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「愛国駅」から「幸福駅」へ。旧国鉄広尾線の両駅間切符が一大ブームを呼んだのは昭和40年代の終わりごろ。ハイセイコーが駆け、街に「神田川」の曲が流れ、オイルショックの経済不安が社会に広がりつつあった。北海道帯広の平原を走る路線はやがて廃止となり、それから今月でまる20年。残された幸福駅には、なぜか今も観光客が絶えない。
JR帯広駅から車で約30分。小さな木造の待合室に立った。壁や天井に所狭しと絵はがき、名刺、定期券などが張り付けられている。平成に入ってからはプリクラがその中に交じるようになり、最近では台湾からのツアー客による中国語のメッセージが増えた。
「そりゃそうさ。幸せってのはそう簡単に変わっちゃいけないべさ」
30年間待合室の前で土産物屋を営む広岡勲さん(68)は、幸せを求める人たちに国境も、年齢も関係ないと話した。
こんな会話中にも愛国発幸福行き切符(220円)や台湾発幸福行きポストカード(180円)を買い求める客が続く。昨年は5月の最盛期で1日平均730人、台湾からの観光客は年間3万5000人にものぼった
夕暮れ時、防風林を吹き抜ける風が痛い。周囲を覆い尽くす雪原の先には日高山脈。その嶺に陽が落ちていく。夕焼けが雪面をあかね色に染め上げる…。そこは駅名を実感させる世界だったそうである。(産経写真報道局 山田俊介)
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