[シルクロード紀行]
自転車レンタル交渉
前々回に続いて、1989年当時の西安のエピソード……。
ホテル(秦都酒店)で早めの夕食をしていると、Yさんというひとり旅の中年男性と隣り合わせた。
お互いに、ちょっぴり人恋しいひとり旅…、
すっかり意気投合してしまった。
彼は自分の中国語が通じるかどうか試しに来たと言う。
夕食後、ほんの少しその辺の下調べをするつもりで、何も持たずにそのままホテルを出た。
すると偶然にも、玄関先でIさんとばったりと出会った。
「あっ! Yさんもお出かけですか?」
「いやー、Sさんじゃあないですか」と声を掛け合う。
どちらから誘うでもなく、二人で夜の街へ連れ立って、繰り出すことになった。
いつもは単独で散策をしていたのだが…、彼の中国語は私にとっては心強い味方だ。
ホテルを6時30分ごろ出発。
まだ、日没の8時過ぎまでは2時間近くある。
通りに出てみると、走っているのは、ほとんど自転車ばかりだ。
それを見て、ふと自転車で走ってみたくなった。
「Yさん、自転車を借りませんか」と提案する。
「そりゃー、いいですね」とすぐに乗ってきた。
「僕は、中国語はダメですからお願いしますよ」と言うと、Yさんは
「ちょうどいい。通じるかどうかやってみましょう」
と言って、ホテルの服務員(従業員)になにやら話しかけた。
服務員はうなずくと、ホテルの前に待機しているタクシーの前に我々を連れて行った。
Yさんは盛んに、タクシーではなく貸し出し自転車だ、と一生懸命に話すが、なかなか伝わらない。
やっと理解したと思ったら、案の定「貸し出し用の自転車はない」とのことだった。
当時の中国ではありえないことだろう。
やむをえないので歩くことにした。
ホテルの前の大きな通り・環城西路を北へ向かうとすぐに、大慶路にぶつかった。
通りの両側にはたくさんの露店が軒を連ねていた。
料理の香り、魚の生臭さ、動物の臭い、スイカの食べかすの酸いた臭いなどがごちゃごチャに混じっ て、心地よいそよ風に乗って襲ってくる。
角を曲がるとすぐの一番端に、 露店のうどん屋があった。
木箱の上にたたみ一畳ほどの板を2枚乗せ、その上に、直径20センチほどの皿に盛ったうどんを50皿ほど並べ、1皿3角(約4円)で売っている。
例によって「来来、好吃(いらっしゃい、いらっしゃい おいしいよ」と呼び声がかかるが、なにせ今食べてきたばかりで、お呼びではない。
ふと、おやじの後ろ側を見ると、やや古めの自転車が置いてある。
隣の果物屋の脇にも自転車がある。
とっさにひらめいた。これを借りようと…。
私はYさんにそれを指差して、「借りましょう」と提案した。
彼は「Sさん、いいところに目をつけましたね」と言うや否や、
さっそくYさんが交渉にかかる。
自転車を貸すなどという概念がまったくない彼らには、
始めはまったく意味が理解できないようだったが、わかると手放しで喜んだ。
手持ちの自転車でまさかお金が稼げるとは思わなかったのだろう。
値段交渉に入った。
こちらは「1台、3時間、10元(140円)でどうだ? 」と持ちかけると、いやいや50元だという。
すったもんだの挙句、30元で交渉成立。
――ところが、この30元の解釈で返す時にもめることになる。
次には、彼らは保証金を置いていけ、と切り出した。
至極当然のことだ。
そりゃー大事な自転車を持ち逃げされたんではかなわない。
いくらだと訊くと、200元だという。
Yさんは妥協しそうになった。
「ちょっと待ってください、Yさん」
「200元は出しすぎですよ。新品の自転車が200から250元なんですから、そんなに出したら、彼らはこのままドロンですよ!」
と私が言うと、
「なるほどそうですね」と、Yさんも納得する。
「1台150元ではどうでしょう。それで逃げると、彼らも損しますよ。新品を買わなければならないので、逃げませんよ。100元だと持ち逃げされるかもしれなと思って、彼らも心配するでしょう」
「150元でどうだ?」と言うと、両手を握ってきた。
150元で交渉成立。
(まさか中国で自転車に乗れるとは……)
意気揚々と夜の西安の街に漕ぎ出した。
ところがハプニングが続出する。
明日に続く
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この記事読んで 思いは遥か60年前に。
小生新京に在住の時期 市内でよくマーチョウ(馬車)を利用した。駅から何所までいくらと交渉する。馭者は我々の身なり、態度を見て吹っかけてくる。急いでいるのだが努めてのんびりと交渉する。焦らせると段々安くなってくる。度を過ぎると交渉決裂 馬車は行ってしまう。適時に妥協が大事だ。自転車の交渉を読んであの頃を懐かしく思い出している。
2009/3/13(金) 午後 0:32 [ hir*132*00*t ]
hir*132*00*t さん 中国では、Iやいろいろな国でそうでしたが…、値段交渉が旅の厄介ごとでもあり、逆に楽しみでもありました。一度は、「リャンカイ(涼快)」と「リャンクワイ(二元)を聞き違えて、降りるときに80元請求されてけんかしたことがありました。
2009/3/29(日) 午後 4:05 [ moriizumi arao ]
cst*n77* さん
ナイス☆ありがとうございます。
2015/2/26(木) 午後 10:11 [ moriizumi arao ]