブログ開設おめでとうございます! 引き込まれる文脈に、既に次回が楽しみで仕方がありません。またのぞきにきます!

雪国にいがたより。

2009/1/14(水) 午後 3:48 [ bpt*x10* ]

顔アイコン

とてもうれしいコメントです。
これからは基本的に毎日更新しますので、覗いてみてください。

2009/1/15(木) 午後 5:11 [ moriizumi arao ]

顔アイコン

スウェン・ヘディンの「彷徨える湖」楼蘭・ロブノール、私も中学時代に初めて知り憧れました。もっとも私は小説よりもどこにあるのかへの興味が一番で、地図をむさぼって探したものです。私が後年地理方面に進んだ最大の理由となりました。

2009/9/4(金) 午後 10:35 迷えるオッサン

顔アイコン

迷えるオッサンさん 人の人生は偶然必然に問わず、自分が気づかないきっかけで人生の道が決まる――そのことを、私もずいぶん経験しました。それが運命と言うやつなのでしょうか。

2009/9/5(土) 午後 3:22 [ moriizumi arao ]

顔アイコン

かれこれ50年ほど前、中学生の頃だった
小学5年でした、、 45年前が中学でした、、 爆

2009/12/5(土) 午前 8:16 あさ

顔アイコン

車に飛び乗って書店へ出かけ、『楼蘭』を買い求めた。当時の本は講談社発行のものだった。世界史地図帳と年表まで買って、傍らに置いて小説に出てくる西域の小国の位置を確認しながら夢中で読んだ。

2009/12/5(土) 午前 8:17 あさ

顔アイコン

楼蘭も湖も…、そこはすでに砂の中に埋もれてしまっていた。

2009/12/5(土) 午前 8:18 あさ

顔アイコン

中学を卒業するとすぐに社会に出た 家庭の事情で高等学校には行けなかった 15歳の春から 丁稚奉公が始まり それからは食べることだけを考え働き その癒しからあそび 働き学ぶことをしなかった、 食べるだけ生きるだけの人生だった、、 そして気がついた時は 晩年を迎えていた 人生とは 命が重いと叫ぶ人たちの
不可思議さ。。

2009/12/5(土) 午前 8:22 あさ

顔アイコン

あさやまさん
人生、いろいろ歩みましたね。ひたすら走ってこられましたね。
これからが自分のほんとうに人生――。

2009/12/5(土) 午前 10:15 [ moriizumi arao ]

顔アイコン

敦煌???なんと 歴史が全くわからない私 ですが
中学の時にアイルトンセナと歴史好きな友達がいて
私が友達同士5人くらいではじめてみにいった映画は
敦煌 でした。佐藤浩一が出てました。
結局歴史のほうには興味はなかったけど それからF1を夜中に
見るくせがついてしまいました。。。ありゃ。

2009/12/9(水) 午前 9:50 [ リノ ]

顔アイコン

リノさん
アイルトンセナはよく知っていますよ。日本では、古舘伊知郎にから「音速の貴公子」といわれて人気があったよね。自己は惜しかったなあ…

2009/12/9(水) 午前 10:45 [ moriizumi arao ]

顔アイコン

追伸:ウイグルの可愛い女の子・・・何故か俺いらの孫娘奈菜加に見えて来ました。爺馬鹿チャンリン笑って下さい!孫娘見に来て下さいお暇な時にちょん丸待ちうけは奈菜加2歳の天使姿です。ちょん丸

2010/4/20(火) 午前 6:17 [ - ]

顔アイコン

har**injk*anak* さん
孫娘がかわいいのはちょん丸産だけでなく私もです(笑)
さっそく見に行きます。

2010/4/20(火) 午前 7:50 [ moriizumi arao ]

顔アイコン

中学生のわたしでも、何か非常に深い人生や歴史が刻み込まれているような気がした

なんど呼んでもあきない楼蘭のゆめですね

この間楼蘭少しテレビで見ました、、
わたしには 夢でおわるのかも ???

2010/4/20(火) 午後 5:01 あさ

顔アイコン

転載できませんか
この記事は保存しておきたいですね

2010/4/20(火) 午後 5:03 あさ

開く トラックバック(3)


.
moriizumi arao
moriizumi arao
男性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
友だち(76)
  • あんみつ姫
  • s_gotouji
  • 悲歌慷慨
  • kur*_*ibe
  • くまこ
  • ramies
友だち一覧
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

知人

おなじみ

おなじみ2

おなじみ3

四国遍路

東日本大震災

登録されていません

絵画

仙台関係

仏教

意見

癒し系

旅と趣味

旅 シルクロード関係

旅 中国旅行と情報

イスラム諸国

登録されていません

旅 世界一周・世界各地

旅 (アジア・アフリカ)

歴史

文学・研究

趣味

標準グループ

過去の記事一覧

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

話題の新商品が今だけもらえる!
ジュレームアミノ シュープリーム
プレゼントキャンペーン
ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事