とってもポジティブなウェブ世界の未来像
インターネットやウェブ世界に関する評論というと、とかくネガティブな議論に終始しがちです。
けれども、梅田望夫氏と茂木健一郎氏との対談本である、この「フューチャリスト宣言」は、全編が気持ちがいいほどポジティブ・シンキングで貫かれています。
シリコンバレーに在住し、著書「ウェブ進化論(ちくま新書)」などで知られる梅田望夫氏と、脳科学者である茂木健一郎氏は、ウェブによる新たな可能性を信じ、非常に明るい未来を想像しています。
茂木氏は、本書の前文でこのように述べています。
「未来は予想するものではなく、創り出すものである。そして、未来に明るさを託すということは、すなわち、私たち人間自身を信頼するということである。
私たちが人間を信頼すればするほど、未来は明るいものになっていく。少なくとも私と梅田さんは、そのように信じている。この本は、私たち2人の『フューチャリスト宣言』なのである。」
フューチャリスト宣言「はじめに」より抜粋
嫌な事件ばかりが流れる昨今ですが、私はこの本を読んで久々に未来に対して明るい展望を見た気がしました。
ここ数年のウェブ世界の進歩はすさまじいものがありますよね。
梅田氏は、インターネットの世界の出現を「もうひとつの地球が生まれようとしている」ととらえています。それはどんな世界なのかというと、「知」と「情報」の世界。
リアル世界には物理的ないろいろな障壁がありますが、ネットの世界にはそれがありません。
情報の伝播速度は無限大ですし、情報を複製するコストもゼロです。
それに世界中の人間・情報との出会いが容易になり、ネットさえ繋げば誰もが世界中に情報を発信し、世界の人々と繋がることができます。
「オープンソース」という言葉がありますね。
リナックスの例がよく知られています。
自分が作りたいソフトのソースコードをウェブ上に公開すると、世界中のプログラマーがそのページに集まってコードを改良し始め、そのうち企業が作製したものよりも良いソフトを作ってしまう。
ウィキペディアもこれと似ています。
ウィキペディアは、誰でも記事を書き換えることのできるフリーの百科事典です。
この「フューチャリスト宣言」で書かれていた話ですが、科学雑誌の「ネイチャー」が、ウィキペディアの正確度はブリタニカ百科事典を上回ることが調査によって判明した、と報告したため、ブリタニカ側が抗議したという事例がありました。
梅田氏は、オープンソースの本質についてこのように語っています。
「おおよその合意、ゆるやかな合意、つまりラフ・コンセンサスですね。最初の合意形成はそのくらいゆるくして、動くコードを作ろうと。最初にスペックをガチっと決めてトップダウンでモノを作っていくのではなくて、だいたいのコンセンサスができたら、後はとにかく動くものを作って、それで標準が決まっていく。そのあとはだんだん進化させていこうという考え方です。そういうある種のいい加減さ、最初から完璧さを求めない姿勢、だけど早く大勢の人の知恵を集める仕組みが、現代的な気がします。」
第2章 「クオリアとグーグル」より抜粋
少数の権威者が何かを創り、それに人々が従っていくよりも、世界中の大勢の知恵を集めて何かを創り出していく方がよりよいものが生み出される可能性があるということです。
卑近な喩えで申し訳ないですが、
悟空ひとりの「かめはめ波」より、世界中の人々の気を集めた「元気玉」の方が強いかもしれない。
世界中の人々の「知」が集まると、大きなパワーとなり得るかもしれないのです。
インターネットは、そういうことを可能にするツールとして、まさに革命的なものであると思います。
そして、もうひとつ重要なことは、リナックスやウィキペディアの向上が人々の「善」の意識に支えられているということ。
ウィキペディアなんて、誰でも書き換えることができるわけですから、悪意のある書き込みが横行し、まるで信用のならない辞典になってしまう可能性も有り得ました。
けれども、そうはなっていません。
おかしな書き込みがあったら、誰かがしっかりと修正しているのです。
ウィキペディアがしっかりと辞典の役割を果たしていることから鑑みると、相当数の善意のある修正が行われていると考えるべきでしょう。
またまた抜粋ですが、梅田氏はインターネットにおける人々の「善」について、このように語っています。
「インターネットというものは『善を集積していく』というイメージをもっているんですよ。悪を集積するというのがなかなかイメージできない。そのことは『知の喜び』と深く結びついているのかもしれません。
インターネットの12年の歴史の中で、悪ってあちこちにありますが、それはこそこそやるもので、悪が連鎖して膨れ上がっていく感じがあまり無い。
『知の喜び』『学習の喜び』」のほうが奥が深く、普遍性があるから、トータルで考えたときに、善性が自己増殖してくるほうが表にでてくる。」
第4章 「ネットの側にかける」より抜粋
もちろん、歴史上「悪」とされた行為でも、それを行っている本人は「善」と思って行動していることが常ですから、ネット上で行われる共同作業の全てがよい方向に向かうものだとは言い切れませんが、世界中様々な民族の総体としての「善」ということであれば、それなりのものが生み出せるのではないかという気が私はしています。
インターネットは、地球規模で人々の「努力の成果」とか「善意」を集積できるもの(梅田氏談)なのです。
また2人は。公共性と利他性がインターネットの特質でなければならないとも述べています。
つまり、それまでの世界における「情報の囲い込み」をやめて、インターネット上の情報が全ての人にシェアされるべきだと考えているのです。
そして、知的な資源は希少であるべきものではなく、全ての人に開かれたものであるべき。
一流大学への受験競争など無意味であり、誰でも高等教育を受けようと思ったら受けられるようになるべきだと語っています。
現実の世界における「格差」はすさまじいものがあります。
途上国の貧困層と先進国の富裕層の生活格差をなくすのは、かなり難しい状況です。
けれども、知的な資源や情報であれば、本来誰でも享受できる筈。
そのため、彼らは衣食住を得るのと同等にネットを見る権利は誰にでも与えられるべきだと考えています。
教育は人間が社会で生きる上で最も重要なもののひとつであると思いますが、これまで満足のいく教育が受けられなかった貧困層も、知識や情報を得ることによってより多くの発言やアクションを起こすようになっていける筈。インターネットにはそういう可能性があるのだと思います。
この対談本を読んで、私はウェブ世界においても、リアル世界においても重要なのは「共有」であるという気がしてきました。
情報の共有、知識の共有、資源の共有、ひいては財産の共有、幸福の共有……。
最後に特別授業において梅田氏が中学生に語った言葉をご紹介致します。
またまた抜粋ですし、長いですが、梅田氏と茂木氏のポジティブな未来感が詰め込まれていると思うので読んでみてください。
「世の中というのは、戦争があったり、いろいろとんでもないこともありますが、あらゆる国の人たちが、お互いを全然わかりあえなかった頃というのは、戦争が起こりやすかったと思います。皆がどういうことを考えながら生きているのか、ということがだんだんわかってくれば、つまり情報がみんなにきちんと共有されてきたら、そういうことが起きにくくなるのではないかと最近思っています。これからは情報の共有や情報の公開、それをベースにした世界中の人たちの相互理解が大切になる。そういう世界感覚をみんなが進化させていって、リアルの地球とネットの地球を組み合わせていけば、きっともっといい世の中になります。どんどん世の中は進化して、日々世界は新しくて、これからは毎日面白いんだ、と未来について思ってほしいと思います。」
梅田望夫特別授業「もうひとつの地球」抜粋
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いいかもしれません〜♪
最近、本を読んでないのでちゃんと読まねば!
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2007/12/17(月) 午後 9:21
ねえねさん、おススメですよ。
画像には3冊ありますが、3冊ともおススメです。
世界の諸問題に目を向けることを忘れてはなりませんが、現在や未来をポジティブに見て、人間を信頼することは絶対に必要ですね。
2007/12/17(月) 午後 9:54
最後の「世の中というのは〜」まさしくその通りだと思います。
今ではネットを通じて絶対に知り合えなかった世界中の人々と友人になれますから、これは革命だと思います。
国同士では反目し合っていても、パーソナルなレベルでは実はチャット友達だったりもするわけですからね。
今100ドルPCを発展途上国など貧困地域の人々に手渡すという運動がありますが、彼らがネット世界にアクセスすることはとても重要だと思うんです。現状はまだまだ限られた人々の世界ですからね。
[ BARRY ]
2007/12/18(火) 午前 4:06
バリーさん、100ドルPCの運動、初めて知りました。素晴らしい運動ですが、バリーさんの仰るようにネット世界にアクセスすることが重要ですね。
インドや東南アジアにもネットカフェはたくさんありましたが、まだまだ裕福な人しか出入りしていない様子でした。
南米のペルーはネットカフェが方々にあり、かなり一般に普及している感じでした。
2007/12/18(火) 午前 7:04
半年ほど前の記事ですがTBさせていただきますね。今はもっと次の展開が起きていると思います。
[ BARRY ]
2007/12/18(火) 午前 9:59
バリーさん、TBありがとうございます。
さっそく見にお伺いしますね。
2007/12/18(火) 午後 8:13