エクセルシア Season 12

大震災 原発災害 東北を忘れない

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対話より圧力を好み、そして誇る政府与党
弱い立場の人を 敗者と蔑み、追い詰め、見捨てる社会が後押ししています。
改竄か忖度か、そういうものの背景がよく見てとれるようにも。
勝利、強さを追いかけ続けること自体が、人間としての弱さを感じます。


転載元 毎日新聞様

【戦争や災害やハンセン病などの被害とは何かについて、半世紀以上取材してきて見えてきたのは、
災厄は発生時の死傷だけで終わるものではなく、60年、70年たっても続くということだ。
その全体像を俯瞰(ふかん)してはじめて、非戦を誓う平和国家の建設や、災害、公害、事故の惨事、病気への偏見・差別を繰り返さない安全・安心な社会の構築のために何をなすべきか、その条件が見えてこよう。 】
・・・柳田邦男さん


戦後俳句に新境地をひらいた俳人、金子兜太(とうた)さんが今年2月に98歳で亡くなられた。戦争末期にトラック島の部隊で海軍中尉だった。爆撃や飢えで部下が死んでいく悲惨さは、生涯消えないほど深く全身に刻まれ、反戦平和の俳句を折々に詠み続けた。私の心に鋭く刺さるその代表的な一句。



 水脈(みお)の果て炎天の墓碑を置きて

 去る



 敗戦によって島を去る船から振り返れば、戦友たちの墓碑の数々を己は見捨てるようにして、祖国へ帰る。生き残った者(サバイバー)の罪責感が伝わってくる。

私は、戦争体験者、災害・公害・事故の被害者、ハンセン病患者らの手記などを長年にわたって読んできた。いのちも心も危機に陥れる不条理な被災、被害、罹患(りかん)の中で、なぜ体験記を書くのか、その意味は何か、と問いかけながら。共通するのは、書かないではいられないという内的衝動、この苦しみを多くの人に知ってほしいという思い、こんなことは二度と繰り返さないでという願望などがエネルギー源になっていることだ。

 書く本人にとって重要なのは、表現することで、受傷したトラウマ(心的外傷)に際限なく引きずり込まれないで、生き直そうとする力と日常性を取り戻すことができるようになるという点だ。

 金子さんの場合、南方の島での体験が、強烈なトラウマとなったことは想像にかたくない。だが、俳句という表現活動で、トラウマを超えた自分の新しい人生をひらいていった。

 だが、表現の手段を持つということは、庶民の暮らしの中ではたやすいことではない。

 一昨年秋、熊本県内のハンセン病患者の療養所で100歳を迎えた男性が県からの長寿祝いを拒否し、絶食に入った。人権も人生も剥奪した国家からの祝福など、どうして受けられるかと、自らのいのちを自分で決着させたのだ。生を根底から揺るがすトラウマは、100歳になっても消えないのだ。

 金子さんが亡くなった2月20日、福島地裁は東京電力福島第1原発事故に関する一つの判決を下した。2011年4月、福島県飯舘村が全村避難の対象になるとのニュースを聞いた同村の102歳になる大久保文雄さんが「故郷を離れたくない」と自殺した。遺族が東電に求めた損害賠償請求を裁判所が認めたのだ。「高齢の大久保さんは村に帰還できずに最期を迎える可能性が高く、耐え難い苦痛を与えた」と、判決は論述した。

 戦争や災害などの体験記から、惨禍の実相をとらえようとする私の作業は、精神医学の視点からのトラウマ研究に関心を広げさせた。その問題意識から、私が疑問を抱いていたことがある。なぜ日本では、苛烈な戦場体験や往年の大災害の中で発生した深刻なトラウマや精神障害についての精神医学的な取り組みや記録がほとんどないに等しいのかということだ。

 米国では、第二次世界大戦中の前線で、精神科医が臨床研究と診療に従事し、当時既に精神医学者、A・カーディナーが「戦争ストレスと神経症」を出版していた。私は最近、中井久夫・神戸大名誉教授の翻訳本(みすず書房刊)を読み、異常な体験によるトラウマへの日本の対応の遅れを痛感した。

 この問題に光を当てる研究書が、最近、やっと刊行されるようになった。筆頭は、戦時中の陸軍病院などの診療記録や日誌を分析して、日本軍兵士のトラウマと精神障害について研究を進めてきた中村江里・一橋大特任講師の「戦争とトラウマ 不可視化された日本兵の戦争神経症」(吉川弘文館)だ。

 なぜこの国で戦争神経症がなかったかのように不可視化されてきたのかという理由について、この本が挙げる理由は次の通りだ。

 (1)実態を記録すべき精神科医が前線に送られなかった(2)精神に変調をきたした兵士の大部分は前線に置き去りにされ、多くが亡くなり、生き残って帰国しても生存者としての罪責感もあって話せなかった(3)兵役の半ばで傷病により兵役免除になるのは「立派な男」としてのアイデンティティーを失うことだった(4)銃後の人々のまなざしは「立派な死に様」(軍国美談)を求め、傷病兵には価値を置かなかった−−などだ。今、この国は、こうした社会と人間のゆがみを払拭(ふっしょく)しているだろうかという思いが去来する。

 さらに、沖縄戦が沖縄の住民に与えた心の傷について、戦後半世紀以上を経ての診療活動から明らかにした精神科医・蟻塚亮二氏がまとめた「沖縄戦と心の傷トラウマ診療の現場から」(大月書店)と、沖縄戦によって受けた被害の国家賠償を求める住民訴訟の裁判記録「法廷で裁かれる沖縄戦 訴状編」「同被害編」(高文研)がある。

 蟻塚氏は、沖縄の住民で戦争体験のある高齢者の中に、明らかに沖縄戦のトラウマの後遺症と見られる特異な症状を示す人たちがいることを発見した。その数は100人を超えた。症状は、アウシュビッツからの生還者の精神症状に酷似する過覚醒型不眠をはじめ、戦時記憶の増大、不安発作などだ。これらの症状は、その後も確認され、戦後70年以上たった今も、現在進行形で続いているという。

 戦争や災害やハンセン病などの被害とは何かについて、半世紀以上取材してきて見えてきたのは、災厄は発生時の死傷だけで終わるものではなく、60年、70年たっても続くということだ。その全体像を俯瞰(ふかん)してはじめて、非戦を誓う平和国家の建設や、災害、公害、事故の惨事、病気への偏見・差別を繰り返さない安全・安心な社会の構築のために何をなすべきか、その条件が見えてこよう。


    地域包括センターやデイサービス、各種施設で、「ニンチさん」などの言葉を数度聞きましたが
    とても居心地の悪さを感じたものです。
    「痴呆」があらためられ「認知症」と表現するようになっても根は変わっていないのでしょうか。
    「徘徊」についても、施設、調査士さん、医療関係者からも普通に言われます。
    それは、まだまだ「徘徊」に代わる言葉が定着していないからかと思い
    こちらも、そのまま返したり、説明の際に使うこともあります。

    外を歩き続けることに対して、「徘徊」と使うことで
    目的がなくウロウロしている、何も意識が無いような印象を定着させてしまっています。
    短期記憶が続かないから、例えばトイレの場所を探し続けておられたり、またトイレの場所と反対方向をひたすら歩き続けておられることもあり、その最中に失禁ということもあります。
    ご自身が育った家、子どもの頃の家に帰りたい、という気持ちから探し続けておられたり
    仕事に出かけた子を、どこかに行ってしまった、どこかで迷っていないか、と心配して歩いておられたこともありました。

    外を歩くことに限らず、屋内でも行動には目的があり、それまでの生活の延長ということも分かります。

    「徘徊」 「ニンチが入る」は偏見と差別があることを認識していく機会になれば。


     転載元 朝日新聞DIGITAL 様
    認知症の人が一人で外出したり、道に迷ったりすることを「徘徊(はいかい)」と呼んできた。だが認知症の本人からその呼び方をやめてほしいという声があがり、自治体などで「徘徊」を使わない動きが広がっている。

     「目的もなく、うろうろと歩きまわること」(大辞林)、「どこともなく歩きまわること」(広辞苑)。辞書に載る「徘徊」の一般的な説明だ。


    東京都町田市で活動する「認知症とともに歩む人・本人会議」メンバーで認知症の初期と診断されている生川(いくかわ)幹雄さん(68)は「徘徊と呼ばれるのは受け入れられない」と話す。散歩中に自分がどこにいるのか分からなくなった経験があるが、「私は散歩という目的があって出かけた。道がわからず怖かったが、家に帰らなければと意識していた。徘徊ではないと思う」。

     認知症の本人が政策提言などに取り組む「日本認知症本人ワーキンググループ」は、2016年に公表した「本人からの提案」で、「私たちは、自分なりの理由や目的があって外に出かける」「外出を過剰に危険視して監視や制止をしないで」などと訴えた。

     代表理事の藤田和子さん(56)=鳥取市=は「『徘徊』という言葉で行動を表現する限り、認知症の人は困った人たちという深層心理から抜け出せず、本人の視点や尊厳を大切にする社会にたどり着けない。安心して外出が楽しめることを『当たり前』と考え、必要なことを本人と一緒に考えてほしい」と話す。

     こうした意見を受け、一部自治体が見直しに動く。福岡県大牟田市は、認知症の人の事故や行方不明を防ぐ訓練の名称から「徘徊」を外し、15年から「認知症SOSネットワーク模擬訓練」として実施する。スローガンも「安心して徘徊できるまち」から「安心して外出できるまち」に変え、状況に応じ「道に迷っている」などと言い換えている。認知症の本人の声を尊重したという。

     兵庫県は、16年に作成した見守り・SOSネットワーク構築の「手引き」で、「徘徊」を使わないと明記、県内市町にも研修などで呼びかける。名古屋市の瑞穂区東部・西部いきいき支援センターは、14年に作成した啓発冊子のタイトルを「認知症『ひとり歩き』さぽーとBOOK」とした。「いいあるき」という新語を使うのは東京都国立市。「迷ってもいい、安心できる心地よい歩き」という意味を込め、16年から始めた模擬訓練で用いている。

     厚生労働省は、使用制限などの明確な取り決めはないものの、「『徘徊』と言われている認知症の人の行動については、無目的に歩いているわけではないと理解している。当事者の意見をふまえ、新たな文書や行政説明などでは使わないようにしている」(認知症施策推進室)とする。

     推計では、認知症高齢者の数は15年時点で500万人を超す。25年には約700万人に達すると見込まれている。


         ◇

     朝日新聞は今後の記事で、認知症の人の行動を表す際に「徘徊(はいかい)」の言葉を原則として使わず、「外出中に道に迷う」などと表現することにします。今後も認知症の人の思いや人権について、本人の思いを受け止め、様々な側面から読者のみなさんとともに考えていきたいと思います。




    ■解説

     認知症をめぐる言葉は歴史とともに変化してきた。「徘徊(はいかい)」については医療・介護の現場からも「時代にあわない」と問題提起がなされている。

     認知症の人が道に迷うのは、場所や時間感覚がわかりにくくなる「見当識障害」が原因とされる。長く第一線で認知症診療にあたってきた精神科医の松本一生さんは「経験上、(道に迷う)認知症の人の7割ほどは、何かしら理由があって歩き、必死になって道を探している」と話し、新たな言葉に言い換えていくべきだと指摘する。

     介護関係者らが使用停止を呼びかける動きもある。兵庫県たつの市のNPO法人播磨オレンジパートナーは、「歩く目的あり。徘徊と言わないで!」というメッセージ入りの缶バッジをつくった。賛同した全国の介護関係者らとともに16年から「撲滅キャンペーン」を展開する。「認知症をニンチと言わないで!」という呼びかけとセットだ。

     「認知症」はかつて「痴呆(ちほう)」と呼ばれ、「何もわからなくなった人」との偏見にさらされた。侮蔑的な表現であるなどの理由で、厚生労働省が「痴呆」を「認知症」と改めたのは04年のことだ。その後、名前や顔を隠さず思いを語る本人が次々にあらわれた。

     「徘徊」の言い換えについて「認知症の人と家族の会」(本部・京都市)の鈴木森夫代表理事は「本人が傷つく言葉は使わないほうがいい。認知症の正しい理解のために言い方を変える取り組みは大切だ」と理解を示す。同時に「言葉だけ変えても介護の現実は変わらず、『散歩』『外出』では伝わらないと感じる家族の気持ちもある。表面的な言い換えにとどまらず、行動の理由や家族の思いを理解しようとする姿勢が必要だ」と指摘する。

     朝日新聞はこれまで記事や見出しで「徘徊」を使用してきた。私もその一人だ。あるとき「行方不明」になりかけた状況を、認知症の80代男性が自らの言葉で語るのを聞いた。懸命に周りを見渡して場所の手がかりを探す、その不安と恐怖が胸に迫り、「何もわからぬ人」が「目的もなく」ではないと腑(ふ)に落ちた。個人の体験ではあるが、本人の思いに身近に接する人が増えるほど、この問題への理解は進むと感じる。

     一方、適切な言い換え表現がないなどの理由から、「徘徊」はなお広く用いられている。今回の見直しは「私たちは使わない」という朝日新聞の姿勢を示すものだが、使用する立場を批判する趣旨ではない。

     認知症とともに生きるとはどういうことか、どんな支えが必要なのか。言葉の問題を一つの入り口として、読者と考えてゆけたらと思う。

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