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誰にも思いつけそうもない奇想天外な展開、 腹を抱えるほど愉快で、風刺のきいた深いセリフ回しの数々、 いろ〜んな人がいて、いろ〜んな生き方をしてるんだ。それでいいんだよ〜 。 と語りかけてくれるようなキャラクターたち…… どれも、わたしに楽しい時間を与えてくれた。 そればかりではなく、そこから、生きる力さえ引き出すことができた。 自分らしく生きることや「共生」についても『ひょうたん島』から教わった。 苦しいことや悲しいことがあっても、「泣くのはイヤだ笑っちゃおう」とばかりに、 「ひょうたん島スピリット」で切り抜けてきた。 抱腹絶倒のストーリーの中にさらりと悲哀が秘められていて、心がくすぐられたものだった。 井上文学作品を初めて読んだのは、『青葉繁れる』だ。 この小説は、仙台一高在学中の思い出を半自伝的に描いたものだ。 井上さんは在学中新聞部に属していて、一学年上級生には俳優の菅原文太さんがいた。 文太さんは強面(こわもて)の部長として小説に登場する。 井上さんと同級だったH先生が、私が通う小学校へ新任としてやって来て、たまたま私の家に下宿した。 そして、小説のヒロインのモデルになっている若尾文子さんの話をよくしていた。 彼女は二次大戦中に仙台の叔母さん宅へ疎開し、宮城二女高の生徒だった。 休み時間には一高性が競ってアイスキャンディーを買いに行ったそうだ。 主人公のモデル井上さんは、もちろんその一人だった。 彼女は中退して大映で映画デビューした。 実際とダブらせてにんまりしながら読んだことを思い出す。 最後になるが、井上さんにお会いしたとき、拙著『諸君! お遍路はいいぞ』の話をしたところ、 読んでみたいとおっしゃるので、次にお会いするときに差し上げる約束をしたが、 それが果たせぬうちに井上さんは黄泉の国へ旅立たれた。 とても心残りである。 合掌 |

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