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へんろ特別接待(続)
〜心のふれあい そして感動の別れ〜
宿に着くとすぐ、「お風呂に入っているうちに洗濯をして上げますから、出しなさい」と言う。途中の市街地でトイレを我慢し続けたため小便をチビッてしまい、汚い下着だったので、
「大丈夫です。自分でやりますので」と、躊躇しながら断ると、
「遠慮しないで」と、やさしいがゆずらない態度で手を差しのべた。
その態度に押されるようにしてお願いした。
風呂から出て行くと、若奥さんがすでに洗濯物を部屋に干してくれていた。「早く乾くようにヒーターを入れておきました」と言う。
まさに至れり尽くせりだ。なんだか、単純に「へんろ特別接待」の文句に釣られてやって来たのが、すまないと感じて心が痛んだ。
夕飯後、しばらく歓談した。
戦争でご主人を亡くしたこと、戦時中は、野の草を採ってきてそれを6人で分けて食べたことなど…、自分の身の上話をたくさんしてくれた。「若い時の苦労は買ってでもせよ」を強調した。わたしも全く同感だ。
「これだけ詳しい身の上話をしたのは、いままでかつて、あなたで3回目だよ。あなたはよく聞いてくれるので、ついつい…」と、目じりにしわを寄せて微笑んだ。光栄だな、と感じた。
「自分も遍路をしたいけど、もう足が弱ってできないんですよ。死ぬまでには、車に乗せてもらってでも、ぜひ一巡りしたいですね」
「自分の代わりにお遍路してくれる人を大事にしようと思っているの…」
「お遍路さんのお世話をするのが無上の幸せなんよ」という言葉が心に強く残った。この言葉を聞いて、<わざわざ苦労して長い距離を歩いて来て良かった>と思った。
90歳近い年齢とはとても見えない気骨が強く感じられた。
遍路中にしては遅い9時20分ごろまで話し込んでしまった。
部屋へ戻ってみると、「般若心経のふとん」が掛けてあった。こんな貴重なものを二度も掛けてもらえるなんて、なんて幸せな遍路なのだろう…。
翌朝、食卓に行くと、女将さんが、お弁当の焼きおにぎりとおかずを、小さな花模様が描かれたきれいな包み紙に「ていねいに、ていねいに」包んでいる。そのしぐさには実に心がこもっていた。
出発の際に玄関で靴を履く時、うっかりと輪袈裟の房を靴で踏んでしまい、取れそうになってしまった。しかし、出針――出発前の繕い、は縁起が悪いと言われているので、修繕を頼まないでいると、目ざとく見つけて、
「なおしてやるから、お出しなさい!」
と言って、すぐに繕ってくれた。そして、輪袈裟を首に掛けてくれて、リュックの位置や身づくろいまで、こまごまと手を焼いてくれた。その時には、まるで自分の母親のような感じがした。
記念撮影を終えてを挨拶して出発。
100メートルほど歩いて振り返ると、まだ見送っている。200メートルほど歩いて角を曲がる時、まだ見送ってくれているような気がしてふたたび振り返ると、やっぱりまだこちらを見てじっと立っていた。立ち止まって手を振ると、90歳近くとは思えないほど高々と上げて振り返してくれた。
最後に深々と頭を下げて、角を曲がった。感謝の気持が湧き上がり、胸が熱くなった。感動の別れだった。
〈次に遍路に来るときにもまだ生きているだろうか? 生きていてほしい〉と思いながら、十八番恩山寺に向けて歩き出した。
後日、拙著を送ったら、お礼のはがきをくれた。少し筆が震えているが、しっかりとした文字と文章が書かれてあった。心を込めて書いてくれたことが一目でわかった。いまだに大事にとってある。
次に遍路するときにはぜひ再会したいものだ。
今年の秋に4回目の遍路に行くつもりだったが、体調が十分でなかったので、残念ながら延期した。来年の春には行こうと思う。
以前の岩屋寺へ向かう山道で出会った紅葉がすごく心に残っている。
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今日はこの嬉しい記事に応援の☆ポチですよ!
2011/10/3(月) 午後 1:39 [ 清水太郎の部屋 ]
あらおさま
こんにちは。
いつもと違った記事の雰囲気はモードを変えられたからかしら?
戦争を潜り抜け、逞しく生き抜いた日本女性の鏡のような方。
さりげない優しさや思いやりは見習わなければならない点がたくさんありました。
どうぞ、一度お遍路道を回りたいという願望がかなえられますように!
最後のえも言われぬ美しい紅葉に・ポチ☆
2011/10/3(月) 午後 1:52
今日は 何だか心が和む記事で・・・『転載させて頂きます(*´Д‘)ノ』(^人^)感謝♪(*- -)(*_ _)ペコリ(✿◕ ‿◕ฺ)ノ))凸ポチッ♪
2011/10/3(月) 午後 1:55
清水太郎の部屋さん
いつも応援いただいてありがとうございます。
2011/10/3(月) 午後 3:00 [ moriizumi arao ]
この秋に区切り遍路に出たいと思っています
まだ予定は具体的には立っていません
また事前になってふらりと出かけるかも知れません
お接待の真心に触れたとき、あ〜四国に来てよかったと安堵します
2011/10/3(月) 午後 4:40
おタケさん
行きたくなった時ぷら〜っと出かける四国 最高だと思いませんか?
2011/10/3(月) 午後 8:35 [ moriizumi arao ]
和さん
四国には心和むにんじょっや風景がいっぱいあります。
いつもそれを感じます。
感謝のポチありがとうございます。
2011/10/3(月) 午後 8:37 [ moriizumi arao ]
すごいですよね、これがお接待なんですね。
おかみさんも遍路と携わることで大師を感じてるんでしょうね。
すばらしい!ポチ!
2011/10/3(月) 午後 9:36
杜泉さん今晩は。
先日、官前首相がお遍路に出たそうです。
私は何かとてもお遍路そのものの価値が下がった感じがしてどうしようもありません。嫌いだった官前首相にだけは、お遍路先を越されたくなかったです。解かってたら、もう少しリハビリを頑張ってタクシーにでも乗って先にやりたかった。本当に残念です。何か神聖な場所にドロ足で踏み込まれた感じです。
2011/10/3(月) 午後 11:04 [ reikun11 ]
こんばんわ
初めまして。ブログへのコメントありがとうございました
お遍路さんは行った事がないのですが
父が行ったり、近所の方が行っているので
話は聞いたことがあります
とても温かく接して下さると聞きました
記事のような感じなんでしょうね
人と親密に関わり、命も預かる仕事をしているので
相手を大事にする気持ちを持って生きていきたいです
紅葉の写真、とても美しいですね〜♪ポチをして行きます
2011/10/4(火) 午前 1:33 [ うなぎちゃん ]
gloriosa036さん
コメントありがとうございました。
遍路宿の女将さんは弘法大師を心から敬愛しているひとがおおいですね。
2011/10/4(火) 午前 7:13 [ moriizumi arao ]
reikun11さん
遍路を愛するものとして管前首相には絶対回ってほしくなかったですね。
遍路を政争の具や自己PRのために使う人に回られたのでは遍路がけがされてしまう気がして仕方がありません。
百歩どころでなく百万歩譲って、パホーマンス遍路の中でも少しは誠実の心を磨いてほしいものですね〜。
2011/10/4(火) 午前 7:35 [ moriizumi arao ]
うなぎちゃん
コメントそしてポチ!ありがとうございました。
私は心の修養を大きな目的の一つにしています。
一回りすると心が磨かれたかなという感じがします。
2011/10/4(火) 午前 9:02 [ moriizumi arao ]
和さん
転載ありがとうございました。
2011/10/4(火) 午前 9:08 [ moriizumi arao ]
やはり歩き遍路っていいですね。
自分も死ぬまでに一度は歩き遍路をしたい!
しかしながら正直不安も…
ようやく今年一度目の結願を達成しました。五年越しです。 とりあえず二度目を目指します!
2011/10/4(火) 午後 7:07 [ 必殺必中ブリキ屋稼業 ]
必殺必中ブリキ屋稼業 さん
結願おめでとうございます。
わたしは3回とも通し打ちですが、時間の融通をつけてまで回っている区切りうちの人に敬意を感じてるんです。
時間が許せるようになったらゆっくりと歩いてみませんか。
2011/10/4(火) 午後 8:17 [ moriizumi arao ]
初めまして。
私は四国の大学に通っていましたので、拝読しながら、すれ違ってきたたくさんの「お遍路さん」たちのことを思い出しました。
紅葉のお写真もとても素敵です。移動に列車やバスを使われる方も多い中、歩かれるとこのような景色にも出会えるんですね。
2011/10/5(水) 午前 0:52
寛野ひろみさん
コメントありがとうございました。
わたしは20歳の時初めて遍路したのです。
初めは旅行気分で出発したのですが、
だんだんと心境が変わってきたのです。
よかったら、書庫の四国遍路の魅力をクリックして最初のころの記事を読んでいただけたら嬉しいです。
2011/10/5(水) 午前 7:35 [ moriizumi arao ]
♪こんばんは。
まるで自分の母親のような感じ・・・
へんろ特別接待は お遍路さんは自分の子供のように
面倒みてくれるのですね。
一期一会の親子特別接待ポチ!
一期一会のご訪問が おかげさまで 30万越えました。
美人さんの冠接待をトラバさせてもらいます。
2011/10/5(水) 午後 8:56 [ EGACITE ]
EGACITEさん
30万訪問おめでとうございます。
一口に30万と言っても大変な継続の力ですね。
2011/10/5(水) 午後 10:43 [ moriizumi arao ]