ヤンキースタジアムでのMLB観戦記です!
Dラインは地上に出ると一気に高度を高め、街を見下ろす高架の線路をゴトゴトと激しい音を立てながら走り始めた。
ハーレムリバーを渡りしばらくすると左手に白い円形の巨大な建物が見えてくる。
ヤンキースタジアムだ!
私はそのまん前にある161stSt駅で下車した。
スタジアムの受付でチケットを購入する。
今日の試合は「New York Yankees 対 Tampa Bay Devil Lays」
私はビジター側の内野1階席を選択、42ドルだった。
球場前の通りは観戦する人々で一杯だった。
Tシャツやキャップを売る店がいくつも並んでいる。
私はその通りの中にあるボーリング屋でリュックサックを預けた。
9.11のテロ以降、手荷物の持込みが厳しく制限されている。預け料は5ドルだった。
さっそく行列の後ろに並びスタジアムに入っていった。
ゲートを抜けると青々とした芝のストライプが目に飛び込んできた。
そして、ダイヤモンド。赤茶色に輝くマウンド、ファースト、セカンド、サード、ホームベース。
グラウンドを取り囲むネイビーのフェンス。
美しい球場、憧れのボールパークだ。
スタジアムの内部と自分の席を確認すると、私は食料を調達しに売店へと向かった。
既に試合は始まっている。急がねば!
私は売店で、花瓶のように巨大な生ビールと、これまたボリュームたっぷりの、マスタードとケチャップが目いっぱいかかったホットドッグを購入した。しめて12ドル。
巨大な2つの物体を抱えながらスタジアムに戻る。
すると、ちょうどヤンキースのスラッガー、ジェイソン・ジアンビのホームランが飛び出したところだった。
私の席からはピッチャーマウンドとバッターサークルが真横から眺められた。
レイズの先発、ジェレミー・ゴンザレスがスピードボールを放る。
打席に立ったヤンキースのホルヘ・ポサダがボールを見送る。
キャッチャーミットにボールが収まるパン!という乾いた音……。
グラウンドと客席が近い。すごい臨場感だ!
(写真は、ジェイソン・ジアンビ)
ポサダは歩かされ、場内にネクストバッターのアナウンスが聞こえてきた。
「ヒデキ・マツ〜イ!」
オーロラビジョンにそのバッティングシーンが映し出される。
新人マツイは既に46打点を叩き出している。
場内に歓声が上がった!
この打席、結局マツイは三振に終わったが、現在のところ概ね手厳しいニューヨークのファンには歓迎されているようだった。
周りの観客を観察していると、多くの人がヤンキースのシャツやキャップを被っているのがわかる。
ビジター席にもかかわらずレイズのファンは皆無だった。
日本のように鳴り物はないが、みんな応援の呼び声や野次を大声で叫ぶため結構騒々しい。
俊足の黒人スラッガー、アルフォンゾ・ソリアーノが打席に立つ。
前の方に座っていた白人の女の子が叫ぶ。
「You are my hero!」
好調のヤンキース打撃陣の中でただ1人だけ絶不調のベテラン、トッド・ジールがサードの守備につく。
スキンヘッドのでかい白人が罵る。
「You are lonely man!」
平日のデーゲームであり対戦相手が弱小のレイズということもあるのだろうが、客席はかなり空いていた。
客層は老若男女様々だ。
みんなのんびりと、或いは熱狂的に試合を楽しんでいた。
(写真は、オーロラビジョンの松井)
私がビールをグビグビと飲み、ホットドッグにかじりついていると、隣に座っている白人のおばさんに話し掛けられた。
彼女の名はメアリー、オハイオ州出身だと言う。
今日は用事があってニューヨークに来たが、時間があったので試合を見に来たのだと言う。
どこのファンかと聞いてみる。
「レッズ」と答えた。
それはそうだ。レッズは地元シンシナティのチームである。
しかし、ヤンキースも好きだそうで、今日はヤンキースを応援しているのだという。
陽気な彼女は、ヤンキースがヒットを放つたびに立ち上がり手を叩いて、
「イェーイ!」
と叫ぶ。
松井が打席に立つと「ほら、日本人よ!」と私に言い、一緒に応援してくれる。
(写真は、ニューヨークの貴公子、デレク・ジーター)
5回、ヤンキースタジアム名物、ヤングマンの曲が始まった。
グラウンドキーパーがグラウンドを整備し始める。
YMCA!
グラウンドでポーズを取る彼ら……。
メアリーと私もその他の大勢の観客も、手を振り回してY・M・C・Aとやった。
しかし、試合は我々の応援も空しく先発のジェフ・ウィーバーが5回に打ち込まれ、後続もピリッとせず、7回で既に1対11と大きくリードされていた。
だが、勝敗だけが試合の醍醐味ではない。
このボールパークでの雰囲気は、まさにアメリカの文化を感じさせる素晴らしいものだった。
(写真は、グラウンド・キーパー)
7回、セブンスイニングストレッチが始まる。
我々は全員立ち上がり「Take Me Out to The Ball Game(野球場に連れてって)」を歌い始める。
私もメアリーと一緒に立ち上がり、その歌をわかるところだけ歌った。
歌を歌いながら私は、このアメリカという様々な民族の集まったモザイク国家のことを思った。
アイルランド系、ドイツ系、アフリカ系、ユダヤ系、中国系……。
みなそれぞれのルーツとアイデンティティーを大事にして生きている。
しかし、彼らもこのボールパークで野球を見るときはただのアメリカ人に、それぞれのチームのただの1ファンになるのだ。
歌い終え、周りの人々と共に椅子に腰掛けながら私は、アメリカという国の不思議な一体感を感じとっていた。
9回、マツイに最後の打席が回ってきた。
ノーアウトランナー一塁。
ここまでノーヒット、いいところがない。
しかし、最後にマツイは見せてくれた。
彼が初球を思い切りはじき返すと、打球はセンター前へと綺麗に抜けていった。
手を叩いて喜ぶ私、それを見たメアリーも自分のことのように喜んでくれた。
メアリーは実は野球についてはあまり詳しくないらしい。
私はヤンキースの先発ピッチャーがわからなかったので彼女に聞いてみたのだが、彼女はわからないと言った(けれども彼女は傍にいた男性に聞いてくれたため、私はウィーバーの名前を知ることが出来たのだ)。
彼女の好きな選手はピート・ローズだという。
大昔の選手だ。ノモやイチローのことも知らないようだった。
だが、そんなことは問題ではなかった。
彼女にとっては球場に来て贔屓のチームを応援し、ヒットが出たら歓声を送り、ライバルチームの強打者やお粗末なプレイに対してブーイングを送る。
セブンスイニングストレッチで歌い、YMCAを踊る。
そして、ビールを飲みホットドッグやポップコーン、クラッカージャックをむしゃむしゃと頬張る。
それが、彼女にとってのボールパークでの楽しみ方なのだ。
老若男女が楽しめる場所、メアリーのような普通の主婦がふらりと立ち寄ることが出来る場所、ボールパーク、それはアメリカの文化そのものなのである。
試合は結局、2対11でヤンキースはボロ負けした。
メアリーと別れた私は一目散にオフィシャルショップへと向かった。
デレク・ジーター、マリアーノ・リベラ、バーニー・ウィリアムス、ロジャー・クレメンス……。
たくさんのユニフォームやキャップが並べられている。
散々迷った挙句、私はヤンキースのロゴの入ったキャップとTシャツを一枚、購入することにした。
53ドルだった。
(写真は、ヒデキ・マツ〜イ)
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