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名歌鑑賞
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窓ちかく 吾友とみる くれ竹に 色そへてなく
鶯のこえ
                後西天皇
           
(まどちかく わがともとみる くれたけに いろそえて
 なく うぐいすのこえ)

意味・・窓近くに生えて、我が友として見ている呉竹の
    その色に、音色という色を添えて鶯が鳴いてい
    る。

    清々しく思っている竹園、しかも鶯が来て鳴い
    ている心地よさを詠んでいます。

 注・・くれ竹=呉竹。はちくの異名。直径3〜10cm、
     高さ10〜15m。

作者・・後西天皇=ごさいてんのう。1637〜1685。

出典・・万治御点・まんじおてん(小学館「近世和歌集」)
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1 さそはれぬ 心のほどは つらけれど ひとり見るべき
  花のいろかは              
                    小侍従

2 風をいとふ 花のあたりは いかがとて よそながらこそ
  思ひやりつれ             
                    建礼門院右京大夫

1 詞書・・公卿、殿上人達が連れ立って花見をする時に
      身体の具合が悪いと同行しなかったので、桜
      の枝に、書いて結んでお届けしました。
2 詞書・・風邪気味で行かれなかったので、お返事を次
      のように書きました。

1 意味・・私たちの誘いに乗らない、あなたのお気持ち
       は残念でしたけれども、私たちだけで見るに
       は惜しいほどの花の美しさなので、このよう
       にお目にかけます。

2 意味・・満開の桜には花を散らす風は禁物ですから、
      風邪気味の私が花のあたりに近寄るのもいか
      がと思いまして、よそながら美しい花を思い
      やっていました。

  注・・さそはれぬ=誘うはれぬ。誘えない、誘えに
      のらない。
     心のほど=気持ち。「ほど」はようす、あり
      さまの意。
     かは=反語の意味を表す。・・であろうか、
       いや・・ではない。
     公卿=関白・大臣・大、中納言・参議をいう。
      位は三位以上。
     殿上人=昇殿を許された人。四位・五位の人。

 作者・・小侍従=生没年未詳。1121年頃の生まれ。高倉
             天皇に仕える。
     建礼門院右京大夫=けんれいもんいんのうきょ
       のだいぶ。1157頃〜1227頃。高倉天皇の中宮
       平徳子(建礼門院)に仕える。

 出典・・風雅和歌集。
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ひととせに ふたたびもこぬ 春なれば いとなくけふは
花をこそ見れ       
                   平兼盛

(ひととせに ふたたびもこぬ はるなれば いとなく
 けふは はなをこそみれ)

意味・・一年に二度とは来ない春なので、他に何かを
    するということもせず、今日はひたすら花見
    をすることだ。

    一期一会の気持ちです。一年に二度とは春が
    来ないので、なにはさておき、花見に専念し
    たいという気持ちです。

 注・・いとなく=暇なく。暇がなく、いそがしく、
      ほかに何をする暇もなく。
    一期一会=茶道の心得を説いた言葉で、今日
     という日、そして今いる時というものは、
     二度と再び訪れるものではない。その事を
     肝に銘じて茶会を行うべきである。

作者・・平兼盛=〜990。駿河守。三十六歌仙の一
    人。

出典・・後拾遺和歌集・110。
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見るままに 花も霞みも なかりけり 春をおくるは
峰の松風
                  藤原良経

(みるままに はなもかすみも なかりけり はるを
 おくるは みねのまつかぜ)

意味・・みるみるうちに桜の花も霞もなくなってしまっ
    た。峰を吹く松風のみが行く春を送っている。

    霞が消え、桜も散ってしまい、いよいよ夏が来
    ることになるのだが、まだ春を思わせるのは松
    を吹き抜けるそよ風だけである。

 注・・見るままに=見るにつれて、見るに従って、見
     るやいなや。

作者・・藤原良経=ふじわらのよしつね。1169〜1206。
    37歳。摂政太政大臣。新古今集仮名序の作者。

出典・・海漁父北山樵客百番(岩波書店「中世和歌集・鎌
    倉篇)

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今は音を 忍びが岡の 時鳥 いつか雲井の 
よそに名告らむ
              安井仲平

(いまはねを しのびがおかの ほとどぎす いつか
 くもいの よそになのらん)

意味・・私は、忍びが岡に生まれたほとどきすだか、
    まだ声をひそめるような鳴き方しか出来ず、
    皆に笑われ耐え忍んでいるが、いつの時にか
    必ず、美しい声で大空に届くように鳴いてみ
    せよう。
    

    昌平学校に学んでいる仲平は顔に痘痕(あば
    た)があり器量が悪かったの同窓の者に馬鹿
    にされていた。それでこの歌を詠んで壁に貼
    って座右の銘としていた。

 注・・忍びが岡=「忍び」は固有名詞の忍ヶ岡と「
     耐え忍ぶ」の意と、また「声をひそめるよ
     うな鳴き声」の意の忍ぶを掛ける。
    雲井=雲のある所、空。
    よそに=余所に、かけ離れた所。
    昌平学校=ペリーの来航以来、徳川幕府の洋
     学の教育機関として設立された。その後、
     開成学校となり東京大学に発展した。

作者・・安井仲平=やすいちゅうべい。1799〜1876。
    儒学者。天然痘にかかり顔面疱瘡痕で片目を
    失う。

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打ちしめり あやめぞかをる 時鳥 鳴くや五月の
雨の夕暮れ     
                 藤原良経

(うちしめり あやめぞかおる ほとどぎす なくや
 さつきの あめのゆうぐれ)

意味・・空気はしっとりと湿って、菖蒲が薫っている。
    ほとどぎすが鳴く、五月雨の降る夕暮れ時
    ある。

    本歌の危うさの気持ちが含まれています。
    心地よくほととぎすが鳴き、菖蒲の匂いが薫
    って来るが、五月雨の降る夕暮れの物寂しい
    心が伝わって来ます。

    本歌です。
   「ほととぎす鳴くや五月のあやめ草あやめも知
    らぬ恋もするかな」  (古今和歌集・885)

     (ほととぎすの鳴く五月に咲くあやめ草、その
    名のように、物事の「あやめ=分別」も分ら
    ないような恋をすることだ)

 注・・打ち=語調を整えたり、意味を強めたりする。
    打ちしめり=しっとりとして。
    あやめ=菖蒲。五月五日の端午の節句に厄除
     けとして軒にさす。
    あやめも知らぬ=物事の道理も分からない。
     夢中になって。

作者・・藤原良経=ふじわらのよしつね。1206年没。
    38歳。従一位・摂政太政大臣。「新古今集
    仮名序」を執筆。

出典・・新古今和歌集・220。

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物思へば 心の春も しらぬ身に なにうぐひすの
告げにきつらむ
                建礼門院右京大夫

(ものおもえば こころのはるも しらぬみに なに
 うぐいすの つげにきつらむ)

意味・・あれこれと思い悩んで心も晴れず、春になっ
    たとも思われない。そのような私の所に鶯は
    何を知らせにやって来たのだろう。

    平資盛(すけもり)を恋しく思っているのだが、
    まだ色良い返事が貰えなく思いつめている頃
    に詠んだ歌です。
    春が巡ってきて鶯は春を告げて鳴いてている
    のだが、心は心地よい春ではない。

   「物思へば」、人は人間関係や病気などで悩み
    事を多種多様に持っています。この悩みがあ
    れば春が来ても春の心地よさをかみ締められ
    ない。花を咲かせたいという思いがあっても
    中々花が咲かない。春が来たことをかみ締め
    たいものだ、という気持ちです。

作者・・建礼門院右京大夫=けんれいもんいんのうき
    ようのだいぶ。1157頃〜1227頃。高倉天皇の
    中宮平徳子(建礼門院)に仕えた。平資盛(すけ
    もり)は恋人。

出典・・建礼門院右京大夫集。

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絶対に 甘柿という 苗木買う  
                     瀧春一

(ぜったいに あまがきという なえぎかう)

意味・・お祭りなどに立つ植木市。
    「上の方を剪定して植えると、3年で柿がなるよ」
    「いやぁ、これは間違いなく甘柿だよ」
    知識を得ながら苗木を買う。 

    買って貰うために穴の掘り方や水のやり方まで手
    を取り足をとり教えてくれる植木市の風景です。

作者・・瀧春一=たきしゅんいち。1901〜1996。高等小
    学卒。水原秋桜子に師事。

出典・・松林尚志著「滝春一鑑賞」。
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み吉野の 大川のべの 古柳 陰こそ見えね 
春めきにけり        
              輔仁親王

(みよしのの おおかわのべの ふるやなぎ かげこそ
 みえね はるめきにけり)

意味・・吉野の大川のほとりの古木の柳は、陰が見える
    程に葉を茂らせていないが、春らしく芽ぐんで
    来たことだ。

 注・・み吉野の大川=吉野川。奈良県吉野郡の麓を流
     れ和歌山県に入って紀ノ川となる。
    陰こそ見えね=陰は見えないが。木陰が見える
      ほど茂らないが。古柳であるから葉が茂ら
      ないのである。

作者・・輔仁親王=すけひとしんのう。1072〜1119。

出典・・新古今和歌集・70。
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春の野に心ある人の素顔かな
                 斯波園女

(はるののに こころあるひとの すがおかな)

意味・・春の野は春色をめでて野遊びをする人々で
    にぎわっている。女性は衣服を着飾り、顔
    にははなやかな化粧がほどこされている。
    その中に混じって何も飾らない素顔の人を
    見て、「心ある人」だなあと、その清楚な
    美しさに、かえって心がひかれることだ。

 注・・心ある=風雅の心や教養による品位をさし
     ている。

作者・・斯波園女=しばそのめ。1664〜1726。
    1690年芭蕉に師事。

出典・・句集「広野」(小学館「近世俳句俳文集」)
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