エクセルシア Season 12

大震災 原発災害 東北を忘れない

放談 「社会問題全般」

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阪神・淡路大震災が発生した日を前に起きた凄惨な事故に、心が痛むばかりです。
事件、事故には社会の背景が映し出されるものですが
今回のスキーバス事故では、様々なことが見え、感じるものでした。

メディアの報道は
最近は被害者・加害者の情報を、ツイッターやフェイスブック、ブログなどから拾うことが
当たり前になってきました。
そして、被害者のほとんどが学生ということもあり
「この春から大手の会社に就職が決まっていた」
「将来はこんな夢を抱いていた・・・」
と、大手企業に就職が決まっていた人や、しっかりした夢を持っていた方に特化しています。
就職先も決まらず、引きこもりの人が犠牲になったら、どういう報道をするのでしょうか。

そして、運転手さんのお1人は、65歳で契約社員として再就職したばかり
しかも、大型バス運転の経験がないままで
今回亡くなられましたが、ご遺族が見つからず、ご遺体の引き取り手が今もいないとのこと。

小さい会社が、その日その日の利益をあげていくには、厳しい環境ばかりで
国は、けしからん 一点張りで安全の名のもとに、監視と規制の強化ばかり。

その根底にあるものを、下記の記事で具体的に書かれていました。
特定の会社だけを叩いて改善されるものではないということを
私たちが理解していかなければ、また同じことが繰り返されるのでしょう。
福島県差別同様、リテラシー無きネット民のリンチは目を覆いたくなります。
それにしても「土下座」という風習というものも・・・・






なんでもそうですが、誹謗中傷するのは誰でもできますが
なぜそうなって、どうしたらいいのか考える人は一握りかそれ以下

盗みたくないのに、スイッチが入って盗んでしまう」−。
経済的な理由などでなく、衝動を抑えきれずに万引を繰り返す病気「窃盗症(クレプトマニア)」。再犯率も高いが、県内には専門的な治療を行う施設などはなかった。そうした中、昨年12月、弁護士らが県内唯一の支援団体「KAなら」を発足させた。“病気”という側面を認識した上での再犯防止に向けた取り組みを進めている。(山崎成葉)

■盗品価格は数千円以内、患者の多くは女性

 平成27年版犯罪白書によると、窃盗罪の再犯率は覚せい剤取締法違反に次いで高い。22年の出所者(9855人)の5年以内の再犯率(26年)は46・1%(4542人)と、半数近くにも上り、捜査関係者が「癖(へき)」とも表現するほど。だが、「窃盗症」の治療など行う支援施設は全国的にも少なく、先進的な治療を行っている「赤城高原ホスピタル」(群馬県渋川市)では20年以降、1370人が受診している。

 患者には女性が多いといい、摂食障害(過食症、拒食症)など、他の病気と併発する傾向が高い。同院でも、摂食障害での入院患者の約半数に万引した経験があったが、盗品の価格はほとんど数千円以内だったという。

 経済的な理由や、所持する目的さえないのに盗みを繰り返す特徴がある窃盗症は、精神的ショックや生活上の変化などが引き金となり発症するケースが多いという。同院での治療の核は、自助グループでのミーティング。再犯したら報告し返金、罰金を科すという誓約書を作成するほか、物品のため込みがないかをチェックしたり、窃盗犯の裁判を傍聴させたりする。病気に向き合うことで、「回復」が期待できるのだという。

■批判はしない「言いっぱなし」が原則

 専門的な治療を行う施設や支援団体がなかった奈良県内では昨年12月、法テラス奈良法律事務所の松井大輔弁護士(33)らが、当事者と家族、弁護士ら支援者でつくる支援団体「KAなら(クレプトマニアクス・アノニマス)」を発足。同月上旬、当事者の30代〜60代の男女5人を含む計約10人で最初のミーティングを開いた。

 代表も務める松井弁護士には、仕事で窃盗症患者とみられる被告人と接した経験があった。「盗みたくないのに、衝動に支配されて盗んでしまう」などと打ち明ける様子が「本当に苦しそうで、つらさがひしひしと伝わってきた」と話す。

 窃盗症などの依存症の治療には、批判はしない“言いっぱなし”が原則のミーティングが有効とされる。同会でもそうした会を、週1回、1時間半ほど開催。参加資格は16歳以上で、匿名も可能で、今後は、当事者だけで解決できない課題を家族や支援者で共有し、法律相談などにも応じる方針だ。

 松井弁護士は「互いに体験談を話し、共有することで、それぞれの問題解決につながっていけば」と期待する。

■短期間での治癒難しく

 窃盗罪には、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられる。だが、執行猶予期間中に再犯を繰り返す窃盗症患者は多く、松井弁護士は「病気なので、刑事的処罰だけでは解決されないのではないか」と指摘する。

 近年は執行猶予中に万引で逮捕され、地裁で実刑が言い渡された事件の控訴審で、執行猶予付き判決になった事例もあるという。松井弁護士は「病気という性質を考慮しての司法判断が、徐々に見受けられるようになってきた」と話す。

 短期間での治癒は難しいのが依存症の治療で、患者は長期間の治療を継続することが必須となる。だが、赤城高原ホスピタルでは、患者の約7割が3カ月以内に治療を止めてしまうといい、竹村道夫院長は「唯一確実に治療を受けられるのは、刑事裁判の進行中」と指摘。改正刑法で薬物使用者を対象に導入が決まった「刑の一部の執行猶予制度」を挙げ、「窃盗症患者にも同様の制度があれば」と話した。


本文は下記リンクより、読んでいただけます。

SINODOS 『21世紀の不平等』――グローバル化のせいで何もできないか?

再分配手法の範囲、特に社会支出の増大を伴うものの範囲は、一部で言われるほどグローバル競争に制約されてはいないと論じてきた。制約はある。でもだからといって何もできないということでは「い。これは予算を全体として眺め、あらゆる給付などとあらゆる社会支出を、公共と民間の両方について検討するとなおさらはっきりする。確かに財政問題はあるが、それは私たちが解決できる力の範疇にある問題であり、外部の力だけで結果が決まるような問題ではないのだ。」


テロリストの目標は、「混乱」です。

「アラブの春」と言われたものの中には

リビアをテロリストの跋扈する力の真空地帯を作ることも含まれていました。

恐怖に陥った一般市民が政府に圧力をかけ、政策を変更させたり

政権交替に追い込んだりすること。

9.11のあとのアメリカが、恐怖のあまり、柔軟性を失い

「愛国者法」を作ってしまったことは、

テロリストたちの、最も狙いとしたことです。

静かに、日常生活をつづけましょう。

日常生活の目から、その日常生活が出来なくなっている人たちを、温かくみまもりましょう。

そして、自分の手を温かくして、その人たちの背中にふれましょう。

とても分かり易いです。
昨年、福島市で伺った話しと同じです。
何が正しい情報か迷っている方は是非ともご一読を。


先日、ある学会誌に「福島の子供たちの間で、甲状腺がんが他の地域の20-50倍上がっている」という論文が受理されたようです。(注1)最近になり、この論文が今でも世間で物議をかもしているという事を聞き、とても驚きました。なぜならこの論文は、多少なりとも甲状腺やスクリーニングの知識のある研究者の間ではほとんど問題にされないものだったからです。

しかし、このような研究者の態度がジャーナリストの反応とあまりにかい離しているために、むしろ
「福島の研究者が不当に真実を隠している」
という誤解も生んでいるようです。

なぜこのようなかい離が生まれたのでしょうか?

ひとつの理由は、統計や疫学、甲状腺がんやスクリーニングに関する知識の違いの差があります。もうひとつは、研究の妥当性と政府に対する批判の妥当性が混在してしまっていることがあるように思います。

ここではまず論文の限界について述べた後、この論文が報道される背景について少し意見を述べさせていただこうと思います。

科学論文の限界

そもそも統計学だけで因果関係を示すことはできない。そのことは別稿にお書きしていますのでお読みいただければと思います。(注2)

その上で、まずこの論文は、主に3つの点で克服できない問題を抱えています。1つは、放射性ヨードの被ばく量推定が難しいこと。2つめは、放射線の推定被ばく量類推値と甲状腺がんの発症率との間に相関がみられていないこと。3つめは、福島と比較するためのコントロール群が適切でないことです。

もちろん限られたリソースの中で最善の結果を得ようとされた研究者の努力は買われるべきでしょう。しかし、この論文をそのまま紹介して、報道関係者が
「福島でがんが何十倍も増えている」
と安易に報道し、住民の方々をいたずらに傷つけることだけは控えるべきだと思います。

被ばく量推定の難しさ

福島県で起きている甲状腺がんが原発由来の放射性物質によるものだとするのであれば、すくなくとも被ばく量とがんの発生率の間に関係(相関)がある必要があります。つまり、推定被ばく量の高い人や地域ほど、がんの発症率が高くなるという事を示す必要があるのです。

しかし、甲状腺がんの原因である放射性ヨードは半減期も短く、被ばく量の個人差も大きいため、個人の被ばく量を推定すること自体が非常に困難です。(このことは別稿に書かせていただいております)(注3)。つまり事故当時の放射性ヨード被ばく量は推定に頼るしかありません。

そこでこの論文では、行政区ごとに、「原発近接地域 (nearest area))「中間の地域 (middle area)・北部と郡山)「中間の地域 (middle area)・中部と南部」「推定線量の最も低い地域(least contaminated area)」とを分けています。

しかし論文内の地図を見てみると、南相馬市は「近接地域」ですが、そのすぐ北に接する相馬市は「最も線量が低い地域」です。また、大熊町は「近接地域」、そのすぐ南に接するいわき市は「最も線量が低い地域」とされています。また、近接地域の子供たちの方が県外に避難していた確率が高い可能性もあり、この行政区でスクリーニングを受けた子供がこの地域に相当する被ばくをしたとも限りません。つまりこれだけをみても、適切な被ばく量の推定モデルを作ることのむずかしさが分かると思います。

95%信頼区間の解釈のむずかしさ

次に、この論文では南部の「最も線量が低い地域」を1としたとき、他の市の発がん率が何倍上がっているのか、という計算をしており、その値は「近接地域」で1.5倍(95%信頼区間0.63-4.0)、「中間地域」で1.7倍(95%信頼区間0.81-4.1)です。

ここで気をつけなくてはいけないことは、このデータの「95%信頼区間」です。これは、同じような集団を100回検査した時に、95回はこの区間に入りますよ、という値です。もう少し分かりやすく言えば、計算上1.5倍という数値が出ているものの、この数値は0.63倍から4.0倍の間のどの数字であってもおかしくないですよ、という結果です。たとえば同じような集団にもう一回検査をした場合、0.8倍という結果が得られることもあり得るのです。

0.8倍は減っていること、4倍は増えていることを示しますから、95%信頼区間が1をはさんでいた場合には、「増えているとも減っているともいえない」と解釈するのが普通です。

ですからこの数値を見て、「やっぱり増えているじゃないか」と断定するのが間違いであるのと同じように、「やっぱり増えていないじゃないか」と解釈することもまた、間違いだということには注意してください。

このように説明した時に、この信頼区間が1をまたいでいても、2つのグループで繰り返し出たら1.5倍である確率は上がるのではないか?というご質問を受けました。これは必ずしもそうではありません。単純な足し算や確率の掛け算ではなく、2つのグループのデータを合わせて、改めて計算しなおす(メタ解析といいます)必要があります。

この論文の中で一番人目に触れる要旨(abstract)の部分では、甲状腺がんが最も多く見つかった福島市近辺(中間区域)の数値だけが取り上げられています。この値は2.6倍(95%信頼区間0.99-7.0)。この値も同様です。

さらに、「線量の最も低い地域」だけでみても、いわき市ではコントロールの1.9倍(95%信頼区間0.84-4.8)ですが、相馬市では0倍(症例が0だから)です。被ばく量ではなく地域差だけでこれだけの差が出てしまう、ということも、注意して読まなくてはいけないポイントです。

有意差がでない時:「結果」と「解釈」の違い

もちろん、データの解釈は、研究者自身の意見に多少左右されます。がんが増えた、と考えたい方は「データがもう少しあれば示せたかもしれないな」と思うでしょうし、増えたと考えたくない方は、「これは偶然増えたようにみえただけだな」と思うのです。

つまり、「解釈(考察)」の部分で、どちらの論調で書いても間違いではない。しかし、医学や公衆衛生の研究者がこの要旨を読んだ時に「2.6倍増えているという『結果』だ」と断定することはありません。

一方、統計の数値に慣れていない人であれば、2.6という数字を見た瞬間にこれは増えている、という結論を出してしまうかもしれません。研究者の考察と非・研究者の結論がしばしば混同してしまう原因です。

くりかえしますが、限りあるデータから計算されたこの数値に「意味がない」と否定することは間違っています。しかしこの数値だけをもって
「福島市では原発の影響によって甲状腺がんが2.6倍に増えている」
と断定的な報道をすれば、それは科学的にも、倫理的にも過ちと言ってもよいでしょう。

20-50倍は驚く数字か

この論文の中では、さらに
「でも、スクリーニング効果で何十倍も発症率を上げるとは考え難い」
という議論もなされています。しかし、例えは過去の韓国の論文によれば、一般人の甲状腺がんのスクリーニングが導入されたことで、甲状腺がんの罹患率が15倍に上がった、というデータがあります。これは10万人当たり約4人であったものが、約60人まで増加しています(図)。(注5)

イメージ 1


「20-50倍」:他の地域との比較の難しさ

最後に、一番ニュース性のある「20-50倍」のくだりです。この計算をする上で、研究者が「福島の甲状腺がんを何と比較するのか」という点にとても苦労された様子がうかがわれます。なぜなら、自覚症状があって病院を受診される方のがんのデータと、スクリーニングのデータを比較することは本来できないからです。

スクリーニングと普通のがんの罹患率は比べられない

スクリーニングは、症状が出て病院へ行くようになるよりもずっと前にがんを発見します。たとえば今福島の甲状腺がんのスクリーニングでは5㎜大の結節を発見できます。しかしこれまでに日本で出ている発症率は、患者さんが「なんか出っ張っている」「飲みこみにくい」「押されて痛い」などの症状で病院へきて、検査の結果がんと分かった人のデータです。部位にもよりますがその10倍の大きさの5㎝くらいでも気づかなかったなどという人もいます。

この論文でもそのことは考慮されており、甲状腺がんの潜伏期間を4年、つまり、スクリーニングで発見できるくらいのがんが育って自覚症状が出るまでにおよそ4年かかるだろう、と推定しています。

しかし実際には、
「スクリーニングで見つかるような小さな甲状腺がんがあった場合、自分で気づくまでには何年かかるのか」
ということは、誰も知りません。そこに、疫学のむずかしさがあるのです。

がんの潜伏期間「4年」の推定は妥当か

実をいえば、微小甲状腺がんが4年で自覚症状が出る、という解釈は、甲状腺がんの専門家の間では疑問視されています。

たとえば甲状腺がん以外の理由で亡くなった方の解剖をしてみると、ざっと見ただけで7%、詳しく検査すれば22%に甲状腺がんが見つかった、というデータもあります。(注4)日本で一番甲状腺がんの罹患率の高い年代は65歳ですが、それでもがんの発症率は10万人あたり30名前後です(注5)。たとえむこう10年分の発症率を足したとしても、7%にもはるか及びません。そう考えれば、潜伏期間は10年間でもまだ短い印象があり、この「潜伏期間4年間」という推定値は短すぎる可能性が高いのです。

この論文によれば、スクリーニングの受診率が10%上がると、甲状腺がんの発症率が10万人当たり約40人増加したとしています。もし100%に上がったら、単純計算で10万人あたり400人増加、つまり元々の4人から比べ100倍になるという事です。

福島県の子供たちのスクリーニング受診率は100%ではありませんが15%よりはるかに高いので、スクリーニング効果は15倍から100倍の間くらいになることが予測されます。そう考えれば、スクリーニング効果だけで発症率が20-50倍にもなることは、あまり驚くべきことでもないのです。

もちろんスクリーニング対象となる年齢の差や性差は考慮されるべきでしょう。しかし、もし「20-50倍」という値がスクリーニング効果だけで説明できるか、といえば、残念ながらできる、と答えざるを得ないと思います。

潜伏期間4年の根拠と誤解

ところで、なぜ潜伏期4年間、という仮説が出てきたのでしょうか。これはチェルノブイリの事故が起きてから、甲状腺がんの発症率が増加し始めた年までの期間が4年間であるから、今福島で見つかっている甲状腺がんは放射能由来ではない、と主張された方がいたことに帰来すると思われます。

しかしこのチェルノブイリの発症率もまた、スクリーニングのデータであることを忘れてはならないと思います。つまり、4年目にがんの発症率が増えはじめた、というよりは、4年経ってようやくスクリーニングのシステムが確立した、ともとれる数字なのです。

つまり、この4年間という数字は、
「チェルノブイリで事故が起きてから、スクリーニングでがんが見つかり始めるまでの期間」
であって、
「チェルノブイリで甲状腺がんが増え始めた時期」
とは言えない。ましてや
「スクリーニングで見つかるくらいの大きさのがんが、症状が出る大きさまで育つ期間」
とも関係がありません。スクリーニングというものをあまりご存じない方だと混乱される数字かもしれませんので、注意いただきたいと思います。

これらの潜在がんやスクリーニングの感覚を持たずに論文を読むと、
「比較して統計学的な有意差があるのだから、甲状腺がんが20-50倍増えていることは確実だ」
と即断してしまう結果になるかもしれません。これは本当に危険なことだと思います。

何故研究者は騒がないのか?

このような誤解を生み得る記載に対し、なぜ
「甲状腺がんは増えていない」
と主張したい研究者たちが、反駁しないのでしょうか。おそらくこれは、これまで述べてきたような統計や疫学の説明の煩雑さ、
「あることが証明できないからといってないという事にはならない」
という科学の限界によるのではないかと思います。

(おそらくここまでの文章も、訳わからん、と感じる方がいらっしゃることと思います)

たとえば、上記の死亡後の調査でも、亡くなる何年前に甲状腺がんができていたかは誰にも分かりません。韓国のデータも間接的な計算にすぎません。つまり「潜伏期4年」「潜在がんと有症状がんの比較」を妥当でない、とまでは批判できるけれども、「間違い」と断言することはできないのです。

もともと研究者というのは長くて面倒臭い説明を好みません。それよりはむしろ、同じ知識を持っている者同士で意見を交換する傾向にあります。そのため、お互い同士の間で
「こういうやり方もあるかもしれないけど、専門家から見ると潜伏期間の設定は短すぎるよね」
という同意を得ると、専門外の人間にそれを説明する、という事をさぼってしまう傾向にあるのです。

その結果、ジャーナリストの耳にこのような意見が届くことはありません。これは特に専門性の高い研究職の方の、良くない傾向であり、今後改善されるべき点だな、と感じています。

なぜ「50倍」論文が報道されるのか

このように読まれてきて、
「なんでこれだけ突っ込まれる論文が騒がれるのだろう」
と疑問に覚える方もいるかもしれません。私は、この騒動は、現在の福島県における行政の対応に対する不満が爆発した結果ではないか、と考えています。

福島のがん、甲状腺がんが増えていないかどうかは、まだ「わからない」というのが現状です。そのような中で、危険と主張する方もいる一方、安心・安全を繰り返す「専門家」「有識者」が多いことも確かです。

「最悪の事態を想定するのが政府の役割のはずなのに、なぜ根拠もなく住民に安心を説得しようとするのだ」
このような不満を、ここ福島では常に耳にします。私もその点に関しては全面的に同意します。

ですが、それは科学者が間違ったデータ解釈をしてよい理由にも、ジャーナリストが誤った報道をしてよい理由にもなりません。長期的に見れば、報道や研究者への信頼を失墜させ、政府に「何もしない」理由を与えるだけの結果となるからです。

「データがあるから」危険だ・安全だと議論をするのではなく、「データがないから」こそ知恵を絞って最善の対処をする、そのような建設的な議論を望みます。

偏らない科学者はいない

ここまで、1つの論文だけを見ても、研究者と非研究者の間でどのくらい認識のかい離があるのか、という事を示してきました。言い方を変えれば、「今のところは分からない」ということを説明するために紙面を費やしたともいえます。

どんな一流誌に載った科学論文であっても、結果が「真実」とは限りません。むしろ、最先端の科学であるほど、その論説が新たな論文によって覆されることはいつでもおきているのです。そして、どんな一流の研究者であっても、完全にニュートラルであることはありません。自分なりの価値観や哲学を持たない研究者は研究者とは言えないからです。つまり、データの解釈や意見が偏らない専門家は存在しない、ということです。

しかし、そのような研究論文の「あいまいさ」が省略され、ニュースとして報道された結果、真実であるかのように一人歩きする。そのような誤った報道を、ここ福島で数限りなくみてきました。

「科学信仰、論文信仰」からの離脱を

私は以前も、福島の問題における科学の限界と、研究者の説明責任について述べてきました。そこで書いたことを、もう一度繰り返します。(注6)

「科学に対する『信頼』が高すぎることで、知識の罠に陥る人が増えています。様々な立場から科学論文・論説が発信されることで、今や自分の意見に合う『証拠集め』をすることはあまりにも容易になってしまいました。その結果、自分の信じたい意見を通すために『専門家の意見』を利用し、知識がある人ほど、視野が狭くなっていく。そのような方が、福島の放射線をめぐる議論で増えている印象を受けます。

また、どこかに「正解がある」と思い込んで議論をすることで、議論自体が目的を失い、互いが互いの説得をすることに終始してしまう。そういう場面もよく見かけます。」

誤った科学信仰、論文信仰により、「専門家」に安易に追随して、あいまいさの残るデータを断定するような報道を繰り返す。研究者は批判されるリスクを避け、あるいは面倒臭がって説明責任を投げ出す。その悪循環をやめない限り、このような騒動は繰り返されます。そしてその騒動に否応なく巻き込まれるのは、福島県の住民の方々なのです。

科学とは何のためにあるのか、ニュースの目的とは。福島に関心を持つ善意ある方々に、そのことを今一度考えていただきたいと切に願います。

(注1)Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014.
(注2)「福島の議論はなぜ決着がつかないのか:科学の限界と科学者の責任」(越智小枝)
(注3)「甲状腺癌の難しさ」(越智小枝)
(注4)厚生労働省がん統計
(注5)Martinez-Tello, FJ, et al. Cancer 2013; 71: 4022–4029.

越智小枝(おち・さえ)1999年東京医科歯科大学医学部卒業。国保旭中央病院などの研修を終え東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科に入局。東京下町の都立墨東病院での臨床経験を通じて公衆衛生に興味を持ち、2011年10月よりインペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院に進学。3.11をきっかけに災害公衆衛生に興味を持ち、相馬市の仮設健診などの活動を手伝いつつ留学先で研修を積んだ後、2013年11月より相馬中央病院勤務。剣道6段。

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