転載元 紀南新聞online様
紀南医師会は10日、熊野市保健福祉センターで紀南地域の「医療現場からの想い」を開いた。紀南病院医師の奥野正孝さんと、紀和診療所の所長・濱口政也さんが「医師である私たちから伝えたいこと」をテーマに講演。約80人の来場者は熱心に耳を傾けた。
濱口さんは自身の経歴について、「2人の和尚」に出会ったことが地域医療を学ぶきっかけになったと紹介。高知大学医学部家庭医療講座で研修をしている時に「阿波谷敏英先生に出会ったこと、その阿波谷先生の師匠である奥野先生が紀南病院に勤務されていたので、この地に来ました」と説明した。
印象に残っている教えとして「阿波谷先生は相談をしても本を読めとは言わない、『聞いてくればいい』と言う。漁師さんや八百屋のおじさん、いろんな人と付き合い、時には酒を酌み交わし、意見を聞いた。ある日、八百屋のおじさんが『お前いい勉強しているじゃないか』と言ってくれた。『これかな』と思った」と当時を振り返った。「和尚」と呼ぶのは「問答しながら導いてくれるから」と説明。奥野さんにも「自分で考えて動きなさい」と教えられた。
「地域医療は医師ではなく、住民が育てることだと気付いた」、「へき地は医者をすてきにする」、「医者は話しにくいと思われている。こうやって皆さんと話せることがありがたい。対話する機会を増やしていければ」と医師と患者の関係性を訴えた。
奥野さんは「患者さんから話しやすい存在にならなければ」と述べ、「患者本人の性格や家族のことなどを話してもらえれば、医師にとっても診察がしやすくなる」と濱口さん同様、両者の関係性について考えを示した。
2人は救急医療の役割についても言及。「今日死ぬかもしれない患者の命を明日につなぐのが救急医療。風邪などで来院の場合はどうしても後回しになる」などと注意を促した。
救急医療の利用法について「この地域の人たちは、規則正しくとてもいい生活をしている。だから身体の変化が分かるはず。調子がいつもと違うと思った時は救急医療を使う。これはアカンと思うほど調子が悪い時は救急車を呼んでください」と強調した。
奥野さんは、安定した地域医療を継続するためには、長くこの地にとどまる医師のみでは不十分で、10年後には先進の医療から遅れることになると警鐘。地域の実情が分かった医師と先進医療を学んだ医師とがチームで診ていくことが大事になると提言した。
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転載元 沖縄タイムス プラス様
精神障がい者を自宅の一室や敷地内の小屋などに閉じ込める「私宅監置」の跡が、沖縄本島北部に現存していることが分かった。社会防衛の名目で、沖縄では1972年の日本復帰まで公認された制度で、狭い「座敷牢(ざしきろう)」に長年にわたって追いやられ、人権を踏みにじられた人々が大勢いた。
精神科医の呉秀三(1865〜1932年)が、私宅監置の悲惨な状況を調べ「わが邦十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸のほかに、この邦に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」との言葉を残してから、今年は100年の節目に当たる。県内で精神医療・福祉に携わる関係者らが、タブー視されてきた闇の歴史を掘り起こすとともに、小屋の保存や当事者たちの尊厳回復を求め動いている。(社会部・新垣綾子)
コンクリート小屋、外から鍵
本島北部の集落に残っている「私宅監置」跡は、1・5坪(4・95平方メートル)ほどのコンクリート造りの小屋だ。地域関係者らによると、食事の出し入れや通気と採光のための小窓のほかは、排せつなどのスペースがあるだけで出入り口の鉄の扉は当時、外から鍵をかけていた。
監置されていたのは、昨年7月に89歳で亡くなった男性。戦後に精神疾患を発症し1952年暮れから66年1月まで、ほぼ監置が続いたとみられる。敷地内には家族が住んでいた母屋があるが、現在は空き家になっている。
私宅監置は、1900年に制定された精神病者監護法に基づく。50年施行の精神衛生法で本土では禁止されたが、米軍統治下の沖縄では残った。精神医療施設の絶対的不足を背景に、60年にできた琉球精神衛生法でも認められ、病院以外での保護拘束の手段として日本復帰するまで続いた。
劣悪な福祉、家族も苦悩
70年代、名護保健所の職員として北部地域を回った安富祖朝正さん(76)=金武町=は「外から五寸くぎを打って閉じ込めたケースもあり、まるでヤギや豚のような扱いだった」と証言する。狭い空間に長年追いやられたため、膝が硬直し立てない人もいたという。
琉球精神衛生法は精神科医療の公費負担も定めたが、実際には急増する入院希望者に琉球政府予算が全く追い付かない状況だった。「高額な医療費は自己負担となり、入院させようにも病床がない。ないない尽くしの時代に、監置する側の家族も追い詰められていた」と安富祖さんは続けた。
監置小屋の保存や歴史継承に取り組む県精神保健福祉会連合会の高橋年男事務局長(65)は、離島を含め県内各地で監置があったと説明。大阪府寝屋川市の民家で昨年末、精神疾患を理由に女性が両親に監禁され凍死した事件を挙げ、「復帰前だけの話ではなく、精神保健の今に続く問題。モノを残すことで歴史を振り返り、今後を考えるきっかけにしたい」と願う。
同連合会などは4月17〜22日、那覇市の県立博物館・美術館で私宅監置をテーマに写真展とシンポジウム(22日)を開く。入場無料。
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