イギリス映画「ひかりのまち」です。
マイケル・ウィンターボトム監督の1999年の作品。
監督の最高傑作と言われている作品です。
1999年イギリス・インディペンデントフィルム賞、最優秀英国映画賞、2部門ノミネート。2000年イギリス・アカデミー賞最優秀英国映画賞ノミネート
監督 マイケル・ウィンターボトム
製作総指揮 デヴィッド・M・トンプソン スチュワート・ティル
脚本 ローレンス・コリアット
音楽 マイケル・ナイマン
撮影 ショーン・ボビット
編集 トレヴァー・ウェイト
舞台はロンドン。
ナディアという27歳の女性と、彼女の周りの人々の数日間の日常を綴ったのが、この「ひかりのまち」という作品。
カフェのウェイトレスのナディアには恋人がいません。
そこで、伝言ダイヤルを使って出会いを求めています。
しかし、なかなかうまくいきません。待ち合わせしていた男性があまり気を惹かれない相手だったり、イイ!と思った男でも、相手にその気がなかったり……。
ナディアには姉と妹、弟、そして、父と母がいます。
姉のデビーはバツイチの子持ち。時々前の旦那のダンが訪れますが、罵り合ってばかりです。
彼女は美容師の仕事をする傍ら、夜は男をとっ替えひっ替えして自分の「女」を満足させています。
ダンはダンで息子のジャックを家に呼んでも、女を求め一人でパブに行ってしまうし、構ってもらえないジャックはひとりぼっちで遊園地に行ってしまったりします。
妹のモリーは出産直前。
幸せそうに見える彼女ですが、旦那のエディーが内緒で仕事を辞めてしまいます。
生真面目なモリ―はそれが許せず、居たたまれなくなったエディーは家出をしてしまいます。
泣いて姉たちに相談するモリーですが、幸せの絶頂から不幸のどん底に落ちたモリ―を見て、ナディアとデビーは思わず笑ってしまいます。
父ビルは無気力で家のソファーに座ってばかり。それに我慢のならない母アイリーン。
彼女は隣の犬の吼え声にいらいらし、モリ―の旦那のエディーを「気に入らない」と言います。
彼女は批判的に物事を見る性格なのです。
ビルは、「そんな風だからダレン(ナディアの弟で彼らのひとり息子でもある)が家出をしてしまったのだ」と彼女を詰ります。
映画にはナディアたちばかりではなく、多くの人物が登場します。
引きこもりの黒人男。それを詰る母。パブでナディアに逃げられ悪態を吐く男。ナディアとの行為の後、彼女に失望し、部屋でひとり、溜息を吐く男。
サッカー場で日常を忘れ熱狂する観客。ゲーム場で遊ぶ孤独な男たち女たち……。
ロンドンという街のあらゆる場所の何でもない風景がまるで万華鏡のようにスクリーンに映し出されていきます。
ロンドンという街で暮らす、一つの家族、そして、ロンドンの街で生きている人々の何でもない日常。
それが粒子の粗い手持ちカメラを通して淡々と描かれていくのです。
淡々とした映像を眺めながら、私はなぜか、何度も涙が溢れそうになってしまいました。
何故なのでしょうか?
たぶん、私はこう思います。
この映画はナディアが一応主人公にはなってはいますが、ナディアの視点では描かれてはいません。それぞれの人々の姿を遠くから眺め見ているような感じなのです。
だからナディアにそこまで感情移入はしません。
ですが、それぞれの人々がひとりになった時に見せる、悲しみ、喜び、苦悩を知っているため、全ての人物に適度に感情移入してしまうのです。
するとどうでしょう。
欠点だらけで、時には嫌なことを言ったりしたりする人々全てが、何だか愛すべき存在のように思えてきてしまうのです。
どんな人も、時には喜び、時には悲しみ、それぞれの苦悩や夢を抱いて生きている。
人のそんな、ふとした瞬間を垣間見ることが出来れば、誰に対しても愛着が湧く筈……。
そんな気がしてきます。映画を見終わった後、私は何だかとても優しい気分にさせられました。
どこかのレヴューで、この映画の主人公はロンドンの街そのものだ、と書かれているのを読みました。
それぞれの人々の思いが交錯し、それによって形作られている都会、ロンドン。
その通り!まさしく主人公はロンドンなのだと私も思います。
それとこの映画を素晴らしいものにしているのは、マイケル・ナイマンの音楽です。
静かで淡々とした音楽は、映画の感動をよりいっそう深めます。
街の人ごみにイライラしがちな私ですが、この映画を見終わった時のような気分で街を歩きたい。
そう思いました。
|
私はだいぶ前に観ましたが、大好きな映画の一つです。映像が独特でとてもエモーショナルな印象を受けました、そして最後の方で感動が押し寄せてきた記憶があります。ロンドンが主役というのはその通りだと思いますね。
2008/8/10(日) 午後 3:38
シネマライズで予告編を見たのを思い出しました!
伝言ダイヤルにハマった愚かな女性の話だと思い観に行かなかったのですが、
そんな浅い話ではなかったのですねぇ。
マイケル・ナイマンは大好きです、他の映画のサントラは何枚か持っています。いいですよねー♪
2008/8/10(日) 午後 4:51
ナイス害さん、マイケル・ウィンターボトムの作品では「イン・ディス・ワールド」や「Code 46」もよかったのですが、最近のは観ていないので今度観てみようと思っています。
2008/8/10(日) 午後 10:53
にょんにょんさん、この作品はかなりいいですよ。
YOU TUBE動画にあるとおり、マイケル・ナイマンの音楽が素晴らしい効果を出しています。
出演者はあまり魅力的なのはいないのですが、そこが普通の一般人っぽくっていいと思います。
2008/8/10(日) 午後 10:55
ウィンターボトムの切り取る人間のもつ切なさが何ともいえず好きです。深い洞察力ですよね。
[ 高橋美香 ]
2008/8/11(月) 午後 7:38
メストさん、ウィンターボトムの人間を見つめる視点、メストさんなら好きなんじゃあないかと思っていました。
2008/8/11(月) 午後 11:52
予告編見ましたが、音楽がいいですね♪
誰も特別な人は出ていなくって、本当に街中にいる人が集まってできた映画なんですね〜〜
気になったので借りてみます☆
[ モチコ ]
2008/8/12(火) 午前 0:04
ピノコさん、マイケル・ナイマンの音楽は琴線に触れますね。
ぜひ、借りて観てください!
優しい気持ちになれます。
2008/8/12(火) 午前 0:21
すごく観たくなりました。
この監督さんの他の作品も興味深いです。
そうですかーロンドンそのものなんですね〜★
私の観た映画のなかではロンドンというなら「アンダーグラウンド」かな〜♪
ひかりのまち、今度観てみますね∨
[ ☆chikori☆ ]
2008/8/14(木) 午後 3:54
ちこりさん、たぶんちこりさんも気に入る映画だと思いますよ。
こういう世界観、人によってはちっとも心を打たれない人もいると思いますが、ちこりさんなら好きなんじゃあないかと思います。
ぜひ、観てくださいね。
「アンダーグラウンド」はまだ未見です。
2008/8/14(木) 午後 7:45
都会を歩いたり、窓越しにたくさんの人を見ると、時々衝動的に、ひとりひとりの生活を追ってみたくなります。精神生活も、実生活も。時間がいくらあっても足りないけど。
東洋と西洋で細かいところが違っても、根本的なところは似ているような気がします。
さるみみさんの『愛すべき存在』という表現、解るような気がします。ぜひ観てみたい映画ですね〜(^^)
[ ジェイ ]
2008/8/14(木) 午後 11:08
ジェイさん、ひとりひとり、それぞれの人生のドラマがあるんですよね。どんな人も一本の映画や一冊の小説になるような人生ドラマが。
ぜひ、観てみてください。
2008/8/16(土) 午前 11:17