エクセルシア Season 12

大震災 原発災害 東北を忘れない

要談「国内被災地」

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こちらも、忘れてはいけない「3.11」



出典 河北新報様

記事中の日付けは2011年

証言/「埋もれた災害」

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土砂崩れ後の白河市葉ノ木平地区を上空から撮った写真。
中央の山の斜面の土砂が崩れ、住宅をのみ込んだ=3月14日(国土交通省提供)
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豪雨で吉津さん方に押し寄せた土砂=8月6日、福島県只見町熊倉
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福島県には東日本大震災の津波被害と福島第1原発事故に隠れ、クローズアップされなかった災害が幾つかある。
大震災当日に起きた白河市の土砂崩れはその一つで、13人もの死者を出している。
7月の新潟・福島豪雨でも、奥会津地方が大水害に見舞われた。当時の関係者の証言を集め、「埋もれた災害」を再現した。

◎白河・土砂崩れで13人犠牲/震災直後「山が動いた」/住宅10軒、木っ端みじん

 「山が動いた」
 白河市葉ノ木平地区の飲食業渡辺敏勝さん(58)は3月11日午後2時46分、激しい揺れに自宅を飛び出し、庭の植え込みをつかんだ。近くの電線は波を打ち、住宅のプロパンガスのボンベが次々に倒れた。
 揺れ始めから30〜40秒後、地鳴りのような重低音がとどろいた。自宅の約200メートル先で、山の杉の木がメトロノームの針のように左右に大きく揺れながら滑り落ちた。
 土砂が幅100メートル、高さ約40メートルにわたって崩落した。体積は約7万立方メートルに及ぶ。「バリバリ。バリバリ」。瞬く間に10軒の住宅を巻き込み、木っ端みじんに砕いた。
 土砂は住宅を挟んで反対側の山を約6メートルさかのぼって止まった。辺りは舞い上がった杉の花粉で煙が立ちこめたようにかすんでいた。

<生存絶望>
 発生直後から消防、警察、自衛隊、建設会社の関係者が24時間態勢で、土砂に埋まった家の住人を捜索した。住宅の柱は粉々。自動車も厚さ約30センチまでぺしゃんこになっていて、生存は絶望視された。
 遺体を傷つけないよう重機で土砂の表面を少しずつ削り取った。土砂は押し固められ、スコップで掘り返す手作業は難航した。
 発生2日後の13日、最初の遺体が見つかった。23歳と19歳の姉妹で、土の中で重なり合うようになっていた。その4日後には6歳の男の子と一つ下の妹が発見された。西郷村に住み、葉ノ木平地区の祖母の家に遊びに来ていた。捜索に当たった消防団員は「遺体の損傷が激しく、見るのがつらかった」と振り返る。
 13人目の遺体は3月23日に発見された。77歳の女性で、約1キロ離れた自宅から散歩に来て被害に遭ったという。
 葉ノ木平地区は里山に挟まれた谷間に位置する。福島県の調査で、崩れた山は、固い粘土層の上に火山灰層が載っていたことが判明した。1998年8月に県南地方で最大1200ミリの大雨が降った際も異常はなく、県の地滑り危険箇所の指定を受けていなかった。

<最大惨事>
 地震の強い揺れで、火山灰層が粘土層の上を滑り台を滑るように崩れ落ちた。県南建設事務所の小野保夫河川砂防課長は「激しい揺れが土砂崩れの原因とみられるが、同じような地質の場所が県内のどこに分布しているかは崩れるまで分からない」と言う。
 白河市の土砂崩れは大震災の土砂災害では最大の惨事だった。津波被害と原発事故が前面に出たことで、犠牲者の遺族は置き去りにされた感を抱いている。遺族の一人は「ここで大災害があったことを忘れてほしくない」と訴える。

◎新潟・福島豪雨/濁流一帯覆い尽くす/只見川が浮き上がった

 「こんなにひどくなるとは思わなかった」
 福島県只見町熊倉の農業吉津政勝さん(80)と妻芳江さん(71)が振り返る。7月29日、新潟・福島豪雨により裏山で土石流が発生し、築100年以上の自宅や水田が土砂に埋まった。
 土石流は裏山の沢が引き起こした。7月26日に降り始めた大雨で増水し、土砂を押し流した。同居する長男夫婦は仕事で不在。2人の小学生の孫を連れ、膝まで水に漬かって隣の集落に避難した。
 翌30日、車に乗せられて家に戻った。土砂は家に押し寄せ、車をのみ込んでいた。「岩や泥でぐちゃぐちゃだった」。がくぜんとした。

<雨量680ミリ>
 熊倉地区は十数軒の農家などが点在する。只見川の支流の伊南川沿いにあり、吉津さん宅の裏山の沢水も伊南川に注ぎ込む。只見町では7月27日午後1時〜31日午前0時に680ミリの降水量を記録。土石流の他、伊南川が氾濫し、大部分の住宅が損壊や床上、床下浸水の被害を受けた。
 吉津さんは今、町内にある長男の妻の実家に身を寄せている。「元の家には怖くてもう住めない」と移転を考えている。
 新潟・福島豪雨は只見川流域に被害が集中した。堤防を越えて水があふれ、濁流と土砂が一帯を覆い尽くした。
 只見町八木沢地区は只見川の百数十メートル西に位置する。全約25戸のうち約20戸が損壊したり、浸水したりした。田畑に被害のない家はなかった。
 「29日午後から徐々に集落が水に漬かった」と区長の五十嵐一さん(64)。近くの家の家財道具を2階に上げる作業を手伝い、お年寄りに避難を呼び掛けた。

<集落孤立>
 屋外では水が腰の高さまで来た。「只見川が浮き上がったように見え、怖かった」。自宅はやや高い場所にあったが、水は床上まで上がり、2階に逃げて一夜を明かした。
 只見川に架かる橋が通れなくなり、集落は一時孤立した。住民は30日に自衛隊のヘリコプターで救助された。集落で死者やけが人は出ず、五十嵐さんは「これだけの災害で死傷者が出なかったのは奇跡だ」と語る。
 水害は只見町より下流の金山町や柳津町にも広がった。金山町越川地区に住む元町長斎藤勇一さん(72)は「道路と住宅の境が分からないほど冠水した」と言う。
 金山町は1969年にも集中豪雨の被害に遭っている。斎藤さん方を含め地区の住宅は約3メートルかさ上げして建てられたが、各住宅とも床から高さ2メートル近くまで水をかぶった。
 只見川には水力発電用のダムが約10カ所設けられ、ダムを管理する電源開発や東北電力は豪雨を受けて放流した。両社は「適正だった」と説明するが、放流が水害を増大させた可能性を指摘する声も出ている。

[新潟・福島豪雨]7月26日から30日にかけて降った大雨で福島、新潟両県の県境を中心に大水害に見舞われた。福島県では只見川が氾濫。1人が行方不明になり、流域の只見町など1市8町2村で33棟の住宅が全壊、77棟が床上浸水した。JR只見線は只見川に架かる金山町の鉄橋3本が落ち、一時全線不通になった。現在も会津川口(金山町)―大白川(新潟県魚沼市)間は復旧のめどが立っていない。福島県によると、土木、農林業関係の被害は約250億円に上る。


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