東日本大震災 未来への祈りと伝承〜「みちのく巡礼」

みちのく巡礼は、東日本大震災の祈りの場創設と記憶・教訓の伝承、防災精神の啓発、復興に寄与する活動を行っています。

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               朱色が見事な二番極楽寺山門

[御詠歌]  極楽の弥陀の浄土へ行きたくば 南無阿弥陀仏口ぐせにせよ
     

四国八十八ヶ所 札所の情景 前2回の記事

1. 一番霊山寺 その1  人生リセットの遍路旅へ←クリック
2.l一番霊山寺 その2  「もらい火」にはいろいろな解釈←クリック

悲しみを誘った無縁墓と心に残る無縁遍路供養観音

 二番極楽寺へ着いたのは3時半ごろだった。
 朱色の見事な山門が目に飛び込んできた。大きな仁王門だ。
 門をくぐると、桜の花がむかえてくれた。心が浮き立ってくる。
   
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 白い小粒の玉砂利が敷かれた道を歩むと、広い境内が目に入ってきた。
 岩石と樹木をうまく配置した見事な庭が広がっている。 
 
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 とたんにすがすがしい気分になった。
 手入れが実によくいきとどいている。

 近くで老齢の僧侶がほうきで掃いている。
 もしや…、という気持がうごめいた。
 しかし、とりあえず
 「これだけの庭を手入れするのは大変なことでしょう」と、ねぎらいの言葉をかけると、
 「これもお遍路さんへのささやかなお接待の気持です」
 と、眼鏡の奥から柔和な笑顔をみせた。
 そのさりげなさがすごく胸に響いた。
 その姿を見て、27年前の和尚さんだと確信した。
 
 ――この方は、平成十年放送のNHK「四国八十八ヶ所」にも登場した安芸昌憲さんである。
 実は、27年前に人生に迷って遍路に出たとき、この庭で話を聞いてもらったことがあった。
 確認すると、やはり当時副住職だった安芸さんだった。
 もちろんご当人ははそれを覚えていなかったが…
 何か深いご縁を感じた。

そのときのことを、当時の日記をから抜粋して書いてみると、
 
 ……………………………………………………………………………………………………………… 
  少しお話をしているうちに、自分の苦しい胸のうちを聞いてもらいたくて、
  遍路に来た経緯をお話した。
  …………
  最後に、
  「長く歩いていれば必ず本来の自分が蘇えるでしょう。そうしたら必ず将来の道は見つかりますよ。
  確信を持ってください」と淡々と、しかも毅然として言った。
  そして、
  「向こうに観音様がありますから、最初にそちらへ行ってみるといいですよ。
  観音様は悩みを聞いて下さって、救ってくれる仏様ですから」
  と言って、境内の片隅を指差した。
 
  奥へ行くと、観音像と塔がひっそりと立っていた。
  観音像の台座には、「無縁遍路 供養観音」と書いてあった。
  そのやさしい表情をじっと見ているだけで救われそうだった。
  合掌してしばらく無心で祈った。
  何も願ったりはしなかった。
  努力なしに観音様にすがりたくはなかった。
  「天は自ら助くる者を助く」の気持を貫きたかったのだ。
  ………………………………………………………………………………………………………………
   
 話を戻すと、
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 安芸昌憲住職に礼を言ってから、思い出の観音像に行ってみると、
 昔どおりしっかりと立っていた。

 
 本堂に登る石段の手前には、「長命杉」の巨木が、相変わらずがっちりと立っていた。
 思わず“おお〜”っと声を上げたくなるようだ。
 この杉は、弘法大師お手植えといわれている。
 樹齢1200年という老杉で、しめ縄が巻かれてある。
 この樹皮に触ると長寿を授かるという。
 私はは90歳くらいまで生きればいいな〜と思っているので、
 勝手に一回十年延びるとこじつけて、3回なでた。
 
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 長命杉のそばには、お釈迦様の足跡といわれる仏足石があった。
 これは30年ほど前にはなかった気がするので、住職に訊くと、
 自分の代で立てたものです、とのことだった。 
 
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仏足石  古代インドでは像を造る習慣がなかったため、このような仏足石や菩提樹などを用いて、釈迦やブッダを表現したとのことである。


 本堂は小高い丘の上にある。右手に観音堂を見ながらかなりの段数の石段を登った。
 
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                       本堂への階段
 
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                       二番極楽寺本堂


 大師堂は、さらに上にあり、
 石段の両脇の茂みの中には苔むした小さな石仏や墓が無数にあった。
 これらは、道半ばにして命を落とした遍路たちを供養するものである。
 この人たちのほとんどは、このお寺の境内で亡くなった人たちだと、
 住職さんが教えてくれた。
 
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                      大師堂への石段 
 
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                       無縁墓や無縁仏
 
 大師堂への階段の両側にはたくさんの無縁墓や無縁仏が立っている。 
 常陸の国と書いてある無縁墓もあった。
 あんな向こうから歩いてきて、行き倒れになったのかと思うと目頭が熱くなってしまう。

 このとき、4歳の時に宮城県の実家で出会ったお遍路さんのことが急に浮かび上がった。
 母が幼い私に思わず言った「なずなわげあんだべな〜」という言葉の意味が、
 還暦の今となってよくよく理解できるのである。
 あの時のお遍路さんはどのような遍路をしたのだろう。
 はたして生きて帰ったのだろうか…、と胸が痛んだ。
 
 第二の人生への区切りなどと言って、気楽な遍路をしている自分は、恵まれているなあ〜 と思う。

 
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  大師堂はこんもりとした濃い緑に囲まれて、ひっそりと佇んでいた。
  
 無心で読経した後、「お守りください」とつぶやいて、深く三礼した。
 おそらく、遍路半ばでむなしく命を落とした人々に対する供養の気持もあったのではないだろうか。

 
 哀感や無常気に浸りながら山門を出ると、
 とたんに道の両側には、菜の花や桃の畑が広がり、一変して華やぎの世界へと変わった。
 
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