レーの南東19キロの街道沿い。小さな村の裏手の岩山の上に巨大なゴンパが建っています。
ラダックを代表するゴンパのひとつ、「ティクセ・ゴンパ」です。
「ティクセ・ゴンパ」は複雑な形状をしています。
山の斜面に白い僧坊の群れが積み重なるようにして建ち並んでおり、頂上には臙脂と黄色に塗られた本堂の建物があります。
まるで城砦のように見える勇壮な姿、溜息が出るくらい立派なゴンパです。
私は岩山の上にある入り口に向かって、てくてくと坂道を登り始めました。
高地の真っ青な空に映える白い僧坊が、強烈な日差しを照り返し、目に眩しいです。
麓には藁を被った素朴な家々が並び、その脇には緑のポプラの並木が鮮やかに映えていました。
坂道の中腹から、荒涼たる岩山の聳え立つ風景を眺めます。
空気が薄いため遥か遠くまで見渡せます。
向こうの山の中腹には、別のゴンパの姿がやけにはっきりと見えますが、恐らく10キロ以上の距離があることでしょう。
広大な土地。
辺りは静寂に包まれていました。
しかし、よく耳を澄ますと、ラダックを構成する様々な音が微かに聴こえてくるのがわかります。
風にそよぐポプラのざわめき、遠くの道端でマニ車を回す音、麓の農家で脱穀をする音……。
ここの脱穀は変わっています。
10頭ほどのロバを横一列に繋いで支柱を中心に回転させ、地面に敷かれた小麦の束の上を踏ませることにより脱穀させるのです。
農家のおばちゃんに尻を叩かれ、粛々と回転しているロバたちの歩く音と、おばちゃんのけしかける声とが辺り一帯に響き渡っておりました。
坂道をふうふう言いながら登っていると、ゴンパの方から腹に響くような低い音が聴こえてきました。
地鳴りのような音。
恐らくチベットの典礼音楽に使われる長さ5メートルにも及ぶ巨大なホルン「トゥン・チェン」の音でしょう。
そして、その「トゥン・チェン」の低音を突き破る鋭い金属音と、パタパタとでんでん太鼓のような乾いた音がおもむろに聴こえてきます。
「ティブー(ベル)」と「ダマル(太鼓)」でしょう。
練習をしているのか、その音は始まっては止み、止んでは始まりました。
「ティクセ・ゴンパ」はチベット仏教の一派、ゲルク派のゴンパです。
ゲルク派は15世紀に成立したチベット仏教の中でも最も新しい宗派。
ダライ・ラマやパンチェン・ラマも所属する最大の宗派でもあります。
そのゲルク派の中でも重要なゴンパのひとつである「ティクセ・ゴンパ」は15世紀半ばに建てられました。
現在100名ほどの僧が修行をしているのだそうです。
私は、いくつかあるゴンパのお堂を見学させてもらうことにしました。
(鍵が掛かっいるところも多く、中に入れるところは多くはありませんでしたが)
お堂の中で特に印象に残ったのは「チャムカンのお堂」です。
ここは1980年に造られたという新しいお堂ですが、真ん中に鎮座する「チャンパ(弥勒)大仏像」が素晴らしかったです。
高さ15メートルのこの仏像は、ラダック最大の大きさを誇るのだといいます。
金色に輝く端正で女性的なそのお顔。
強く厳しいようでいて優しく温かく、惚れ惚れとしてしまうほど見目麗しいお姿です。
チャンパ仏は5人の如来の描かれた冠や巨大な耳飾りを着けていました。
赤や緑、オレンジなど様々な色で彩られたその容姿は、日本では考えられないくらい華やかです。
そんな大チャンパに惚れた私は、スケッチブックを取り出し、そのお顔を描いてみることにしました。
私がしこしこと絵を描いていると、観光客たちが横からスケッチブックを覗き込んできます。
「ティクセ・ゴンパ」は観光客の姿が最も多く観られるゴンパのひとつ。
ラダックの象徴とも呼べるシンボリックなその佇まいには人気があり、欧米やインド国内からの観光客がよく訪れるのです。
「グッド!」「ソー・ビューチフォー!」。
と外国人らしい大袈裟なお世辞が繰り返されます(素直に喜ばせていただきましたが)。
なおもその稚拙な絵を描き続けていると、そのうち袈裟を着た若い僧がふらふらと近づいてきました。
このゴンパの僧らしい素朴な若い僧です。
彼は何もしゃべりません。
しばらく私の絵を覗き込んでいます。
私が振り向くと目が合いました。
「ハロー!」
挨拶してみます。
若い僧は何も言いませんでした。
口角をちょこっと上げただけです。
そして、穏やかな表情をしたまま、彼はチャンパの絵を描き続ける私の姿を、さも興味深そうにず〜っと眺め続けていました。
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ひょろひょろしたのが ポプラですか?・・・あまり木が無いんですね!標高が高いせいかな?チベット文化の影響は有りますか?
2007/10/8(月) 午前 0:26
みのさん、そうです、ポプラです。
木は本当に少ないです。荒涼としています。
ここは本場チベットよりもチベット文化が色濃く残っている場所だと言われています。
共産中国に荒らされていないインドのチベットです。
2007/10/8(月) 午前 1:00
猿耳さんの描かれた絵もいっしょに拝見しました〜。本当にお世辞ではなく「グッド!」「ソー・ビューチフォー!」です。若い僧とのやり取りも2人のその時の雰囲気や静かな時間の流れが想像できて、ほんわかしてきました。スケッチは対象物を深く観察しなければならない分、写真を撮るよりも心により深く刻まれるのではないでしょうか。風景画なんて、中学校以来描いていませんが、なんだか、芸術の秋、ちょっと色鉛筆でも出そうかと思ってしまいました…。
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2007/10/8(月) 午前 11:39
クシピーさん、ありがとうございます。
時間がゆっくりな感じでしたよ。
私もしばらく描いていないので、今度また描きはじめようかなと思っています。
2007/10/8(月) 午後 6:47
これが絵に描かれてた大仏ですね☆
こんなにカラフルなのですね〜〜〜(・ω・)
チベット仏教の大仏はカラフルなのですね。同じ大仏でも日本とは違いますね〜〜
[ モチコ ]
2007/10/9(火) 午前 0:35
ピノコさん、カラフルでしょう。
チベット仏教寺院の内装はびっくりするくらい派手です。
外見とそこに住む僧たちはほんとに地味なんですけどねぇ。
2007/10/9(火) 午前 6:22
きれいですね。絵も素敵。
さるみみさんのラダックの記事読んでたら、行きたくなりました!
2007/10/9(火) 午後 8:20
HIROEさん、ありがとうございます。
ぜひ、行ってみてください。
ラダックは治安もいいですよ。高山病には注意ですが。
2007/10/9(火) 午後 10:13