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また、ひとつ、時代が終わりを告げた。
日本の高度成長期を支えてきた通勤電車。ほんの十年前まで山手線でも普通に走っていた鋼鉄製の103系電車。それがこの3月を以て現役を引退したというのだ。
かつてJRの通勤電車といえば103系電車の独壇場だった。
山手線でも、京浜東北線でも、総武線でも、常磐線でも……。
黄緑や青、オレンジや黄色。色とりどりに塗られたその姿に子供の頃の私はしばしば胸を躍らせられたものだ。
あれからどれほどの月日が流れ去ったことであろう。
時代は昭和から平成へ……。今や関東圏の電車はほとんど銀色のステンレス製電車に置き換えられてしまった。
時代の流れと共に、街の風景の変遷と共に、風景を形作るもののひとつとしての電車の姿も大きく様変わりしていたのである。
4月8日、JR常磐線に於いてその「103系電車」のさよなら運転が行われた。
色とりどりの電車。その流れ行く様を見ているだけで幸せだった少年時代。
その象徴でもある103系電車のラストラン。
「これは、必ず見に行かねばならない」
そう思った私は、その最後の雄姿を見るため北千住駅まで足を運ぶことにしたのである。
北千住駅のホームは鉄道マニア。通称「鉄ちゃん」たちに埋め尽くされていた。
大勢の子供たちに混じって私のような大人もちらほらと見受けられた。カメラを構えたその表情は子供のように無邪気だ。
ゆるりゆるりと青緑色の電車がホームに滑り込んでくる。103系電車だ。
正面には「さよなら103系」のヘッドマークが掲げられていた。一斉にシャッターを押しまくる「鉄ちゃん」たち……。
電車に乗ることが出来るのは抽選で選ばれた者だけであるらしい。運を掴んだマニアや子供たちが次々に車内に乗り込んでゆく。抽選に漏れた大勢は、カメラを手に電車の最後の姿を、昔を懐かしむような目をしながら温かく見守っていた。
駅長であろうか……。電車の脇で年配の駅員が車掌と何やら言葉を交わしている。
花嫁を送り出す父親のように感慨深げな車掌の表情……。
駅長との話が終わると車掌は合図をした。
出発!
ゆっくりと動き始める青緑色の103系電車。
昭和38年に営業運転を開始した103系。その四十数年の歴史に今、幕が降ろされるのである。
電車は赤いテールランプを残し、去っていった。
まるで舞台への名残を惜しむ、引退する女優のように、静かにゆっくりと……。
不意に目頭が熱くなってくる。
あの電車に乗っていた私の過去の風景。もう二度とは戻れない懐かしい風景。そんなものが私の脳裏に去来してくる。
私は涙を堪えながら、心の中で呟いた。
「お疲れ様。長い間我々を乗せてくれてありがとう……」
またひとつ、昭和の風景が消えてゆく。そして、私の心の中にある「少年」の風景も……。
ホームには埃っぽい春の風が舞っていた。新しいスタートを表す春の強い風……。
私はピカピカとした銀色の電車に乗り込むと家路へと向かった。
窓からは満開の桜の花が見えた。
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そうですね。次の続く期待を抱きながらも,いちもつの寂しさ。。お疲れさま。。
2007/6/10(日) 午前 2:02
写楽風さん、YOU TUBEなんかで20年前の動画を見ると、街の雰囲気のあまりの違いにびっくりとさせられます。
2007/6/10(日) 午後 0:27
私が当時オレンジ一色の103系が殆どだった武蔵野線に新松戸駅まで乗車した際、(2001年1月当時中2で高校受験を控えており、流山高等学園に説明会に行くため)
当時の東松戸駅は現在と比較して全く開発が行われておらず、お花畑と田んぼしか見えませんでした。そのため、「ここ、ほんとに駅なの?」と戸惑ったほどです。
現在は立派な駅舎になっており、当時を示すものは全く残っていません。
[ erg*3*77 ]
2013/1/14(月) 午後 8:14