転載元 福島民報 様
政治の力で揺れる司法
今回の日本大学アメリカンフットボール部の事件では、実際に行った学生の宮川泰介さんの誠実な言葉に対して、内田正人前監督や井上奨前コーチの嘘[うそ]にまみれた言葉には、誰もが不信感を持ったに違いない。この構図を多くの人が今の政治の問題と重ねて見ていたのは当然だろう。
しかしこのアメフットの件については関東学生アメフット連盟が、実に的確な調査で事実を明らかにし、明快な説明で迅速に処分を決定したのには、私たちも久しぶりに本当に胸がすく思いをした。
ところが政治の問題では私たち国民は裏切られた。森友学園問題では、財務省理財局が本当に局独自の判断で8億円余もの値引きをしたのか、その要因を隠すための佐川宣寿[のぶひさ]前理財局長の度[たび]重なる虚偽発言や公文書改ざん問題などが、1年以上国会やジャーナリズムなどで問われ続けた。それでも解明されないままごまかされてしまうのではないかと私たちは心配していた。そして最後の唯一のとりでとして大阪地検の特捜部が全体の事実を明らかにするだろうと期待していたのである。
ところが大阪地検特捜部は財務省理財局をはじめ同省近畿財務局や国土交通省大阪航空局の関係者すべてを不起訴処分にしたのである。
5月25日に保釈された籠池泰典氏は、十カ月にも及んだ勾留について「国策勾留だ」と述べた。大阪地検特捜部としては方針が決まるまで彼が外で事実を正直に語らないように勾留し続けたのではないかとさえ思いたくなる。
こうなると私たちは何を頼りにすればいいのだろう。三権分立は民主主義の重要な根幹である。あるテレビ局の番組では、これは国策の処分であると述べた人がいたが、まさにその通りと思った。本紙のこの欄の4月1日号に、私は政治の力に行政が振り回されていると書いた。ところがもはや司法権も侵され、立法権を持つ国会も安倍内閣の支持勢力が三分の二を占める現状では、日本は恐るべき独裁国家になってきたということではないだろうか。このような成り行きを考えれば、加計学園の問題もグレーのまま幕引きということになりかねない。
これらの他にも防衛省、厚生労働省、文部科学省など、今の内閣には多くの問題がある。戦後の日本でもこれほどの手負いの傷を負いながら、なお自らの政策を強行してきた内閣は例がないのではないだろうか。
さらに北朝鮮との問題でも、日本は対話の方向には耳を傾けず、強い圧力のみを主張することによって、北朝鮮からも相手にされず、対話路線を求めている世界の流れからも外れている。拉致の問題も北朝鮮の非核化という大問題で米朝首脳が会談するかどうかという時点で、ただ声高に主張するのが得策かどうか検討が必要だと思われる。日本の位置が客観的に見えず、トランプ米大統領にすり寄る独裁的な政府は、私には恐ろしく見える。(小島美子 国立歴史民俗博物館名誉教授、福島市出身)
|