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小説『敦煌』 への大人の恋
50年ぶりに開く2冊目の小説『敦煌』――
ページをめくり始めたとき、おそらく高校時代とは違った出会いがあに違いないという強い期待感を持った。別な恋人が見つかるような気がして…、やはりときめきがあった。
しかし…、高校生の頃のようなワクワクするしゃにむな入れ込みようとは違って、ゆったりとした地に足の着いた心のゆらぎだった。
敦煌については、学生時代から既多くの書物を読み、何度もシルクロードに関するテレビ放送を観ているし、小説『敦煌』を題材にした映画 ―― 主人公の趙行徳を佐藤浩市、西夏の漢人部隊の隊長朱王礼を西田敏行が演じた―― も見た。
だから高校生の時のような未知への憧れは薄らいでいるが、深い意味での発見があるに違いないと別な意味での期待が大きかった。
読み進めると期待通り、実際に足を踏み入れたことのある敦煌だけに、小説のなかの情景やイメージがどんどん自分の中で消化されていく。臨場感があり、自分が主人公になりきれるときもあった。
敦煌の遺物が世界に知られるきっかけとなったのは、第十七窟に埋まっていた膨大な文物が発見されたことだった。このことが、小説『敦煌』の発想になっている。 私の場合、以前莫高窟を訪問した時にすでに第十七窟を見学もしたことが記録に残っていたが、ガイドはそこが敦煌を有名にした窟だという説明もしなかった。だから私自身は当時はそれを意識した見学の仕方はしなかった。そして、後にそのことを知って記憶をたどったのだった。
作者の井上氏は、『敦煌』を書いた時点では実際に敦煌に行ったことはなかった。文献だけであれだけの臨場感をだせるのだから、描写力には改めて脱帽した。こうしたイメージ描写について、井上氏は次のように語っている。 ――私は学生時代から西域関係の書物を読むのが好きで、西域の入口である敦煌付近の都邑については、いつからともなく、それぞれのイメージを持つようになっていた。それらのイメージは書物からえたものがもとになって、ごく自然に私の心に生まれてきたものである。そうしたもので、小説『敦煌』は書かれている。
小説「敦煌」を書いてから二十年の間、自分の小説の舞台になっている河西回廊地帯に実際に足を踏み入れてみたいと思ったし、敦煌という町も、敦煌莫高窟も、自分自身の目に収めたいという気持も強かった。しかし、文字通り中国の辺境ではあるし、望んで果たしえないことだと思っていた。(NHKシルクロード 第2巻 敦煌 砂漠の大画廊)より 井上氏は、どれだけシルクロードに行きたかったことだろう。
井上氏の自身の思い入れはもちろんだが、小説『敦煌』で書いた自分の持っていたイメージが、はたして正しかったのかを見定めたいという意味もあったであろう。その想いは読みながらよく伝わってきた。
井上氏がその望んで果たしえないことが思いがけずに実現できたのは、昭和53(1978)年と54年であった。そして永年の夢がはたされたのであった。
若い頃の私は、望んでも、望んでも手の届かない存在にますます憧れを強めていった。そのギャップを埋めようと、シルクロードや西域に関する本を読み漁った。
しかしながら、読めば読むほどかえって想いは深くなり、ギャップが広がった。世界情勢を知れば知るほど、夢の実現に対する壁は厚く、高くなっていった。
シルクロード3分の2は中国とソ連(当時)を通っている。ソ連は鉄のカーテン、中国は竹のカーテンが張り巡らされ、一般人は入国すら容易ではなかった。おまけに、1979年ソ連のアフガン侵攻が開始され十年近くも続いていた。シルクロードは「夢のまた夢」だった。 わずかに光明が差し始めたのは、日本と中国が国交を結ぶ1972年であり、ソ連崩壊の1991年であった。ところが、その後、イラン・イラク戦争(1980〜88)、湾岸戦争(1991)アフガニスタン戦争(2001)、イラク戦争(2003〜)と、シルクロード周辺は物騒な状態が続き、細いローソクの炎は風前の灯となった。 しかし、なんと幸運なことか…。シルクロード全行程を歩むことができたのは、私が定年を迎えた2004年だけだったのだ。マルコ・ポーロの道を歩める幸運が、思いもかけず廻ってきたのである。 私が夢を達成した1年後には、旧ソ連領のキルギスとウズベキスタンで相次いで内乱が起きた。そして、いったん落ち着きかけたかに思えたイラクではテロが続発し、収束することなく、アラブの春後、今度はイスラム国の問題が続いている。
あのチャンスを逃したらシルクロード全行程走破はずっと先延ばしか、永久にめぐり合えなかったかもしれない。 こうした幸運を神に感謝しながら、2004年の最初のシルクロードの旅の準備に取りかかったのである。 |
回想シルクロード
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アハハ♪ IZUMIちゃん♪お疲れ様ァ〜♪
アハハ♪ 体調は如何ァ〜???
アハハ♪ 世界平和が、豊かな暮らしを♪もたらすのよね〜♪
アハハ♪ 身体大事に過ごしててね〜♪マタネ〜♪
2016/3/6(日) 午後 10:39 [ オッチャン3 ]
> オッチャン3さん
ありがとう!
二つも病と付き合っているとあまり気にならなくなりますね。
2016/3/7(月) 午後 10:00 [ moriizumi arao ]