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サリエリ読むゼミ
『サリエリの生涯と作品』講読ゼミ記録

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 今回の範囲は、ついにサリエリがオペラを書き始めます。処女作のオペラに関するエピソードの幕開けです。

・p. 30, l. 1 Gegen das Ende
 このgegenは「〜ごろ」を示す前置詞。am Endeだとぴったりになる。このgegenは時刻を表す際にも使えるといえば使えるのだが、日本人はなんとなくあいまいな言い方を好むのでつい使いたくなってしまうが現代ドイツでは時刻を言うときにはamで言うのが普通。
・p. 30, l. 3 eine der wichtigen
 省略されない完全な形で書くと、eine Epoche der wichtigen Epochenとなる。「もっとも重要な時代のうちの一つ」というone of …の用法。
・p. 30, l. 4 ihr
 Epocheを指す。
・p. 30, l. 4〜5 zu dem Gebäude seines Ruhmens
 全体を直訳すると「彼の名声の構築」となるが、このdem Gebäude seinesは比喩的な表現で「巨大な」程度の意味。モーゼルに寄るサリエリ褒め倒しゾーン。
・p. 30, l. 5〜l. 7 das … haben
 l. 4のdem Gebäudeにかかる関係代名詞節。関係代名詞節の中で、so lange … als「〜である限り」と言う呼応表現がある。ちなみに、このso langeは現在ならsolangeと一語で書くところ。
 l. 6のgeläuterterは、lauter「純粋な」という形容詞から来た動詞lautern「純化する」の過去分詞の形容詞用法で、「洗練された」の意味。
 また、als以下の節の動詞部はaufgegeben habenだが、so lange … alsの「〜である限り」という条件部分なので、本来は未来完了時制でありaufgegeben haben werdenのwerdenが省略された形となっている。
・p. 30, l. 8〜l. 10 um so mehr als
 呼応の表現。als以下が理由となる。サリエリの初めてのオペラ作曲のエピソードを紹介されることが、本筋からは横道に逸れるけど読者にとっては有益だろうから許されるでしょう、というモーゼルの言い訳部分。
・p. 30, l. 9 umständliche
 辞書を引くと「手間のかかる、回りくどい」という訳語がのっているが、ここでは「横道に逸れる」の意味。
・p. 30, l. 10〜l. 16 daß die Freunde … können
 長いdass節。この節の中にさらに挿入節などが入っているが、大きく分けて節が二つ入っていてそれぞれの動詞はl. 13のverfolgen werdenとl. 16のbenützen werden。
・p. 30, l. 10 die Freunde
 このFreundeは「友人」ではなく、「ファン、愛好家」のこと。
・p. 30, l. 11〜l. 12 eines jungen, talentvollen, für sine Kunst gühenden Komponisten
 名詞本体はeines Komponistenで間の長い部分は冠飾句。
・p. 30, l. 12〜l. 13 Einselnheit
 「細かいところ、ディティール」の意味。
・p. 30, l. 13〜l. 14 die Art und Weise
 「状態、やり方、方法」で、直後のl. 14〜l. 15のwie Salieri … gingという節が同格になっている。
・p. 30, l. 15 aller nachgefolgten
 これは名詞句で、省略せずに書くとaller nachgefolgten Operとなる。
・p. 30, l. 17〜 » Mein Meister Gaßmann …
 以下、サリエリのセリフの直接引用。このエピソードは非情に長く、p. 36辺りまで直接引用が途切れない。
・p. 30, l. 18〜l. 19 um … zu schreiben
 um zu不定詞句で目的の副詞的用法。
・p. 30, l. 17 eine tragische Oper
 オペラには大きく分けて二種類あり、日本語では「悲劇」と「喜劇」と訳されることが多い。このeine tragische Operは「悲劇」の方で、オペラ・セーリアと呼ばれているもの。神話や伝説のテーマを扱っている。
・p. 30, l. 20 Vice- Kapellmeister
 Viceは「副」の意味なので、これで「副宮廷楽長」の意味。
・p. 30, l. 20〜l. 21 Gaston Bocherini
 台本書き、ダンサー、振付師のボッケリーニ。「ボッケリーニのメヌエット」として有名な弦楽五重奏曲ホ長調G275の第三楽章を作曲したルイジ・ボッケリーニの兄弟。Tänzerと書いてあるが、おそらく現在想像されるようなダンサーではなく、自分の書いた脚本に合わせて踊りの振り付けを考えたり、オペラの中で踊るような職業であったと予想される。
 ボッケリーニの説明として、l. 22のder … libteという関係代名詞節がかかっている。
・p. 30, l. 22 Beihülfe
 スペルが見慣れない形になっているが、Beihülse「援助」のこと。
・p. 30, l. 24 unter welchen auch Alceste und Orpheus
 このunterはamongの意味で、l. 24のOperngedichteにかかる関係代名詞節。
 また大文字始まりの二つの名詞はオペラのタイトルで、「アルチェステ」と「オルフェーオとエウリディーチェ」で、ここでも名前の出ている脚本家のカルツァビージとグルックのコンビによるもの。カルツァビージはともかく、ここにグルックの名前が出ていないことは、オペラのタイトルを言えばもちろん誰の作曲によるものかとうぜんわかるほどの認知度であったことが察せられる。
・p. 31, l. 1 eine komische italianische Oper
 このkomischeは一般的な「奇妙な、面白い」という意味ではなく、eine komische Operで「喜劇」、つまりオペラ・ブッファのこと。オペラ・セーリアに対して、世話話、人情もののようなコミカルな内容のオペラ。
 この語を先行詞にして、l. 2〜l. 3のdie er … bestimmtという関係代名詞節がかかっている。この関係代名詞節の内容を見ると、ボッケリーニが準備してきた台本は、本来ガスマン先生に曲を付けてもらう予定だったようだが、ガスマン先生がローマに行っていたのでこの話がサリエリのところに来たようだ。
・p. 31, l. 1〜l. 2 Le donne letterate
 サリエリが作曲した初めてのオペラのタイトル。日本語では「女文士たち」と訳される。
・p. 31, l. 3 rieht
・p. 31, l. 3 ihm
 ボッケリーニを指す。
・p. 31, l. 3 sie
 Operを指す。
・p. 31, l. 3 mir
 サリエリのセリフの直接引用中なので、サリエリのこと。この語を先行詞にして、l. 4〜l. 5のder, …einverstehen würdeという関係代名詞がかかっている。この関係代名詞節を見るに、カルツェビージが、「サリエリとボッケリーニは駆け出し同士なんだから一緒に組んだらそっちの方が分かりあえていいかもよ?(ガスマンが相手だと相手が巨匠すぎるかも)」とアドバイスをした模様。
・p. 31, l. 7 Wollten Sie wohl …
 wolltenは接続法兇如Sieによる呼びかけ、またwohlがついていることから、サリエリの所に作曲依頼をしにきたボッケリーニが丁寧な話し方をしているのが分かる。
 その依頼に対するサリエリの答えは、l. 9のWarum nicht?「どうしてしないということがありましょうか?」という感じなので、ノリノリ。
・p. 31, l. 8 ein von mir verfaßtes Operngedicht
 名詞本体はein Operngedichtで、間の部分は冠飾句。
・p. 31, l. 11 gerathen
・p. 31, l. 12 dich
 これはサリエリ自身のことで、サリエリの語りの中で当時のサリエリが心中で自分に言い聞かせた内容を引用しているところ。
 オペラ作曲の依頼が来たので、オペラを作曲できる実力があると認められたんだ!とちょっと舞い上がっている。
・p. 31, l. 12 Nur Muht!
 命令文にnurをつけると、「〜しさえすればよい」という命令の強調になる。このnurは心態詞。「勇気を出しさえすればよいのだ!」の意味。
・p. 31, l. 15 mitzutheilen
・p. 31, l. 17 Sängergesellschaft
 このGesellschaftは何か決まった組織ではなく、「歌手界」のような歌手の集合体を指していると考えられる。ガスマンの助手としてあちこちのオペラに顔を出していたサリエリと、おそらく仕事で同じような環境にあったボッケリーニはウィーンの歌手の顔ぶれをだいたい知っていて、「もし役を当てるならソプラノは誰それだな」とすぐに考えることができたのであろう。「文壇」的なニュアンスであろうと考えられる。
・p. 31, l. 17 vertheilt
 「割り振る」の意味。もう二人は掻き上げられた脚本を元に、もう歌手をどのように割り振るかを考え始めている。
・p. 31, l. 17〜l. 18 sagte Bocherini: Ich …
 コロン以下はボッケリーニのセリフの直接引用で、セリフの中のSieはサリエリを指す。
 セリフの内容としては、あらかじめ書かれた台本に曲を付けて行くと、韻律等の関係でうまくいかないところもあるだろうから作曲担当のサリエリに変更点を洗い出しておいてもらって、後で二人で相談しよう、というような内容になっている。
・p. 31, l. 22 entflammten Wangen
 Wangenは「頬」のいみなので、「頬をほてらせて」の意味。サリエリはどうやら興奮すると頬が赤くなって顔に感情が出るタイプだったようだ。それは若い時だけではなく以後もそうで、意欲と愛を持って仕事に取り組むときは良くそうなった、とダッシュに囲まれて補足されている。
・p. 31, l. 24〜l. 25 von Neuem
 「改めて」の意味の熟語。
・p. 31, l. 27 für’s Erste
 省略せずに書くとfür das Ersteで「初めて」の意味の熟語。
・p. 31, l. 27 gesehen hatte
 このgesehenは単に「見る」のではなく、「見て学ぶ」の意味だと考えられる。ガスマン先生がやっていたのを見て学んだことを、サリエリは初めて実践に移したということ。
・p. 31, l. 27〜l. 28 die dem Character eines jeden Gesangstückes entsprechende Tonart
 名詞本体はdie Tonartで、その間の部分は冠飾句。
 このCharacterは「性質」の意味。また、Tonartは「調」の意味で、ボッケリーニが書いた歌の部分を何度かよんで、その歌の雰囲気に合う調を旋律などよりも先に決めていったということらしい。
・p. 31, l. 29 nicht hoffe durfte, … zu können
 hoffeする内容がzu不定詞で置かれている。少し意味が取りにくいが、朝にボッケリーニがやってきて作曲を頼んでいき、そのあと脚本を読んでどんな音楽をつけるか考えていたら昼になってしまい、作業が昼食の時間までに終わりそうになかったので、というような次第になっている。
・p. 31, l. 31 bis dahin
 「それまで」の意味だが、具体的には「昼食まで」の意味。
・p. 31, l. 32 durchzublättern
 durchblätternは「ばーっとページをめくる」から「ざっと見る」の意味。
・p. 31, l. 33 Madame Gaßmann
 「ガスマン夫人」の意味。ここを見ると、ガスマン先生が結婚した後もサリエリはガスマン先生の家に住み込んでいたようだ。
・p. 32, l. 1 rufen lassen
 ここを見ると、ガスマン夫人が直接サリエリを「ごはんよ」と呼んだのではなく、女中さんか誰かに呼ばせたらしい。
・p. 32, l. 2 dieselbe
 この語が具体的に指しているのが、TafelかMahlzeitか判然としないが、とにかく「食事中に」の意味。
・p. 32, l. 4 was ich an jenem Mittag gegessen hatte
 l. 3のerinnernの内容だが、お昼ご飯に何を食べたのかさっぱり覚えていないくらいに頭の中はオペラの音楽のことでいっぱいだった模様。音楽馬鹿エピソード。

 ようやっとサリエリのオペラ作曲の話が始まりました。モーゼル曰く、サリエリが作曲した曲の解説を中心に書いていくとのことでしたが、こんな感じで作曲に関するエピソードなども盛り込んで書いていくようなので、ちょこちょこ面白エピソードが挟まるのではと予測されます。とりあえずはしばらく、Le donne letterate「女文士たち」に関する話が続きます。

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