【熊本地震が発生した翌日、インターネット上に「動物園からライオンが脱走した」というデマが流れた。市街地をうろつくライオンの写真を添えるという悪ふざけだ。これだけでなく「川内原発で火災が発生した」「大型商業施設が火事」といった虚偽の情報もあった。
▼この手の情報はフェイスブックやツイッターなどソーシャルメディアを通じて急速に広がる。利用者が増えたことでデマの広がるスピードはより速まった。非常時には、一歩間違えばパニックにもつながりかねない。
▼一方で、真偽を検証する人も増えているから早い時期に打ち消されることもある。今回は後者で、デマが被災者を走らせることは食い止められた。
▼デマは悪意で流されるものばかりではない。厄介なことに不安や勘違い、推測、伝聞による善意のデマもある。それを信じて友人や知人に転送してしまえば、自らもデマの発信者になってしまう。
▼そうならないためには一歩立ち止まって、情報を検証する姿勢が大切だ。公的な機関が発信したのか、最初の情報発信者は信用できる人か、伝聞や推測ではないか、共通した複数の情報が確認できるか―などを点検すればいい。情報発信者の信用度合いはプロフィルや過去の言動などから判断できることもある。
▼災害時に個人が発信する情報は有益だが、安易に「いいね」や「リツイート」のボタンを押すのは禁物。デマの加害者になってはならない。 (長) 】
(引用終わり)
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(それから約1年後)
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紀伊民報コラム2017年5月1日「山火事と放射能」
(以下引用)
【今朝、パソコンのメールをチェックしていたら、知人経由でこんな情報が届いていた。
▼4月29日午後、福島の原発事故の帰還困難区域の森林で火災が起き、今も鎮火していない。放射能汚染の激しい地域で山火事が起きると、高濃度の放射線物質が飛散し、被ばくの懸念がある。東北、関東、北信越、静岡、愛知の人は最低限、次のような自己防衛の対策がオススメという内容だった。
▼内部被ばくしないよう換気はしない。外出時は二重マスク。家庭菜園にはしばらくビニールシートをかぶせる。雨が降ったときは必ず傘を差す。1週間ぐらいは毎日朝昼晩、みそ汁を飲む……。
▼その記事を当地に配達される全国紙でチェックすると、毎日新聞の社会面だけに小さく「帰還困難区域国有林で火災」とあった。29日夕、陸上自衛隊に災害派遣を要請。福島、宮城、群馬3県と自衛隊から計8機のヘリが消火を続けた。30日夕までの焼失面積は約10ヘクタール。福島県警は雷が原因の可能性があるとみている、と伝えていた。
▼この情報を最初にアップしたのは東京電力で賠償を担当していた元社員。現地の事情に詳しい彼によると、放射能汚染の激しい地域では森林除染ができておらず、火災が起きれば花粉が飛ぶように放射性物質が飛散するという。
▼原子炉爆発から6年が過ぎても、収束がままならない事故のこれが現実だろう。政府も全国紙も、この現実にあまりにも鈍感過ぎるのではないか。(石)
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(このデマ記事を受けて)
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福島民友「浪江の山火事デマ拡散 専門家ら「まどわされないで」
【東京電力福島第1原発事故で帰還困難区域になっている浪江町井手の十万山で4月29日に発生した山林火災は、2日になっても鎮火しなかった。インターネット上には放射性物質の拡散による健康不安をあおる信ぴょう性が低い情報や、その情報を否定する書き込みが集中している。火災に伴う放射線量の上昇による健康への影響はない。インターネットは誤った情報もネット上に残るのが特徴で対応が課題となりそう。
「浪江町の火災で毒ガス(放射性ガス)が巻き散らかされている。風下の県はシェルターに避難したほうがいい」「東京都江戸川区の空間線量に変化はない。デマ情報」
山林火災が発生して以降、短文投稿サイト「ツイッター」には火災に絡み「関東圏は外出注意」「関東地方から静岡県くらいまでマスク着用(中略)自衛しよう」など放射線の拡散を危惧する書き込みが続いている。
書き込みが増えるにつれ、こうした"危険"情報を否定する書き込みも増加。公表されている放射線量などを挙げ「情報はデマ」と発信するケースが目立っている。
第1原発の廃炉現場で働く作業員の日々を描いた漫画「いちえふ」の作者竜田一人さん(52)も誤った情報に流されないようツイッター上で「デマにまどわされないで」などと呼び掛け、火消しに奔走した。
中央大の松田美佐教授(48)=メディア論=は「不安をあおる情報、特に命に関わるものは拡散されやすい。不特定多数が目にするインターネット上の情報はなおさら流布される」と指摘する。
2011(平成23)年3月の原発事故の直後には「安定ヨウ素剤の代わりに市販のうがい薬を飲めば安全」との情報がインターネット上で広がった。松田教授は「うその情報も転載されることで残り続けてしまう。そうした情報に流されず、否定の情報を出していくことが必要だ」とする。
◆放射線量目立った変動なし
県によると、火災現場周辺の放射線監視装置(モニタリングポスト)の値に目立った変動はないという。
県が双葉町の石熊公民館と大熊町の野上1区地区集会所に1日設置した、大気中のちりなどを採取して放射線量を測定する機器の測定結果が2日判明。1日午後に同公民館で採取したちりなどからセシウム137が1立方メートル当たり0.54ミリベクレルが検出された。同集会所は不検出だった。
避難区域内の同種機器で昨年度検出された最大値は大熊町に設置の同1.2ミリベクレルだった。
原子力規制庁が公開している北関東、首都圏のモニタリングポストの値にも目立った変動はない。
南相馬市立総合病院などで内外部被ばくを研究する坪倉正治医師(35)は「モニタリングポストに加え、ちりの値にも変動がなければ、健康影響は考えにくい」としている。
◆測定機器追加設置
県は2日、浪江町井手地区に、大気中のちりなどを採取して放射線量を測定する機器を追加で設置した。】
★フリーライター、Hさんから転載。